危険な密航

朝、圃場にやってきたスタッフの車になにか付いていた。良く見るとカマキリが一匹。一体どこからついてきたのやら。彼の自宅はそれほど遠くは無いのでもしかしたら家からついてきたのかも。と言う話になった。つるつるすべる車体にしがみつくのは大変だっただろう。
「洗車してないから、案外つかまりやすかったかも」
とは車の所有者の談。

カマキリ

次の世代を残すために、少しでもエサが多そうなところに来ようとしたのだろうか。その後、しばらくするといつの間にかどこかへ行ってしまったようだ。

以前、一人のお客様に聞いた話である。
隣町に車で出かけた時のこと。目的地について車から降りると、何やら下のほうでニャーニャーと鳴き声がする。野良猫でもいるのかと思いきや、そこにいたのは自分の飼い猫。どうやら車の下部にしがみついたまま家からここまでやって来てしまったらしい。5〜6キロはあるだろうに、良く振り落とされたり、中に巻き込まれたりしなかったとびっくりしたということである。

必死でしがみついている時の猫の顔を想像すると可笑しいやら、ホッとするやらだったそうだ。

このカマキリも必死の良い旅を終えて今ごろホッとしていることだろう。

下向きのベクトル

朝夕だいぶ涼しくなってきて、早朝など、上着が無いと作業がしにくい気温になってきた。ハーブたちの成長も目に見えて遅くなりつつあり、こちらの感覚とずれが出てくるようになった。成長の具合が一週間前とあまり変わらず、「あれ、この前見たのはいつだったっけ?」てな具合である。

イタリアンパセリ

このイタリアンパセリも、夏の終わり頃、店頭でのお客様に、「10月には出せるようになりますよ」と返事をしておきながら、いまだ約束が果たせていない。もう一歩がなかなか成長しないのだ。

サクラタデ

一方で、以前もとりあげたサクラタデはその後、ゆっくりゆっくり開花して、この頃は更に蕾の色づきが良くなってきた。もう一月以上楽しませてもらっている。春からの成長と違って、下向きのベクトルで育つ秋の草花をもっと楽しみたいものだ。

種子蒔きのお手伝い

秋も深まり、雑草もどんどんと種子を落とす準備を進めつつある。それよりひと足前に圃場の回りの草刈りをしておかなければならない。種子ができてからでは、草刈りをしたところで種子を蒔いてやる手伝いをしているようなものだ。

それでも、冬を前に精一杯花を咲かせている姿を見ると少し躊躇してしまうこともある。

ミゾソバ

ビニールハウスのすぐ横で育っているミゾソバもいまが最盛期。溝のあるようなところに育つソバのような花と言う名前のようだ。花が咲くまでは全くパッとしない姿なのに、開花すると辺りが明るくなる感じがする。育つときには一気に大きくなるようだが、困るようなしつこさは無いし、少し寂しさを感じさせる季節にあると嬉しい花色なのでどちらかと言えば残しておきたくなる。

ミゾソバ

花も近くで見るとなかなか可愛いのだ。もう少し目を楽しませてもらって、来年分の種子ができてから片づけても良いかな?なんて気にさせるのである。

冬のデビューに向けて

秋は植え替えの季節でもある。夏の間に傷んだ株や、大きくなりすぎたものを植え替える仕事が山積だ。暑さや蒸れで調子が悪くなったハーブの鉢物は、涼しさが戻ってくるとそれなりに調子も良くなってくるとは言え、植え替えた方が手っ取り早いことが多い。

まして、徒長した株は剪定するだけでなく、植え替えもしてやるとなお、良い葉がでやすい。

シルバータイム

このシルバータイムもお手本のような徒長株である。そのうえ斑が消えてしまった枝も結構あるのでこのままでは見た目が悪い。シルバータイムはむしろ冬に葉色が鮮やかになるので是非今のうちに新しい芽がでるきっかけを作っておきたい。実際、斑の方が目立ちすぎて花が咲いた時もそれほど花が目を引くこともないのである。

普通ならばっさりと剪定してしまうことからスタートするが、長いままの方が斑が消えた枝が見つかりやすいので先にその始末をして、株元近くまで切り戻す。まだ比較的小さめの株なので(というか、鉢が小さいのでこれくらいしか大きくならないのだ)、すでに株元から新芽が出つつある。思いきってそのすぐ上辺りまで切り戻した。あとは一度掘り上げて回りの土を少し落とし、新しい用土を加えて植え直したらできあがりである。

シルバータイム

この鉢も使いはじめて10年近く。買った当時、少し値段が高く感じたのだが、頑丈でようやくいい味を出しはじめたことを考えると今になって良い買い物だったと思えるようになった。

一月もすればそこそこ見栄え良い葉が伸びてくるだろう。その頃には店頭に飾ってやろうと思っている。

園芸作業の友

圃場で挿し木やポット上げなど、諸々の作業をするとき、側に無くてはならないのがラジオである。この番組を聞かなくては・・・と言う程ではない。それなのにいつのころからかラジオを流しながら作業をするようになった。個人で作業をすることが多いのも理由になるかも知れないけれど、何人かで作業する時もつけっぱなしである。案外何かの話題のきっかけになったりして和気あいあいと作業をするために良い潤滑油の役目をしているのかも知れない。

といっても、ラジオから流れる内容を、しっかり聞いているわけでも無い。興味のあるニュースが流れている時に、ラジオの近くにいるスタッフに
「で、なんて言ってた?」
と訪ねたところで、
「いや、聞いてなかった」
と返事が返ってくるのが落ちである。

圃場のラジオ、3代目か4代目になる。過酷な環境で頑張ってくれている。
圃場のラジオ、3代目か4代目になる。過酷な環境で頑張ってくれている。

不思議なことに、同じような業種の圃場などに行っても必ずと言っていいほどラジオがかかっているので、なにやら可笑しく思えてくる。

園芸が好きなひとは孤独を全く苦にしない人が多いという意見には賛成だが、ラジオは側にあったらきっと嬉しいだろう。

園芸を趣味とする人へのプレゼントとして携帯ラジオ。結構喜ばれるのではないだろうか。