どちらが幸せ?

3月の声を聞くと土の中から緑色がエネルギーとなって飛び出してくる。

ハウスの周りでも頼みもしないのに一斉にヨモギが顔を見せ始めた。「あ〜、今年も元気だね〜」と一人呟く。

ヨモギ
草押さえに撒いたそば殻も地下から出てくるヨモギには無力に近い

今はまだ可愛らしい姿に見えても、あっという間に大きくなる。そして、既に土の下では強力な地下茎が繁茂していることだろう。

ひな祭りにそなえる菱餅にでも使えばまだ溜飲を下げることもできよう。もちろん、優れた薬用植物としての利用もできる。しかし残念ながら需要に対して供給が恐ろしく過剰である。今年もまた草刈りの相手として立ち向かわなくてはならない。

毎年ながら、ヨモギを見るとこれがどうしてタラゴンと同じ属なのか頭をひねりたくなる。

でもきっと、タラゴンもヨモギぐらい強力だったら雑草として嫌がられただろうし、ヨモギもタラゴンぐらい繊細だったらきっと大切に扱われたことだろう。さて、どちらが幸せなのだろうか。

ルックスは二の次?

個人的に、タイムはハーブの中でも好きな方である。大きくなりすぎて困ることも少ないし、どちらかと言えば控え目。でも、香りはしっかりしているし、きちんと育てると予想外に良い花を咲かせてくれるのも嬉しい。

場所さえ適切に選べば、比較的安定した育ち方をするのもポイントが高い。寒さにも強いので、冬も特に心配する必要がないのだが・・・。

タイムは比較的強いハーブであるが、過湿は避けた方がベターだ。冬場もそれに習い、水のやりすぎにならないように育苗している。ところが、乾燥気味にすればするほど、(且つ、寒くなればなるほど)葉の色は赤茶けてくる。株自体は健康なのに、見た目は決して良いとは言えない。写真はクリーピングレモンタイムである。

クリーピングレモンタイム

これも、少し暖かいところにおいて、水やりを多めにすればもっとグリーンがきれいになる。しかし、その株の根を見れば、根腐れ気味であることが多い。

見た目よりは株のコンディションを優先するべきなので赤茶けようがあまり気にせずにいるのだが、それでもやはり褪せた色に変わった葉を見るたびにどうにかできないものかと思うのである。

珍しい鉢植え

圃場には鉢植えがたくさんある。でも、ほとんど全てと言っていいほど親木としての鉢植えである。形良く育てるとか、花をたくさん咲かせるとか言うのとは無縁の鉢花たちだ。

形良くと言うのはともかく、花をたくさん咲かせるとそれだけ株はエネルギーを消費する。親木用としては花は咲かせない方が育てる目的にかなっているのだ。第一、挿し穂をとられたり、株分けに使われたりで花を咲かせている余裕はないと言うのが正しいかも知れない。

八重咲スイートバイオレット

そんな中でも、珍しく良く花を咲かせた鉢があった。この八重スイートバイオレットは確か昨年の秋植え替えした時、株分けのニーズから上手に逃れて、株が充実したままその後を過ごしたのだろう。見本のような咲き方である。実際この圃場では珍しい。

八重咲スイートバイオレット

あまりに珍しい?状態なのでついつい写真に撮ってしまった。

優先順位

春を思わせるような日が時々現れるようになるとハーブたちの色も鮮やかさを増してくる。気の早いものはゆっくりながらも成長し始めてくる。とは言え、日照量がまだ充分ではないので種類によってはひょろひょろと伸びやすくなるものもある。

枝分かれを促進し、株の形を整えるために、そんな苗を見つけては軽く剪定を掛けている。また、木質した枝から新芽が伸びた苗に切り戻しを行なうのも形の良い苗を育てるのに大切だ。

ペパーミントゼラニウム

このチョコレートペパーミントゼラニウムは昨年挿し木して、秋にポット上げしたものである。結構木質化した枝の下のほうから葉が現れ始めたので少し切り戻してやる必要があるのだが、ご覧のようにカマキリの卵が・・・。伸びようとしている葉もなんだか窮屈そうである。

この場合、ゼラニウムの成長と、カマキリの卵、どちらを優先するかと言えば、カマキリの卵の方である。前に、同じようなシチュエーションに遭遇したことがあった。その時は枝を剪定して、「ここなら問題ないだろう」と思われる場所に置いておいたのに孵化しなかった。乾燥しすぎたり、濡れすぎるのは良くないようで、時々潅水する苗にひっついていると言うのが適度なのかも知れない。

と言うわけでこの苗はカマキリが孵化するまでしばらくこのまま。今年もたくさん孵化してもらいたいものだ。

hide-and-seek

春や夏とは比べようがないとは言え、寒さの中でも雑草はしっかり育つ。しかも、巧妙に、目立たないように。

ペニーロイヤルミント

出荷する苗を準備していたら、ペニーロイヤルミントの中にしっかりと葉を広げている雑草を発見。自分があるじであるかのように堂々としている。自分も含め、スタッフ誰もが気がつかなかった。

葉色や葉の形などまるで自分に似ている葉を選んで発芽しているとしか思えない。まあ、それだからここまで大きくなれたんだろうけど。むしろ、成育旺盛なペニーロイヤルミントの中で良くここまで成長したものだと感心するべきなのかな?

さて、例年なら寒さのため、葉にもっと赤みが差すペニーロイヤルミントだが、今年はとても良い色だ。やはり少し暖かいのか・・・