蝶に惑わされた話

蝶が目につく日が続く。いや、今日の場合は目を奪われたと言うのが正しい。普段蝶が飛んでいてもそれほど気にかけることもないのだが、今日ばかりは違った。

どこからかビニールハウスに入って来た一匹の蝶。ゆったりと、優雅に羽を動かす姿、その色にハッとさせられた。特に言葉では言い表せない羽根の色、いつの間にか作業をするのも忘れ、蝶を追っていた。

そうそう、写真、写真。と、どこかへ行ってしまうのを心配しながらもデジカメを取りに戻った。幸い、まだその当たりにいて休憩中の御様子。脅かさないよう、そっと近づき、まずは一枚。

カラスアゲハ?しばらくしてまたふわりと飛びはじめたが、すぐにローズマリーの鉢に止まった。羽を傷めているようである。それで飛び方もゆっくりだったのだろうか。もうこれ以上追い回すのをやめた。
カラスアゲハ?
こんなとき、蝶の種類を知らない人(私)は、「もしかして新種?」なんてドキドキしてしまうものだ。今回も事務所に戻って調べたらカラスアゲハかその仲間のようであった。ミヤマカラスアゲハと言うのにも似ているが、よくわからなかった。それほど珍しくないようでちょっとがっかり。

いわゆる蝶に惑わされたと言う話。ま、夜の蝶でなくて良かった。

ヤマトシジミ

お盆ごろから、ひらひらとハウスの中に迷い込んでくる小さな蝶や蛾が目立つようになる。可愛らしいチョウの仲間や、小さな蛾の仲間も多い。

小さいので油断していると、マロウの仲間やタイムの葉に卵を産み付ける種類もいるようで、あっという間に葉が食い跡だらけになってしまう。幼虫を見つけるのはそれほど難しくないのだが、捕まえようとするとピュッと逃げられたりして悔しい思いをさせられる。

いったん食い荒らされた葉は元に戻らないので、苗なら切り戻さなくてはならず、チト迷惑なやつらである。

ヤマトシジミ?かな
ヤマトシジミ?かな

今日はペレニアルフラックスの葉先で一休みしている一匹を見つけた。そよ風が吹いても揺れてしまう繊細な葉の上でもちょこんと止まれる小さなサイズ。この方はヤマトシジミかな?同じ名前でも、どちらかと言えば味噌汁にできる貝のヤマトシジミのほうが有りがたいんだけど。

ウワ〜ン

ビニールハウスの中で苗の整理をしていると、外から「ウワ〜ン」とかすかにうなるような音が聞こえてきた。

おや、何の音だ?と一瞬思ったが、すぐにわかった。蜂の巣離れである。昨年も確か今ごろ遭遇したように思う。

外へ出てみて、音のする方へ行ってみると、裏の竹やぶの辺りで蜂が群れ飛んでいる。即座にカメラを構えたが、遠すぎるのとカメラの性能が足りず、何の写真だかわからなくなってしまった。

subanare

昨年は群れがビニールハウスの方へ向かってきた。ミツバチは怖くとも何ともなくとも、さすがに何百(何千?)の群れになると少し緊張した。今年は竹やぶの奥のほうへ消えていったので少し安心でもあり、残念でもあった。

また、昨年は二日続けて巣離れに遭遇。何か起こるのではないかと話していた。ミツバチの減少が危ぶまれている今年、一度でも多く見かけたいぐらいである。

優先順位

圃場の端、隣りとの境界にはいくつかのハーブが植えてある。ユーカリやローズマリー、モッコウバラなど木本性のものが多い。普段なかなか手入が行き届かない場所なので、丈夫であることが第一。そしてなにより、有る程度株丈があって、草に埋もれない強靱さが必要とされている。

例年、月に一度程度は草刈りをするので、上記の布陣で特に問題はなかったが、雨が多い今年の夏は雑草の伸びるスピードが尋常ではなく、ローズマリーがピンチである。普段なら直立して細身できれいに伸びてくれるドワーフブルーローズマリーも今年はかなり横広がり。例年の倍はありそうだ。下のほうは蒸れの影響もではじめている。

ドワーフブルーローズマリー

良い新芽も伸びてきてそろそろ挿し木の親木としても活躍してもらわなければならないのにこれではやや心配である。

なんて写真を撮ってる暇があればさっさと草刈りでもせねば。相変わらず優先順位を付けるのが下手なのである。

ブータンのとんがらし

夏前、スタッフの一人が苗のポットを持ってきた。中で発芽したばかりの小さな芽が五つ六つ伸びていた。ラベルには「ブータンのとんがらし」と書いてあった。

スタッフが友人からもらったと言う。詳しく訊ねてみると、その友人も知り合いの青年海外協力隊?かなにかで、ブータンに行った人からもらったと言う。

種子をもらった友人が蒔いてみたら発芽したので、こちらで育ててもらいたいとスタッフに預けたのだ。

どんなものかわからないが、まず一ポットでは窮屈なので一株づつポット上げした。そのまま順調に育ち、普通のトウガラシのような苗になり、ハウス横の野菜畑に植えたのが7月に入ってからだと思う。

この夏の雨続きの天気で果してブータンの植物が育つのか、全く自信はなかった。枯れたら枯れたときという気軽な気分で様子を見ていたが、少し徒長して支柱が必要になったぐらいで、順調に開花。実も付けはじめた。

ネパールのトウガラシ

どうしようかという話になったが、正体が分からないトウガラシは結構怖い。以前、やはり初めて育てた種類を不用意に口に入れて大変な思いをしたことがある。

まずは、持ってきた人が・・・ということで、当のスタッフが収穫することになった。何本か収穫して、持って帰るかと思いきや・・・

なんと、ハウスにあるコンロを持ち出してきた。その上、以前カモミールの煎じ液を作った時に間に合わせでこしらえたザルを出してきてその上で焼きはじめてしまった。トウガラシを洗いもせず、きったない作業台の上でだ!

ネパールのトウガラシ

うちのスタッフはこういう時は勢いがあるから怖い。これもまた机の奥底に眠っていた即席味噌汁の味噌をつけて食べると言いはじめた。(そもそもビニールハウスに即席味噌汁があることも問題だ)

適当に焼くとなかなか良い匂いである。その場に居合わせたのが運の尽きと観念してお相伴に与ることにした。

恐る恐る口に含むと、ピーマンよりも甘く柔らかな香りが広がる。辛味は・・・というとぴりっと辛い。でもシシトウをちょっと辛くしたぐらいでなかなか美味しいといえるのではないだろうか。

食べた後で何か起こるのではないだろうかという心配も杞憂に終った。もう何度か食べてみてやはりイケルようだったら種子まで取ってみようかという話になっている。

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