初雪とストーブと焼き芋と

今日、松江は初雪となった。先日、大山が初冠雪していたので、そろそろかなと思っていたところだ。

もちろん積もるようなことはなく、一時的にみぞれとなったり、さらさらとした雪が舞う程度だった。

風もつめたいが、先日から稼働し始めた薪ストーブがとても助かる。今年は数年ぶりに本体を新調。数千円の出費で済んだが、ペランペランの薄い鉄板なので、湿気が多いこの場所では耐熱塗装をして保護しても2年目の終わりぐらいには穴が開き始める。もうこれで4代目ぐらいだろうか。

薪ストーブを出すとお湯も楽に沸くし、ちょっとだけ楽しみも増える。今朝もアルミホイルで包んだサツマイモを投げ入れて40分放置。あまいあまい焼き芋の出来上がり。

普段は自分から手を出す方ではない焼き芋だが(この頃結構高いしね)、寒い時期は体も欲するのだろう。焼きたてということもあってとても美味しい。サツマイモ(出雲の西浜いも)を育てたのが、友人の息子さんということもまたおいしさをアップしてくれる。

やはり火の温かさは格別なので今日は普段のビニールハウスから、薪ストーブが設置してある小さな休憩用ハウスへ移動して挿し木作業を行なった。細かい作業も難なくできてありがたい。

今日は一人での作業だったが、ストーブと一緒ならば寒い1日も気持ちよく過ごせる。

明日からまた天気は回復するというが、今度スタッフが大勢揃う寒い日にはまた皆で焼き芋を楽しみたいものだ。

ビニールハウスで薪ストーブを

ビニールハウスの中は、太陽が顔を覗かせる日ならば、たとえ冬でも相当暖かい(もちろん、当店のように開けっぱなしでなく、きちんと閉めていれば)。だが、ここ山陰地方のように冬に太陽の顔を見る日が少ない場所ではその恩恵も受けにくい。

それでも、重油ボイラーでもガンガン焚いて加温すればハーブももっと早い時期に育つだろうが、そこまでするメリットは今のところない。ふんだんに太陽が降り注ぐ地域ならば、燃料代も少なくて済むだろうし、そんな地域で育ったものと価格競争しても勝てるわけはない。品質だって、加温すれば良いというものでもないし、かえって病気や害虫の心配が増すだけだろう。真冬にまでアブラムシに気をかける必要があるなんてまっぴらだ。

また、植物は、細胞壁があるためだろう、案外寒さに強い。ところが我々人間は、植物ほど強くない。そこで作業をする際には何か加温設備が必要だ。

最初は古い灯油ストーブを使っていた。大して暖かくはならなかったが、それでもストーブを焚いているというだけで気分的にはマシだった。作業場所をパーティションで囲むなどの工夫をして少しでも暖かくなるようにはしていたが、やはり限度がある。

そこで、ある年から薪ストーブを試してみることにした。暖かさは、比べ物にならない。熱量も数字的には倍以上である。

幸い燃料の調達先は確保できている。本体は、ピンからキリまであるが、当然キリの方。知らない人に、「サンキュッパですよ」というと、四万円かと思われることもあるが、3980円のである。

たいてい、ビニールハウスでこれを見た人が言うのが、「ビニールが焼けたりしないんですね?」という言葉。

実際、薪ストーブ導入で、一番心配したのがこれだった。ビニールが溶けてしまっては元も子もない。だが、使用し続けて、5年以上は優に立つが、いまのところ小さな穴さえ空いたことはない。

それでもいくつかポイントがあるので、紹介しておきたい。今後、ビニールハウスで、安価でとても暖かく(灯油ストーブには戻れない)、しかも環境に優しい暖房を・・という人に参考になれば幸いだ。※もちろん、自己責任でお願いしたいが・・・。

一つ目のポイントは、煙突の高さだ。本格的な薪ストーブでも、煙突はケチるべきではないと言われるが、安くあげようとストーブ本体を数千円で済ましても、煙突は、それ以上に費用がかかる。少なくとも、ビニールハウスの高さよりも2メートルは高くしたい。今の高さは4メートル弱ある。

煙突が高いので、ビニールハウス用のパイプなどで補強

二つ目のポイントは、風向きを考えること。風向きが安定しないところは難しいかもしれない。当店のビニールハウスが立つ場所は、南東に開けていて、そちらからの風が強い。そのため、煙がビニールハウスから遠ざかるような位置にストーブ(煙突)を設置すること。今まで、二箇所に設置したが、いずれも下記のような配置だ。

ストーブと煙突の位置

三つ目のポイントは、ストーブから真上に煙突を伸ばさずに、一度横に伸ばしてビニールハウスの横(妻の部分)から煙突を屋外に出すようにすること。煙突が煙を吐き出す力は弱くなるが、これも、煙突から落ちてくる火の粉を避けるのには有効だと思う。

自作のメガネ石(板)。少し焦げてきたので、きちんとしたものに交換したい

大体、この3点で問題なくストーブがたけている。

初めは、ストーブもなるべく中央に置くようにしていたが、結構端の方でもストーブの熱自体でビニールが溶けることはない。また、床が焼けないようにと、ブロックを積んでずいぶん浮かせたり、下に断熱用の砂を敷いたりしたが、あまり意味はなかったようだ。むしろ、今はしゃがむのが面倒で、ブロックをかませてあえて上に位置を上げている。

火をつけたり、火の具合を見て薪を足したりというのが面倒と思うかもしれないが、案外楽しいものだ。薪が焼ける匂いも、樹種によって違って面白い。それに、木が燃える匂いは、なぜかホッとする。ストーブの中で燃えている火を見ているだけで、ついつい引き込まれてしまうぐらいだ。

冬は、肥料作りの時にお湯を多用するし(以前は灯油ストーブのお湯では足りず、カセットコンロも使っていた)、お湯がいつも沸いているというのは洗い物の時などにもとても助かる。それに、そう多くはないが、不意の来客時も、寒いビニールハウスの中で凍えてしまわれずにすみ、会話も弾む。

薪割りもなかなか楽しい。最初は慣れなくてものすごく体に負担だったが、今は、むしろ寒い日に、体を温めるのにちょうどいい。薪を入れるケースにいっぱいになるよう薪割りをすると、汗さえ出てくる。ほんの10分前後だ。薪割りをするとストーブが不要になってしまうというのがなんとも皮肉なのだが。

そうそう、数年前から、ストーブに耐熱塗装をするようになった。それまでは、錆びてせいぜい2年で買い替えていたのだが、他の作業場で使っている同じストーブが5年ぐらい持つと聞き、環境的に湿気が多いためではないかと考えた。そこで、耐熱スプレーを購入後に満遍なくかけておいたら、ずいぶん持ちが良い。

耐熱塗装済み。炎が見える焚き口はオプション。炎が見えると楽しい。

毎年、ストーブをしまうときに、掃除をして軽く耐熱スプレーをかけるようにしているが、今のところ、4年は持つ感じだ。安いものだが、捨てるのはなかなか大変だし、雰囲気も悪くない。まあ、最初からそういう塗装済みのものを買うのも良いかもしれないが。

というような感じで、園芸作業のお供に薪ストーブ、おすすめである。もちろん、火の用心はしっかりと。翌日来て、ビニールハウスが溶けて愕然となることは避けたいので。

近いがごっつぉ

大寒も過ぎ、明後日は節分。春の気配を感じたのか、ブルーマロウの種子も発芽を始めた。いろいろな種類があるハーブは、発芽したばかりの双葉だけでは判断できないものもあるが、ブルーマロウはわりと個性的。双葉を見て確信できるのはありがたい。

ブルーマロウ

昨日今日と、圃場のすぐ裏の林で薪ストーブ用の薪の調達。この林は倒木防止のためこの冬、伐採作業が行われ、材木になりそうな太い木は搬出されたが、細くて用材にならないようなもの(といっても太いのは50cmぐらいある)が野積みにされていた。指をくわえて見ていたところ、山の持ち主の方から使って構わないとの声をかけていただいた。

伐採
宝の山。左上に見えるのが圃場

普段は車で一時間弱かかる親戚の山などで調達していたのだが、山陰の変わりやすい冬の天気、遠くまで出かけたはいいが、思わぬ天候の急変で、予定の半分も終わらないうちに帰り支度をせねばならないこともある。ところが、今回はなんと歩いて1分もかからない場所である。ちょっとした作業の合間などを使って作業ができるのはこの上なくありがたい。(Many thanks! > Mさん)

まずは野積みにされた木を割りやすいサイズにチェーンソーで玉切りしていく作業を行う。

玉切り作業
玉切り作業

何本も切っていくと徐々に刃のキレが悪くなってくるため、ソーチェーンをこまめに研ぐ必要がある。プロは現場で上手に研がれるのだが、未熟者なので足場が悪い現場で上手に研ぐのはまだまだうまくできない。こんなときも、圃場に戻ってきちんと作業台にチェーンソーを据えて刃を研ぐと、体も楽だし、下手でもずいぶん丁寧に研げる。

チェーンの研ぎ
作業台で行うチェーンの研ぎはとっても楽

もちろん、玉切りしたり大まかに割ったものを運ぶのもあっという間。普段なら、山から一輪車(ネコ車)でヨイショ、ヨイショと運び出して車に積み、1時間かけて帰り、また車から一輪車に載せ替えてようやく薪置き場に到着だ。ここなら、一輪車に積んでそのまま薪置き場に直行である。

一つ難点なのは、重機で山積みにしてあるので相当不安定だったり、邪魔な枝がかなりあることだが、そのようなことを言ってはバチが当たる。「近いがごっつぉ」なのである。

ちなみにこの辺りには「~がごっつぉ」という言い回しがある。「ご馳走」がなまって「ごっつぉ」だ。

なんでもすぐやるのが一番というときに「早いがごっつぉ」と言ったり、寒いときに、「なんにもないですけど・・・」と、温かい食べ物を出されたときに「いや~、熱いがごっつぉですわ」という感じで使う。

さすがに、以前店頭で20代の女性が商品を見て「安いがごっつぉ」とのたまった時にはのけぞったのだが。

少々足場が悪くても、天気が悪くても、太い木がなかなか切れなくても、チェーンソーが幹に噛んでも、「近いがごっつぉ」と唱えればノープロブレム。楽しく薪集めができそうである。