安定の不安定

昨日、11月3日、文化の日。松江ではかつてこの日に鼕行列(どうぎょうれつ)が行われていた。

ところが、11月にもなると突然雨が降りやすく、しぐれると結構寒くなる山陰の天気。観光的には望ましくないということで、数年前からは、10月に行われるようになった。

でも、個人的にはやはり少し寂しさを感じる中、鼕と笛の音が小雨交じりの街中に響くほうが冬を前にした松江にはぴったりとくるような気がする。
笛
ちなみに私の母方の祖父はこの鼕行列が大好きで、いわゆる鼕だらず(鼕行列バカ)と言われるレベルであったらしい。本人も笛の奏者として練り歩いていたようだが、結局その姿は一度も見ることがなかった。でも、何度か家で笛の音を聞いたことはあったような気がする。普段、特に趣味もなく、孫と遊ぶこともない祖父。可愛がられたおぼえもないが、この時期にはなぜかふと思い出す。少し前、私もなんとなく吹きたくなって笛(鼕行列の笛ではない)を購入したのも祖父の血がさせたのかもしれない。その後ほとんど練習できずに机の片隅に置きっぱなしだが・・・。

その11月3日の松江はやはり安定しない天気だった。早朝妙に晴れたかと思うと雨が降り出した。その後回復に向かい、午前中は結構晴れ間も見えたのだが、午後はまた曇天。気まぐれな山陰の秋から冬の空模様。これからは外での作業にいろいろ支障が出そうだが、天気が不安定なのがむしろ例年通り。安定した11月なのだ。

さて、今年の夏から秋はとにかく芋虫系、毛虫、幼虫系の被害に悩まされた。秋口から続いたビオラ、スミレへのツマグロヒョウモンの食害は未だなお見られるし、今年はお客様の庭に植えていたサワフタギという樹が5年目にして始めて毛虫の被害にあい、丸坊主になってしまった。

サワフタギ
サワフタギも大被害を受けた

店頭にいらしたお客様からも、アカシアがミノムシで覆いつつされたとのこと。何十年植えていて初めてだったそうだ。

もちろん、各地のお客様からもいろいろな被害について情報や相談をいただいた夏から秋だった。全国各地で不安定な天気が続いたのも原因かもしれない。

そうそう、畑に植えた自家用のパセリも一体何度アゲハの幼虫に食べられ続けているだろう。春以降、伸びては食べられ、伸びては食べられで一度も収穫できていない。アゲハのために育てているようなものだった。そろそろ収穫させてもらえると良いのだが。

ルーとアゲハの幼虫
11月4日、ルーの苗についていたアゲハの小さな幼虫(中央部)

また、例年のごとく、コガネムシの幼虫の被害も多かった。

店舗の向かいにあるお医者さんの花壇、3年ほど前に相談を受けてサツキの代わりにとラベンダーとローズマリーを植えた。

日当たり良い場所で、屋根の下で極端な雨もかからず、また手入れもよくされていたようで年ごとに大きくなり、毎年職員の方がラベンダーバンドルズを作っておられたようだ。

ところが今年の夏、なぜか調子が悪くなったという相談を受けた。見てみると妙に元気がない様子。蒸れか、はたまたコガネムシの幼虫か・・・といったところだったが、まだ芽が残っていたことと、暑さの残る夏の終わりであまり動かしたくなかったので、少し様子を見ることにした。

そもそもコガネムシの幼虫ならすぐ隣に植えているローズマリーも被害にあってなんらかの影響が出ていてもおかしくないがこちらは絶好調。ラベンダーも、今年の開花まではとても調子が良かったので、その後剪定しすぎたのかも・・・と心配されていたが、特にその影響もない様子だった。
ラベンダー被害
それから半月ほど経ったが、どうやら確実にダウンした模様。結局掘り上げることにした。

ラベンダー被害
案の定、細い根がすっかり食い荒らされていた。周りの土を掘ってみると、何匹かのコガネムシの幼虫が出てきたが、思ったより少ない。被害が大きい時にはもう一桁多い数がでてくるところだ。犯人(犯虫?)の大半はもう出て行ってしまった後なのか・・・。

しかも相変わらずとなりのローズマリーは調子が良いので、なおさら首を傾げてしまう。本当なら全部掘り上げてチェックしたいところだが、玄関脇の一番目立つ場所でそれもかなわない。

結局、新しい株を植えなおして今後の成長に期待することになった。寒くなると幼虫の被害もおさまるだろうが、春からはすこしこまめに様子を見た方が良さそうだ。

来年は安定した春夏の天気で健やかに育ち、不安定な秋を迎えてくれると良いのだが。

蕎麦と蜂

「うどん食べる?蕎麦にする?」
と聞かれたら、8対2ぐらいの割合で蕎麦を選ぶ。
秋になってお蕎麦屋さんの前に「新蕎麦」ののぼりが立つと、やはりウキウキしてくる。決して蕎麦通などではないんだけれど・・・。

私の好みとは関係ないが、苗を育てている土にも蕎麦殻を混ぜている。土を軽くしたり、水はけを良くし、微生物の住処としても有効のようだ。

ただ、蕎麦殻の中には、脱穀されずに残った蕎麦の実も混じっているようで、ときどきこんな風に芽を出してくることがある。
蕎麦の芽
時々、ハーブ用の土を購入いただいたお客様からも「なんか変わった芽が出てきた」というお問い合わせをいただくこともある。
蕎麦の花
蕎麦は成長が速いとはよく言ったもので、主のハーブをあっという間に追い越して小さくても花を咲かせてしまう。

蕎麦の芽

とはいえ、根はそれほど強くはないので、抜くのは簡単だ。小さい芽をこまめに集めれば一皿のサラダに加えるスプラウトがまかなえるかもしれない。

さて、そんな蕎麦だが、先日ちょっと気になる話を聞いた。製粉所の方から伺ったのだが、今年は蕎麦の実の入りが非常に良くないとのこと。蜂が少ないのが一因だそうで、そもそも北海道や東北の豪雨被害などもあり、決して豊作とは言えない状況らしい。特に地元や近県でそのような状態だとのこと。確かに先日も、どこかのブログかフェイスブックで、実入りの悪さで新蕎麦のイベントに影響があるようなことを目にした。そこでもミツバチの少なさが述べられていた。

そういえば、今年はミツバチに限らず、アシナガバチもあまり見ない夏だった。秋になると、アシナガバチは特に活動が活発になるのかよく見かけるようになり、時々ドキッとさせられるのだが、今年はまだ一度もないような・・・。一時的なことであれば良いのだが。

畑にも蜂のためにもうすこし蜜源植物を増やそうかなと考えたりしている。

そんなとき、店頭に、地元松江の養蜂家さんから蕎麦の蜂蜜が入荷した。

蕎麦の蜂蜜

普通の蜂蜜(左)と比べると色も濃厚だが、まず、口に近づけた時から強い香りが鼻に届く。口にすると、極めて個性的。何につけて楽しむと良いか迷うぐらいだ。飲み込んだ時には喉の奥で蕎麦の香りが広がりびっくり。

やはり蕎麦は喉で味わうものなのだ。

蜂の手も借りたい

今年は例年に比べて芋虫、毛虫など、幼虫によるハーブの食害が多い。

店頭のお客様からも、通販のお客様からも同様の被害報告を良くいただく。

もちろん、当店の苗にも影響は多い。
バジルの食害
発送前に、害虫が残っていないかチェックするのだが、昨日はなんともなかった苗が丸坊主になっていることもよくある。
ヨトウムシ
犯人はこいつ。結構大きなヨトウムシがバリバリとかじれば、小さな苗の葉などひとたまりもない。
ヨトウムシ
梱包前に見つけることができればまだいい。お食事中のまま箱に入ってしまうと、まさに駅弁を買って乗る長距離列車状態。揺られながら、ゆっくりと個室の中で楽しまれてしまう。

ヨトウムシ
アップルミントも丸坊主に・・・

昨年など、着いた時にはバジルが丸坊主という例もあった。

今年は、そこまでではないにせよ、すでに今月に入って2件も大きなヨトウムシが一緒に旅立ってしまったようだ。スタッフも注意しているのだが、その辺りは上手に隠れるのだろう。無賃乗車はやめてもらいたいものだ。

発送前以前に、圃場で栽培している時は苗もなおさら小さいので被害は大きい。ポット上げして間もないバジルなどをかじられると朝から落胆の度合いも激しい。

ただ、相手は数知れず。我々スタッフだけではとても対策は追いつかない。

そこで今年は、助っ人の手を借りることに。

ビニールハウスの中は、雨もかからず、風も防ぐので、アシナガバチが良く巣を作る。極端に近づいたり、刺激を与えなければ、襲ってくることは稀なので、我々があまり通らないところは巣を作っても放っておくことが多い。だが、普段よく使う場所などに作ろうとした場合は、小さいうちに取り除く。特に女王蜂一匹の頃は、一人でお出かけしている間に「よそでお願いしまーす」と、取り除けば全く問題ない。

アシナガバチ

今年も、種子や挿し木の管理をしているビニールハウスの中央部にアシナガバチが巣を作った。例年ならばよそへ移動してもらう場所なのだが、今年は危険を承知で残しておいた。彼らが少しでも芋虫や毛虫の類を捕食してくれることを願ってのことだ。
アシナガバチと肉団子

早速、口に芋虫の肉団子を咥えている一匹もいる。幼虫の餌にするようなので、巣が大きくなるにつれたくさんの芋虫を捕ってくれるだろう。もちろん、巣が大きくなるにつれ、我々の危険も増すのだが・・・
注意

ルーペとアブラムシ

春になって、生き物たちを目にすることが多くなってきた。先日も、久しぶりの快晴の日、ゴソゴソと歩き回るてんとう虫を見つけた。春だなぁ・・・。

さて、てんとう虫が動き回るということは、当然餌になるアブラムシも活躍し始めている。

この時期、発送時に一番気をつけているのがアブラムシのチェックである。

アブラムシのチェック
ご注文いただいた苗をビニールハウスで準備する時にまずチェックしてアブラムシを取り除くのだが、それでも葉の裏や茎の付け根などに隠れているものもいる。

そこで、発送時に最終のチェックをしてから箱に入れる。

慣れてくると、おおよそどの種類のハーブのどんな場所によくいるかがわかってくるので、そう難しいことはないのだが、昨年あたりから新たな問題がでてきた。

現在、発送作業をするすべてのスタッフが40代以上。皆、多かれ少なかれ老眼が心配なお年頃になってきたのだ。

明るい場所へ苗を持って行ったり、メガネを外したりと作業がスムーズに進みにくい。

とりあえず作業台にルーペでも置いておこうか、と、ホームセンターへルーペを見に行ったのだが、適当なのが見つからなかった。

ネットで探してみるとフレキシブルアームが付いたルーペが結構見つかった。そのなかから、作業台の脇に固定できるタイプのものを購入することに。

ルーペ

昔カメラを少しいじっていた頃によく目にしていた「ケンコー」というブランド名も決め手だった。

実際に使ってみるとなかなか良さそうだ。レンズの付け根にLEDが付いているので逆光でも比較的見やすいし、いままでに比べると、2倍ぐらい見つける精度が高まりそうだ。

ルーペ

それでも全ては取りきれないとはおもうが・・・。アブラムシとのたたかいは、半袖になりたくなるぐらいまで、まだしばらく続きそうだ。

夕方の天気予報

ビニールハウスの横には、ビニールを開閉するための装置がある。これを回して、側面のビニールを開けたり閉めたりして換気する。
ビニールハウスの開閉
閉めっぱなしだと冬でもそこそこ内部の気温が上がって、苗は成長するのだが、その代わり、病気や害虫の悩みは増える。

なので、冬でもできる限り開けるようにしている。

とはいっても、それは昼間だけで、さすがに夜は閉める。朝開けて、帰る時に閉めるという、わかりやすいパターンだ。

ところがこの冬はちょっと状況が違ってきた。

昨秋から、例年になく気温が高めの日が続いている。圃場にあるアップルミントの親木、例年ならばもっと葉が硬く、黄色味がかって、地面に張り付くように冬を耐えている。
アブラムシとアップルミント
ところが今年は青々とした葉がどんどん上に伸びている。まあ、それはいいのだが、先日、この時期にはあまり見なかったアブラムシが結構見つかってびっくりした。暖かさで、普段の年なら葉の隙間で目立たずにじっと冬を耐えているはずのアブラムシが、春先のような様子を見せている。

そんなこんなで、冬なのに育苗ハウスの開閉も気温次第でということになった。こんなことは初めてである。

夜でも気温が高めの時は開けっ放しにし、気温が極端に下がりそうな時だけ閉める。そのため、夕方の天気予報のチェックが欠かせないようになった。

明日から1週間ほどは最低気温が零度前後になりそうな感じ。久しぶりに天気予報のチェックをしなくて済むかもしれない。

アブラムシたちも少しおとなしくしてもらえるといいのだが。