蕎麦と蜂

「うどん食べる?蕎麦にする?」
と聞かれたら、8対2ぐらいの割合で蕎麦を選ぶ。
秋になってお蕎麦屋さんの前に「新蕎麦」ののぼりが立つと、やはりウキウキしてくる。決して蕎麦通などではないんだけれど・・・。

私の好みとは関係ないが、苗を育てている土にも蕎麦殻を混ぜている。土を軽くしたり、水はけを良くし、微生物の住処としても有効のようだ。

ただ、蕎麦殻の中には、脱穀されずに残った蕎麦の実も混じっているようで、ときどきこんな風に芽を出してくることがある。
蕎麦の芽
時々、ハーブ用の土を購入いただいたお客様からも「なんか変わった芽が出てきた」というお問い合わせをいただくこともある。
蕎麦の花
蕎麦は成長が速いとはよく言ったもので、主のハーブをあっという間に追い越して小さくても花を咲かせてしまう。

蕎麦の芽

とはいえ、根はそれほど強くはないので、抜くのは簡単だ。小さい芽をこまめに集めれば一皿のサラダに加えるスプラウトがまかなえるかもしれない。

さて、そんな蕎麦だが、先日ちょっと気になる話を聞いた。製粉所の方から伺ったのだが、今年は蕎麦の実の入りが非常に良くないとのこと。蜂が少ないのが一因だそうで、そもそも北海道や東北の豪雨被害などもあり、決して豊作とは言えない状況らしい。特に地元や近県でそのような状態だとのこと。確かに先日も、どこかのブログかフェイスブックで、実入りの悪さで新蕎麦のイベントに影響があるようなことを目にした。そこでもミツバチの少なさが述べられていた。

そういえば、今年はミツバチに限らず、アシナガバチもあまり見ない夏だった。秋になると、アシナガバチは特に活動が活発になるのかよく見かけるようになり、時々ドキッとさせられるのだが、今年はまだ一度もないような・・・。一時的なことであれば良いのだが。

畑にも蜂のためにもうすこし蜜源植物を増やそうかなと考えたりしている。

そんなとき、店頭に、地元松江の養蜂家さんから蕎麦の蜂蜜が入荷した。

蕎麦の蜂蜜

普通の蜂蜜(左)と比べると色も濃厚だが、まず、口に近づけた時から強い香りが鼻に届く。口にすると、極めて個性的。何につけて楽しむと良いか迷うぐらいだ。飲み込んだ時には喉の奥で蕎麦の香りが広がりびっくり。

やはり蕎麦は喉で味わうものなのだ。

香ばしい秋

夏の終わり、そして秋の始まりを感じさせるのがクン炭を焼く匂いだ。

稲刈りが始まり、脱穀した籾殻が、田んぼに盛られ、燻すようにして炭にする。
ゆっくりと、ゆっくりと、時には何日もかけて炭になる間、香ばしい香りが辺りにただよう。

この香りが苦手だという人も中にはいるが、確かな秋の訪れを感じさせてくれる、ちょっぴり切なさを感じさせる香り。いつもこの香りを嗅ぐとホッとする。

さて、秋が来るとなぜか飲みたくなってくるのが浜茶である。
カワラケツメイというマメ科の植物で作られたお茶だ。この頃は焙じたものが多い。地域によって「ネム茶」とか、「まめ茶」などとも呼ばれているようだが、この辺りでは、「浜茶」と呼ばれている。以前、聞いた話ではお隣の鳥取県・弓ヶ浜のあたりでよく作られているから「浜茶」というとかいわないとか。利尿作用のある、日本古来のハーブティーである。

秋の気配を感じると、浜茶を買いに行くのがここ数年の習慣のようになっている。毎年買っていた店に行ったら、今年はパックのものしかなかった。ちょっと風情に欠けるが、パックも作業途中の休憩時間に飲むには手軽だ。

浜茶
お客様からいただいた、出西窯のマグで。香ばしさが引き立つ

浜茶もまた香ばしさが特徴である。

そういえば、秋の味覚のサンマを始め、焼き芋、栗、最近ご無沙汰でもう香りも忘れつつある松茸焼き・・・秋は香ばしさと深く関わりがあるのかもしれない。

こんな場所にはこのハーブ-スノードロップ

(スノードロップは、普通ハーブとして利用されることはありませんので、タイトルとは少しずれてしまうのですすが、ハーブと組み合わせる植物としての紹介です。また、ハーブ好きの方ならきっとスノードロップもお好きな方が多いでしょうから、参考になればと思います)

どこか他でも書いたように思うが、植物を育てているとセオリーどおりに行かないこともある、というよりも、そんなことがしょっちゅう起こる。

春先は花壇の色味に乏しい。ハーブならせいぜい冬から咲いているローズマリーが咲いているぐらい。もう少し暖かくなるとスイートバイオレットなども咲くのに・・・という時期は本当に寂しい限りだ。

まあ、そんな寂しさがあるからこそ、暖かくなって少しずつ花が咲くのが一層嬉しく感じられるのだが。

とはいえ、多くの人の目に留まる花壇ではそう言うわけに行かない。冬もそれなりに色合いが欲しい。

この花壇は、今まで何度か登場しているが、前後左右にまったく遮蔽物がなく、風通し日当りとも抜群。おまけに周りは道路と駐車場で夏はからっからに乾いてしまう花壇である。ハーブをいくつか育てたことがある方なら、「匍匐性のタイムやコモンセイジがご機嫌に育ち、ラベンダーも間延びしにくい」と言えばどんな環境かお分かりいただけるかもしれない。
スノードロップ
春先の花としてここにスノードロップを植えようなんて、スタッフが言い出した時には「ちょっと無謀かな?」とも思った。スノードロップと言えば、木漏れ日の下で楚々として咲くイメージを抱くことが多いだろう。早春、落葉に覆われた柔らかな土から白い花が姿を見せる・・・と言う感じがぴったりではないか。ところがここは、ザラザラの荒い砂で覆われた花壇。確かに球根なので、かなり幅広い環境に耐える力はある。しっかりした球根ならワンシーズン目に咲かないことはまずありえない。なので、一昨年前の秋に球根を初めて植えたとき、次の春に咲くことは全く心配しなかったし、事実、たくさん花を咲かせてくれた。

ところが球根は、とても強い種類だったり条件が良い場合は増えていくこともあるが、デリケートな種類や、場所に合わないと少しずつ減っていくことが多い。なので、次の秋(昨秋)にまた追加すれば良いかも・・・ぐらいに考えていた。ところが、昨年、ちょうど同じところに植わっているエキナセアを植えかえる時に、そこそこ球根が残っていたので驚いた。このまま咲くかどうか、取りあえず様子を見ようと、球根を追加することも見送った。しかし、まさかこれほどたくさん咲いてくれるとは・・・。

水はけが抜群なのは言うまでもない。周りにはレイタータイムがビッシリと育つぐらいである。花壇の高さは40cmほどもあり、おそらく夏の暑い時期も、地中はそれほど温度が上がらないのだろう。まして休眠していれば、外界の変化もそれほど感じないのかもしれない。

 

スノードロップ

ちなみに、もう十年以上前になるのだが、「スノードロップにふさわしい」庭に、球根を植えたことがある。塀に囲まれ、落葉樹やバラが茂り、涼しくしっとりとした庭の片隅だった。良質な腐葉土もたっぷりすき込み、丁寧に丁寧に植え付けた。

最初の一年こそ、そこそこ咲いたのだが、葉は妙に間延びするし、毎年毎年歯が抜けるように減っていき、いつしかいなくなってしまった。「ここはうまくいくはずなんだがなぁ・・・」と頭をひねったことは今でもおぼえている。お客様の庭での苦い経験は、「スノードロップは気難しい」との印象を私に植え付けてくれた。

しかし今回、拍子抜けするほど順調に育ち、いままでの印象もがらりと変わった。今年の秋はもう少し増やしてもいいかなと思っている。今からすでに、次の春が楽しみである。

ただ一つ難点なのは、山陰の曇りや雨の多い冬の天気。寒風吹きすさぶ曇天の下、冷たい風にただ一人で耐えているような姿は、健気であり、かわいそうにも思えるのである。でも、これだけはどうしようもないんだよなぁ・・・。

後を引き継ぐ

現在管理しているお庭のうち、無くなられたご主人が大切にしていたと言う庭が3つもある。

こういう庭の管理を引き継ぐ場合、最初の春は要注意である。思わぬところから球根が芽を出し始めるのだ。クロッカスやチューリップ、スイセンetc.・・・出て来てはじめて植えられているのに気づくことが多い

そんなお庭の一つで、今年もハナニラ(イフェイオン・食用の花ニラとは別)が咲き始めた。このお庭はローズが主体なので、葉だけが出ている時にはコンパニオンプランツとしてニラを植えておられたのだろうとばかり思っていた。翌春開花してようやく、何だ、ハナニラだったのかと気がつく始末。香りも良く似ているのだ。

ハナニラ

これぐらい香るので、何かしら防虫効果ももしかしたらあるのかもしれないが、とにかくものすごい勢力で広がる。時々は抑制しないと庭中がハナニラだらけになる恐れがあるぐらいだ。もしかしたらグラウンドカバー用として植えられたのだろうか・・・なんて推理しながらの庭仕事である。

秋の失敗、春の反省

昨日は各地で春一番が吹いたといわれるけれど、この辺りでは、「そう?」といった感じだった。確かに南風は少し強かったようだが、毎年、ビニールハウスが揺さぶられるような風で春一番を感じるので、それに比べればまだまだだったようだ。

まあ、それでも圃場のところどころで春の兆しが見つかるようになった。今日は、花壇の様子をなんとはなしに眺めていたら、あちゃー、昨秋植えたポットマリーゴールドの真下から球根の芽が!

スキラとポットマリーゴールド

ラベルがどこかへ行っていたせいか気がつかずにポットマリーゴールドを植えてしまったのだろう。確かここには・・・と頭をひねることしばし。葉の様子から花の様子はぼんやりと思い浮かぶのだが、名前が出て来ない。情けなや。

結局事務所に帰って、昔植えた球根のリストを検索して、ようやくScilla campanulata(S. hispanica)だと思い出した。しかし、ピンクかブルーかはいまもって不明。花が咲いたらしっかりとラベルをつけておかねば。

どうも球根類に対してはこういうミスが多い。性格的に向いていないのかなぁ。

しかし、この球根も植えっぱなしで、おそらく10年近くになるのではないかな?決して良い環境とはいえないはずなのに、徐々に増えつつあるようだ。よほど丈夫なのだろう。

さて、近接して育ってしまうことになった2つの種類、今後どうなるやら。