成長ハカバカシカラズ

店舗の北側は木の壁になっている。せっかく雰囲気がある壁があるのをそのままにして置く手は無いと、ハニーサックルでも這わせようかということになった。

もちろんそのままではハニーサックルは壁に張り付くことは無いので、地味目の針金を張って絡ませることにした。種類も迷ったが、暗めの壁色に映えそうな明るいクリーム色の、ロニセラ・グラハムトーマスとした。

株元にしっかり元肥をして植え込んだのが約2年前、そこそこ伸びているのだが、思ったほどの成長をしていない。予想では壁の半分ぐらいまでは伸びているところだったのに・・・。

ロニセラ・グラハムトーマス

それでも先月からぼちぼち花も咲きはじめてきた。本当を言うと花を咲かせてくれるより、少しでも大きく育ってくれる方が嬉しかった。台風を心配する季節も間近である。お盆ごろには暇を見つけて誘引し直してみたい。

見かけによらず

8月に入っても日差しの弱い日が続く。花壇のハーブたちもやや徒長気味。本格的な夏の日差しがやって来るのが少し怖い。

レディスベッドストロー

一方、普段の夏なら少しカサカサになることも多いレディスベッドストローは非常に御機嫌のようだ。花の後の疲れも見せず、繊細な葉を密生させている。同属のスイートウッドラフに比べると開花時の雰囲気は少し見劣りがするものの、葉の細やかな様子は名前の通り非常に女性的である。

黄色い花は6月ぐらいに開花
黄色い花は6月ぐらいに開花

また、スイートウッドラフは結構気難しがりやのようで、好いた場所なら良く広がってくれるのに、少しお気に召さないところがあるとすねたようにいくら機嫌をとってもうまく育ってくれない。

その点、レディスベッドストローはかなりの日なたでも、また湿気が多い半日陰でもまずまず育ってくれるのも嬉しいのだ。圃場の脇でも10年以上植えっぱなしの株がある。特に手入れもしないのに、弱ることなく結構育っている。姿に似合わず、芯の強い植物である。

ぽきぽき

折れやすい植物は苦手である。なんてったって、苗を発送する時の梱包に一苦労。もちろん、届いた後でとり出すお客様も神経を使うだろうが、送り出す方はなおさらミスは許されない。今まで何度枝が折れ、圃場に取りに戻ったことだろう。

開花時期の花オレガノ(ケントビューティープルケルム)、スイートウッドラフなどは特に注意が必要である。また、サルビア属にも要注意人物が多い。サルビア・ブカナニーローズリーフセイジなど、ちょっと手が当っただけでぽっきりなんてことも珍しくない。いずれも花が大きく、見事なので蕾がついていたりしたらなおさら折れやすい。

サルビア・ダルシー。花だけ見ると大きなチェリーセイジである。
サルビア・ダルシー。花だけ見ると大きなチェリーセイジである。

今ちょうど花が咲きはじめている、サルビア・ダルシーもそんな悩ましい種類の一つである。いったい、原産地でどんなふうに育っているのか見てみたいものだ。メキシコの高地にお育ちのようなので全く想像もつかない。案外現地ではしっかりと枝を伸ばしているのかも知れない。

技量が問われる花

夏から秋の長期間、存在感を示すのがロシアンセイジである。ちょうどラベンダーが終わる頃から咲きはじめ、放って置こうものなら11月になってもまだ花をのこしていることさえある。

ロシアンセイジ

夏の暑さにも強く、容器栽培で水が切れても、割りと立ち直りやすい。このへんは秋咲きのセイジ、サルビア属に比べても遜色が無い。花の色といい雰囲気といい、セイジの仲間だと思っている人も多いのではないだろうか。

一つ残念なのは、切り花にした時、花もちがあまりよくないこと。涼しげな感じを室内に持ち込みたくて試してみたこともあるが、あっという間に花を落としてしまった。また、一本では見栄えがしないのも残念である。何本かまとめて植えるといい感じになるので、ラベンダーと組み合わせ、平行になるように列植するとなおいい感じになりやすい。この点、一株でも見栄えがする多くのセイジ類に比べ、植える時に工夫がいる。

さて、ポット苗の状態で開花させたとき、見栄えがする花とそうでない花がある。ロシアンセイジはどちらかといえば後者である。売る側としてはその分説明しなくてはならない。また、写真うつりもあまり宜しくないので、どちらかといえば売りにくい植物である。といってもロシアンセイジに罪は無い。こちらの技量が問われるのである。

土との相性

いよいよ7月も終わろうというのに、一体夏はどこへ行ってしまったのか。

湿度も高く、日差しも少ないので、苗のポットにも例年になくうっすらとコケが生える。それ自体が苗の生育に大きく影響を与えることはないのだが、土の表面が黒っぽく見えるため、水が充分足りているように見えてしまう。そのため、つい水やりの際に見逃してしまい、次に見た時には苗がぐったり・・・なんてことが良くあるのだ。

もちろん、出荷する際にも見栄えが悪いので、取り除く作業が必要になってくる。手で取り除くのには限界があるので、ある時、金属製の移植用ナイフ(とでもいうのかな?)を見つけて使ってみた。

買う時には、「これはぴったり」と思っていたのだが、実際に使ってみるとどうも使い勝手が悪い。刃の部分が硬いので、土の深いところまで削れてしまう。握り具合も良くない。夏は熱く、冬は冷たくて、手に取るのも嬉しくない。便利かなと思った反対側のピンセットも邪魔なだけであった。

へら

あまりの使い勝手のひどさに呆れ、しばらくして竹でへらを作ってしまった。素材はすぐ脇の竹林から調達。適当なサイズに切って割り、へら状に整形。ついでに火であぶって先端部に緩いカーブをつけた。

目的に合わせて作ったので、使い勝手の良さは折り紙付き。何と言っても竹の微妙な柔らかさが、苗の株元を掃除するにはぴったりなのである。土との相性が抜群で根も傷めにくい。

へら

金属製の方はあっという間にお役御免となってしまった。

毎日使えばすぐに駄目になるのかなと思っていたのに、一年以上使っていてもあまり傷んだ様子も無い。竹って丈夫なものだと改めて感心している。