予想外の出来事

お庭の仕事は毎回のように予想外の出来事に遭遇する。

現場についてみたらとんでもなく木々の枝が茂っていたとか、草が半端じゃないほど伸びていたとか、病害虫が発生していたとか、予報では晴れだったのに突然大雨が降り出したとか。まあ、最後は仕方が無いけど、仕事が予定通りに進むことは稀な方だ。でも、何年も続けていると、大抵のことには冷静に対応できるようになる。

さて、今日伺ったお庭。おばあさんのお一人暮らしのお家なのだが、昨日お庭の手入れのご希望をいただいた。梅の枝が一気に伸びたので少し剪定してほしいとのことだった。「あ、それとついでに・・・」という程度だったのだが、軒下に蜂が小さな巣を作っていて心配なので見てほしいとの希望もいただいた。

今日はちょっと忙しかったけれど、それほど時間もかからないだろうと昼前に出かけることにした。蜂の巣も「おちょこみたいなのが付いています」と仰っていたので、おそらく例のアシナガバチが巣を作りかけてるのだろうと思い、特に何も準備せずに出かけた。勝手口のそばだというし、足が少しお悪いおばあさんでもあるので巣は取るしか無いけど、剪定のついでぐらいに思っていた。おばあさんにも、「ええ、簡単なもんです、すぐ終りますから」と気軽に答えておいた。

現場へ着き、「ええ、ここなのよ」と指差された先を見てビックリ。

コガタスズメバチの巣
おちょこじゃなくて徳利ではないか。えーっと、これはもちろんアシナガバチじゃないよね、確かスズメバチの、なんだったっけ・・・。もう、気が動転して名前も正確に思い出せない。

ただ、幸いに、まだ巣もできたてのようである。しばらく観察していたが、蜂はまだいないようだ。おばあさんは家の中に避難してもらい、自分もいつでも逃げ出せる体勢をとって、軽くつついてみる。どうやらお出かけのようで反応がない。今がチャンスとばかり、袋をかぶせ、一気に口を閉じる。

脚立から下りたところでおそらく女王蜂だろう、巣へ戻ってきた。危機一髪だった。目指す巣が無いのでしばらく右往左往していたが、どこかへ行ってしまった。一安心して、帰ろうとした時、第一の仕事である剪定がまだだったことに気づいた。

圃場へ戻り、大丈夫とは思いつつも恐る恐る袋を開封。中にはしっかり卵も産みつけてあった。

まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
内側におなじみの六角形部屋が
内側におなじみの六角形部屋が

小さいけど巣は巣である。金運を招くとも言われるから、ビニールハウスの中にでもお供えしとこうか。ささやかな金運かもしれないが。

後で落ち着いて調べ直して、コガタスズメバチの巣に間違いないようだった。ま、刺されないでよかった。

援軍の到来

さて、いよいよローズのつぼみが膨らんでくるようになると、ゾウムシとともにいやでも目にすることが多くなるのがアブラムシ。もうすぐ開花を迎えそうなつぼみにびっしりとたかられるとさすがにいい気分はしない。庭の持ち主のお客様も、姿が見えにくいゾウムシと違い、見えやすいので心配されることが多い。

アブラムシ

つぼみが少なければ直接手でつぶすのが確実だし、こまめに木酢などで予防するという手もあるにはあるが、大きなツルばらなどではそういうわけにもいかない。

幸い、いくつかのお庭では今年、強力な援軍がやってくるようになった。ひとつはナミテントウ。ツルばらの葉の間をごそごそと動き回り、あまりアブラムシを食べている様子を見ることは少ないが、卵を産んでくれれば幼虫は特に強力な助っ人である。

ナミテントウ
もう一つはヒラタアブ。これも幼虫は大食漢のようで、すでにつぼみの奥のほうへ頭(?)をつっこんでいるからお食事中なのかもしれない。

ヒラタアブ

専門家がやってきたので、しばらく我々は手を出さず、アブラムシについてはあとはお任せすることにした。我々の仕事は、庭の持ち主に援軍の到着を伝え、彼らのために、薬剤などまかれずにしばらくは様子を見てほしいとお願いすることであった。

嫌われる理由

当店が手入れしているお庭にはローズが最低でも一つ二つ植わっていることが多い。気温が急上昇して新芽やつぼみが成長し始める今は特にこまめに巡回が必要だ。

ここ数日、何件かのローズを見て回ったが、被害の差はあるものの、ほぼすべての庭でゾウムシ(クロケシツブチョッキリ)の被害が・・・。毎年のことなのでそれほど驚かないし、よほど毎日チェックしないと防ぎきれないのもわかっている。

クロケシツブチョッキリ
新芽が見事にやられている

友人の中にはこまめに特製唐辛子入り木酢をこまめに散布して被害を抑えている人もいるが、十日や二週間に一度しかチェックができない我々には無理な話。ただ、つぼみをやられても、次の花を咲かせるエネルギーはまだ十分あるからあきらめる必要は無い。

クロケシツブチョッキリ

それにしても、これからという新芽やつぼみをピンポイントで狙ってくるのはほんとうに悔しい。そのうえ、捕まえようとするとひょいっと逃げるすばしこさ。ついでに小さいので見つけにくいことこの上無し。嫌われるのもよくわかる。でも、たくさんの種類を育てていると、選択して狙っているのがよくわかる。どういった基準で選ぶのかはわからないけど。

まあ、ゾウムシの被害もここしばらくがピーク。収まる頃にはそれぞれの庭で花が見られるだろう。

蜂のお気に入り

昨日、開花中のカーネーションの中に一生懸命に潜り込んでいる蜂らしきものがいた。柔らかい花びらの奥に頭を突っ込んだまま、
「もしかして死んでるのかな?」
と思うぐらいピクリともしない。

ニッポンヒゲナガハナバチ

蜜を探しに来て昼寝でもしてるのかもと、そっとしておいた(だとしたらさぞ気持ちがよいことだろう)。下手に手を出して痛いめに会うのも嫌だしね。

翌朝、やはり同じ花の上でまた再会。よほどこの花が気に入ったようだ。時々目にする、触角がとても長い蜂らしき昆虫。触角が立派なだけで、なにか強そうな感じがする。朝でまだ気温が低いせいか、花の上をごそごそするばかり。潜り込む気配はなかった。

ニッポンヒゲナガハナバチ

後で調べてみるとニッポンヒゲナガハナバチという種類だった。

友人が、ビーガーデン(蜜蜂の蜜源となる花を集めたお庭)を作ったという話を聞いた。レッサーカラミントが蜜蜂は特にお気に入りだということだが、カーネーションも植えてあるのだろうか。

無事誕生

昨秋、とあるお茶畑で番茶を摘む手伝いをしていた時のこと。お茶の木をよく見ると所々にカマキリの卵鞘が産みつけられているのに気がついた。

もちろん、収穫したお茶の葉にも卵鞘が混ざってはいけないので後で選り分けられるのだが、そのまま捨てられてしまうのはもったいないと思い、集めて持ち帰った。もちろん、ビニールハウスで孵化させようと言うもくろみであった。カマキリは大きくなればチョウなどの大きな昆虫を補食するが、小さいうちは小さい昆虫を食べる。アブラムシ等もそのなかに含まれるということらしい。

春先に一番悩まされるのがアブラムシなので、カマキリ君にお任せしてみようと言うわけだ。テントウ虫の親子の活躍はまだしばらく先になりそうだし。

ただ、問題は卵鞘の管理。自然界ならば雨や雪、風にもさらされ、氷点下にもなるだろう。ビニールハウスの中で、冬暖かくなったり寒くなったりを繰り返したり、雨もあまり当らない環境で無事春を迎えられるかは心配だった(もともとビニールハウスのなかに産みつけられたものは問題なく孵化したことがある)。持ち帰り、とりあえず目の届きやすい、ホワイトセイジグレープセンテッドセイジの大鉢に枝のまま差しておいた。

その後お茶の木から折り取った枝は徐々に枯れてくるし、卵鞘が落ちてしまわないか心配していたが、今日、ふと見ると孵化し始めている。

カマキリの孵化
卵鞘から出る時にまず脱皮をするらしい。皮が残っている。

今のところ、3つほどの卵鞘から幼虫が出て来て動き始めていた。気が早いヤツはホワイトセイジの葉の間をごそごそ。ビニールハウスの中のホワイトセイジも春はアブラムシがつきやすいのでちょうど良い。

ホワイトセイジの葉の上でにらめっこ
ホワイトセイジの葉の上でにらめっこ

さて、この春アブラムシの害が少しでも減ってくれるのか、ちょっと楽しみである。