植物はその環境で育ち方が大きく変わる。バジルのような一年草ならなおさらはっきりと表れる。下の写真、いずれも同じスイートバジルである。種子を蒔いた時期も同一。用土・肥料も全く同じ。ただ、違うのはポット上げしてからの置き場所と管理だ。
左は午後から少し陰になるような場所で水もやや多め、右は一日中しっかり日が当り、水は他のハーブ苗と同様、やり過ぎないようにして育てたものである。
どちらが良いかというと・・・・。結論は出ない。店頭に出せば、お客様が手に取るのはまず左のほうである。見た目も明らかに美味しそうだ。ただ、このまま植えると、風でも吹けば頭が重いためにすぐに倒れてしまう。とりあえず一度すぐ収穫するのが前提である。
右のほうは見た目もいまいち。葉も硬そうだ。でも、過酷な場所に植えても、こちらのほうが絶対活着が良い。
植えてもらって、うまく育つ方が良いか、まず手に取ってもらえる方が良いか、苗を作る側としては迷うところである。
いずれにせよ、どちらの苗も、今後の育て方によって葉を柔らかくも硬くもできる。
柔らかくするには水を切らさないように、肥料も多め、収穫をこまめにして新芽を次々出せばよい。若干遮光しても良いだろう。葉は柔らかで大きく、つやが有り、丸みを帯びる。香りも柔らか、まさに「スイート」なバジルになる。生でサラダに入れるのなら食感もよいし見た目も良好だ。そのかわり、水を切らすとしおれやすいし、バッタなどの被害にも合いやすい。
硬めにするなら水はそこそこ、肥料も普通のハーブプラスアルファぐらいで充分。結構ほったらかしでも大丈夫。花芽は早く付くけれど。ガンガンの日なたで育てれば、スパイシーな香りの強い、小さくて厚めの葉のバジルのできあがりだ。というか、あまり面倒を見ないとこんなバジルになる。でも、案外火を通すのならこちらの方が良いのかも知れない。
このへんを上手にコントロールして作り分けられるぐらいになると、園芸もいろいろ楽しくなってくるのだ。