ビニールハウスで薪ストーブを

ビニールハウスの中は、太陽が顔を覗かせる日ならば、たとえ冬でも相当暖かい(もちろん、当店のように開けっぱなしでなく、きちんと閉めていれば)。だが、ここ山陰地方のように冬に太陽の顔を見る日が少ない場所ではその恩恵も受けにくい。

それでも、重油ボイラーでもガンガン焚いて加温すればハーブももっと早い時期に育つだろうが、そこまでするメリットは今のところない。ふんだんに太陽が降り注ぐ地域ならば、燃料代も少なくて済むだろうし、そんな地域で育ったものと価格競争しても勝てるわけはない。品質だって、加温すれば良いというものでもないし、かえって病気や害虫の心配が増すだけだろう。真冬にまでアブラムシに気をかける必要があるなんてまっぴらだ。

また、植物は、細胞壁があるためだろう、案外寒さに強い。ところが我々人間は、植物ほど強くない。そこで作業をする際には何か加温設備が必要だ。

最初は古い灯油ストーブを使っていた。大して暖かくはならなかったが、それでもストーブを焚いているというだけで気分的にはマシだった。作業場所をパーティションで囲むなどの工夫をして少しでも暖かくなるようにはしていたが、やはり限度がある。

そこで、ある年から薪ストーブを試してみることにした。暖かさは、比べ物にならない。熱量も数字的には倍以上である。

幸い燃料の調達先は確保できている。本体は、ピンからキリまであるが、当然キリの方。知らない人に、「サンキュッパですよ」というと、四万円かと思われることもあるが、3980円のである。

たいてい、ビニールハウスでこれを見た人が言うのが、「ビニールが焼けたりしないんですね?」という言葉。

実際、薪ストーブ導入で、一番心配したのがこれだった。ビニールが溶けてしまっては元も子もない。だが、使用し続けて、5年以上は優に立つが、いまのところ小さな穴さえ空いたことはない。

それでもいくつかポイントがあるので、紹介しておきたい。今後、ビニールハウスで、安価でとても暖かく(灯油ストーブには戻れない)、しかも環境に優しい暖房を・・という人に参考になれば幸いだ。※もちろん、自己責任でお願いしたいが・・・。

一つ目のポイントは、煙突の高さだ。本格的な薪ストーブでも、煙突はケチるべきではないと言われるが、安くあげようとストーブ本体を数千円で済ましても、煙突は、それ以上に費用がかかる。少なくとも、ビニールハウスの高さよりも2メートルは高くしたい。今の高さは4メートル弱ある。

煙突が高いので、ビニールハウス用のパイプなどで補強

二つ目のポイントは、風向きを考えること。風向きが安定しないところは難しいかもしれない。当店のビニールハウスが立つ場所は、南東に開けていて、そちらからの風が強い。そのため、煙がビニールハウスから遠ざかるような位置にストーブ(煙突)を設置すること。今まで、二箇所に設置したが、いずれも下記のような配置だ。

ストーブと煙突の位置

三つ目のポイントは、ストーブから真上に煙突を伸ばさずに、一度横に伸ばしてビニールハウスの横(妻の部分)から煙突を屋外に出すようにすること。煙突が煙を吐き出す力は弱くなるが、これも、煙突から落ちてくる火の粉を避けるのには有効だと思う。

自作のメガネ石(板)。少し焦げてきたので、きちんとしたものに交換したい

大体、この3点で問題なくストーブがたけている。

初めは、ストーブもなるべく中央に置くようにしていたが、結構端の方でもストーブの熱自体でビニールが溶けることはない。また、床が焼けないようにと、ブロックを積んでずいぶん浮かせたり、下に断熱用の砂を敷いたりしたが、あまり意味はなかったようだ。むしろ、今はしゃがむのが面倒で、ブロックをかませてあえて上に位置を上げている。

火をつけたり、火の具合を見て薪を足したりというのが面倒と思うかもしれないが、案外楽しいものだ。薪が焼ける匂いも、樹種によって違って面白い。それに、木が燃える匂いは、なぜかホッとする。ストーブの中で燃えている火を見ているだけで、ついつい引き込まれてしまうぐらいだ。

冬は、肥料作りの時にお湯を多用するし(以前は灯油ストーブのお湯では足りず、カセットコンロも使っていた)、お湯がいつも沸いているというのは洗い物の時などにもとても助かる。それに、そう多くはないが、不意の来客時も、寒いビニールハウスの中で凍えてしまわれずにすみ、会話も弾む。

薪割りもなかなか楽しい。最初は慣れなくてものすごく体に負担だったが、今は、むしろ寒い日に、体を温めるのにちょうどいい。薪を入れるケースにいっぱいになるよう薪割りをすると、汗さえ出てくる。ほんの10分前後だ。薪割りをするとストーブが不要になってしまうというのがなんとも皮肉なのだが。

そうそう、数年前から、ストーブに耐熱塗装をするようになった。それまでは、錆びてせいぜい2年で買い替えていたのだが、他の作業場で使っている同じストーブが5年ぐらい持つと聞き、環境的に湿気が多いためではないかと考えた。そこで、耐熱スプレーを購入後に満遍なくかけておいたら、ずいぶん持ちが良い。

耐熱塗装済み。炎が見える焚き口はオプション。炎が見えると楽しい。

毎年、ストーブをしまうときに、掃除をして軽く耐熱スプレーをかけるようにしているが、今のところ、4年は持つ感じだ。安いものだが、捨てるのはなかなか大変だし、雰囲気も悪くない。まあ、最初からそういう塗装済みのものを買うのも良いかもしれないが。

というような感じで、園芸作業のお供に薪ストーブ、おすすめである。もちろん、火の用心はしっかりと。翌日来て、ビニールハウスが溶けて愕然となることは避けたいので。

そこに山があってこそ

昨夜は暴風雪警報が発令。

自宅のある場所は西が開けているので、冬型の気圧配置の時は冷たい西風が容赦なく吹き付けてくる。電線を風が揺らす音が一晩中響いていた。

一方で、ビニールハウスが立つ場所は西側に小高い山がそびえているため、西風が吹く時はかえって穏やかだ。実際に今朝ハウスに到着した頃も穏やかに雪が舞うぐらいで、風の心配はまずなかった。

こんな時、西側の山があることをありがたく思う。その代わり、秋以降は午後3時になると山の影になってしまって寒々しい思いをせざるを得ない。

まだ日が当たっている東の方の田畑を眺めて「この山がなければなぁ」

と思うこともしばしばある。

以前も書いたが、ビニールハウスにコケが生えやすいのも、山の存在は大きいだろう。夕方になると山側から寒さがスーッと降りてくる感じもけっこうこたえる。

何でも、いい面と悪い面がある。お客様からも、日当たりが強過ぎて・・・と相談されることが多いが、日当たりのない場所の方からすれば羨ましいだろうし、逆もまた然り。

真夏は、5時前なると太陽が山の影に隠れる。もし、日没まで日が当たっている環境なら、水やりも相当多くなることだろう。また、夏に弱い種類のハーブの育苗も更に難しかったことだろう。夕方のヒグラシの声や、暑さの中ふっと涼しい風が降りてくるのも山があってこそ。山を作ることはまず不可能なので、あることを喜ばねばと思うしかない。

2021年1月の雪の被害のまとめ

昨年12月30日から年明けまで、そして1月8日から数日間続いた雪でそれなりに被害があった。

さすがにビニールハウスほかの建物についてはある程度の雪ならばあらかじめ対策しておくことでなんとか凌げるようになった。それまでに十分勉強代も払ったおかげなのだが。事前に支柱をかけて、夜中は一番負担がかかるビニールハウスの中央部に小さなストーブをつけ雪を落とす。可能ならば翌朝以降、内側と外側からできるだけ雪を滑らせて負担を減らす。こういった対策でほぼ大丈夫なようだ。10年前の災害級の積雪の時も、こういう対応ができたら無駄に潰さずに済んでいたと思うと残念だが。

一方、どうしても後回しになってしまって被害を受けやすいのが親木類だ。ビニールハウス内のものはさておき、屋外の親木については全ての雪対策をするというのは現実的ではない。

一応、横に広がった枝を剪定して雪への対策をしていたのに一番被害が大きかったのが、ローズマリーの親木だ。

かなり株元に近い場所から見事に割けた。ローズマリーは古い株になる程このような感じで割けやすくなる。実際枝が老化して弱くなっていたのかもしれないし、植えてもう10年近くなる。

もちろん、ローズマリーとしてはまだまだ大丈夫な年だが、親木としてどうかと考えればそろそろ更新するべき時かもしれない。思い切り剪定してその後の成長を見ようと思う。

一方、ラベンダーの仲間は比較的被害が少なかった。このように上から雪の重みで開いてしまう株はたくさんあったが、なんとか大丈夫そうだ。避けるような被害も今のところは見られない。

一つ残念だったのは、ローズゼラニウム。

下の方はまだ大丈夫そうだが・・・

本格的な冬がくる前に挿し木にしようと思っていたのがついつい後回しになってしまい、この寒波で傷んでしまった。伸びた枝はおそらくダメそうなので、強く剪定して春に新芽を出して復活させるしかない。傷んでしまった枝は、根を保護するために春までそのままにしておこうかどうか迷い中だ。

今回の寒波は最低気温がマイナス3~4度だったので、あまり心配はしていなかったが、レモンティートゥリーが見事に傷んだ。

レモンティートゥリー
レモンティートゥリー

葉がカサカサの茶色になってしまい、おそらく今後パラパラと落ちていくことだろう。株自体はダウンしていないと思うのでまた春には芽が出てくるのではないかと考えている。

同様に、ティートゥリーもそこそこの被害。

ティートゥリー。所々が折れた

今は軽傷のように見えるが、今後じわじわと症状が悪化してきそうで当分目が離せない。

傷んだ新芽

今のうちに風除けでもして春までの寒波を和らげておく方が良いかもしれない。

ここ数年で、ようやく設備関係の雪対策が安定してきたので、親木の雪対策を充実させるのが今後の課題になりそうだ。

こんな場所にはこのハーブ-ヒメツルソバ

昨年の秋、ちょうどビニールハウスの張り替えが終わった直後だったから、11月の半ばだったように思う。

ビニールハウスの中に妙にたくさんのミツバチが飛んでいた。小さな羽音がウワーンと響いている。分蜂かとも思ったが、冬に向かうこの時期には考え難いし、それにしては数も少ない。たまたまかと思っていたし、翌朝にはいなくなっていた。

ところが、先日、図書館で養蜂の本が目についてパラパラとめくっていたら、蜜源植物の一つとして、ヒメツルソバが紹介されていた。「他の花が少ない時期の蜜源」との記載もあり、あ、なるほどと手を打った。

ヒメツルソバ
ヒメツルソバの花

今思えば、屋外の花が少なくなってきたため、蜜を求めてビニールハウスの床に広がるヒメツルソバにやってきていたようだ。秋も半ばぐらいまでならハウスの周りの荒地に広がるミゾソバがたくさん咲くので、そちらに向かっているのをよく見るのだが、この時期になると、他にはローズマリーの花ぐらいしかない。

ミゾソバ
10月までは蜂に人気のミゾソバの花

ヒメツルソバ、この辺りでは、時々雑草のように生えていることもあるが、花が鮮やかで可愛いので、グラウンドカバーとしてもおすすめの植物だ。「こんな場所にはこのハーブ」と言いながら、ハーブというよりはワイルドフラワーに近いのだが(場所によっては雑草かもしれないが・・・)。

広がるヒメツルソバ
広がるヒメツルソバ

ビニールハウスの中でも、苗の棚の下で一年中広がっている。いつ頃から増え出したか、定かではない。一応苗としても栽培はしているのだが(この頃はあまり増やしていないが・・・)、決して意図して植えたものでもない。

床に防草シートを貼っているので最初はあまりみなかった。そのうち、所々穴が空いたり、土が溜まったりしたところに種子が落ちたことから増え始めたのかもしれない。

また、それほど広がっていないころは大掃除の時、他の雑草とともに取り除くようにしていた。そのうち、あまり邪魔にならないことがわかって、むしろ他の雑草を押さえてくれているようなので、広がるに任せることにした。

通路部分を避けて広がるヒメツルソバ
通路部分を避けて広がるヒメツルソバ

また、通路部分については、踏まれると柔らかい葉が傷むせいなのか、それとも日当たりが良くてあまり広がろうとしないのか、伸びてこない。そういうこともあって、我々との共存を勝ち取った感がある。

ビニールハウスの中といっても、マイナス5度ぐらいにはなるので極端に寒い時は、葉が真っ黒になって傷むこともあるが、株自体がダウンすることは稀だ。むしろ、真夏の方が葉が乾燥で傷むことが多い。とはいえ、これも、当店の場合はだが、苗を栽培している棚の下に広がっているので、夏も毎日のようにそこそこの水はかかってくる。しかも適度な日陰という環境がぴったりなのだろう。

同じような環境は難しいかもしれないが、適度な日陰と水分があり、極端に踏まれない場所ならば良いグラウンドカバーとして使えると思う。

ちなみにパラパラと小さな種子をたくさん落とすので、先日のブログで紹介したように、小鳥も結構食事にやってくるようだ。ミツバチ同様、種子が少ない時期には嬉しい植物かもしれない。

きっと楽しいかも

年明けに一度落ち着いた降雪だったが、7日から11日まで再び断続的に雪が降り続けた。ここ松江では、何日も降り続ける雪というのはわりと珍しい。

思い出す限りでも、ここ10年ほど、大雪はあったが、それも1日か2日。多くはどかっと降って、朝にはやみ、主要道ならば午後にはアスファルトが顔を出すような感じだ。

ところが今回は、一度やんだと思った雪が夕方からまた降り始める。気温も低かったので、何日も溶け始める気配さえなかった。

ビニールハウスも、倒壊の恐れさえなかったが、滑り落ちた雪がハウスとハウスの間にどんどん溜まり続けた。これにはさすがに心配になった。

毎年、周りの野山が雪に覆われると、何故か小鳥がビニールハウスの中に入ってくる。暖かい時期にもときどきあるので、迷い込んできたとばかり思っていた。

苗をついばまれてもこまるので、追い出すようにしていたが、追い出してもまた翌日になると入っている事に気がついた。

そっと近くに寄って観察すると、苗の棚の上に登ることは稀で、どうやら床に広がっているヒメツルソバや雑草の種をついばんでいるようだ。ただ、何の小鳥か種類はわからない。

スマホで調べてみるが、調べようが悪いのか、どうも判然としない。ビンズイとかタヒバリとかに近いような気もしたが、どうも違うようだ。

ハーブはともかく、植物ならば少なくとも「~の仲間かな」というぐらいはわかるのだが、鳥についてはせいぜいわかるのはスズメ、カラス、ハト、白鳥、ニワトリ・・・あげてみるとあまり動きが早くなく、近くまで寄ってみることができるものばかりだ。動きが早くて小さな種類は全くお手上げ。警戒心が強くて近寄れない種類も同様だ。

この頃、山登りする機会も多いので、鳥について知っていればもっと楽しいのに・・・と思うことがよくある。昆虫に比べるとハーブと鳥はそれほど関わりは強くないが、せっかく色々な鳥が見れる環境にあるので、知っていれば日々きっと楽しいに違いない。

結局、夕方事務所に帰ってパソコンで本腰を入れて調べたら、どうやら「クロジ」という鳥のようだった(確証はないし、まだ自分の中では少し疑っている)。録画しておいた動画でチェックしたさえずりもよく似ていた。

クロジ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動

「常緑樹林の暗い林縁部の地上で数羽が草の種子を採餌」との説明もあるので、苗の棚の下の暗いところで、種子をついばんでいてもおかしくはなさそうだ。今の時期種子をつけている苗はまずないので、いたずらされる心配もない。無理に追い出して悪かった。

「観察例は極めて少ない」ともあるし、名前も縁起が良さそうだ。新年から「黒字」がビニールハウスにやってきたなんて。