つきあいも長いと

そう、最初の出会いはまだ古い店舗の頃。今まで調子が良かったマロウの葉がいつの間にかかじられて丸坊主に。ビックリしてよく観察してみるとクルクルとまいた葉がいくつも見つかった。

その様子から、ハマキムシとも呼ばれる
その様子から、ハマキムシとも呼ばれる

中を覗いてみるとこいつがいた。そう、ワタノメイガの幼虫である。アオイ科の植物が好物のようで、ブルーマロウムスクマロウブラックホリホックなどが同様にターゲットになる。もともとは綿の葉につくことからこの名前がついたとか。

ワタノメイガ

生まれたては凄く小さくて食害するのも葉の裏面をこそげとるぐらい。なので最初はなかなか気づきにくいが、加速度的に大きくなって、食べるスピートもそれに比例するので気がつくと葉の大半がやられているという始末。

気がついたらとりあえず捕殺するしか手が無いし、大抵は同じ時期に2度、3度と孵化するようで、ひと安心していたらまた食べられていたということもよくある。

ただ、2回目か3回目のアタックを乗り越えるとほぼ大丈夫。幸い、苗であってもマロウたちは葉が無くなってもダウンすることは滅多に無いので、丸坊主になってもしばらく放置しておけばまた葉を伸ばしてくれる。捕殺する手間を考えるとこっちが実は楽だったりする(捕殺しようとしてもまたこれが上手に逃げるのだ)。

出会った頃は、悩みのタネであったが、これぐらいつきあいが長くなってくると、いちいち驚かないようになってくるし、おつきあいの仕方も身に付いてくる。まあ、人間社会でもそんなもんだしね。

しばしお預け

植物も、継続的に育てていないと管理のポイントを忘れがちだ。周年育てていると、そろそろ植えかえしなくちゃとか、今年もあの虫が出始めるかな・・・などと自然に思い出すものだが、しばらく育てていないときれいさっぱりと忘れてしまう。

以前育てていたが、つい後回しになっていて今年久しぶりに栽培を再会したソレル。基本的に丈夫なハーブなのであまり手もかけずにいた。先日ちょっと様子を見てみると、まるでマシンガンで銃撃されたように穴だらけになっていた。ああ、そうだった、丈夫とは言ってもこれを好む虫がいたっけと、後になって思い出してももう遅い。確か昔も同じように被害にあったことをようやく思い出した。

トムとジェリーのチーズのように(ってのは少し古い?)
トムとジェリーのチーズのように(ってのは少し古い?)

犯人はこいつ、ハグロハバチの幼虫である。

ハグロハバチの幼虫

くるくるっと丸まった姿は可愛いが、一株に一匹、必ずと言っていいほど付いているのでほぼ全滅だった。近縁の、あの強力なギシギシさえ美味しく食べるようだから、こんな柔らかいソレルなんて前菜のようなものだろう。まあ、ここまで食べられては剪定するより他に無い。しばらく出荷もお預けだ。

幼虫を狙っているのか?でもきっと酸っぱいぞ。
幼虫を狙っているのか?でもきっと酸っぱいぞ。

予想外の出来事

お庭の仕事は毎回のように予想外の出来事に遭遇する。

現場についてみたらとんでもなく木々の枝が茂っていたとか、草が半端じゃないほど伸びていたとか、病害虫が発生していたとか、予報では晴れだったのに突然大雨が降り出したとか。まあ、最後は仕方が無いけど、仕事が予定通りに進むことは稀な方だ。でも、何年も続けていると、大抵のことには冷静に対応できるようになる。

さて、今日伺ったお庭。おばあさんのお一人暮らしのお家なのだが、昨日お庭の手入れのご希望をいただいた。梅の枝が一気に伸びたので少し剪定してほしいとのことだった。「あ、それとついでに・・・」という程度だったのだが、軒下に蜂が小さな巣を作っていて心配なので見てほしいとの希望もいただいた。

今日はちょっと忙しかったけれど、それほど時間もかからないだろうと昼前に出かけることにした。蜂の巣も「おちょこみたいなのが付いています」と仰っていたので、おそらく例のアシナガバチが巣を作りかけてるのだろうと思い、特に何も準備せずに出かけた。勝手口のそばだというし、足が少しお悪いおばあさんでもあるので巣は取るしか無いけど、剪定のついでぐらいに思っていた。おばあさんにも、「ええ、簡単なもんです、すぐ終りますから」と気軽に答えておいた。

現場へ着き、「ええ、ここなのよ」と指差された先を見てビックリ。

コガタスズメバチの巣
おちょこじゃなくて徳利ではないか。えーっと、これはもちろんアシナガバチじゃないよね、確かスズメバチの、なんだったっけ・・・。もう、気が動転して名前も正確に思い出せない。

ただ、幸いに、まだ巣もできたてのようである。しばらく観察していたが、蜂はまだいないようだ。おばあさんは家の中に避難してもらい、自分もいつでも逃げ出せる体勢をとって、軽くつついてみる。どうやらお出かけのようで反応がない。今がチャンスとばかり、袋をかぶせ、一気に口を閉じる。

脚立から下りたところでおそらく女王蜂だろう、巣へ戻ってきた。危機一髪だった。目指す巣が無いのでしばらく右往左往していたが、どこかへ行ってしまった。一安心して、帰ろうとした時、第一の仕事である剪定がまだだったことに気づいた。

圃場へ戻り、大丈夫とは思いつつも恐る恐る袋を開封。中にはしっかり卵も産みつけてあった。

まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
内側におなじみの六角形部屋が
内側におなじみの六角形部屋が

小さいけど巣は巣である。金運を招くとも言われるから、ビニールハウスの中にでもお供えしとこうか。ささやかな金運かもしれないが。

後で落ち着いて調べ直して、コガタスズメバチの巣に間違いないようだった。ま、刺されないでよかった。

援軍の到来

さて、いよいよローズのつぼみが膨らんでくるようになると、ゾウムシとともにいやでも目にすることが多くなるのがアブラムシ。もうすぐ開花を迎えそうなつぼみにびっしりとたかられるとさすがにいい気分はしない。庭の持ち主のお客様も、姿が見えにくいゾウムシと違い、見えやすいので心配されることが多い。

アブラムシ

つぼみが少なければ直接手でつぶすのが確実だし、こまめに木酢などで予防するという手もあるにはあるが、大きなツルばらなどではそういうわけにもいかない。

幸い、いくつかのお庭では今年、強力な援軍がやってくるようになった。ひとつはナミテントウ。ツルばらの葉の間をごそごそと動き回り、あまりアブラムシを食べている様子を見ることは少ないが、卵を産んでくれれば幼虫は特に強力な助っ人である。

ナミテントウ
もう一つはヒラタアブ。これも幼虫は大食漢のようで、すでにつぼみの奥のほうへ頭(?)をつっこんでいるからお食事中なのかもしれない。

ヒラタアブ

専門家がやってきたので、しばらく我々は手を出さず、アブラムシについてはあとはお任せすることにした。我々の仕事は、庭の持ち主に援軍の到着を伝え、彼らのために、薬剤などまかれずにしばらくは様子を見てほしいとお願いすることであった。

嫌われる理由

当店が手入れしているお庭にはローズが最低でも一つ二つ植わっていることが多い。気温が急上昇して新芽やつぼみが成長し始める今は特にこまめに巡回が必要だ。

ここ数日、何件かのローズを見て回ったが、被害の差はあるものの、ほぼすべての庭でゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)の被害が・・・。毎年のことなのでそれほど驚かないし、よほど毎日チェックしないと防ぎきれないのもわかっている。

クロケシツブチョッキリ
新芽が見事にやられている

友人の中にはこまめに特製唐辛子入り木酢をこまめに散布して被害を抑えている人もいるが、十日や二週間に一度しかチェックができない我々には無理な話。ただ、つぼみをやられても、次の花を咲かせるエネルギーはまだ十分あるからあきらめる必要は無い。

クロケシツブチョッキリ

それにしても、これからという新芽やつぼみをピンポイントで狙ってくるのはほんとうに悔しい。そのうえ、捕まえようとするとひょいっと逃げるすばしこさ。ついでに小さいので見つけにくいことこの上無し。嫌われるのもよくわかる。でも、たくさんの種類を育てていると、選択して狙っているのがよくわかる。どういった基準で選ぶのかはわからないけど。

まあ、ゾウムシの被害もここしばらくがピーク。収まる頃にはそれぞれの庭で花が見られるだろう。