自粛

松江近郊でいくつかのお庭を手がけさせてもらっているが、徹底的に管理できる庭ばかりだと言うわけではない。コストの関係もあって、あまり手がかからないように作っていく庭もある。

雑草が生えにくいよう、生えてもとりやすいような土作りやグラウンドカバーの選定も大事だし、植える植物の方もあまり手がかからないものを選ぶ必要がある。かといって目を楽しませる要素も必要だ。

この辺りではローズマリーは育ちやすいしトラブルフリー、花の少ない時期に開花するので良く使っていた。ただ、我ながら少々ワンパターンにも思えるようになってきたのでこの頃は自粛気味。次に良く使ったのが宿根ネメシア。花もちょっと香るし、ほったらかしにしてもいつでも咲いている。少し手を入れれば言うこと無い。また、これも別にハーブではないのだが、エリゲロンも重宝している。

エリゲロン・プロフュージョン

何と言ったって頑丈だし、花色が変わるので見栄えがする。これも年中咲いているので花殻があっても開花中の花で気にならない。少し広めの場所でもこれを植えておけばかなり手間が省ける。市内のイングリッシュガーデンでも上手に使われていた。ただ、これも近年、この辺りでもよく見かけるようになったのでワンパターンと言われぬうちに手控えなくてはと思っている。

そのためには次の候補を見つけるのが先だけど。

Tidy

カーネーションの仲間はたくさんあるが、ハーブではクローブピンクが良く知られている。クローブ(丁字)に似た香りを含むのでこの名で呼ばれている。実際には種子で育てると香りの強さや花色にばらつきがあるのでがっかりすることもあるけれど。

ただ、丈夫であまりトラブルがないのは嬉しい。唯一難点は、野性味が強いので育てかたによっては枝がぐんぐん伸びてしまい、収拾がつかなくなることだ。そんなふうになった株は花茎も倒れがちで見た目もあまりよろしくない。

市内幼稚園で咲くインチメリー。おままごととかにもどんどん使って欲しい。
市内幼稚園で咲くインチメリー。遊びの中でもどんどん使って欲しい。

それに対して、同じ仲間で良く似ているのに、インチメリーカーネーションはきちんとしていて行儀が良い。枝も極端に伸びることが無いので倒れにくいし。花付きも良好だ。野性的なクローブピンクに比べると躾された園芸品種と言う感じが伝わってくる。

どちらが好きかは好みの問題だけどね。

3つまで

今年はゼラニウムの開花もずいぶん遅れた。ビニールハウスの親株は観賞用ではないので花が咲くとさっさと剪定してしまう。次の新芽を伸ばして差し芽に備えるためである。

鮮やかな色が目にまぶしいミセステイラーゼラニウム
鮮やかな色が目にまぶしいミセステイラーゼラニウム

ゼラニウムの花の剪定はあまり深く考えずに、伸びた花茎ごとパチパチ切っていけば良い。なので自分が忙しい時は手の空いていそうな他のスタッフに頼むことも多い。

「ゼラニウムの親木、花を剪定しといてね。ついでにその奥のほう、水が切れかけてたからちょっと見といて。そうそう、腐葉土が無くなりそうなら注文しといて。それから・・・」
と言いかけたところ、
「3つまでだで!!」
と拒絶されてしまった。

私も含めて、スタッフは皆、このところ物忘れが激しくなりつつある。口頭で伝えても覚えておける数には限界がある。だから頼みごとがそれ以上になると、メッセージボードに記入しておくようにしている。

といっても、大抵、3つ目は忘れられてしまうんだよなぁ

どうやって増やそう

ハーブの増やしかたは種子や差し芽や株分けなどいろいろあるけれど、多くの種類は「これがベスト」という方法が大体決まっている。種子では増やせない(増やしにくい)ものは差し芽や株分けで行なうなど、その他の方法をとるし、そうすれば大体問題ない。

ただ、中には、種子でも、差し芽でも株分けでも増えるなんていう有難い種類もある。ミントなどがこれに当り、どれでも良く増えてくれる。とは言え、種類や増やしたい数に応じて方法は使い分ける。

問題は、どの方法でもとり合えず増えるけれど、これと言った確実な方法がない種類だ。

レッドキャンピオンなど、シレネの仲間が自分にとってはそうだ。一般的には種子が良くできるので、種子で増やすと言うのがこの種類のスタンダードである。とりまきどころか、こぼれ種でもガンガン増えると言うし、実際にそうだと思う。ただ、自分は腕が悪いのか、タイミングが悪いのか、種子増殖はどうも相性が良くない。

レッドキャンピオン

で、差し芽や株分けにも挑戦してみた。差し芽はまずまず発根する。ところが、ポット上げして苗にしようとすると花がすぐ上がってしまい、葉が充実しにくい(シーキャンピオンはうまく行く)。そのまま地植えなら問題ないだろうけど。と言って花を切り戻すだけでは販売できるような充実株にならないのだ。

だったら、株分けは?というと、キャンピオンの細かすぎる根と案外貧弱な株元が邪魔してこれもイマイチだったりする。

今年は株も充実しているし、この後たくさん種子が採れそうなのでまたチャレンジしてみるつもりだ。

春菊みたいなもの

除虫菊タンジーほどではないにしても、近い仲間であるフィバーフューにも昆虫が嫌う成分が含まれている。そのため、虫媒花の作物の周りには植えない方が良いとされる。

とはいえ、虫が全く寄りつかないかと言うとそれほどでもない。気温が上がって乾燥してきた時など、少し水やりに油断をしてしまうと、鉢植えやましてやポット苗の場合、結構ダニが発生する。ダニはフィバーフューがお好きなようだ。

フィバーフューとハダニ

また、それほど多くは無いけれど、ハモグリバエ(いわゆる字書き虫)も葉を食い荒らすことがある。ハモグリバエはナスタチウムの葉に良く見つかる。まあ、こちらは人間が食べても美味しいナスタチウムなので納得できる。でも、決して美味しいとは思えないフィバーフューの葉を食べるなんて・・・と思ったが、そうか、我々が春菊を食べるようなものか。

いくつか文献をたどってみると、若葉をサラダにすると言う記述もあった。ただし苦いとか・・・。あまりたくさんは食べない方が良さそうである。