こぼれダネはどこに?

こぼれダネで増えていくハーブは多い。とはいえ、そのハーブにとって条件が良い場所であればであり、なんでもというわけでもない。

割とよくある例として、ボリジはこぼれダネでよく発芽するのに、カモミールはしない、またはその逆も多い。全てがというわけではないようだが、わりとねっとりした畑のようなところではボリジのこぼれダネがよく発芽するようだし、さらっとした砂質の畑や花壇ではカモミールがよく芽生えるようだ。

当店の畑は、さらっとした方の土だと思うが、なんせ雑草が多く極小のカモミールの発芽など発見するのがほぼ無理だ。春になってかなり大きくなってから「なんとこんなところに」という感じで見つかる。しかも決して数は多くない。おそらく昆虫などに横取りされる種子も多いのだろう。

そんななか、確実にこぼれダネが見つかるスポットがある。

それが、売れ残った前シーズンのジャーマンカモミールのポットのなかである。意図的に花を残して種子を落としてもらうようにしているのだが、夏を超えた頃からぽつぽつと発芽を始める。そのため、普段ならすぐに片付けてしまうポットだが、数ヶ月放っておく必要もある。

まだ本葉がひと組しか出ていないようならいちどプラグに移植して大きくなるまでしばらく育ててポット上げを行う。ある程度大きくなっているのはそのままポット上げをすることもあるが、やはり少し根を伸ばしてからの方がその後の歩留まりは良い。

小さい芽はいちどプラグに移植。肩の凝る作業。

実はこの他にも普通に種まきもしているのだが、なぜかこちらのこぼれダネ(もとは同じ親株の種子なのだが)の方がその後の成長が良かったりする。一度紙やビニールに包まれてしまうのがいけないのか、過酷環境の方がいいのか、その辺はよくわからない。

蕎麦のエネルギー

仕事場へ行く道の脇には蕎麦の畑がある。今年も8月の終わりに一斉に小さな芽吹きが見られたかと思ったら、いつの間にか大きく育ち、少し前から白い花が咲き始めた。厳しすぎる残暑だったのに、あまりそれを感じさせない成長、さすがに救荒作物とされるだけはある。

当店の育苗用土にも、水捌け促進その他のために蕎麦殻を入れているが、蕎麦が育ちやすいシーズンだからだろうか、いろいろなところから蕎麦が芽を出している。

中には、販売用の袋に詰めた中の土から発芽するエネルギッシュな芽もあるほどだ。

この蕎麦殻、専門の製粉会社から仕入れているので、相当しっかり脱穀されているはずなのだが、それでも発芽ゼロではない。

昔、石臼引きの蕎麦殻を使った事があるが、もうそれはそれは、ハーブを育てているか蕎麦を育てているかわからないほど発芽して困ったほどだ。

また、もっと昔、もみがらも土に入れていたこともあったが、たとえ春であってもイネの発芽は一度も見た事がなかった。発芽条件の違いか、脱穀の精度もあるのだろう。でも、蕎麦の中に貯められたエネルギーを感じざるを得ない。

食欲の秋

朝、仕事場へ来ると、たいてい苗の状況を確認するために一回りする。

極端に乾いているものがないかをチェックするのが主な目的だが、何気なしに見ていると、ふと違和感を感じることもある。

違和感を感じた苗

今日はこの苗だ。昨日までは下の土が見えないぐらいもっと葉が茂っていたはずなのに、その上、葉の様子もおかしい。何かに齧られている・・・。

この時期こういう齧り方をするのはたいてい芋虫の仲間だ、夜中の犯行ならヨトウムシが疑わしい。現行犯で捕まえてやろうと葉の裏を見るがどうも見つからない。

上手に土の中に隠れていることもあるが、その場合は土が少しふんわりしているので手掛かりになる。だが、それも見つからず。悔しい。

なによりも、育ったらこの秋に新規に紹介しようと思っていた種類で、結構大事に育ててきたもの。周りのものは狙わずにこれを狙われてしまった。悔しい。

くまなく探したが、見つかったのは置き土産のフンだけ。少なくともバッタとかではなくて芋虫の類だということは確かだ。もしかしたらナシケンモンかもしれない。

とりあえずは、食害された葉を剪定して様子を見ることにした。

他の苗もチェックしていると、かなり離れた場所にあったペパーミントゼラニウム(これも久しぶりの増殖で目にかけていた・・・)も齧られていた。

こちらは現行犯逮捕できた。ナシケンモンだった。

それにしてもどいつもこいつもものすごい食欲。秋だなぁ。

冬の楽しみ

食用ホオズキの親株に花が咲き始めた。

本当はもう少し早めに咲くのだが、夏前に強く剪定して挿し穂などに使ってしまったため、その分花が遅れた。毎年この調子だ。残念ながら今年の夏の増殖は、トラブルがあってあまり芳しくはなかった。

花が遅れたぶん、気温が下がっていく時期なので余計ゆっくりで結実も相当遅くなりそうだ。この辺りでは、地植えでは雪に埋もれたり霜で地上部がなくなるが、とりあえず開放のビニールハウスの中ならば問題なく越冬する。もちろん、葉はほとんど落ちてしまう。

基本が低くても意地でも結実しようとするから、冬の中頃には小さいけれど甘い果実が食べられることだろう。嬉しいのは、袋の中に入っているので洗ったり、切ったり、皮を剥いたりしなくても済むところ。

冬、薪割りとか、結構ハードな仕事の合間にちょっと口にするのにとてもいい。今から楽しみだったりする。

堂々たる貧乏

毎年のように、お客様から「おじいさんがススキと間違えてレモングラスを刈ってしまった」という声を聴く。

草刈機でバッサリ刈っても、株が残っていたらまたすぐに伸びてくるからあまり心配はいらない。でも、本格的に掘り上げてしまったりするとお手上げだ。

我々はさすがに間違えてというのはあまりないとはいえ、暑さの中、ハードな時期の草刈りでウッカリと親木を切ってしまうことは珍しくない。

その防止のために、支柱を立てて予防をしている。今日ふとみたら、支柱の一つに植えた覚えのないツルが巻き付いていた。

ヤブガラシである。ビンボウカズラとも言われるのだが、こちらの名前の方がピンとくる。貧乏暇なしとも言われるように、暇がなくて草取りができないとこの雑草が繁茂するという由来は、ただただ頷かざるを得ない。

毎日のようにこの前を通っているのに気が付かなかったのだが、いつの間に伸びたのだろう。あらためてツルの成長の勢いには驚かされる。

あまりに堂々としているので、知らない人が見たらこっちを植えていると思われるに違いない。

もうちょっと草取りしろよ・・・という感じだが。それにしてもヤブガラシの巻きひげの丁寧なこと。

支柱を立てた本来の対象は下で草に埋もれていたカルドンだ。ヤブガラシ、根もすごく強いので、厄介。カルドンを移動させるか・・・せっかく根付いて大きくなり始めたのにそっちも気が進まないのだが・・・。