育ててみなけりゃわからない

朝晩の気温がだいぶ下がってきた。早朝と夕方は、上着がないと厳しい。

一方、暑さが嫌いで涼しいのが大好きなハーブの仲間はきわめてご機嫌。

ゴールデンセイジゴールデンセイジもこの夏は本当にしんどそうだったのに、今は気持ちよさそうに鮮やかな葉を広げている。

ウーリーラベンダー

一時瀕死の状態だったウーリーラベンダーもすっかり回復。これぐらいふわっとした葉では今年の夏は特に厳しかったに違いない。これからますます白っぽくなっていくことだろう。

先日、この辺りでは最高峰とされる鳥取県の大山に登った。山麓までは毎年のように出かけるが、登山は何十年ぶり。

クルマバソウ
登山道の周りはクルマバソウ(ウッドラフ)がいたるところに

それにしても中高年女性の「山ガール」の多さにはびっくりした。とにかく賑やかで二人以上なら、降りてきても登ってきても遠くからすぐわかる。熊よけの鈴もいらないぐらいだ。それよりもこんなに急な坂を登りながらあんなにおしゃべりして息が切れないのが不思議だった。発声器官とべつに呼吸器官があるのだろうかと思えるぐらい(失礼!)。

さて、そんなすこし高齢の「山ガール」の集団の一人の方が、「友達に『山登りの何が楽しいの?』って聞かれるけど、登った人じゃないとわかんないわよね~」と言っていた。確かにその通りだと思う。自分も以前は楽しさがわからなかった。

大山山頂
大山山頂から米子・境港方面を望む

さて、観光客で賑わっている大山寺付近は紅葉はまだこれからという感じ。それでも標高1100メートルぐらいから葉の色の鮮やかさが増し、1200メートルを超えたあたりからは木々の色はまさにピーク。何度も足をとめて観入ることにことになった。

1100~1200メートル付近

我々は紅葉を「しているか」・「していないか」で見がちなところがあるが、その間の段階も存在する。落葉も今まで緑色をしていた葉が急に落ちるのではなく、徐々に縁のあたりが茶色くなったり、斑点が大きくなっていって茶色くなり、そして葉を落とす。

1000m付近の樹木
1000m付近の樹木

とはいえ、普段そういう途中経過を観察する場面は決して少なくない。この間も、続けて複数の方から下記のようなご質問を頂いたが、初めて育てる方にとっては驚くことなのだろう。

エルダーの葉が枯れていきます | ヘルプ・Q&A 

ボダイジュ
ボダイジュの葉も、落葉前はこのような感じ(当店圃場)

これも実際に育ててみなければわからないことだ。そういう意味でも植物を育ててみると発見が多く、観察力・想像力・推察力がついてくると思う。

さて、大山では更に高度を上げると植生が変わり、落葉樹の姿は減っていく。頂上付近になると、雪や寒さに耐えられるごく限られた灌木が主体となる。リアルタイムで植生の変化や草木が秋の初めの装いから、紅葉、冬にちかい姿に変わっていくのを見ることができる。植物を育てる人は登山することで、また一つ楽しみが増えるのではないだろうか。

サワフタギ
頂上付近のサワフタギ。ブルーの実が印象的

屋久島(だったかな?うろ覚え)では、亜熱帯から亜寒帯までの植生を体験出来るという。スタッフの一人はすでに訪れているが、自分もいつかは行ってみたいものだ。

 

この秋の蜂たち

気持ちの良い天気が続く。それでも、山陰の秋らしく、思わぬ通り雨があったりする。これから冬にむけてこのような天気が増えてくるだろう。

パープルメキシカンブッシュセイジ
鮮やかなパープルメキシカンブッシュセイジも目を楽しませてくれる

ハーブたちも、秋の装い。秋咲きのセイジ類は次々と花を咲かせている。

パイナップルセイジ
渇水で一度は株が枯れる直前だったパイナップルセイジもみごとに花を咲かせた

苗も今まで上に伸びていたものが、横に伸び始めた。

アップルミント
アップルミントは隣のポットにまで進出する勢い

少しでも日差しを受ける範囲を広げようとしている。小さい苗が季節を敏感に感じて姿を変えようとすることに感心するばかりだ。

オレガノ
オレガノも冬に備えた姿に

 

夏の盛りにちょっと無理をして剪定をしたラベンダーも順調に新しい葉を伸ばしつつあり、安心している。

グラッペンホールラベンダー
過酷な時期に剪定して少し心配だったがもう大丈夫

ところで今年は蜂の仲間を見ることがとても少ない。スズメバチもいないことはないのだが、相当少ない。いつもの年なら一日に一度ぐらいは「ブーン」という音で首をすくめることも多いので、ありがたいことではあるが。

アシナガバチに至っては、圃場のまわりじゅう探しても巣が見つかるだろうかというレベルだ。秋は知らないうちに大きな巣ができていて、しかも好戦的になっているので注意が必要な季節なのに。

もちろん、正確な原因は分からないが、例年をはるかに上回った夏の暑さが影響しているのではないかと思っている。

これもまた、推測に過ぎないのだが、アシナガバチがいないせいか、妙に今年は毛虫・芋虫の仲間を目にする。

ナシケンモン特に目立つのがこのナシケンモン(たぶん)。ミントを始め、レモンバーム、ラベンダーなど、いろいろな苗をかじっている。

ナシケンモン
ラベンダーもバリバリ

毒はないようなので心配する必要はないとはいえ、クリーニングしていて突然見つけるとさすがに少しビックリさせられる。

アゲハの幼虫
アゲハの幼虫も多い。ルーもあっという間にかじられてしまいそうだ

アゲハの幼虫もアシナガバチのターゲットかどうかは知らないが、やはり目立つ気がする。

今のところ、困るほどの被害はないが、他にも影響がないかどうかだけが心配だ。

地面の下から蘇る

すこし夏を思わせるような蒸し暑い1日となった。蚊も出はじめて、これからしばらくは作業に支障が出る。

さて、地面の下から蘇るというと、映画ではゾンビと相場が決まっているが、植物の場合は珍しいことではない。

大抵、寒さに強い植物ほど寒い時期は地上部をすっかり無くして寒さに備え、暖かくなってから顔をのぞかせる。

中途半端に強いものは落葉ぐらいで冬支度を終えるものもおおい。

今年の厳しい冬はそういう種類のハーブがずいぶん寒さで傷んだ。

まず、レモンヴァーベナ。もうほとんど諦めていたのだが、ようやく新芽を確認できた。

レモンヴァーベナ
普段なら上の方の枝から芽が出てくるのだが・・・

ただ、例年なら鉛筆ぐらいの枝から直接葉が覗きはじめるのだが、今年は上の方の枝は完全に寒さでダウンした模様。株元の地下から直接新芽が出てきた。

もう一つがグレープセンテッドセイジ。これもすこし寒さに弱いが、例年なら葉がチリチリになる程度。ところが今年は葉が完全に落ちてしまって春になっても一向に芽吹かない。これもやはりダウンしたかと観念したが、一つは株元近くから、もう一株はやはり地下から新芽が伸びてきた。

グレープセンテッドセイジ
もともとの枝ぐらいになるにはさて、何年かかるか・・・

どちらも今年は株を養生することに力を注ぐ夏になりそうだ。秋までに元の通りぐらいに大きくなるといいのだが。

春の動き

このあいだまでの初夏を思わせる陽気とはうって変わって、昨日の午後からは少し冬に逆戻りしたような天気となった。

今朝など冷たい風が強く、作業場ではもうつけないと思っていた薪ストーブも点火された。例年の予定では4月の下旬に片付けるので、やはりまだ早かったようだ。片付けなくてよかった。

薪ストーブ
やはり火の暖かさは格別

それでも、ここ一週間の暖かさでずいぶん春の動きが見え始めてきた。

特に、寒さでダウンしていたのではと思われるハーブたちが徐々に姿を見せ始めてホッとしている。

ゴールデンヘリオトロープ
ゴールデンヘリオトロープ

定期的に手入れをしている市内の病院の花壇。今年の冬はさすがに・・・とほぼ諦めていたゴールデンヘリオトロープが芽吹き始めていた。むしろ、少し離れたところにある紫色のヘリオトロープのほうが勢いが悪い。紫色の方はギリギリ屋根にかからないところなので冬の寒さの影響が大きかったのだろう。

ヘリオトロープ
普通のヘリオトロープ。こちらの方が寒さには強いはずなのだが・・・

一方、今年の強烈な寒さでかえって勢いづいたようなハーブも多い。

エキナケアプルプレアもその一つ。例年は冬の間も中途半端に葉が残っていたりするのだが、今年は寒さで傷んでしまった。その代わり、遅れを取り戻そうとするかのように勢い良く葉が伸び始めていた。これなら今年もたくさん花を楽しめそうだ。

エキナケアプルプレア

一番心配していたのが、建物の北西に当たるところに植えていたローズゼラニウム。冬、剪定するのが一歩遅れてもろに一番強い寒波を受けてしまった。雪が解けた後にはもうカリカリになっていたので、剪定はしたものの株はダウンしたと諦めていた。

ローズゼラニウム
株元から新芽が出てきて安心。

ところがしっかり株元から新芽が伸び始めていて安心。特に珍しい種類というわけでもないが、やはり何年もここで育ってきたかと思うと生き残っていてくれて嬉しい。

アンソニーパーカーセイジ
アンソニーパーカーセイジ。案外強い。

その隣のアンソニーパーカーセイジも早々と新芽を見せていた。これも秋までには胸ぐらいまで伸びることだろう。いずれにせよ一安心である。

春は急ぎ足で

昨日、ふと、作業場に貼ってあるカレンダーをみて、目を疑った。

カレンダー
余裕を持って一週間前に設定しているとは言え・・・

このカレンダーには、例年、必ず行わなければならないルーチン作業が記載されているのだが、一月後の3月13日の欄に、

「お彼岸前の草刈り」

の項目があったのだ。朝からずいぶん強く吹雪き、あっという間に道路も真っ白。畑にはまだ雪がたっぷり残っている状態で、一月後に草刈りが必要とはとても考えられなかった。

頭をひねって、2年前の作業日誌を開けてみたら、2月14日に「最高気温 17℃」との記載。自分で書いていたのに、やはり信じられなかった。春は急にやってくるものなのだろう。

さて、一転して今日は快晴。いったい何日ぶりだろうか、2月に入ってから初めてと思えるような天気の良い日だった。太陽と青空をしみじみとありがたく感じた。

お昼前、南からの強い風が吹いた。さすがに春一番とはならなかったと思うが、それでも春が近づいていることを感じさせてくれて、ホッとする。

この風で、畑の雪も一気に溶けていった感じだ。雪の下からハーブたちが顔を出している。

心配していた通り、対策を怠ったものはそれなりに被害が。

グラッペンホールラベンダーグラッペンホールラベンダーは、裂けるとまではいかなかったが、ずいぶん枝が曲がっていた。

チェリーセイジ
剪定していなければ避けていたかも

チェリーセイジは、しっかり剪定していたのでほとんど大丈夫。

ホワイトセイジホワイトセイジもずいぶん枝が曲がっていたが、株自体は大丈夫そうだ。枝は挿し木ができるだろうか。

その他、枝折れも多数。

ティートゥリー
毎年防寒なしで越えてきたのだが、少し心配なティートゥリー

雪ではなく寒さでだろう、ティートゥリーは真っ白に。こんなことは初めてかもしれない。樹が生きていればいいのだが。

今のところの天気予報では、おそらくこれで寒さも一段落しそうだ。急がなくていいので、ゆっくりと春がやってきてほしい。