こぼれダネはどこに?

こぼれダネで増えていくハーブは多い。とはいえ、そのハーブにとって条件が良い場所であればであり、なんでもというわけでもない。

割とよくある例として、ボリジはこぼれダネでよく発芽するのに、カモミールはしない、またはその逆も多い。全てがというわけではないようだが、わりとねっとりした畑のようなところではボリジのこぼれダネがよく発芽するようだし、さらっとした砂質の畑や花壇ではカモミールがよく芽生えるようだ。

当店の畑は、さらっとした方の土だと思うが、なんせ雑草が多く極小のカモミールの発芽など発見するのがほぼ無理だ。春になってかなり大きくなってから「なんとこんなところに」という感じで見つかる。しかも決して数は多くない。おそらく昆虫などに横取りされる種子も多いのだろう。

そんななか、確実にこぼれダネが見つかるスポットがある。

それが、売れ残った前シーズンのジャーマンカモミールのポットのなかである。意図的に花を残して種子を落としてもらうようにしているのだが、夏を超えた頃からぽつぽつと発芽を始める。そのため、普段ならすぐに片付けてしまうポットだが、数ヶ月放っておく必要もある。

まだ本葉がひと組しか出ていないようならいちどプラグに移植して大きくなるまでしばらく育ててポット上げを行う。ある程度大きくなっているのはそのままポット上げをすることもあるが、やはり少し根を伸ばしてからの方がその後の歩留まりは良い。

小さい芽はいちどプラグに移植。肩の凝る作業。

実はこの他にも普通に種まきもしているのだが、なぜかこちらのこぼれダネ(もとは同じ親株の種子なのだが)の方がその後の成長が良かったりする。一度紙やビニールに包まれてしまうのがいけないのか、過酷環境の方がいいのか、その辺はよくわからない。

ひっそりと闇に紛れて

この暖かさなので、まだ様々な害虫に悩まされる日が続いている。

もう半月もすれば、昆虫たちはほぼなりを潜めるのでずいぶん気が楽になるのだが、かわっていままで目立たなかったものが気になるようになってくる。

それがこの陸貝の仲間(名前は知らないが※)だ。もちろん、ナメクジには本当に年中悩まされているが、もしかしたらこの陸貝も一年を通じてひっそりとハーブの葉っぱを食べているのかもしれない。

一方で、陸貝の代表ともいえるカタツムリにはそれほど困っていない。日々水やりをする苗なので、もっといても良さそうなのに、被害は年に数えるほどだ。

この陸貝は小さいし、食べたとしても葉に開ける穴も小さいのだが、夜行性なのか早朝によく見かける。以前、タックシールを食べて穴をかけていたのを見たこともある。紙の裏のノリが美味しかったのだろうか。

殻もとても薄いのでちょっとつまむとパリンと割れてしまう。大きな被害がない分、ちょっとかわいそうに思うこともある。

でもそういうのにかぎって闇に紛れて悪いことをしているのでは?なんて思うのはドラマの見過ぎかもしれない。

※調べたところ、オカモノアラガイの仲間のようだった。

蕎麦のエネルギー

仕事場へ行く道の脇には蕎麦の畑がある。今年も8月の終わりに一斉に小さな芽吹きが見られたかと思ったら、いつの間にか大きく育ち、少し前から白い花が咲き始めた。厳しすぎる残暑だったのに、あまりそれを感じさせない成長、さすがに救荒作物とされるだけはある。

当店の育苗用土にも、水捌け促進その他のために蕎麦殻を入れているが、蕎麦が育ちやすいシーズンだからだろうか、いろいろなところから蕎麦が芽を出している。

中には、販売用の袋に詰めた中の土から発芽するエネルギッシュな芽もあるほどだ。

この蕎麦殻、専門の製粉会社から仕入れているので、相当しっかり脱穀されているはずなのだが、それでも発芽ゼロではない。

昔、石臼引きの蕎麦殻を使った事があるが、もうそれはそれは、ハーブを育てているか蕎麦を育てているかわからないほど発芽して困ったほどだ。

また、もっと昔、もみがらも土に入れていたこともあったが、たとえ春であってもイネの発芽は一度も見た事がなかった。発芽条件の違いか、脱穀の精度もあるのだろう。でも、蕎麦の中に貯められたエネルギーを感じざるを得ない。

複数条件

農業はタイミングがとても大事だ。種まきのタイミング、挿木のタイミング、ポット上げのタイミング、定植のタイミングなど、植物と気温や季節で然るべき時に然るべき作業を行う必要がある。

また、設備のメンテナンスも案外タイミングに頭を悩ませられる。ビニールハウスの張り替えなどは、雨が降らず、風が弱く、かつ、人数が集まる時という最低条件が必要だが、理想を言えば、暑くなく(パイプが熱いと作業が大変だし、作業自体も辛い)、忙しくなく、土も乾いている・・・とか言い出せばキリがない。

ずいぶん前に取り外した寒冷紗も、片付けのタイミングを見計らっているうちに、ずいぶん日が経ってしまった。外してとりあえず適当に丸めて放置していたが、横を通るたびに気になっていた。

この、寒冷紗をたたむ作業も、人数が確保できて、天気で、風が弱く、道路が乾いていて、道路を車が通らない日(時間帯)という条件が揃うと作業が楽だ。

ということで、この日の作業となった。今日は比較的小さい寒冷紗なので、頑張れば一人でも作業はできるがやはり複数いた方が早く綺麗な作業ができる。

まずは、クシャクシャにしていた寒冷紗を広げて、引っかかっているゴミや虫の死骸などを叩いて落とす。そして道路に広げて畳んでいく。

畳むのは特にルールはないのだが、きちんと畳むのとそうでないのではずいぶんサイズが違ってくる。小さく畳めば小さな袋にも容易に入る。

大事なのは、袋に取り付け場所を記入しておく事。これがあるのとないのでは来年の夏前の作業がスムーズにいくかどうかに大きく関わるのだ。もう記憶力があてにならないからね。

食欲の秋

朝、仕事場へ来ると、たいてい苗の状況を確認するために一回りする。

極端に乾いているものがないかをチェックするのが主な目的だが、何気なしに見ていると、ふと違和感を感じることもある。

違和感を感じた苗

今日はこの苗だ。昨日までは下の土が見えないぐらいもっと葉が茂っていたはずなのに、その上、葉の様子もおかしい。何かに齧られている・・・。

この時期こういう齧り方をするのはたいてい芋虫の仲間だ、夜中の犯行ならヨトウムシが疑わしい。現行犯で捕まえてやろうと葉の裏を見るがどうも見つからない。

上手に土の中に隠れていることもあるが、その場合は土が少しふんわりしているので手掛かりになる。だが、それも見つからず。悔しい。

なによりも、育ったらこの秋に新規に紹介しようと思っていた種類で、結構大事に育ててきたもの。周りのものは狙わずにこれを狙われてしまった。悔しい。

くまなく探したが、見つかったのは置き土産のフンだけ。少なくともバッタとかではなくて芋虫の類だということは確かだ。もしかしたらナシケンモンかもしれない。

とりあえずは、食害された葉を剪定して様子を見ることにした。

他の苗もチェックしていると、かなり離れた場所にあったペパーミントゼラニウム(これも久しぶりの増殖で目にかけていた・・・)も齧られていた。

こちらは現行犯逮捕できた。ナシケンモンだった。

それにしてもどいつもこいつもものすごい食欲。秋だなぁ。