11年目の香り

ハーブを初め、色々な植物を育てている圃場には、何年もその正体がはっきりしない株もたくさんある。成長もせず、花も咲かずとなるとなおさらこちらの関心も薄れ、つい目も手もかけなくなってしまう。それでも捨ててしまうわけには行かず、ズルズルと毎年植え替えたりしているのである。

そんな株の一つ、ガリカローズが今年花を咲かせた。記録を調べてみたら、種子を蒔いたのは98年の11月。11年目にしてようやくである。たいていローズの種子は種子を蒔いても発芽まで良くて半年、たいていは1年がかりである。確かこの種類も時間がかかり、発芽数も少なかったと思う。

ガリカローズ

問題はその後である。ポット上げしてから非常に成長が遅かった。何か問題があったのかも知れないにせよ、何度植え替えてもひょろひょろと細い枝が数本伸びるのみ。同じ原種でもドッグローズスイートブライアーローズはぐんぐん伸びるのに比べるとあまりにも貧弱であった。

そのため、ポットで過ごす期間が7,8年はあったのではないか。良く生き延びてきたものである。

また、ガリカといえば、思い浮かべるのはアポセカリローズ(Rosa gallica officinalis)である。ハーブの本でも良く取り上げられるオールドローズだ。あまりにも名高いこの種類に対してどうしても原種であるガリカへの関心は薄らいでしまう。とりあえず花を見てみようかという気分だったのである。第一、種子なので咲いたところで本物か?という疑惑はいつまでもつきまとう。

さて、2年ほど前?に大きな鉢に移し、そのまま忘れていた。いつの間にか蕾がつき、いつの間にか開花。まさにローズピンク。香りはといえば、確かにオールドローズを思わせる品のある深みの有る香り。ただし、株も小さいのか、園芸種のように周りに漂うほどではなかった。種子からなのでそこそこ個体の性質に幅があることも考えられる。

さて、今後この株をどうしようか。11年かけてここまで来たので、これからもゆっくり考えても良いかもね。

学習効果

お客様から今年はチュウレンジバチが多いと言う話を伺った。庭でたくさん飛び回っているとのこと。

確かに、先日庭の手入れにうかがったあるお客様の庭では、HTが十数本有るコーナーで既に幼虫を見つけた。毎年のことなのであまり驚かないし、被害が少ないうちならそれほど心配することも無い。

なので成虫についてあまり気にかけることもなく、どんな姿なのかおぼろげにしかとらえていなかった。実際、こういう場合図鑑やネットで見たところで自分のものにはなりにくい。

話をうかがったお客様の御主人がわざわざ成虫を捕まえて持ってきてくれた。一目瞭然。やはり昆虫は動いているところを見るのが一番だ。

その後、ビニールハウスの一角でチュウレンジバチが飛んでいるのを見つけた。やはり今年は多いのかも。普段も飛んでいるに違いないが今までは認識できていなかったのだろう。学習効果がでたようだ。

ミントは口に合わぬ。
ミントは口に合わぬ。

先のローズのお庭では油断していると大変なことになるのに、ビニールハウスのほうではさしたる被害も無い。たまにローズ系の枝に産卵した後を見ることはあっても幼虫が葉を食い荒らした形跡もない。天敵はアシナガバチだと言われているから、天敵の多いこの地には適していないのかも。

マヌカも硬くて嫌じゃ
マヌカも硬くて嫌じゃ

それとも、肥料たっぷりで育った美味しいローズの葉を探してきては見たものの、あるのはハーブと貧相な原種ローズばかり。食欲が湧かないのかも知れない。

Amazing!

今、周り中でモッコウバラが満開を迎えている。特に今年は調子が良く咲いているところが多いようだ。

モッコウバラ

今日メンテナンスで伺った、あるお庭のモッコウバラも見事に咲いていた。何度見ても小さな苗がこれほど育ったことに当たり前ながら驚いてしまう。うっそうと茂り、背面のブロック塀を見事に覆ってしまった。今年は花数も多く、重たそうに見えるぐらいだ。

白花モッコウバラ

隣にある白花のモッコウバラはさあ、これからといった感じ。少し時期をずらしてくれるのが嬉しい。葉色もより深いグリーンでしっとりした感じになる。

作業中なのについ感心して見入ってしまった。気を取り直して草取りからスタートである。

この庭ももともとはごく普通の日本庭園だったのでそれほど肥料分の無い土であった。しかし、その後オーナーの御希望もあり、いくつかのローズのために毎年しっかり肥料を入れた。当店特製のスペシャル微生物入り牛フン堆肥ミックスである。

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期せずして

人生は運命のいたずらによって大きく左右されることが多い。そんな人間の近くにいる植物たちも少なからず我々の気まぐれで運命が変わる。

コクテール?

このローズ、もともとはお客さんにいただいた切り花である。カクテル(コクテール)でないかと思われるけれど、詳しい品種は不明。2~3年前の初夏ふっと入ってきたお客様が、「これ、うちで咲いたからあげる」と、くれたのだ。

数日ディスプレイとして店頭を飾り、あまりに奇麗だったのか、花が終った後でスタッフに「挿し木でつけてみて?」と頼まれたのである。もともと一本の切り花である。店頭で何日も置いておいた、しかも花が咲いた直後の枝が発根するわけ無いと一度は断った。

挿し穂として何本もあるのならなんとか一本ぐらいは発根するかも知れない。でもたった一本で・・・。と思いつつもどうせ他の挿し木作業をする予定があったので合わせて適当に挿しておいた。

こういうのが案外うまく行ったりするからかなわない。いつの間にか根を伸ばし、ポット上げ、そのまま成長して大鉢に移植。その後も存在を忘れていたらこの春開花である。もともと強い種類だったのかも知れないけれど、当の本人(ローズ)も驚いていることだろう。

誰かの気まぐれがなければそのままごみ箱行きだったはずだ。この強運の持ち主、これからどんな運命を辿るのだろう。

2月の蕾

2月に入ってから暖かい日が続き、植物たちの動きも活発になってきた。今日も株の様子を見ていると、鉢植えの白花モッコウバラにもう蕾がついているのを見つけた。
モッコウバラ
ここ松江だと、地植えのモッコウバラならゴールデンウイーク頃開花する。ビニールハウスの中の鉢植えでも4月に入ってから開花することが多いが、2月のうちから蕾を見ることがあっただろうか?

春が早く来るのは嬉しいことには違いないが、もうしばらく待って欲しいという気持ちになってくる。

蕾の様子をみると順調なようで、今年もたくさん開花してくれそうだ。手入れがほとんど不要なバラであることはハーブと一緒に楽しむのには大きなメリットである。