暑い昼下がりには

夏休みを目前にしてもまだ梅雨が明けない。梅雨明けは待ち遠しいと同時に、厳しい暑さの中での作業が待っているので身が引き締まる思いがする。

さすがに真夏になると昼から3時ぐらいまで、ビニールハウスの中での仕事は危険を伴うので、なるべく室内でできる仕事に替える。伝票の整理や、原稿作り、調べものなどである。

以前から気になっていたちょっとしたことを調べたりするのもそんな時である。

Salvia属は非常に種類が多く、姿形、性質も様々である。それでも名前はたいていがサルビア・○○とか、△△セイジというのが大半だ。

そのなかで異彩を放つ名前のジュピターズディスタフ(JUPITER’S DISTAFF)。今年も先頃開花しはじめた。花も大きめでなかなか素敵なSalviaである。ところが、名前を聞いただけではいったいどんな植物なのか全くピンとこない。サルビアの仲間であることさえ推測しにくい。

ジュピターズディスタフ

ジュピターというのは神話で出てくるような名前だし、木星?のことだったっけ。ディスタフというのはなにやら糸巻き棒だと言うことらしい。

実際に調べてみるとあっけない理由だったりするのだが、結構深いテーマが隠されていたりするので、気まぐれで調べはじめるのは危険である。

このようなことを真夏の暑い盛り。店内の涼しい環境の中で調べるのである。さてどんな答えが出てくるのやら。

夏の優等生

カラミント・ネペトイデスが、非常に良い具合である。春先には可愛らしい球状をしていたのに、順調に枝葉を伸ばし、すでに満開に近くなっている。

カラミント・ネペトイデス

この方は本当に手がかからない。夏前に咲き出すと、秋かなり遅くまで、松江なら11月ぐらいまで花を楽しませてくれる。切り戻しさえしなくても良い。一株は一株のままで増えて困ることはないし、何せ暑さに強い。その癖、結構な日陰でもコンディションを崩すことがない。

もう十年近く前になるが、ある公共施設で数年間鉢植えのディスプレイを担当したことがある。風がびゅんびゅん通り、日差しはガンガン、植物にとってはかなり過酷なコンディションであった。その上オーナーの「夏も花は絶やさないように」とのお達し。なんとか面目を保たせてくれたのがこのカラミント・ネペトイデスとロシアンセイジだった。今でも感謝している。

そう言ったこともあってひいき目もあるかも知れないにせよ、間違いなく夏の優等生である。通信簿には「5」をつけてあげよう。

ど根性ナントカ

店頭のレンガ敷の隅っこに、いつの間にやらローズマリーとワイルドストロベリーの株が鎮座するようになった。

ローズマリーとストロベリー

ローズマリーは一つ上の段にある花壇からのこぼれ種、ワイルドストロベリーはランナーが伸びて子株が根付いたのだろう。ローズマリーは、昨冬、まだ本葉数枚といった感じだったのにいつの間にこんなに大きくなったのだろう。

あるお客様が、この様子を見て「ど根性ナントカね」と仰った。

アスファルトを割って成長を続ける大根やスイカはど根性と言えるだろう。ただ、このローズマリーやストロベリーはきっと快適なのだろうと思う。どうやらレンガの隙間に添って深く伸びた根は水はけも良いし、湿度も安定している。ロックガーデンのように暑さや寒さの影響も受けにくいようだ。下手な鉢植えよりも元気な感じである。

ストロベリーはさておき、ローズマリーはあまり大きくなっても・・・ど根性でレンガを割ったりされてはかなわないからね。

美の休息期間

梅雨も終ろうというのに、店頭脇の花壇ではオレガノ・プルケルムが元気だ。例年ならば雨に打たれて地面に這いつくばり、包葉も茶色に変色して見る影もないところだ。今年はまだ梅雨末期の豪雨にも見舞われていないせいもあるのだろう。咲きはじめてからだいぶ長くもっている。

オレガノ・プルケルム

こういう形状のため、なかなか普通の地植えでは良い感じに育ちにくい。それこそ雨の後など、泥が跳ねてせっかくの軽やかな風合いも台なしになる。

ここは膝丈の花壇から垂らすようにしているので泥が跳ねることも無い。または少し背丈のある鉢植えにしても良い感じになる。少しもったいないが、もう少し早めならドライフラワーも見事に乾いてくれる。なんせそもそもがカサカサなのだから。

まだしばらく目を楽しませてくれそうではあるが、花が終わり、地際まで剪定してしまうと、あまりぱっとしない。花壇の隅で来年まで静かにお暮らしになる。今年はしっかり咲いてくれたからしっかり休んでもらいたい。pulchellum(美しい)の名を保つには休息の期間も必要だから。

雨の日のユーカリ

雨の日のユーカリがしょげている。梅雨が終るのをじっと耐えているかのようだ。実はこの株は丈が6メートル近くはあるのに、先端の葉が私の目の前なのである。

ユーカリ・グニー

つまり、もうかなり横に倒れてしまっているのだ。その上雨で重たくなってなおさら下に垂れてしまった。もともとは種子から育てたユーカリ・グニーという種類である。寒さにも強く、葉の香りも爽やかだということで育てはじめ、隣地との境に植えてみた。最初は順調に育っていたが、2メートルを越えた有る冬、湿った雪の重みで根が持ち上がってしまった。

もともと乾燥した土地を原産とするユーカリのこと、山陰のような湿った土地では細かい根が張りにくいようで雪や大風によって倒れてしまうことが多い。移植も嫌うので、今更動かすわけにも行かず、そのままにしておいたのだが、粘り強くここまで育ってしまった。株元から新芽でもでれば切り戻してしまうという選択肢もあろう。しかし、放置状態のためか、新芽がでる素振りは見せない。

たまにユーカリの葉が欲しいと仰るお客様のためにそのまま育てているぐらいで、普段はなおさら気にかけられないかわいそうな株である。それでも雨の日は、雨粒が葉についてなかなか良い感じである。

ちなみにこの隣にやはり大きなユーカリ・グニーの実生株があるが、こちらはもっと丸い葉である。種子から育てたユーカリは結構育ちに幅が出てくるとは言え、誰も同じ種類だとは信じてくれない。