先月末、お隣の鳥取県に山登りにでかけた。山登りといっても緩やかな坂道を一時間弱ほど、ハイキングである。
道すがら、秋の野草が目を楽しませてくれた。マツムシソウ、ワレモコウ、アキノタムラソウ、山頂付近ではトリカブトが鮮やかな花を咲かせていた。
少し暗い林の中では道の脇に黄花アキギリが鮮やかな花を咲かせていた。秋に咲く日本のサルビアだ。圃場でも育てているので、いつも目にしているのだが、こんな山の中で美しい花を咲かせているとつい足を止めて念入りにシャッターを押してしまう。
「うーん、やはり野生育ちはなんか違うなぁ~」
と妙に感心しつつ、アングルを変えたりしながら写真に撮りたくなるのでなかなかその場から進めなかった。
その数日後
「そうだ、あの場所、どうなっているかな」
と、ふと頭に浮かんだ。
「あの場所」とは10年以上前に偶然見つけた、黄花アキギリが咲いている道である。店から車で20分ばかり行った場所にある。細い山道だが、近くには民家もあって、本数は少ないとはいえバスも通るような場所だ。
初めて見つけた時には、道路脇に咲いていた一群を少し過ぎたところで「もしかして」と気がつき、戻って確認した。とっておきの場所を見つけた気がしたものだ。
もしかしたらその場所も咲き始めているかもしれない・・・。でも、あれからずいぶん経つし、もうなくなっているかもなぁ・・・。と思いつつ、その場所へ向かう。
久しぶりに訪れるので、正確な場所がよく思い出せず、「通り過ぎてしまったかな、それともやっぱりもうなくなっているのかも」と思った頃、急に黄色い花の一群が現れた。
以前よりもずいぶん広がっている。前回見つけた時はせいぜいタタミ数畳分ぐらいだったように覚えている。今や50メートルぐらいに渡って道沿いに伸びていた。
雑草と競い合うかのように茂っている姿にびっくりしつつも、なんだか気が抜けてしまった。
近年、道端の雑草を刈る人もいないため、思う存分に広がったという感じである。きっと、お盆前などに草刈りされていたら、これほど開花することはないだろう。
まるで雑草のような勢いを見ると、先日の登山で見つけた時のような感動はない。デジカメも持ってきたというのに、とりあえず「パチリ」で終わってしまった。
車で一時間半、さらに山道を登ること一時間でようやく出会った花と、車で20分ほどの道端の花、どちらも同じである。
ひとは、なぜ遠くにあるものに価値を見出すのだろう。そして、どうして近くにあるものはぞんざいに扱いがちになるのだろう。秋の野に咲く黄色い花にいろいろ考えさせられた秋の初めだった。