地域貢献

先週末からの雪も昨日で一段落。今日は道路の雪もほとんど溶けて、街中では雪かきで積み上げられた雪だけがまだところどころ残っている程度になった。

雪国と思われることも多い山陰だが、年によっては一度も雪かきをしないで済むこともある。雪が降っても1日、速い日だとその日の午後にはずいぶん溶けてしまうことが多い。なので、我が家もそうなのだが、車も一台だけスタッドレスにして、もう一台はノーマルタイヤのままにしているお家も結構あるようだ。雪が降って危ないような日はそもそも車で出かけないのが賢明だ。

雪
これほど降って「雪国ではありません」と言っても説得力はないが・・・

とはいえ、仕事となるとそうも言っていられない。それに、雪の翌日はまずビニールハウスが被害に遭っていないか確認に出かけなければならない。一番気が進まない仕事の一つだ。

そのうえ、主要道からビニールハウスまでは除雪車は通らない。何年ぶりというような大雪の時には車では入れないことも以前にはあった。

今回も、土曜日にはなんとかたどり着けたが(それでもナンバープレートで結構ラッセルしてしまった)、その夜追加で積もったので日曜の朝はスコップも積んで覚悟して出かけることになった。

国道はさすがにきれいに除雪され、その先の主要道もノーマルタイヤで走れるほど。さあ、問題のハウスへの入り口にさしかかったが、ここもバッチリ除雪されていた。先月の雪のときにもそうだったのだが、お隣の土建屋のFさんが周囲一帯の道路を朝から重機を使って除雪しておられたのだ。

雪かき

何の問題もなくビニールハウスに到着でき、そのうえ我々が駐車するスペースまで雪をかいていただいていて感謝。当のご本人は・・・と見れば、ずいぶん遠くの方で雪かきをつづけておられた。

駐車場の除雪
ビニールハウスの入り口まで除雪していただいた

実際、自分も含め、松江に住むひとは雪かきには慣れていないと思う。先月の大雪のときにはホームセンターの店頭からスコップが一斉に消えたというニュースが流れた。私も今年3回目の雪かきでようやく段取り良く雪をさばけるようになったと思えたぐらいだ。まして高齢化著しい状況では人力で行う雪かきなどたかがしれている。そんな中、重機で雪をかいてもらえるとどれほど助かることか。ご近所の方も「本当に助かる」とずいぶん喜んでおられた。

しばらくして重機の音が近づいてきた。うちのビニールハウスの前を通りかかられたのでお礼も兼ねてお茶とお菓子を出して休憩していただいた。もうこの集落一帯の雪かきを終えられたようだ。

ご本人は「この雪じゃ仕事もならんけんねぇ」と謙遜していらっしゃるのだが、誰にも頼まれずに雪をかいておられる姿勢はカッコイイ限り。立派な地域貢献である。だいいち、土曜日は仕事として鳥取県へ雪かきに出かけていらしたとのこと。きちんとお金をもらって行う仕事なのだ。

ストーブにあたりながら、除雪の苦労などの話も聞けてこちらが得した気分になった。

しばらく休憩された頃、また雪が降り始めた。「ごちそうさま、また一仕事しますわぁ!」とまた重機に乗り込むFさんであった。

重機

Fさんの姿をみて、うちはなにか地域貢献ができているかなあと考えるとせいぜいビニールハウスの周りプラスαを草刈りする程度。いろいろ迷惑をかけているわりには何にもできていない。かといって、周囲にハーブを植えて・・・というのも違う気がする。ま、焦らずにぼちぼち考えるとしよう。

せめてものお礼に今年の夏は土建屋さんの周りを気合を入れて草刈りをしようか。

気の進まない仕事

雨漏りがしてるなあ・・・。
一昨年張り替えたビニールハウスだが、今年のはじめぐらいから、ところどころから雨が漏るのが気になり始めた。

原因はいくつかある。

まず、ビニールハウスの骨組みと、ビニールがこすれやすい場所は穴が開きやすい。特にてっぺんなどの突起部分はなおさら。同じくビニールを押さえるベルト(マイカ線と呼ぶ)が当たる場所も要注意だ。

また、問題なのがカラス。ビニールハウスの上に時々止まるぐらいならまだ良いのだが、内側にいる昆虫をくちばしでつついているようだ。あんな強力そうなくちばしで突かれたのでは薄いビニールなどひとたまりもない。

そのほか、そんなに多くはないが、内側に侵入した鳥が外へ出ようとして激突したり、ハウス内部での作業中に、あやまって脚立などが当たったりというようなこともある。

2年ぐらいするとこれらの原因でビニールには結構な数の穴が開いてくる。

実際の所、冬でも結構開けっ放しだし、加温するわけでもなく、苗を育てるという点では少々穴が開いていても大きな弊害はない。

とはいえ、放っておくと徐々に大きくなるし、作業する場所の上などはやはり雨漏りはうれしくない。

なので、全てを補修するというのは大変ということもあり、作業スペースの上や、極端に大きな穴が開いたところだけの補修は必要だ。

補修テープ
ビニールハウス専用の補修テープ。幅が広く、厚め。

しかし、春から初夏はオンシーズンで忙しいし、梅雨の間は濡れていてなかなか作業ができない。夏はパイプが激熱になるので、熱くて作業にならない。涼しくなるとまた本業が忙しい。冬は寒いし風が強くて危険。・・・いろいろ言い訳があるが、つまり、気が進まない仕事なのだ。

先日、うっすらと雪が積もった。雪が徐々に溶けてくると、空いた穴からポタポタとしずくが垂れてくるのがよくわかる。作業スペースの上あたりも何箇所かあるようなので、ようやく重い腰を上げることにした。

数日後、久しぶりに晴れた日を狙ってビニールハウスの上に登る。高所恐怖症というほどではないが、先月、プロにビニールの張替えをしてもらった時に聞いた「滑り落ちて大怪我をしたことがある」という言葉が思い出される。

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何度あがってもやっぱり怖い

上から見ると、中から見るよりはるかに多くのコケがビニールに付着している。本当かどうか知らないが、山が近くて湿り気が多いと、山から飛んでくる花粉(スギ花粉だろうか)を栄養にしてビニールの上でもコケがはえるとか・・・。

補修テープを貼るにもまずは湿らせた雑巾でコケを拭き取ってから貼らなくてはいけない。

ビニールハウスの補修
移動は慎重に

また、思ったよりも穴が空いている箇所が多く、慎重にあっちへ行き、こっちへ行きしながら補修を行う。足の裏、スネ、膝、手など、使える所を全て使ってクモのように移動する。パイプの位置からずれるともちろんビニールを突き破ってしまうので、慎重に。

ビニールハウスの補修
天気は良いが、吹きっさらしなので結構寒い。裸足も冷たいが、緊張感で寒さはあまり感じない。もちろん、ビニールハウスの上に登って写真を撮るような余裕もない。

とりあえず、今すぐ問題になる場所だけ補修を完了。30分ほどであったが、何時間も作業をした感じがして、地面に降りた時には大きなため息がでた。手も、足の裏もコケと汚れで真っ黒。スネが痛む。ジーンズやシャツも所々が黒ずんでいた。

これでこの冬はなんとか大丈夫。次に問題になる頃にはビニール全体の張替えになるだろう。ヤレヤレ。

真似ができないプロの技

ビニールハウスを初めて建てたのは20代前半のころだった。
間口が2メートルぐらい、奥行きはそれでも6メートルぐらいはあっただろうか。まだハーブも趣味の延長ぐらいで育てていた時期だ。

叔父から譲ってもらった中古の小型ビニールハウス。パーツもバラバラで、そもそもどこに使うパーツなのかもわからない。もちろん説明書もないので、むりやり手伝わせた友人と一緒にああでもない、こうでもないと言いながら組み立てた思い出がある。今考えてもよく作れたものだと思う。ある意味、一番難易度が高かったかもしれない。

その後、業者さんに建ててもらったこともあったが、中古で譲ってもらったものも多く、大抵は自分たちで建てた。

自分で建てたと言うと、驚かれることも多いが、骨組みは時間をかければなんとかなるものだ。

ただ、サイズが大きくなると問題になるのがビニール張り。縦40メートル、横10メートル近いビニールを骨組みの上にかける作業は慣れないと非常に難しい。

風とビニール
昨年、小さいハウスの張り替えをしたが、それでも風であおられて大騒ぎ

何年か前に張り替えしたときも、油断していたら風であおられて何箇所か破れてしまった。

また、このビニールも何年かすると劣化する。この辺りは山に囲まれているので、劣化するよりもコケが付いて透過度が悪くなったり、雪が滑らずにハウスが潰れてしまうこともある。そのため、何年に一度かは張り替えの必要がある。

コケ
山が近いので、ビニールにもコケがつきやすい。花粉のせいもあるとか・・・。

今年もかなり古くなった一棟のビニールハウスを張り替えることになったが、自分たちで張り替えるかどうかが問題になった。もちろん、自分たちで貼れば高い工賃を払わなくてもすむ。その代わり、破れたり、怪我したりというリスクとも引き換えである。

かなり迷ったが、一度プロの作業をよくみて勉強しようということで、今回はビニールの張り替えをお願いすることにした。

特に知りたかったのが、棟の上につける換気用の天窓をどうつけるかということ。ユニックなどのクレーンでも使えば別だが、どう考えてもハウスの上に登って取り付けるしか方法がない。また、その位置までビニールを破らずにどうやって持っていくのかがそもそも謎中の謎だった。毎回へっぴり腰でおそるおそるハウスの上に登って行っていた作業、うまくできる方法がわかればこれにこしたことはない。

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恐る恐る、へっぴり腰の天窓取付作業

今回お願いしてやってきたのは4人のプロたち。先日まで山口でビニールハウスを建てていたとか。西へ東へ引っ張りだこのようで頼もしい限りである。

集合は朝7時!風のないうちに貼り終えてしまうことが第一だそうで、とにかく張り終えるまでは休憩もしないそうだ。プロである。
ビニール剥ぎ
作業がスタートした。まるで一流の板前が魚をさばくようにみるみるうちに古いビニールが取り除かれていく。

ビニール張り
新しいビニールが広げられたとおもったら、あっという間にハウスを包んでしまった。角度を変えて写真を撮る暇もない。

プロフェッショナルの技

開始からここまで30分ほど!!我々なら半日かかりそうだ。
しかもビニールの扱いが大胆。我々は破れないように、破れないようにとそっと扱うのだが、手慣れたものである。

そして問題の天窓の取付。一体どうやって・・・。と注視していたら、なんと屋根の上を手で持って運び始めたのである・・・これではとても真似ができない・・・

歩く

あっという間に完成したビニールハウスの張り替え。ハーブたちも日の光が燦々と注ぎ、嬉しそうである。

ただ、これを次回我々だけでできるかどうか・・・。また悩みそうである。

11月は頭を使って

10月は秋の園芸シーズン。そして師走の12月。どちらも忙しい月だが、その間に挟まれた11月はぽっかりと空いたような時間にゆとりがもてる月だ。

気持ちに余裕があると、普段見過ごしてしまいがちなところも目につきやすくなる。

例えば夏前に折れてしまったビニールハウスの巻上げ機のハンドル。

巻上げ機
握り手の元の部分が腐って折れてしまった

ビニールハウスは、閉じているととんでもなく気温が高くなってしまうので、換気をよくするためにサイド部分や天頂部分を開閉して風を入れられるようになっている。大抵は開けっ放しなのだが、雨が吹き込んでくるような時や、台風などの強風の時は風をはらまないよう、閉じなければならない。

サイド部分の開閉は、短いハウスなら手で開ければ十分。しかし、さすがに10メートルを超してくると手ではきつい。
巻上げ機
そこで登場するのが、巻上げ機だ。ハンドルを回すとその先のパイプがくるくると回る。パイプがビニールを巻きつけてハウスの横面を開けていく。10秒もあれば片面を開けることができる。単純な作りだが、もうこれなしではやっていけないほど便利なシステムだ。

30メートル用とか、50メートル用とか、100メートル用などあって、長いハウスに使うものは一台1万円以上するものもある。近年は電動や自動のものもあったりするが、いまのところは手動で十分である。お値段も高いしね。

さて、問題の壊れてしまった巻上げ機。中古で譲ってもらったものを10年ぐらい使ってきたので、そろそろ替えてもよさそうな時期だ。一旦は新品に変えようと思っていた。きっと、繁忙期ならとっとと新品に替えていただろう。

ところが、ゆとりがあるこの季節、よくよく考えてみると本体には問題がない。ハンドル部分が折れているだけなのだ。

ならばハンドル部分だけ直せば問題なし!である。しかも、ハンドルも握りのところが折れただけ。ハードルはそう高くなさそうだ。

なんでも買って済ますのは簡単だが、少しは頭を使って体を動かさないと人間が駄目になる。

まず、ハンドルに近い太さで取り付けやすそうなものは・・・と考える。加工がしやすいのは木やプラスチックだが、ある程度耐久性がないといけないし、それなりに力が加わる部分である。かつ、もともとあるハンドル部分に取り付けやすい素材は、やはり金属だろう。
そこで、ビニールハウス用のパイプの残りを引っ張り出してくる。直径が19mm。内径はハンドルよりも少し大きいぐらい。

サンダー

まずは、適当なサイズにカットして、折り曲げるところをサンダーで少し削る。

バーナーで加熱
さらに、バーナーで加熱。金属加工は危険も伴うので慎重に、慎重に。
曲げる
赤みを帯びてきたところで、長めの太いパイプを挿して90度に曲げた。

切断
次に壊れているハンドル部分を切断。

仮合わせ

サイズなど問題がないか、あわせてみる。ウン、いい感じだ。
ビス止め
金属用のビスを2箇所に打ち込んで固定。元のパイプとの間に隙間があるが今回は目をつぶる。そのうち錆びて間が詰まるだろう。
完成
くるくる回しやすいように、握り手の部分に塩ビパイプを差し込んで出来上がり。

本当は塩ビパイプが抜けないようなストッパーがつけたかった。内側のパイプを叩いて広げるか、ビスをつけておけば良いかもしれないが、塩ビパイプがしょっちゅう落ちて困るようならまた考えよう。

お金を使わず、頭を使って、満足感も得られる。時々はこんな時間がもてる11月。残り半分を大切に過ごしたい。

拡張工事

今日も朝から雪が舞う。山陰の春はもう少し先になりそうだ。

ビニールハウスは無加温なので、日がささなければ温度は外気温とほとんど変わらない(さしてもあまり変わりはないが)。

気温が低ければ苗たちの成長もゆっくりで、したがってできる仕事も限られる。

そんな冬のあいだに行う大事な仕事がビニールハウスの補修や改良である。

ビニールハウスも雨風にさらされて、年とともに部材が錆びてきたり、ビニールが破れてきたりする。また、使っているうちに、使い勝手が悪い場所が出てきたりするので時間に余裕がある冬のうちに改良して、春以降に備える。

今年の仕事は苗を育苗する台が古くなってきたので、台の上面の竹を張り直し、あわせて拡張を行うことにした。苗を大移動したり、例年よりも大仕事となった。こんな仕事は他の季節ではとても行えない。
拡張工事
いままで台が少し狭めだったので、通路部分は広くて使い勝手はよかったものの、面積を有効的に活用しているとは言いにくかった。特にオンシーズンには、発芽した苗をポット上げしようとしても、場所が足りなくて困ることもしばしばであった。

そこで、今回は約60cm幅を広げることにした。スタッフの計算によると置ける数が2割増えるとのこと。実際出来上がった台を見てみると、予想していたよりも広い。

竹の台
緑色もまだ鮮やかに残る竹は見た目にもフレッシュでいい感じ。もう少し暖かくなるとこの上に続々と新しい苗が並ぶことだろう。

でも、きっと、あっという間にいっぱいになってしまうんだろうなぁ。