季節をひと月勘違いしそうになるぐらい暖かい3月。畑の零れ種から育ったコリアンダーも1株は何を思ったか、もうトウ立ちし始めてしまった。この頃の気温が高かったせいか、それとも冬の寒さが不十分だったせいだろうか。
さて、ネットで調べれば世界中あらゆる場所の情報が得られる時代だが、それでも自分の目や耳や肌で知ることとネット上で知ることでは重みがずいぶん違う。
昨年のことだが、見に行った映画について知人に話したら相当酷評していた。知人はもちろん見ていないのでネットでの評価を鵜呑みにしていたようだったが、自分で見たらとてもそういう感想にはならないのではと驚いたことがあった。ぜひ自分の目で観た上での感想を聞きたかった。
以前から疑問に思っていて、モヤモヤとしていたことに、
「ベトナムでは、やはり『ベトナムコリアンダー』が主に使われているのだろうか」
ということがあった。
いわゆる日本でハーブとして最初に紹介されたコリアンダーは、セリ科一年草のコリアンダー(パクチー)である。ところが、育てたことがある人はわかると思うが、気温が高くなると一気にトウ立ちして花芽をつけはじめ、使うべき葉は貧弱になってしまう。
もちろん、水耕栽培や、栽培の専門家ならでノウハウもあって技術や設備でクリアしているのかもしれないが、やはり暑さにも強いタデ科のベトナムコリアンダーが主流ではないだろうかと思わざるを得なかった。
そんな時、いつもお庭などでいろいろお世話になっている庭師のM氏が一月ほどベトナムに仕事で行くと聞き、ぜひ現地の状況を見てもらうようお願いした。奇しくも米朝首脳会談と重なる時期だったので、そのへんも現地からいろいろ教えてもらいたかったのだが、会談のハノイからはずいぶん離れたホーチミンなのであまり関係がなかったようだ。
さて、問題のコリアンダーとベトナムコリアンダーの使われ方だが、やはりタデ科のタイプのほうが主流でセリ科の方はほとんど見かけなかったとか。ひと月の間で料理に出てきたのは数回ほどのようだ。やはり、2月で気温が35度にもなる環境ではなかなか栽培は難しいのではなかろうか。ハノイならばまた状況も違っていたのかもしれないが。
さらに、同じベトナムコリアンダーでも、青軸のものと赤軸のものがあったとか。たくさん使われる農産物ならば香りや味などでいろいろなバリエーションのものが育てられるのも当たり前だが、そういうところをきちんと見てもらえるのも庭師で植物への造詣が深いM氏ならではで、しかるべき人に頼むことができてよかったと思う。
正確には「自分の」目ではないが、少なくとも信頼できる目を持った人を通して知ることができたことには満足できた。次はぜひ自分の眼と鼻と舌で感じてみたいものだ。