食わず嫌いと適材適所

新しいもの(具体的には電動草刈機だが)を使い始めたことがきっかけになって、いままで使わなかったものにも目が行くようになった。

草刈り機の草を刈る部品には、金属製の草刈り刃と、ナイロンコードがある。いままでは草刈り刃ばかりを使っていた。

ナイロンコードも今はだいぶ市民権を得た感じがするが、出た当初は「細かい砂や葉のクズばかり飛んできて使い物にはならない」という印象だった。

それに、草をコードが切っていく際のバリバリという音も耳障りだった。(金属の刃が石に当たる「チューン」という音もずいぶん耳障りだが)。

今年、電動草刈機導入でエンジンの音が気になっていた女性スタッフも草刈りができるようになったが、やはり金属の刃を使うことには若干恐怖心があるようだ。

今回、草刈機が2台になったこともあり、エンジンの草刈機には金属刃を使い、電動にはナイロンコードという選択肢が可能となった。

そこで、ホームセンターに行ったついでにコーナーを冷やかしてみた。

普段意識していないと、わからないものだ。ナイロンコードタイプだけでもいろいろな種類が並んでいた。つい目移りするが、ごくシンプルなタイプが千円台で売られている。数千円はするものかと思っていたので、気軽に購入。ダメ元でも構わない。

 

草刈りナイロンコード
草刈りナイロンコード

ところが使ってみたらこれがなかなか良い。30分や1時間使ってもコードが使えないほど短くなることもない。

しかも、いままで金属刃では非常に難儀していたビニールハウスの裾ギリギリの草を刈るときに抜群の威力を発揮した。

草刈りがしにくいハウスとハウスの間
草刈りがしにくいハウスとハウスの間

ビニールハウスの裾近くには、ビニールはもちろんだが、ビニールを上から押さえる「マイカ線(地域によっては別の呼び方もあるかもしれない)」、マイカ線を張るためのパイプ、パイプを固定するためのアンカーが設置されている。これらが金属刃と非常に相性が悪い。アンカーと刃が当たるとものすごい衝撃で、ときには刃も欠ける。マイカ線も刃に絡むとうんざりするほど厄介だ。しかもそれらが雑草に隠されているところを刈っていくわけなので、慎重に作業していても10メートルに一度ぐらいは引っかかったりする。

金属刃ではとても面倒くさいハウスの地際
金属刃ではとても面倒くさいハウスの地際

なのでこのビニールハウス際の草刈りは、あまり疲れている時や、暑さがひどい時などには避けたい作業だ。

そういったストレスが、ナイロンコードではほぼ皆無。なぜ早く使わなかったのだろう。

もちろん、障害物の少ない、広々としたところや草でも成長して木質化したような枝があるような場所では金属の刃が断然有利だ。適材適所なので上手に使い分けると作業も早い。

女性スタッフにも好評
女性スタッフにも好評

金属の鋭い刃がないということで女性陣にはやはり好評だった。だから安全かと油断するのはもってのほかだが、怖がらずに使ってもらえるのは助かる。

知らず知らず、食わず嫌いの傾向が強くなっていたのかもしれない。もっと積極的に新しいものにも関心を示すようにしたいものだ。

赤い結界

普段は目立たないのだが、お彼岸から10月初め、ビニールハウスの横にある畑に赤い四角の枠が現れる。

彼岸花である。

もう10年近く前になるだろうか、この場所はラベンダーの親木を集めて育てていた。

しかし、とにかくモグラの被害が酷かった。ラベンダーの根を直接食べるわけではないようだが、穴がたくさんあき、根が持ち上がってしまってどんどん傷むことに悩まされ続けていた。

そこで物は試しと、彼岸花の球根をこのスペースを囲むように植え付けてみたのである。

鼻のよいモグラは彼岸花の毒性も感じるのだろうか、結果、翌年からモグラの穴を見つけることがほぼなくなった。

モグラ避けとして「これはいい」と喜んだのだのも束の間、天敵のモグラがいなくなったことで、コガネムシが大発生。ラベンダーの根を大喜びで食べてしまった。モグラがいたころよりもひどい状況になってしまったのである。

仕方がなく、今はラベンダーのあとに、申し訳程度にいろいろ植えて、少々ねが食べられても残るようなものを育てているという感じだ。

彼岸花は今年も元気に咲いている。スタッフが時々膝の痛みや肩こり対策に球根を使うぐらいなので、減るどころか増える一方。せっかくなので、もう少し嵩上げして土の流出防止にどれだけ使えるか試してみようかな・・・なんて考えている。

ほんの数日で

先日のブログでもうすぐするとツマグロヒョウモンが・・・と書いていたら、一気に被害がではじめた。

「今年はちょっと遅めかな?」と思っていたのだが、秋を感じさせるような天気になったら急に目立ち始めた。暑い間は動かないよう我慢していたのかもしれない。

かじられたニオイスミレの葉に隠れているのは・・・

今まで割と調子良かったスイートバイオレットだったのに、急に齧られた後が目立つようになったのだ。

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモンは上手に隠れているので、そっと葉を裏返してみると、結構大きく育っているのがあちらにもこちらにも見つかる。

見た目によらず毒はないので安心

涼しくなって「食欲の秋」となり、大食いして急に成長するのだろうか。

まだ小さい苗は一気に被害を

少しだけでも、「今年はあまり被害がないかも」と思ったことを後悔した。

さて、スタッフと「今年は妙に遅くない・・・?」と話していたヒガンバナも、今日、畑の東側、いつもまとめて咲く場所を見てみたら、花茎が一気に立ち上がっていた。

彼岸花。5日ほどで一気に伸びた

この場所は、先日の日曜日草刈りした場所である。その時かなり地際で刈り込んでいたし、もちろんその時も気が付かなかったので、およそ5日ほどでこれほど伸びたようだ。こちらもツマグロヒョウモンと同じく、涼しくなるのを待ちかねて・・・という様子だった。

我々も、涼しくなるのを待ちかねていたので、遅れていた秋の作業に本腰を入れねば。

好き嫌い

植物を育て始めた頃は、病気や害虫が発生すると、とても焦って恐れたものだ。初心者の時には原因もわからず、害虫の種類もよくわかっていないので仕方がないのだが。

それが長年育てることで少しずつでも病気や害虫のことがわかるようになってきてあまり慌てなくなる。「そろそろ出てくるかな」という予想も結構当たる。当たらない夏の天気予報よりも確率は高いと思う。

それでも、油断していると思わぬ被害を受けることがある。

今年の夏はあまりに気温が高く、日射も強かったので、葉が柔らかくてすぐに乾いてしまうフルーツセイジを日陰に置いていた。暑さ自体には相当強いので、少々水が切れようと日向に置いておけばよかったのだが、例年よりも葉が柔らかく育ってしまったのだろう。気がつくと一気にベニフキノメイガの幼虫の餌食になっていた。

ベニフキノメイガの幼虫は結構すばしっこいし、糸の中に隠れているので、丁寧に取り除くのは結構面倒だが仕方がない。

でもこれが、初心者の頃だったら手前に置いてあるスイートバイオレットの苗の心配もしてしまったことだろう。「これにも移ってしまうんじゃないか」と、不安になったに違いない。

だが幸いに、ベニフキノメイガはシソ科専門。隣がローズマリーやタイムなら危ないが、スミレはお好みではない。隣にあってもまったくOKだ。そのかわり、もう少ししたら必ずと言ってもいいほど現れるツマグロヒョウモンの幼虫の出現に目を光らせる必要はある。

また、この時期よく見かけるのがスズメガの幼虫(ベニスズメ?)。例年は、ビニールハウスの周囲に生えるヤブガラシによく付いていて草取りをしている時にびっくりすることがあるのだが、今年は日陰を作ろうと企んでいるブドウの葉にもしっかりつき始めた。

ここで育てているハーブにはブドウの仲間はないので、気にする必要はないのだが、このブドウは来年に向けてしっかり株を充実させたいから退去してもらう。

とりあえず外のヤブガラシに移動してもらった。ヤブガラシならいくら食べてもらっても構わない。というか、食べ尽くしてもらうと助かるぐらいだ。

ラベンダーに絡みつくヤブガラシ。蒸れに弱いラベンダーにとってはあまりよくない

ヤブガラシに移動して、しばらく観察していたが、あまりお気に召さない様子だ。

柑橘の葉を食べるアゲハの幼虫も、柑橘の種類が違うと嫌がると聞く。この辺も好き嫌いやこだわりがあるのだろうか。それとも食草自体が違う別の種類だろうか。昆虫は難しい。

目にもさやかに

秋きぬと目にはさやかに見えねども・・・の和歌も、詠まれた時代には、何月ぐらいのことだったのだろうと思う。

案外8月の半ばぐらいだったのかもしれない。

今のような気候なら、ひと月ぐらいは遅くならないとこんな歌を詠む気にはとてもなれないだろう。

自分が毎年秋を感じるタイミングは風ではなく、収穫の終わった田んぼから籾殻を焼く香りがする頃だ。

ところが今年はまだ一度も香ってこない。

圃場の近所でも、作付けが毎年のように減っていき、遠目でしか稲が育つ姿を見る事ができない。

この、籾殻を焼いてくん炭を作る香りは苦手な人も多いようだが、自分にとっては夏を乗り越えて穏やかな秋を迎える事ができたとしみじみ感じる香りだ。

秋遅くなって、本業が一段落したら譲ってもらった籾殻を使ってくん炭も作るには作るのだが、早くとも11月。まだまだ先。

くん炭
これは昨冬製作の籾殻くん炭

香りを楽しむだけのために今からくん炭作りをするわけにもいくまい。

さて、ちょうどこの時期、ブルーミストフラワーも涼しげな色の花を咲かせる。

ブルーミストフラワー

秋の涼しい風が吹くころに毎年咲き始めるのので、「目にもさやかに」秋を感じさせてくれる。しかも遠目で見ると、ふわふわとした花という感じだけの印象だが、近づいてみるとその繊細さに少し「おどろかれぬる」なのである。

ところが花を咲かせて寒くなると、急にシワシワと葉が枯れていき、完全に地上部がなくなってしまう。

あまりにもあっさりしているので、本当に枯れてしまったと勘違いするぐらいだ。

でも心配は無用。翌年にはしっかり復活してくれる。

籾殻を焼く香りも、また復活してはくれないだろうか。