秋の風物詩

もうすっかり秋の風物詩のひとつになってしまった感もあるセイタカアワダチソウ。圃場でも勢力を伸ばしつつある。

まだ隣りの荒れ地に繁茂していた頃は種子で飛んでくるのだろうと安易に考えていた。。ところが、あるとき隣地と接したところの花壇の手入をしていてあまり見たことの無い強力そうな地下茎が伸びてきていて驚いた。辿ってみると隣のセイタカアワダチソウから伸びていた。しかも1メートル近くも地中を這って侵入を試みていたのである。この時初めてセイタカアワダチソウの恐ろしさを感じた。

セイタカアワダチソウ

上の写真も、セイタカアワダチソウが生えているところは、圃場を整備した時に出てきた大小の石を積んでいたところである。草など生えないだろうとほったらかしにしていたが、最初にミント、そして今年はセイタカアワダチソウが占拠してしまった。

少しまえ、セイタカアワダチソウを使って炭を作ると言うようなニュースを聞いたことがある。今は強力な雑草として嫌われ者のこの帰化植物。この繁茂力をどうにか活かせないだろうかと時々考えてしまう。強力なアレロパシー物質を出すと言うので、他の生物にインパクトの少ない除草剤とか・・・既に研究されているのだろうが、我々一般人でも簡単に活用できる方法でもあれば見方もずいぶん変わるだろうに。

花と耐寒性

冬を前にして、早く花を咲かせておこうと、秋咲きのハーブたちが次々と花を咲かせるようになった。

とはいえ、中にはあまり咲いて欲しくない種類もある。耐寒性があまり高くない種類は花を咲かせてエネルギーを消費するのか冬越しの成績が下がってしまうようだ。

松江では、耐寒性と冬の寒さがぎりぎりのラインにあると思われるステビアがそれに当たる。大きくした鉢植えや、地植えでも大株になり、株元にしっかりマルチなどの防寒をすれば大丈夫なのだが、今年の夏ポット上げしたような苗は危ない。冬と言ってもとりわけ加温することもないので年によってはかなり冬越しできない株が出てくる。

ところが、秋に花を咲かせないと、葉を残したままで案外持ってくれるのだ。そのかわり、秋遅く(つまり今の時期)、次々と花芽が上がってくるのを剪定して開花を阻止してやらなければならない。これが案外面倒でつい怠けてしまって花を咲かせてしまいがちである。

ステビア
ただ、一つ有り難いのはステビアの花はそれほどパッとしないので、「せっかく花が咲いているのに・・・もう少し咲かせよう」なんていう気が起こらないことである。

アピールは秋にこそ

他の季節に咲く花が、季節を忘れたかのように秋に咲くと思わぬ表情を見せることがある。秋の空気の中で咲くことももちろんその理由の一つだろう。そして思わぬ時に咲いたことを喜ぶ我々の心によるところも大きいに違いない。

コモンラベンダーが秋に咲くと、特に美しい。花数が少ないのは仕方がないが、しっとりと朝露を身にまとい、春よりもいちだんと濃く色づいた姿はまた格別である。残念ながら、今年の夏のコンディションがあまりよくなかったせいか、圃場では秋のラベンダーはあまり楽しめなかった。まあ、秋のラベンダーは夏越しが大変なこの地域では、夏の間良く管理が出来ましたという御褒美みたいなものだと思っている。

ウッドカラミント

そのかわり、今年はウッドカラミントがなかなか良い花を咲かせている。夏前に咲くよりもむしろ大輪で花の数も多いように思える。寒さのせいか、赤みも強いようだ。カラミント・ネペトイデスほど長期間は咲かないし、ラージフラワーカラミントのような大きな花ではないが、
「おいらも結構実力はあるんだぞ」
とアピールしているかのようだ。

草に埋もれて

まだインターネットがこれほど普及していない頃、得られる情報は限られていた。外国のカタログから種を注文する時も、写真がない場合も多く、テキスト情報から想像するしかなかった。ネット検索で花の写真もパッと見つかる今とは雲泥の差である。

それゆえ、育ててみたものの期待外れに終った種類も多々ある。そういう種類に限ってカタログでは魅力的な説明がされているのだ。

Salvia tilifoliaもそのひとつ。素敵な花が咲きそうな説明に惑わされ、種を購入した。発芽率がものすごく良かったのを素直に喜ばず、怪しむべきだった。

その後すくすくと育ち、いよいよ開花。
「あれ?これかい?」
期待しすぎも有り、妙に拍子抜けしてしまった。こうなると関心が薄れていくのも速い。一年草ということもあり、それ以降育てなくなってしまった。

Salvia tilifolia
花もちもあまりよくない

それなのに、である。しっかりと種子を飛ばしていたのだ。圃場の隅に毎年生えてくるようになった。邪魔になるわけではなく、さりとて気にすることも無くそのままの状態が続いている。回りの雑草に埋もれながらも毎年伸びてくる力には少し驚いている。

Salvia tilifolia

もうひとつ、このサルビアをみると、サルビアがシソ科だということを改めて実感させられる。圃場にきた近所の方が、花の終った後の穂を見て
「あ、あんなところにシソが」
と間違えてしまったぐらいである。

最後の職場

作業をする時に欠かせないツールはまずハサミであるが、ポット上げや挿し木などをする場面も多いのでラベルと鉛筆も必携である。

ラベルはともかく、ラベルを記入するための筆記用具については、園芸に携わるようになってしばらくの間、色々な種類を試した後、ようやく鉛筆にたどり着いた。最初に手を出したのは、ホームセンターの園芸コーナーにあった園芸用の太い鉛筆である。しっかり書けるのは良いのだが、細かい字は無理。長い名前など、何を書いているか後で見ても分からなくなる。「ひまわり」とか、「あさがお」と書くには良いのだろう。

同時期に園芸用マーカーも使いはじめたのだが、これもちょっと乱雑な使い方をしたり、泥がついたラベルに記入しようものならすぐに書けなくなる。これも字が太めだし、そもそも、どこが園芸用なのか良く分からなかった。細字タイプもある汎用の油性マーカーもしばらく試した後、使わなくなった。書き味は良いものの、水や泥がかかったり、高温、低温下ではじきに使えなくなる。その上、案外耐候性は低く、数年はおろか、一年でだいぶ字が薄くなってしまい、書き直す手間も出てくる。

結局、一番シンプルで昔から使っていた鉛筆が最良だということが分かった。水に濡れようが、日に当ろうが、少々のことで問題はない。文字の太さや濃さも種類や削り具合でいかようにもなる。耐候性も一群の筆記用具の中では抜群である。実は鉛筆愛好家は結構いるようで、それぞれに柔らかめの2Bが書きやすくて良いとか、硬い4Hのほうが消えにくいとかこだわりを持って使っていらっしゃるようだ。

うちのスタッフの間にはそれほどのこだわりはないものの、いつもハサミたちとともに腰にぶら下がっているし、圃場の要所要所においてある。

もちろん、そんな過酷な場所で使うので、新品など使ったりしない。子供の使い古しや、道端で拾ったものなど、既に一度その役目を終えたような鉛筆ばかりである。

それにしても削り方が下手である。一番下のはプラグ苗を下からつっつくのでお尻のところが摩耗している。
それにしても削り方が下手である。一番下のはプラグ苗を下からつっつくのでお尻のところが摩耗している。

彼等にとってはおそらく最後の職場。頑張って欲しい。