迷う余地がない

昨夜、強い雨が降った。気温もようやく落ち着きそうで、これからは晴れの日でも30度に届くか届かないかの予想となった。

夏の間ずっとビニールハウスに取り付けていた寒冷紗もようやく取り外せる。例年ならば、もっと緩やかに気温も下降するので、「そろそろ取り外そうか、来週まで待とうか」というように少し迷う期間があるのだが、今年はとにかく取り外せるようになったら早く取り外したいという状況なので迷う余地がない。ちなみに、昨年この作業をしたのは・・・と調べてみたら9月7日だった。ほぼ2週間遅れだ。

今朝は小雨もぱらつき、涼しいので取り外しにはなおさら良いタイミング。すぐに取り掛かる。

まずは一番下のビニールハウスから。今朝は風が通って涼しいので作業もスムーズに進む。あっという間に半分取り外せた。年によっては日当たりなども考慮して一部の寒冷紗だけ取り外すなど、徐々に行うことも多い。だが、日照時間も短くなったので今年は一気に取り外すことにした。

手前の部分は我々が作業を行うスペースなので、まだしばらくは陰にしておく。人間は弱いのだ。

30分ほどでとりあえず取り外しは完了。

大きいサイズの寒冷紗はまた後日天気が良い日に畳むとして、小さいサイズのものはきちんと畳んで袋に詰めて分類しておく。この作業を怠ると来年使う時に困ることになる。

いつもの年なら、暑くて一つのビニールハウスの取り外しで終わることも多いのだが、親木を育てているハウスの寒冷紗も外してしまった。一気に季節が進んだ気分になった。

増え続けるウエイティングリスト

涼しくなったらこの種まきを、あれも挿し木を・・・と思っているうちにウエイティングリストにはどんどん候補が積み上がっている。

気温が高すぎてなかなか種まきや挿木ができないものも多い。気温がある程度低くならないとうまく発芽発根しない種類や、挿し木の場合はそもそも挿し木にむいた体勢になっていないものもある。

月桂樹もその一つで、暑さで傷んでその後また伸び始めたのか、妙に柔らかい枝が勢いよく伸びている(最初は暑さで枯れているかと思ったほどだが)。こういう柔らかい枝は挿し木をしても、腐りやすくてうまく発根まで行った試しがない(やり方が悪いのかもしれないが)。

お盆明けぐらいからずっと見ているがいまだにあまり変化がない。気温もその頃から変化がないからだろうか。この夏の異常な暑さの継続がこういったところへ影響が出ているようだ。とはいえ、

来週には涼しくなるとの予想だが、すぐには挿し木に適した状態にはなってくれるとは思えない。まだしばらくはウエイティングリストは増えるばかりかもしれない。

寒冷紗が外せない

9月に入ったら寒冷紗を外すつもりでいたのだが、日中は35度が続出。日差しもまだまだ強い。日照時間は確実に短くなってきているし、親木はところどころ徒長気味、気温さえ平常に戻ったらすぐにでも外したいところだ。

そのうえ、我々人間の方はむしろ9月に入ってからの方が、きもちがはやってしまったのか、思わぬ暑さに戸惑い気味だ。スタッフにも体調を崩してしまった者がいる。ハーブたちもしんどい思いをしているのかもしれない。

水やりも、気が緩んだせいか、ところどころ水切れを起こしてしまったり。なかなか難しい。

あたらない天気予報を見てもまだ1週間は同じような気温。望まない気温だけはしっかり当たるのがくやしい。

ヤニ取りは気分転換に

気温が高いので、苗の成長も著しい。それも、小さい苗が大きくなるというよりは、大きい苗が更に大きくなる方の成長が目立つ。

苗もあまり大きくなりすぎると、形も悪くなるし、下の方の葉も枯れてきたり、見た目も悪くなる。背が高いと送料にも影響するし適宜コンパクトに仕立て直す必要がある。

そのため、他の季節にも増してこの時期は剪定作業が増える。

剪定作業をスムーズに行うためにはまずハサミがよく切れることなのだが、柔らかい枝を切ることが多いので、刃こぼれや研ぎが鈍って刃自体の切れが悪くなることはあまりない。むしろ刃にこびりつくヤニが刃のキレを悪くする。

刃にこびりついたヤニ

そのため、こまめなヤニの除去は大事な作業の一つとなる。いつも腰のツールにちいさな布を携えているので、作業の合間にこれでヤニを拭き取るようにしているが、作業に夢中になって忘れていることもしばしばだ。気がつくと刃にビッチリとヤニが付着していて布ではきちんと拭き取れない。

そこでヤニ取り作業を行う。このヤニ取りも昔からいろいろな方法を試行錯誤してきた。かつてはトクサで拭いてみたり、消しゴム状の携帯砥石でこすり取ったりもしていた。今は次のような感じに落ち着いている。

まずはヤニ取りスプレー。いろいろなものが各社から出ているが、どれもそれほど変わらないような感じだ。

このスプレーをかけて30秒ほど放置するとヤニが浮き上がってくるので布で拭き取る。これを2度ぐらい繰り返すとほぼヤニは取れる。

ヤニが浮き上がってくる

それでもたくさん残るようになったら、むしろきちんと砥石を使って刃を研ぐ。

ヤニがとれたら刃物油を刃とネジの裏に満遍なく行き届くように塗布する。

椿油と油壺

以前は椿油を油壺で塗っていたが、この頃はお手軽にスプレーでオリーブオイルを塗る。

食用オリーブオイルの残り。今はむしろ高級か?

オリーブオイルはアウトドア料理で余った残り。椿油のほうが良いとは思うが、頻繁に使うのでこれで十分だ。砥石できちんと研ぎ上げた時には椿油を使う。あまり違いがわからないが、まあ、儀式のようなもの(笑)。

この作業は、気分転換にも良い。刃も綺麗になって、気分一新、もう一仕事!という気分にさせてくれる。

黄色い葉っぱに騙される

農業では、いつ頃種子をまいて、いつ頃定植、収穫はいつ頃というように栽培計画をたてることがとても大事だ。

かつては栽培計画らしきものを作っていたこともあったが計画通りいったことはまずなかった。栽培する種類が半端なく多いうえに、種まきしてから発芽まで、挿木をしてから発根までの期間もそれぞれ異なる。そのうえ、季節やその年どしで発芽や発根にかかる日数も変わってくるので、いついつ頃に種子をまくと、何日後に発芽、更に何日したらポット上げなんていう計画をたててもほとんど役に立たない。10種類、いや、20種類ぐらいまでならなんとかコントロールできるかもしれないが。

なので、計画的な農業とはとてもいえない。乱暴な言い方をすれば、行き当たりばったり。その一言に尽きる。

ポット上げも行き当たりばったり。種子の発芽ならば目で見てわかりやすいので、芽が出てポット上げできそうならそうする。でも、挿し木の発根は、プラグをひっくり返すのが確実だが、いちいち裏返すのも面倒なので、大抵は地上部の様子をみて芽が動き始めたことで判断する。

もちろん、経験から、そろそろ発根しているだろうという予測はつくけれど、それにしてもラベルの日付が頼りとなる。

今日もふと見たレモンマートルの挿木に、「ん?」と違和感を感じて名札の日付を見てみたら3月の終わり、十分発根している頃だ。

もともと葉が黄色っぽいので、この夏前に挿木したものと見分けがつかなかった。プラグから出してみたら、しっかり発根していた。

しっかり発根

このまま見逃していたら、半年遅れもあったかもしれない。

レモンマートルの場合、成長にはある程度気温があった方が良いので、すぐにポット上げをすることにした。

気が付いてよかった。挿木したプラグも、作業順に並べてはいるのだが、つい見落としがちだ。スタッフには日々「観察が大事」と言っているのに、反省、反省。