蕎麦のエネルギー

仕事場へ行く道の脇には蕎麦の畑がある。今年も8月の終わりに一斉に小さな芽吹きが見られたかと思ったら、いつの間にか大きく育ち、少し前から白い花が咲き始めた。厳しすぎる残暑だったのに、あまりそれを感じさせない成長、さすがに救荒作物とされるだけはある。

当店の育苗用土にも、水捌け促進その他のために蕎麦殻を入れているが、蕎麦が育ちやすいシーズンだからだろうか、いろいろなところから蕎麦が芽を出している。

中には、販売用の袋に詰めた中の土から発芽するエネルギッシュな芽もあるほどだ。

この蕎麦殻、専門の製粉会社から仕入れているので、相当しっかり脱穀されているはずなのだが、それでも発芽ゼロではない。

昔、石臼引きの蕎麦殻を使った事があるが、もうそれはそれは、ハーブを育てているか蕎麦を育てているかわからないほど発芽して困ったほどだ。

また、もっと昔、もみがらも土に入れていたこともあったが、たとえ春であってもイネの発芽は一度も見た事がなかった。発芽条件の違いか、脱穀の精度もあるのだろう。でも、蕎麦の中に貯められたエネルギーを感じざるを得ない。

複数条件

農業はタイミングがとても大事だ。種まきのタイミング、挿木のタイミング、ポット上げのタイミング、定植のタイミングなど、植物と気温や季節で然るべき時に然るべき作業を行う必要がある。

また、設備のメンテナンスも案外タイミングに頭を悩ませられる。ビニールハウスの張り替えなどは、雨が降らず、風が弱く、かつ、人数が集まる時という最低条件が必要だが、理想を言えば、暑くなく(パイプが熱いと作業が大変だし、作業自体も辛い)、忙しくなく、土も乾いている・・・とか言い出せばキリがない。

ずいぶん前に取り外した寒冷紗も、片付けのタイミングを見計らっているうちに、ずいぶん日が経ってしまった。外してとりあえず適当に丸めて放置していたが、横を通るたびに気になっていた。

この、寒冷紗をたたむ作業も、人数が確保できて、天気で、風が弱く、道路が乾いていて、道路を車が通らない日(時間帯)という条件が揃うと作業が楽だ。

ということで、この日の作業となった。今日は比較的小さい寒冷紗なので、頑張れば一人でも作業はできるがやはり複数いた方が早く綺麗な作業ができる。

まずは、クシャクシャにしていた寒冷紗を広げて、引っかかっているゴミや虫の死骸などを叩いて落とす。そして道路に広げて畳んでいく。

畳むのは特にルールはないのだが、きちんと畳むのとそうでないのではずいぶんサイズが違ってくる。小さく畳めば小さな袋にも容易に入る。

大事なのは、袋に取り付け場所を記入しておく事。これがあるのとないのでは来年の夏前の作業がスムーズにいくかどうかに大きく関わるのだ。もう記憶力があてにならないからね。

食欲の秋

朝、仕事場へ来ると、たいてい苗の状況を確認するために一回りする。

極端に乾いているものがないかをチェックするのが主な目的だが、何気なしに見ていると、ふと違和感を感じることもある。

違和感を感じた苗

今日はこの苗だ。昨日までは下の土が見えないぐらいもっと葉が茂っていたはずなのに、その上、葉の様子もおかしい。何かに齧られている・・・。

この時期こういう齧り方をするのはたいてい芋虫の仲間だ、夜中の犯行ならヨトウムシが疑わしい。現行犯で捕まえてやろうと葉の裏を見るがどうも見つからない。

上手に土の中に隠れていることもあるが、その場合は土が少しふんわりしているので手掛かりになる。だが、それも見つからず。悔しい。

なによりも、育ったらこの秋に新規に紹介しようと思っていた種類で、結構大事に育ててきたもの。周りのものは狙わずにこれを狙われてしまった。悔しい。

くまなく探したが、見つかったのは置き土産のフンだけ。少なくともバッタとかではなくて芋虫の類だということは確かだ。もしかしたらナシケンモンかもしれない。

とりあえずは、食害された葉を剪定して様子を見ることにした。

他の苗もチェックしていると、かなり離れた場所にあったペパーミントゼラニウム(これも久しぶりの増殖で目にかけていた・・・)も齧られていた。

こちらは現行犯逮捕できた。ナシケンモンだった。

それにしてもどいつもこいつもものすごい食欲。秋だなぁ。

何を食べているのやら

昨日、とある花壇の手入れに向かった。

壁沿いの花壇を手入れしていると、壁と樋の隙間に何やらゴミがひっついていた。

最初は笹の葉でもが蜘蛛の巣に引っかかっているのかと思っていたが、どうやら違う。手のようなものが見える。

そっと捕まえてみると、ナナフシの仲間のようだ(後で調べるとエダナナフシではないかと思える)。

しばし観察してから壁に戻してやると器用に垂直の壁を登っていく。スポーツクライミングのオリンピック選手でもここまでスイスイと楽に登れないだろう。さすが六本足である。

ナナフシは植物の葉を食べるそうで、桜やクヌギなどの紅葉樹の葉を食草とするらしいが、建物の周りは広く駐車場。

ツリージャーマンダー

ナナフシがいた下に植っているのは、ローズゼラニウム、ツリージャーマンダー、サルビア・ミクロフィラ・ホットリップ、そしてアンソニーパーカーセイジだけ。一般に食草とされるものはないのだが、一体何を食べているのやら。

まあ、見てわかるような被害も見つからないし、放っておくことにした。

それにしても最初に見つけた時の様子、どう見ても我々から見えにくいところに隠れていたように思える。

危険を感じて隠れたのだろうか、それとも我々が植えたハーブをかじっているのが気まずかったのだろうか。

覚えられない蜘蛛の名前

おっとっと、今日は引っかからないぞ!

と、ぎりぎりでよけることができた。

ビニールハウスと、横のボダイジュの間に貼られた大きな蜘蛛の巣。昨日は見事に引っかかって、せっかく作った巣を壊してしまった。

1日で見事なほどに修復された巣、壊してしまうのが申し訳ないぐらいだ(通り道だと厄介だが)。

数年前、キャンプブームに乗ったわけではないが、タープを手に入れた。森の中などで何度か設営してみたが、なかなか難しく、今だにうまく張ることができない。

それに比べるとこんなに小さな体なのに、丈夫で更に美しい糸を張れる蜘蛛に教えてもらいたいぐらいだ。

感心しながら巣を観察したのだが、「え~っと、コガネグモだったっけ?」と種類は曖昧にしか覚えていない。

ずいぶん前に、少しでも苦手意識(蜘蛛の糸が顔に絡まるのは苦手)を克服しようと、相手を知るために本を手に入れたのだが、いまだに覚えられない。結局ジョロウグモのようだった。立体的な巣が特徴だとか。本にはオスが同居すると載っていたが確かに近くに小さい蜘蛛がいた。子供とばかり思っていた。