農繁期の種子

気がつくとチャイブが種子をつけはじめていた。

チャイブ

チャイブ

5月の初めには可愛らしいピンクのネギ坊主を揺らしていたのに、時の経つのは早いものである。上からのぞくと、黒い粒々が見えるようになってきている。

比較的小さい種子が多いハーブの中でもチャイブは種子とりがしやすい種類だと思う。それでもタイミングは大事だ。放っておけばいつの間にか落ちてしまう。種子たちも人間の都合を待ってはくれない。

種子とりに気が回るのはまだ時間的余裕が有る証拠である。いっぱいいっぱいの時なら気がついた時には種子はもう落ちてしまっている。それを見て更に余裕の無さを実感して焦ってしまうのだ。

実は今もそんなに余裕はないのだが、あえて種子とりをすることで、焦る気持ちが少しだけ押さえられるのではないかと思うのである。

切り取って、かるく振ってもまだ種子はあまり落ちてこない。充分に熟していないようだ。何個かネギ坊主を収穫して紙袋に入れておく。しばらくすると軽く振るだけでパラパラと種が落下してくるようになればOKである。
チャイブの種子
ただ、そのまま紙袋が放置され、数ヶ月後に見つかったりするとまた余裕の無さを痛感させられたりするので要注意である。

開花前と後で

6月に入り、お気に入りのハニーサックルが徐々に開花しつつある。花の香りが良いことは言うまでも無く、ハーブにはやや少ない蔓が楽しめること、トラブルフリーであることも好感度を高くしている。

ハニーサックル

小さな蕾がぎゅっと詰まって見えはじめていたかと思うと、どんどん大きく育ち、見事な大きさになる。特にピンク系の種類はこの咲く前の色合いが良い感じだ。つやつやとして、グラデーションのかかりかたも雰囲気良く、形もすっきりしている。

ハニーサックル

ところが、開花すると「ちょっと派手過ぎるかな」と言う印象である。色も派手な上に、立体感がある。大きな塀などにからませているのなら丁度よいかも知れない。また、ローズなどと組み合わせるのなら、これぐらいボリュームがある方が良いだろう。

ロニセラ・グラハムトーマス

ロニセラ・グラハムトーマス

だが、個人的には開花時はむしろ白系のグラハム・トーマス辺りのほうが好きである。蕾の頃はこちらはさえない感じだが、開花した時はかえってすっきりしている。今、店舗の木の壁にはこちらを広げようと画策中である。ブラウンの壁にはきっと映えてくれるものと思う。見ごろを迎えるのはまだ数年先になるだろうが、その時を想像しつつ気長に待つのである。

ソマリアの空と海

スタッフで休憩のお茶を楽しんでいると、時々、
「現地で、本物のトスカナ・ブルーってやつを見てみたいねぇ」
なんて話になることが良くある。もちろん、ローズマリーのことである。

オーストラリアンだとか、カナリーアイランドだとか、イタリアン、コルシカン、ケンタッキー、フレンチなど、名前を見ていると旅情をかき立てられても仕方がない。

同様に国の名を冠していても先般まであまりピンとこなかったのがソマリアセイジである。ところが先般、なにかと話題の多い国名なので、ついつい目が留まるようになった。

ややごつい葉をもち、花が咲くまではあまりぱっとしない姿だ。ところが花はなかなか。上品なブルーである。

ソマリアセイジ

このブルーは、ソマリアの空を映しているのかそれとも海の色か。政情不安に加え、経済もひっ迫しているというこの国で、目を向けられることはあるのだろうか。先日は国会中継でも海賊問題に関する審議が行なわれていた。海賊もまさか日本の国会で話題になっているとは思ってもみないことだろう。このソマリアセイジも、まさか日本で花を咲かせるとは思っても見なかったことだろう。

まだ育てはじめて長くないため、本質をひき出すような育て方まで行っていないが、真価を発揮できれば結構サルビアの中でも見所は多いかも知れない。

日本の香り

親族が管理する里山に所用で出かけた。山道を歩いていると風に乗って甘く爽やかな香りがする。初め、クチナシの香りかと思った。

スイカズラ

辺りを見回してみると少し離れたやぶに、白と黄色の花が咲いているのが見えた。もしやと思って近づいてみると、スイカズラの花であった。忍冬(ニンドウ)とも呼ばれる。いわば日本のハニーサックルである。

スイカズラ

この場所は何度も通っていたのに、今まで全く気がつかなかった。「栽培されている」という認識があると注意して見るのに、自生しているとつい見逃してしまうのだろう。

スイカズラ

暗い薮を背景にして花色が際立つ。開花時から花色が変わっていくのはハニーサックルの仲間では良くあることだが、スイカズラもなかなかいい感じである。

今、圃場でもハニーサックルが次々と咲き、香りを楽しませてくれている。それにしても香りの系統のなんと違うことだろう。普段接しているハニーサックルは爽やかで割とシャープな明るい香りがするのに、こちらのスイカズラは爽やかではあるが、しっとりと深みがある。最初クチナシを連想させたように、非常に日本的なのだ。花の咲き方も、perlclymenum系とは大分違うし、庭などでも楽しめそうだ。

冬に機会があれば、一度、冬に耐え忍ぶ忍冬の姿を見てみたい。

気を揉むコンフリー

ビニールハウスの横で草刈りをしていたら、思わぬところにコンフリーの花が咲いていた。圃場の外れ、隣地との境目のようなところである。普段は草が生えっぱなしで放置してある場所だ。

コモンコンフリー

コンフリーはボリジなどのように種子でどんどん増えるというものでもないので、どうしてここに?という感じである。

ちょうど花がいい感じに上がっていたし、結構花期も長い。大株になると見事なのでそのままにしておくことにした。

コモンコンフリー

このコンフリー、古くはknitbone(骨接ぎ草)と呼ばれ、薬用にされていた。その後、日本でも(かなり前のようだが)野菜としての栽培がはやった時期があるという。ある一定以上の年齢の方で、育てたことがあるというお客様が結構いらっしゃるようだ。実際、自分の両親も以前育てたことがあると聞いてびっくりした。野菜を育てるような庭も無く、そもそも園芸などに関心が無いあの両親が?と思うと今でも不思議である。相当流行ったのだろう。

その後、大量に摂取すると問題が有ると分かったようで野菜としての利用は下火になったようだ。だから、数年前まではあまり人気がなかった。

しかし、この1,2年、堆肥に利用すると言う目的でコンフリーが大人気である。しかし、この人気もいつまで続くやら。

薬用として、野菜として、堆肥として、次は何に使われるのかコンフリーも気を揉んでいることだろう。こうやって荒れ地に咲いているのが一番幸せそうである。