優先順位

春を思わせるような日が時々現れるようになるとハーブたちの色も鮮やかさを増してくる。気の早いものはゆっくりながらも成長し始めてくる。とは言え、日照量がまだ充分ではないので種類によってはひょろひょろと伸びやすくなるものもある。

枝分かれを促進し、株の形を整えるために、そんな苗を見つけては軽く剪定を掛けている。また、木質した枝から新芽が伸びた苗に切り戻しを行なうのも形の良い苗を育てるのに大切だ。

ペパーミントゼラニウム

このチョコレートペパーミントゼラニウムは昨年挿し木して、秋にポット上げしたものである。結構木質化した枝の下のほうから葉が現れ始めたので少し切り戻してやる必要があるのだが、ご覧のようにカマキリの卵が・・・。伸びようとしている葉もなんだか窮屈そうである。

この場合、ゼラニウムの成長と、カマキリの卵、どちらを優先するかと言えば、カマキリの卵の方である。前に、同じようなシチュエーションに遭遇したことがあった。その時は枝を剪定して、「ここなら問題ないだろう」と思われる場所に置いておいたのに孵化しなかった。乾燥しすぎたり、濡れすぎるのは良くないようで、時々潅水する苗にひっついていると言うのが適度なのかも知れない。

と言うわけでこの苗はカマキリが孵化するまでしばらくこのまま。今年もたくさん孵化してもらいたいものだ。

危険な密航

朝、圃場にやってきたスタッフの車になにか付いていた。良く見るとカマキリが一匹。一体どこからついてきたのやら。彼の自宅はそれほど遠くは無いのでもしかしたら家からついてきたのかも。と言う話になった。つるつるすべる車体にしがみつくのは大変だっただろう。
「洗車してないから、案外つかまりやすかったかも」
とは車の所有者の談。

カマキリ

次の世代を残すために、少しでもエサが多そうなところに来ようとしたのだろうか。その後、しばらくするといつの間にかどこかへ行ってしまったようだ。

以前、一人のお客様に聞いた話である。
隣町に車で出かけた時のこと。目的地について車から降りると、何やら下のほうでニャーニャーと鳴き声がする。野良猫でもいるのかと思いきや、そこにいたのは自分の飼い猫。どうやら車の下部にしがみついたまま家からここまでやって来てしまったらしい。5〜6キロはあるだろうに、良く振り落とされたり、中に巻き込まれたりしなかったとびっくりしたということである。

必死でしがみついている時の猫の顔を想像すると可笑しいやら、ホッとするやらだったそうだ。

このカマキリも必死の良い旅を終えて今ごろホッとしていることだろう。

今年もよろしく

昨日、水やりをしていたら生まれたばかりのカマキリを見つけた。今日、あらためて定番の場所へ行くと、いたいた。なぜかラベンダーの親木のところでは良く見つかるのである。ラベンダーの新芽を背景にして見つけやすい色合いなのか、それともラベンダーの周りが餌が豊富なのか分からない。

カマキリ

小さな手足を動かしてラベンダーの新芽の周りを上へ下へと動き回っている。巨大な生物が現れたので驚いているのだろう。

カマキリ

カマキリは周りの小動物の中でもかなり好感度が高い。害虫も捕食してくれるし、園芸の邪魔にもならない。わりとビニールハウスの中に居着いてくれるのも嬉しい。害虫を食べることでは、クモもポイント高いのだが、張られた巣が何かと邪魔になることとが多いし、体にまとわりつかれた時はかなり不快なのがマイナスポイントなのである。

ごくたまに、今の時期、卵鞘から一気に飛び出すカマキリの幼虫の群れを見ることがある。何百匹もの小さな命が思い思いの方向へ進んでいく姿は感動的である(ちょっと気持ち悪いけど)。でも、そのうち、大きくなるまで生き残れるのは僅か数匹だという。昆虫の仲間ではかなり強いランクのように思えるが、自然界で生き残るというのはどんな種類でも厳しいものなのだ。

今年もしっかり活躍してもらいたい。だから秋から冬にカマキリの卵鞘を見つけると、剪定したいハーブについていてもそのままそっとしておくのである。今年もよろしく。