人待ち顔のカエル

圃場の近所に幼稚園ぐらいの男の子がいる。行き帰りにであうと、時々手を振ってくれるフレンドリーな子だ。

彼は週に何度か、圃場の目と鼻の先にあるゴミ集積所におじいちゃんとごみ捨てにやってくる。そのとき、いつも水路の溜めマスのところで立ち止まり、何かを見ている。

こちらも気になって様子を窺いに行くと、ミドルサイズのウシガエル?がいらっしゃった。以来、毎朝、自分もなぜかこのカエルの様子が気になって溜めマスを覗くようになった。

ウシガエル?

近くの農家さんが置いている肥料袋(田んぼへの水引込調整用のようだ)がお気に入りなのか不思議といつも朝にはこの定位置にいらっしゃる。昼ごろになるとどこかへ消えて、また翌朝にはここにいる。

何をしているやら想像もつかないが、かの男の子がやってくるのを待っているのだろうか。そう思うとなにやら人待ち顔のようにも見えてくる。声はまだ聞かないので彼氏を待つメスなのかも知れない。それとも肥料袋のオジサンに恋をしているのか・・・

トカゲの足音

ガーデニングが心底好きなひとは、孤独を苦にしないひとが多いように思う。お客さんからも「一日中誰とも話さずに庭仕事に没頭できる」という話を良く聞く。

普段の作業も役割分担がはっきりしているので集中的に植え替えをしたり、何か大きなものを作ったりなどの特別な時以外はほとんど個人の仕事である。

広いビニールハウスで一日中一人で作業することも希ではない。誰かいれば別だが、そんな時、不意に背後から物音がするとびくっとさせられる。

トカゲ

夏にかけて驚かせてくれるのはこいつ、トカゲである。真夏の暑い時にでも、何をしているのかビニールハウスの苗が並ぶ台の下を行ったり来たりしている。地面にはシートを敷いているので余計に「カサカサッ」と言う音がしてびっくりさせられるのだ。

彼には無論罪は無い。ビニールハウスでは毎日のように見かける顔見知りのような間柄だ。トカゲを見て「キャッ」なんて黄色い声を出すひともいるが、全く気にならない。むしろ、お互いに邪魔をせず危害も加えず非常に良好な関係を保っている間柄といえそうだ。

なぜか写真の彼はしっぽの先が切れていた。しっぽが切れたトカゲは仲間からも阻害されやすいと何かで読んだ。彼にも表には出さない悩みがあるのかも知れない。

ちなみに地面に敷いているシート、なかなか良い製品である。非常に丈夫で敷いて5年以上たち、毎日歩いているのに劣化も少ない。水も通すし、とりあえず草取りをしたくないために敷いたところ予想以上の効果を上げている。個人的な園芸では使うことは少ないかも知れないが、良いものなので紹介しておきたい。商品名はダイオグランドシートである。ただ、切断するとその端はほつれやすいので注意が必要だ。

タランチュラ出没!?

昨年のちょうど今ごろだったと思う。普段お庭の手入れをさせていただいている方から電話がかかってきた。

「庭のバラに、大きな青い蜘蛛がいて、気持ち悪くて・・・」
お年を召された女性の一人暮らしなので、なおさら不安なのだろう。すぐに伺うことにした。

お庭に向かう車中でスタッフと「大きな青い蜘蛛」とは一体何かという話になった。電話の話によると縞模様もあるという。

「もしかして、タランチュラとかの毒グモとか?」
「このごろは木材とかについてやって来るのもいるらしいし・・・」
「こんな島根に?」
と、喧々諤々であった。でも、いざと言う時に誰が捕獲するのかという話には決してならなかった。

到着して恐る恐る問題のバラのところに行ってみると、正体はゴマダラカミキリであった。鮮やかなブルーと、大きな触角。青い蜘蛛に見えても仕方がない。結局この時は5匹も捕まえた。残念ながらバラの枝は既に何箇所もかじられていてその先の花芽がダウンしていた株もあった。

今年も同じ庭で、やはり同じようにゴマダラカミキリを見つけた。少し早かったのか一匹しかいなかったし、バラの被害も最小限だった。

ゴマダラカミキリ

小さな頃は、宝石のように見えた体の色も今ではあまり愛着は湧かない。昨年は知人宅の小学生にプレゼントしたのだが、今年は山に囲まれた圃場に連れて帰って放してやった。

ダンディで臭いヤツ

コリアンダーの花が相変わらず咲いている。こぼれ種のものは開花も長いのか、早く種子を落としてくれればいいのに、片付けて次のものが植えたいのに植えられないでいる。

いつまでも咲き続けていることを良いことにカメムシが毎日のようにいらっしゃる。目にも鮮やかな衣装をまとったアカスジカメムシだ。この色のストライプを見事に着こなせるとはダンディなヤツである。

アカスジカメムシ

よく、コリアンダーをカメムシの防除用に植えると言われる。それにしても、同じ匂いなのでやって来るのか、それともコリアンダーみたいな臭いものを食べるのでカメムシは臭いのか。人間でも匂いの強いものを食べると体臭が強くなるとも言うのだが。

いずれにせよ、この色、天敵から身を守るのには効果的なのだろう。その上臭ければ誰も手を出さない。臭いかどうか試してみたくもあるが、かつてブラックベリーとともにカメムシを口に入れた経験があるものにとっては手を出す気にはなれないのである。

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撮影中にもう一匹の甲虫も御来店。こいつも臭いのだろうか。色は良く似ているし。似た者同士なのかも知れない。

ちなみにコリアンダー、葉の香りは苦手な方も多いかも知れないが、種子は非常に甘くてスパイシー。粒のコショウと等量でブレンド、その都度ミルでひいて肉料理などに使うとサイコーです。お試しあれ。

ニャッキ

いつも作業をしている圃場では、一年を通して目にする昆虫も限られる。毛虫、イモムシの類も、ほぼ顔なじみのものばかりである。詳しい名前は知らなくとも、「○○(ハーブの名前)に付くニャッキ」と言えばスタッフの間でもほぼ通用する。

ところが、庭仕事へ行くと、今まで見たことも無い「ニャッキ」に遭遇する。有るお宅の庭先で、シモツケの花を丸坊主にしてしまったニャッキがいた。普段から昆虫の名前にはあまり詳しくないスタッフばかりなので、当然だれも知らない。

シモツケマルハバチ

とりあえず、見た感じ無害そうな雰囲気なので見つけるかぎり手で取り除いた。ところが、通路を挟んでピンクと白の色違いのシモツケがあるのに、食べられているのはなぜかピンクの方ばかり。白はほとんど被害が無かった。成育環境もほとんど変わらないのにだ。

シモツケマルハバチ
良く見ると両端は色が違う感じである。さすがにピンク色はしていなかった

あまりに不思議だったので、帰ってから調べてみた。ネットのイモムシ図鑑を調べるが、なかなか分からない。あまりにたくさんのイモムシを見てさすがに気分も悪くなってくる。こんな時は方針を変えて被害に遭った植物から絞っていくのも手である。シモツケから探っていくと、すぐに分かった。「シモツケマルハバチ」というハバチ科の幼虫であった。

更に調べていくと、なんとこの幼虫、花を食べて、体色が変わることもあるという。ピンクの花ばかり食べていたのもこのへんに理由があるのかも知れない。

小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・
小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・

正体は分かったが、スタッフの間で「シモツケマルハバチ」と言う名は定着しないだろう。きっと「シモツケのニャッキ」の名前で呼ばれるに違いない。