ひとりぼっちが好き

似たような種類でも、植物には色々な性格がある。秋咲きのセイジと言っても、実に様々だ。秋に咲くブルー系の大形セイジと言えば、かつての代表格はラベンダーセイジだった。初めて見たのはどれほど前だったろうか、秋風にそよぐ見事な花穂に感心した。

ところが、育ててみると案外うまく行かない。最初は大事に鉢で育ててみたところ、ひょろひょろと細めの茎で花穂のボリュームもお話にならない。そこで地植えにもチャレンジ。このときも、植え時が遅かったのか、株が充実せず、のびた茎もいまいち勢いに欠けた。開花しても頭を垂れたような姿だった。

そのうち分かってきたのが、前年から株を充実させ、春からしっかり成育させること、できれば数株まとめて植えたり、他の植物の間などに植え込み支えてもらうようにすればうまく行くと言うことだ。残念ながら一株だけで育てようとすると大株になるまでは倒れたりしやすい。

近年出回るようになってきたのがアンソニーパーカーセイジである。花はラベンダーセイジと良く感じが似ているが、パイナップルセイジメキシカンブッシュセイジの血が入っているようで育ち方はだいぶ違う。ラベンダーセイジと同じく、春先に株元まで切り戻して形を整えるが、その後ギュッギュッとつまった感じで株が育っていく。一株でもしっかり自立して、倒れるような心配はまず無い。むしろ周りに他の植物があると返ってその良さが発揮しにくいように思う。ひとりぼっちが好きなのである。

アンソニーパーカーセイジ

写真のアンソニーパーカーセイジ(実は2株)、市内の幼稚園に有る株だが、ほかの花たちとは少し離れて存在感を際立てて咲いている。これももちろん春、地際まで刈り込んだ。その後全く剪定無しで現在このような姿。手のかからないヤツである。

草に埋もれて

まだインターネットがこれほど普及していない頃、得られる情報は限られていた。外国のカタログから種を注文する時も、写真がない場合も多く、テキスト情報から想像するしかなかった。ネット検索で花の写真もパッと見つかる今とは雲泥の差である。

それゆえ、育ててみたものの期待外れに終った種類も多々ある。そういう種類に限ってカタログでは魅力的な説明がされているのだ。

Salvia tilifoliaもそのひとつ。素敵な花が咲きそうな説明に惑わされ、種を購入した。発芽率がものすごく良かったのを素直に喜ばず、怪しむべきだった。

その後すくすくと育ち、いよいよ開花。
「あれ?これかい?」
期待しすぎも有り、妙に拍子抜けしてしまった。こうなると関心が薄れていくのも速い。一年草ということもあり、それ以降育てなくなってしまった。

Salvia tilifolia
花もちもあまりよくない

それなのに、である。しっかりと種子を飛ばしていたのだ。圃場の隅に毎年生えてくるようになった。邪魔になるわけではなく、さりとて気にすることも無くそのままの状態が続いている。回りの雑草に埋もれながらも毎年伸びてくる力には少し驚いている。

Salvia tilifolia

もうひとつ、このサルビアをみると、サルビアがシソ科だということを改めて実感させられる。圃場にきた近所の方が、花の終った後の穂を見て
「あ、あんなところにシソが」
と間違えてしまったぐらいである。

秋の黄色

黄色い花はあまり好きな方ではないけれど(以前にも書いたかな?)、ブルー系の花の中にちょっと加えると明るい雰囲気になるし、良く目立つ。

どちらかといえばブルー系の花が多いセイジ、サルビアの中でも秋に開花するサルビア・マドレンシスは背丈を越すサイズになることもあって花壇の中でも特に目を引く。

サルビア・マドレンシス

惜しいのは、適切に剪定して早くから分枝させないと株元から数本の茎がビューン、ビューンと伸びてしまい、とても不安定になってしまうことだ。写真の株も先日の台風で揺すられてしまい、株がやや持ち上げられてしまった。対策はそれなりに行なっていたのに・・・

そういった育ち方をするので、切り花にするには、やや大きすぎる。またこの種類も粘つくので、小さな虫がくっついてしまうのは残念だ。庭にドーンと咲かせるのが一番だろう。

イエロー系のサルビアも上手に使いたいところであるが、黄花アキギリは少し小さくまとまりすぎるし、この種類は大きすぎる。この間のサイズで濃いめの黄色いサルビアがあるとありがたい・・・

さて、日本ではイエローマジェスティーと呼ばれることも多いようだが、 Salvia guaraniticaのパープルマジェスティーとはだいぶ違う。それにしても上手に名前を付けるものですね。

幸せの香り

咲いていると思わず花を近づけたくなるハーブ。それがグレープセンテッドセイジだ。あまーく、食欲をそそる香りはいつ香っても気持ちが穏やかになる。作業中にもホッと一息入れさせてもらうことも多い。

グレープセンテッドセイジ

どちらかというと、秋に咲くことが多いが、機嫌が良いとあまり季節を選ばず咲く。松江だとガンガンの日なたよりも半日陰ぐらいのほうがコンディションがよいようだ。

一つ難点はサルビア属の中では良くあることだが、茎や葉にやや粘りがあるため、小さな虫がひっつくとそのままになってしまうことである。加えて言うなら、他のサルビアに比べると少し育ちが悪い。大きくなった株は大事にしたいものである。一方で剪定には割と強いので、花が終ったり、落葉した時にはきちんと形を整えると次の枝がきれいに揃う。

数年前になるが、市内のお庭で背丈を遥かに越えた株を見たことがある。開花すると近所のひとが見に来ると言うことだったがさもありなん。幸せを感じさせてくれる香りなのである。えっ、私だけですか?

気にしない、気にしない

セイジの仲間、特に花色に特色があり美しいものに限って写真に写した時に本当の色が出てこない。

サルビア・アズレア

秋の初めの空を思わせるサルビア・アズレアのブルー、今年も写真に収めたがやはりだめだった。曇りの時に取ると良いよとか、朝方にとったほうがとか、ホワイトバランスを合わせてとかいろいろなアドバイスをいろいろな人から聞いたがやはりうまくいかないのである。

そもそも、我々が感じる色も結構曖昧だ。毎日見ているビニールハウス前のモーツアルトブルーローズマリーでさえ、夕暮れどきにはその色にハッとさせられることも多い。

また、カメラに詳しいひとからは「デジカメを買い替えなきゃ」との意見もいただくが、一番支持したいのは、パソコンマニアからの言葉。
「どうせ、見るひとのモニタによって色なんてまちまちだから、気にしない、気にしない」

本当の花の色が知りたければ育てるしかないようである。

ところで、このサルビア・アズレア、背が高いうちに細身である。単独で育てては全く面白くないし、倒れやすい。いくつかまとめてもやはり場所によってはだらんとだらしなく育ちがちである。先日、市内のイングリッシュガーデンでいい感じで植えてあった。周りにブッシュ状の植物が囲むように植えてあり、その間から顔をのぞかせるように咲いていた。株が蒸れないか少し心配もあるが、見た感じはなかなか良かったのである。