冬の星

山陰の冬は灰色が支配する。もう少し降雪が多い地方なら白が支配するところだろうが、松江の近辺では積雪しても長く残る事は少なくなった。空は灰色、海も灰色、田畑もグレーが目立つ。

白に支配される冬も相当辛いだろうが、灰色に支配されるのもまた強い精神力が試される。

そんな中で明るい色の存在は貴重である。無加温とはいえ、そこはビニールハウスの中、例年なら年が明けてからでないと開花しないスイートワットルが一輪咲いて、ほのかな香りとともに周囲を明るくしている。

スイートワットル

気温が低いので、香りもそれほど強くは無いが、他の香りが少ない中、僅かの香りでも、近くを通ると甘く感じる。重く沈んだ気分を少しでも照らしてくれるグレーの中の貴重な星のような存在である。

松江なら地植えもおそらくできるはずなのだが、今まで2度ほど失敗していて、その後試す気にはならず、この株は鉢植えである。

鉢植えといっても、そこはアカシア。既に背丈ぐらいの株で少々邪魔になりつつある。その上トゲもあったりするので、時々引っ掛かる。三度目の正直で春になったら地植えしてみようか・・・。冬の星も見納めかも知れない。

寄せ集め部隊

昨日に続き、もう一鉢紹介。こちらは、もう少し後、10月の初頭に作りはじめた鉢植えである。

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2カ月を経て、ようやく見栄えがするようになり、店頭へ持ってきた。

材料は下葉がすっかり無くなってしまったフレンチラベンダーのアボンビューをメインに、

アボンビューラベンダー

だらだらに育ったナスタチウム、色が不明の同じくナスタチウム、まずまずまともな宿根ネメシア(扱いやすくて、花も長期なのでついつい多用してしまう)、そして伸びきってしまったエリゲロンである。いずれも圃場のあちらこちらから持ってきた寄せ集め部隊である。

素材

いずれもばっさり剪定して植え込んだ時はこんな感じ、非常に殺風景である。鉢も、一年ぐらいビニールハウスでほったらかしのテラコッタ。良い意味で味は出ているが・・・

寄せ植え

こんなひどい状態でも、何度か剪定をしながらきちんと育てれば、店頭の隅を飾るぐらいにまではなってくれる。来春、ラベンダーの開花が楽しみである。

年末のナスタチウム

店頭をディスプレイするための寄せ植えは、ほとんど売れ残りの苗を再利用して作る。とても販売できないようなみすぼらしい苗を植え替えて育て直し、立派な姿に成長させるのが面白い。

斑入りナスタチウム

この鉢も、夏が過ぎた時にもうそれはひどくくたびれていた斑入りナスタチウム宿根ネメシアなどを寄せ集めて作った。花色も分からないし、あまりに傷んでいたのでうまくいけばラッキーぐらいのつもりで加えたナスタチウムであったが、秋の涼しさとともにぐんぐん元気を取り戻し、花芽もたくさん付けはじめた。

蕾が見えはじめた時にかなり濃い色だったので、「こんな色の株があったかな?」と思ったが、実際に咲いて見て、ちょっと雰囲気のある色で喜んだ。確か花色はミックスだったと覚えているが、春にこの色が咲いたと言う覚えが無い。気候のせいかも知れないが、まあ、とりあえずしばらく楽しませてもらおう。年末ぐらいまで花は続くだろうし、強い寒気とともに葉が傷んで一応今シーズンは終了する予定である。

春にもまだ株が元気なようなら少し増やしてみてもいいかなと思っている。その頃に咲いたら実は平凡な色でがっかり・・・なんてことも覚悟する必要はあるけれど。

カラスの視線

鳥のカテゴリで何度か書いているように、鳥たちとは概ね良好な関係を保っている。唯一例外がカラスである。

圃場の周辺はねぐらになる山林や餌場になる田畑も多い。当然のようにカラスはたくさんいらっしゃる。数匹ならともかく、百羽を超すような集団になるとさすがに不気味さを感じる。

以前、何かでカラスは十人ぐらい(もっとかも)だったら人を見分けることができると言うような話を聞いた事がある。私はそうでも無いが、スタッフの一人は、家からコンポスト用の残飯を持ってくる時、いつも強い視線を感じると言っていた。餌を持ってくる人という認識ができているのだろう。

カラス

私に対しては警戒心を持っているようでなかなか近寄っては来ない。カメラを持って近寄っていくと、他所を見ているようでも、確実に飛び去る。

カラスの賢さは有名だし、凄いと思わざるを得ないが、冬の夕暮れなど、電線から電線へ飛び交う姿はどうしても好きになれない。

カラス

この頃は気を付けているので被害に遭っていないが、ある時期、お茶の時間のためのお菓子を机の上(ビニールハウスの上だ)に出していたら、いつの間にか入ってきてつつかれてしまった事があった。ビニールハウスの横の隙間から上手に入り、荒らすだけ荒らして逃げていった。まさかカラスだとは思わなかったのでこの時はさすがに驚いた。

それからは鳥だからと言って決して侮らない事だけは心に決めている。

OPECの回し者

圃場では、11月の半ばぐらいからストーブが登場する。天気が良い日はともかく、これから曇天が多くなる山陰の冬はストーブ無しでは作業にも支障を来す。もちろん?、ハーブたちのためではなく、我々スタッフのためである。

もともと、山際で湿気が多い事も有り、冬は底冷えがひどい。バタバタする作業はともかく、植替や挿し木など、長時間じっとして行なう作業は足元からズーンと冷えてくる。広いビニールハウスを暖めるような事はもちろんしないので、足元だけを暖めるためのストーブである。それでも無いよりはずいぶんましだ。

そんなストーブが3台ほどあるのだが、いずれもお払い箱になったものをもらい受けてきたものばかり。ここには掲載し辛いほどボロボロになった歴戦の勇者ぞろいである。

そんなところに、今年一台のニューフェイスが現れた。スタッフが知り合いの電気屋さんからもらったようなのだが、まだまだ新品に近く、スイッチで火がつく。(他のは全てマッチが必要なのだ)。

ストーブ

サイズもコンパクトで、ついついこちらを使いたくなるのだが、しばらくして重大な事に気がついた。灯油の消費量が多いのか、すぐにタンクが空になる。他の大きな図体のストーブもタンクはほぼ同じ。手をかざして分かった。燃焼効率が良いようで、実際に非常に熱い。

ところが、この場所では強力な熱さよりも、長時間ほのぼのとした熱さであれば充分なのである。

以来、スタッフの間では「OPECの回し者」と呼ばれ、やや冷遇されつつある。