花が咲く前に

お客様からよく伺う話として「レモングラスをおじいちゃんがススキと間違えて抜いてしまった」というのがある。店頭でも毎年一回は耳にする話題である。

「まあ、草みたいなもんですからね〜。関心のないひとには見分けが付きませんよ。」と慰めるのだが、実際ハーブには「草みたいな」ものが大変多い。

ソープワートもそのひとつ。草むらの中から「探せ」と言われたら結構苦労しそうである。ただ、花が咲く時は別。柔らかなピンク色も良く目立つ方だし、しっかり育てると、写真のように思ったより存在感がある。特に、つぼみの様子がなかなか印象的である。
ソープワート
でも、観賞用として薦めますかと言われると、どうだろう。なかなか分かってもらえないかも。それ以前に、花が咲く前に間違えて抜かれませんように。

好き嫌い、多いに結構

長くハーブを育てていると、「そろそろこのハーブにこんな害虫がやって来そうだ」とか、徐々に分かってくる。結果、発見も早く、被害が大きくならないうちに対策できるようになる。春先の一年草につくアブラムシ、夏の終わり、ニオイスミレにやってくるツマグロヒョウモンなど、そうあわてずにすむようになった。グルメな奴らなのでターゲットが限定されるのが幸いしている。

ところが、ちょうど今ごろ現れるナシケンモンばかりは、「あれ、これにも」、「こっちにもいるぞ」と言った感じで神出鬼没。あわせて大食漢なので気が抜けない。今日は今伸び盛りのモミジバエルダーをばりばり。発売に向けて順調に成長していただけに口惜しい限り。

ナシケンモン

我が子には好き嫌いせずに食べなさいと口うるさく言っているが、ナシケンモンにだけはむしろ好き嫌いがあって欲しい。

刺激

この冬の大雪でヘの字に曲ってしまったユーカリ。結局初夏まで待っても「く」の字ぐらいまでにしか戻らず、さすがに見た目が悪いので枝が残っているぎりぎりで剪定した。

ユーカリ

それが良い刺激になったのか、梅雨入り頃から残っていた小さな枝がすくすくと成長。そのうえ、切り落としたすぐ下の所からたくさん新芽が出てきた。

ユーカリの新芽

これで取りあえず枯れることは無いと一安心していたのだが、今日、下のほうの太い枝の辺りから小さな芽がいくつも出ているのを見つけた。

ユーカリの新芽

普段ならこのへんから新芽が出てくることはまず無い。あな嬉しや。これならもう一段低い所で剪定できる。オーストラリアじゃないので10何メートルになられても困るしね。

腕の問題

ハーブの多くは、花が咲くと嬉しいもので、つい写真も撮りたくなる。見栄えもするからね。ところがレモンバームはあまりにもつつましやかな花で、「ああ、花が咲き始めたなぁ」で毎年終ってしまっていた。花が咲くと葉は小さく、固くなってしまうので早く切り戻して新しい葉を出したくなるのだ。同じハーブティー用のミントでさえ、もう少し目立つ花を咲かせるから結構咲かせっぱなしにすることが多いのに。

葉を繁らせるために花芽を摘むバジルだって、咲かせてみると結構良い感じだし、種子を採ると言う目的も後にはある。ところがレモンバームはかえってこぼれ種で増えない方がありがたい。
レモンバーム
今年は幸いレンズを向ける気になって、数枚を収めることができた。とはいえ、やはり柔らかで大振りの葉の方が見栄えは良いように思う。それとも、写真の腕が上達すればレモンバームの花も魅力的に撮れるのようになるのかなぁ。

いつも後になって

自分でも今になって思うと不思議だが、お庭の仕事をしているのに、そのお庭のベストシーズンの様子を見たことはあまりない。それぞれの草花にしても同じこと。一番の開花期に向け、その前に作業を行なうので、実際に花が咲いている時には大抵他のお庭の作業にかかりきりと言う場合が大半である。

後になって、「良く咲いたよ〜」と言われて喜ぶぐらいである。

クレマチス

このクレマチスも、花びらが完全に散ってからようやくお目にかかることになった。実は半年前、クレマチスが絡んでいる塀を修理することになり、ポキポキ折れやすい枝を細心の注意を払って取り外したのである。寒い最中、本当に大変だった。そのうえ、結構この株は気まぐれで、年によっては「今年はあんまり咲かなかったわよ」と言われるぐらいなのでかなり心配をしていた。

幸い、良く咲いたようで持ち主にも喜んでいただいた。私は咲き終った残りを眺めて満足するのである。