もう一働き

普段、作業で使っているハサミは、比較的細身の剪定ばさみである。通常の作業ならそれほど太い枝を切る事は無い。太くても割りばしぐらいのローズマリー程度である。むしろ、細かく入り組んだ枝の中でシャープに切れる事が大事なので、葉の幅もやや細めのものを使っている。

ところが、特に冬の間は太い枝を切る場面が多くなる。お客様の庭で、庭木やローズの冬の剪定を行う場合、華奢な剪定ばさみでは用をなさない。庭の仕事を始めるようになって間もなく、とりあえずでホームセンターで購入したのがこれである。

ハサミ

確か当時千数百円だったと思う。特に使い勝手が良いわけではないし、下のグリップはもう何年も前にどこかの庭で落としてしまった。本当は、フェルコなどの上等なハサミを見ると、しばしば欲しくなるのだが、一年中頻繁に使うわけでも無く、ま、これでいいか、と思い続けてはや10年ぐらいになるだろうか。何度か研ぎ直しもしたりしていまだに現役を続けている。研いでも案外刃のあわせも狂ってこないのは有り難い。

上のグリップが取れたり、刃が欠けたりしたらちょっと良いものに取り換える事になりそうだが、もう一働き、二働き頑張ってもらいたい。

このところ、連日のように枝切り作業に使われているので樹液やアクでひどい事になってしまっている。年末には少し手入れしてやれる時間が取れると良いが・・・。

冬の星

山陰の冬は灰色が支配する。もう少し降雪が多い地方なら白が支配するところだろうが、松江の近辺では積雪しても長く残る事は少なくなった。空は灰色、海も灰色、田畑もグレーが目立つ。

白に支配される冬も相当辛いだろうが、灰色に支配されるのもまた強い精神力が試される。

そんな中で明るい色の存在は貴重である。無加温とはいえ、そこはビニールハウスの中、例年なら年が明けてからでないと開花しないスイートワットルが一輪咲いて、ほのかな香りとともに周囲を明るくしている。

スイートワットル

気温が低いので、香りもそれほど強くは無いが、他の香りが少ない中、僅かの香りでも、近くを通ると甘く感じる。重く沈んだ気分を少しでも照らしてくれるグレーの中の貴重な星のような存在である。

松江なら地植えもおそらくできるはずなのだが、今まで2度ほど失敗していて、その後試す気にはならず、この株は鉢植えである。

鉢植えといっても、そこはアカシア。既に背丈ぐらいの株で少々邪魔になりつつある。その上トゲもあったりするので、時々引っ掛かる。三度目の正直で春になったら地植えしてみようか・・・。冬の星も見納めかも知れない。

寄せ集め部隊

昨日に続き、もう一鉢紹介。こちらは、もう少し後、10月の初頭に作りはじめた鉢植えである。

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2カ月を経て、ようやく見栄えがするようになり、店頭へ持ってきた。

材料は下葉がすっかり無くなってしまったフレンチラベンダーのアボンビューをメインに、

アボンビューラベンダー

だらだらに育ったナスタチウム、色が不明の同じくナスタチウム、まずまずまともな宿根ネメシア(扱いやすくて、花も長期なのでついつい多用してしまう)、そして伸びきってしまったエリゲロンである。いずれも圃場のあちらこちらから持ってきた寄せ集め部隊である。

素材

いずれもばっさり剪定して植え込んだ時はこんな感じ、非常に殺風景である。鉢も、一年ぐらいビニールハウスでほったらかしのテラコッタ。良い意味で味は出ているが・・・

寄せ植え

こんなひどい状態でも、何度か剪定をしながらきちんと育てれば、店頭の隅を飾るぐらいにまではなってくれる。来春、ラベンダーの開花が楽しみである。

年末のナスタチウム

店頭をディスプレイするための寄せ植えは、ほとんど売れ残りの苗を再利用して作る。とても販売できないようなみすぼらしい苗を植え替えて育て直し、立派な姿に成長させるのが面白い。

斑入りナスタチウム

この鉢も、夏が過ぎた時にもうそれはひどくくたびれていた斑入りナスタチウム宿根ネメシアなどを寄せ集めて作った。花色も分からないし、あまりに傷んでいたのでうまくいけばラッキーぐらいのつもりで加えたナスタチウムであったが、秋の涼しさとともにぐんぐん元気を取り戻し、花芽もたくさん付けはじめた。

蕾が見えはじめた時にかなり濃い色だったので、「こんな色の株があったかな?」と思ったが、実際に咲いて見て、ちょっと雰囲気のある色で喜んだ。確か花色はミックスだったと覚えているが、春にこの色が咲いたと言う覚えが無い。気候のせいかも知れないが、まあ、とりあえずしばらく楽しませてもらおう。年末ぐらいまで花は続くだろうし、強い寒気とともに葉が傷んで一応今シーズンは終了する予定である。

春にもまだ株が元気なようなら少し増やしてみてもいいかなと思っている。その頃に咲いたら実は平凡な色でがっかり・・・なんてことも覚悟する必要はあるけれど。

カラスの視線

鳥のカテゴリで何度か書いているように、鳥たちとは概ね良好な関係を保っている。唯一例外がカラスである。

圃場の周辺はねぐらになる山林や餌場になる田畑も多い。当然のようにカラスはたくさんいらっしゃる。数匹ならともかく、百羽を超すような集団になるとさすがに不気味さを感じる。

以前、何かでカラスは十人ぐらい(もっとかも)だったら人を見分けることができると言うような話を聞いた事がある。私はそうでも無いが、スタッフの一人は、家からコンポスト用の残飯を持ってくる時、いつも強い視線を感じると言っていた。餌を持ってくる人という認識ができているのだろう。

カラス

私に対しては警戒心を持っているようでなかなか近寄っては来ない。カメラを持って近寄っていくと、他所を見ているようでも、確実に飛び去る。

カラスの賢さは有名だし、凄いと思わざるを得ないが、冬の夕暮れなど、電線から電線へ飛び交う姿はどうしても好きになれない。

カラス

この頃は気を付けているので被害に遭っていないが、ある時期、お茶の時間のためのお菓子を机の上(ビニールハウスの上だ)に出していたら、いつの間にか入ってきてつつかれてしまった事があった。ビニールハウスの横の隙間から上手に入り、荒らすだけ荒らして逃げていった。まさかカラスだとは思わなかったのでこの時はさすがに驚いた。

それからは鳥だからと言って決して侮らない事だけは心に決めている。