4月の復調

年明けまでとても暖かく、その後の強烈な寒波で、例年にない被害のあった畑のハーブたち。

1月の寒波

寒波後は見るも無残な姿になったので、特に寒さに弱い種類は、ほぼ諦めかけていた。

4月に入ってからは気温が低めで、天気もあまり良くない日が続いた。先日など、作業場でストーブを焚いたぐらいだ。なので、ハーブたちも全く冬の状態から立ち直れない様子であった。

ところが4月も終わる頃になってつぎつぎと復調の兆しが。

レモンバーベナ
レモンバーベナも例年より半月遅れで新芽が伸び始めてきた。もう10年近く育てている大株。枯れたかと思った時はさすがに残念だったから余計に嬉しい。でも、例年なら新芽が出てくる上の方の枝はさすがに枯れてしまったようだ。新芽も株元近いところに限られている。
レモングラスは、冬前に下記ページの例のように株元マルチの上から厚くそばがらを被せておいただけで冬を迎えた。

ハーブの防寒・地植え編(その1)

寒波の後になって、せめて発泡スチロールを被せておいておけばよかったと後悔した。絶対ダウンしていたと思っていたのだ。

レモングラス
そろそろ掘り上げて他のものでも植えようかと思っていたら新芽が。なんとかこの調子で復活を遂げてもらいたいものだ。
マートル

マートルもこの通り、新芽が出始めた。普段の春なら大きな葉が残っているので、ちいさな小さな葉がたくさん付いているとなにやら別の植物のように思えてくる。

レモンティートゥリー
残念ながらレモンティートゥリーはこの状態。いまだに新芽の兆しさえ見えない。これはダメだったかもしれない。

また、お客様のお庭で何年も地植えで越冬していたローズゼラニウムも寒波の後、かなり太い枝まで枯れたようになってしまった。こちらも防寒対策をしていなかったので諦めて、新しく植える苗を持って庭に伺ったところ、新芽が伸びているではないか!
ローズゼラニウム
どちらかというと北向き、北風もビュンビュン当たるようなところなのに、ゼラニウムの生命力にちょっと驚いた4月の終わりだった。

風邪ひきさんの草刈り

子供に風邪をうつされた。寒いうちは「なにがなんでも風邪はひかないように!」と、うがいや手洗いも怠らないようにしていたのに、暖かくなってつい気を抜いてしまったのも悪かった。

月曜日に38℃近くまで上がった熱は、一旦下がったが、37℃を切ったぐらいから下がってくれない。おそらく3年ぶりぐらいだろう。平熱が低めなので、これぐらいの熱でも脳味噌に一枚ベールがかかったような感じだ。

月曜は定休日だったので1日横になっていられたが、火曜日からはそうはいかない。ゴソゴソと起き出して仕事をしてはまた横になるという1日。いい加減治るだろうと思っていた今日も状況は変わらず。だが、また1日布団に入っているのも気持ちが悪い。

切羽詰まった仕事がないのが幸いだが、体調が万全でないときにどんな仕事をするかは結構難しいものだ。あまり体に負担がかかる仕事は行うべきでないし、クオリティが重視されたり頭を使う作業もミスが多くて進みが悪い。

とりあえず、少し体を動かした方が良いのではないかと午前中は圃場に出かけた。

圃場では、いつも何かしら仕事があって、苗の整理や片付け、掃除など、こんなコンディションでする作業もよりどりみどりである。
草刈り機
明日は天気が悪くなるということもあり、草刈りをすることにした。草刈りも真夏の炎天下は重労働だが、この時期ならそれほど体に負担はかからない。
ヒメオドリコソウ
暖かくなって一気に伸びてきた雑草を刈り始める。
erythronium pagoda

水仙
草花やハーブたちの花も増えてきた。

オランダミミナグサ

オオイヌノフグリ

雑草もせっかく花を咲かせていると思うとちょっと可哀想になるのだが、ここは容赦なく。
アスパラ
伸び始めたアスパラの周りは特に慎重に。
ホワイトボリジ
畑の法面の下を刈っていたら、零れ種で飛んできたホワイトボリジが花を咲かせていた。草刈りでもしなかったら気がつかない場所である。
白花タンポポ
普段は時間を気にして一気にする草刈りも、体をいたわってゆっくり草刈り機をまわしていると草花に目を止める余裕も出てくるものだ。

小一時間ほど作業をしたら、うっすらと汗をかいていた。

帰宅して着替えて午後はデスクワーク。相変わらず進みは悪い。
体温計
夕方、熱を測ったが、こちらも相変わらず・・・。おとなしく寝てた方が良かったのかなぁ?

思い出の香り(2)

雨のスタートとなった新年度。

こんな仕事をしていると年度が変わったとか、月が変わったとかいうことがそれほど大きな意味を持たなくなる。

気温がはじめて氷点下になったとか、梅雨が明けたというような天候の変わり目の方がはるかに大きな節目だ。

とはいえ、周囲の新年度感や、新学期感はなんとなく伝わってくる。「気分を新たに」スタートしている人も多いのではないだろうか。

自分の場合、気分を新たにというよりも、この時期、「初心を忘れずに」という気持ちが強い。

もう25年近くになるだろうか。初めてハーブに出会ったのがこの季節。忘れもしない、米子市のアーケード街の中にある園芸店の店先に並んでいたちいさなポット苗にふと目が止まったのがハーブの実物と出会った最初だった。

それまで植物など育てたことはほとんどなかったのに、なぜか興味をひかれ、葉を触ってみた。

レモンバームと、タイムだった。指先に残った香りに驚きを受けた。

その一瞬の驚きはよほど鮮烈だったのだろう。いまでもこの時期にレモンバームとタイムの香りをかぐと当時に引き戻される。

レモンバーム
長年おなじ仕事を続けていると、垢がたまるように、慣れや惰性に自分が包まれてしまいやすい。日々、ハーブが周りにあるのが当然になり、ハーブをただの商品としてしか見れなくなったらもうこの仕事を続ける資格はないと思う。

そのような不要な垢を取り除くためにもこの時期、伸び始めたフレッシュな葉の香りを確かめる。

なので、レモンバームとタイム、とても平凡なハーブなのだが、私にとってこの二つは特別なのである。

ルーペとアブラムシ

春になって、生き物たちを目にすることが多くなってきた。先日も、久しぶりの快晴の日、ゴソゴソと歩き回るてんとう虫を見つけた。春だなぁ・・・。

さて、てんとう虫が動き回るということは、当然餌になるアブラムシも活躍し始めている。

この時期、発送時に一番気をつけているのがアブラムシのチェックである。

アブラムシのチェック
ご注文いただいた苗をビニールハウスで準備する時にまずチェックしてアブラムシを取り除くのだが、それでも葉の裏や茎の付け根などに隠れているものもいる。

そこで、発送時に最終のチェックをしてから箱に入れる。

慣れてくると、おおよそどの種類のハーブのどんな場所によくいるかがわかってくるので、そう難しいことはないのだが、昨年あたりから新たな問題がでてきた。

現在、発送作業をするすべてのスタッフが40代以上。皆、多かれ少なかれ老眼が心配なお年頃になってきたのだ。

明るい場所へ苗を持って行ったり、メガネを外したりと作業がスムーズに進みにくい。

とりあえず作業台にルーペでも置いておこうか、と、ホームセンターへルーペを見に行ったのだが、適当なのが見つからなかった。

ネットで探してみるとフレキシブルアームが付いたルーペが結構見つかった。そのなかから、作業台の脇に固定できるタイプのものを購入することに。

ルーペ

昔カメラを少しいじっていた頃によく目にしていた「ケンコー」というブランド名も決め手だった。

実際に使ってみるとなかなか良さそうだ。レンズの付け根にLEDが付いているので逆光でも比較的見やすいし、いままでに比べると、2倍ぐらい見つける精度が高まりそうだ。

ルーペ

それでも全ては取りきれないとはおもうが・・・。アブラムシとのたたかいは、半袖になりたくなるぐらいまで、まだしばらく続きそうだ。

思い出の香り

先週終わり頃から、いったん春を思わせる陽気になったのだが、その後はまた最高気温が10度を下回るような日が続く。

作業場のストーブもまだしばらくは活躍してもらうことになりそうだ。
杉葉
着火時に重宝しているのが、枯れ落ちた杉の葉。油分が多いようで、マッチの小さな火があっという間に大きく広がる。

パチパチとはぜる音とともに、香ばしい独特の香りが立ち昇る。

杉葉
いつもこの香りを嗅ぐと思い出すのが父方の祖父母である。

父方の祖父母は少し遠方に住んでいたので、顔を見るのはお盆の時ぐらいだった。

祖父母の家の裏山の急な坂を登った場所に一家の墓地があり、一緒に息を切らしてお参りしたものだ。

墓地に着くと、周りの杉から落ちてきた杉葉を集めるのが小さな頃の私の仕事。祖父母は杉葉に火をつけると瞬時に大きくなる炎に驚いたものだ。

大きくなった火で、何十本もの線香に火をつけると私に渡してくれた。一体いつからあるのかわからないような古い墓碑に線香を手向けてまわる。

線香の香りとともに、普段嗅がない杉葉の燃える香りが、小さい私にはとても印象的だった。

一緒にお墓参りをした祖父母もまもなく鬼籍に入ったが、いまでもこうして杉の葉が燃える香りを嗅ぐと祖父母を思い出す。

祖父母は生粋の農家だった。いつも朝早くから農作業に励んでいることが小さな私にもよくわかった。まさか、のちに自分も農業に携わるとはそのころは思ってもいなかったのだが・・・。

日々の忙しさにかまけて、10年近くも祖父母のお墓に参っていない。

もうすぐ春のお彼岸。今年は久しぶりにお墓参りに行こうか。もちろん杉葉を携えて。