もう一歩

夏の初めだったか、梅雨の途中だったか、苗の水やりをしていて「エッ!?」と驚いた。

ローズマリーの苗のラベルがない!

すぐに近くや棚の下を探してもラベルは見つからなかった。

ローズマリーは、ラベルがなくなっても特徴があって種類がすぐわかるものもあれば、なかにはラベルがなくなると全くお手上げというものもある。まあ、そういう種類はごく限られているので、念のためにラベルを複数つけたりして気をつけているのだが。

今回問題となったローズマリーは、「だいたいわかるけれど絶対の自信が持てない」という種類。

葉の形やつや、枝の伸びかた、置いてある場所とか、たぶんこの頃に挿し木したものだとか、この種類は今年まだ増やせていないとか、消去法で確定していくと、ほぼ「あれだよね」というのがわかっているのだが、最後のもしかして・・・というところが花が咲くまでわからないというタイプだ。

おかげで、せっかくいい感じで育っていたのに、発売のタイミングを逸してしまった。

決め手となる花を待って数ヶ月。ようやく花芽が見え始めてきた。ラベルさえあったら、夏か秋には発売できただろうに・・・。古い葉はそろそろ更新を前に黄色くなり始めてしまった。

毎日のように気になって開花を待っているが、気温が下がりつつあるこの時期、蕾までできてもその先が遅々としてすすまない。もう一歩なのだが。

さて、今年中に花を拝むことができるのだろうか。

不思議な組み合わせ

意外なところに、意外なハーブが調子よく育っていることにときどき出会う。

ビニールハウス前の東向き傾斜に育つサンタバーバラローズマリーは、一年中調子が良く、真夏や真冬など、案外他のローズマリーがイマイチのとき、よく花を咲かせてくれている。

もちろんこのローズマリーにとってこの場所は適地といえるのでそれは不思議ではない。

それよりも、ローズマリーの下の方に育っているレディースベッドストロー。とても細く柔らかい枝で、葉も繊細。横に広がって育つので、では他の匍匐性のハーブのように所々から根を出してしっかりと地面を掴んでいるかと思うとそうではない。横に大きく広がっていても、根はほんの一部で土と連絡していることが多い(なので株分もなかなか骨が折れる)。

そんな育ち方なのに、何年も(10年以上)枯れることもなく、かといって物凄く増えるわけでもなくこの場所でとどまっている。周囲にはヨモギほかの強力な草もはびこっているのに、圧倒されるわけでもない。もともと日差しにも弱いわけではないが、かといってローズマリーに遮られて調子が悪くなる感じもない。逆にレディースベッドストローがもっと旺盛な性質ならローズマリーの上にかぶさって蒸れたりして弱る可能性もある。

むしろ、ローズマリーが、そっと上から抱き抱えて守っているようにも見えるぐらいだ(そんなことはないと思うが)。本当に不思議な組み合わせだ。

今調子よく行っているので、一応このまま見守ってやろうと思う。こういうとき、かえって周りの草を取り除いたら調子悪くなったりするものだし。

こんな場所にはこのハーブ-プロストレイトローズマリー

匍匐性のローズマリーと聞くと、横に這って行くようなイメージを持ちやすいのだが、むしろ本領を発揮するのは壁面のようなところを上から下へ滝のように落ちて行くような育ち方をするときだと思う。

この場所は、結構通行量の多い四つ角に位置した花壇。曲がった先に大きな量販店があることで大型の納品トラックがよく曲がってくるし、逆方向から出てくる車も多い。そのため、入ってくる車の後部や後輪が当たってしまうのだろう(内輪差による事故という意味がよくわかる・・・実際作業していてもなんどかヒヤリとした)。花壇の隅がいつからから欠けるようになり、徐々に崩壊していった。

とりあえずは応急処置の為、レンガ用の接着剤で補修していた。この頃、2014年であった。

それからしばらく、崩れては応急処置を繰り返していたが、焼け石に水。修理してもしばらく経つとまた車が当たったようでレンガが落下していた。いいかげん、直すのにも疲れてきた。

そこで、少しでも目立つものを植えれば巻き込みも緩和されるのではないかと考えた。落葉するようでは意味がないので、常緑であることが条件。ある程度のサイズになって、かつ夏のガンガンの日当たりや、冬の四方八方から吹き荒ぶ風や雪にも耐え、長期間水やりなしでも耐える(通常メンテナンスは月一度なのだ)。となると非常に限られてくる。

ありきたりだが、ローズマリー、かつ、壊れたレンガの目隠しになることも考えてプロストレイトローズマリーを植えることにした。この際、成長が遅いことには目をつむる。

幸い、植えてから半年後にはそこそこのサイズとなって、下に向いて伸びるようになった。

2018年。植えてすぐの頃。まだ小さい。
2019年。見えにくいが(右上)少しレンガを覆い始めた。

2年が過ぎ、見事に崩れたレンガを覆うようになり、花もいい感じに咲くようになってきた。

2020年。この一年でずいぶん大きくなった

それでも時々こすられることがあるのか、少し枝が折れているようなことはあったのだが、レンガの損傷は見られなくなるようになった。どうやら役目を果たしてくれるようになったようだ。レンガの硬い雰囲気も和らげてくれるのも良い。

2021年。完全に角を覆う

ところが昨年の冬、現地を通りかかると、数人の作業員の方が花壇のレンガを修理していた。この時すぐに立ち止まって様子を見れば良かったのだが、あいにくそれができない状況。数日後行ってみると、花壇は車が当たらないように角をカットする形で修理されていた。

修理されてしまった花壇

ローズマリーはというと、適当に花壇の中央付近に植え替えられていた。あらかじめ伝えてもらっていたら一時隔離するなどもできたのだが。

冬ということもあるので、とりあえず強く剪定をかけてみたが、ひと月後、やはり調子が悪くなってきた。やむを得ず、元の位置の近くを改めて土づくりをして、植え戻した。掘り上げてみると残念ながら細い根はほとんど残っていなかったので、かなり厳しい状態だった。結局、夏になるまでに残念ながら息絶えてしまった。

とはいえ、十年近くの間、本来の役目をしっかり果たしたローズマリー。立派だった。

実はその後日談もあるのだが、またそれは別の機会に。

雪の下から顔を出す

先月の大雪、1月25日の写真。おそらくこの冬で1番の積雪の時だろう。右側にハーブの親木たちがたくさん埋もれている。

これが今日の様子。ようやくほぼ全ての株が雪の下から顔を出した。念の為、それぞれの株を確認するが、やはりそれなりに被害は大きい。

ビニールハウスから滑り落ちた雪があるぶん、まだ一部、雪の下敷きになって横倒しになった枝もある。

今年もローズマリーはずいぶん枝折れ、裂けの被害にあった。毎年秋には、雪に備えて強く剪定してしまおうと思ってはいるのだが、「まだ冬の間に挿木に使うかも・・・」という中途半端な欲があって残してしまった株がこういう被害にあう。

この株は、確か去年か一昨年もそうとう裂けてしまった。えだを長く伸ばしていると雪で裂けてしまうということがわかったのだからきちんと剪定すれば良いだけなのに。教訓が生かされていないことをただ反省するばかり。

おそらく大丈夫だと思われるが、ホワイトセイジもずいぶん押し潰されてしまった。

ラベンダーも今回ところどころが折れてしまった。

今年被害を免れたのは、マートルの大株。今年ぐらいの大雪だと相当の枝折れが起こる。たまたま、秋にガーデナーのKさんに試しに剪定をお願いしたところ、太い枝だけを残して球状に刈り込んでくれた。「どうなるか・・・」と彼女も不安そうだったが、細い枝が透かれたおかげか、その間を雪が積もって行ったのだろう、全く被害なし。今年の秋もお願いせねばならない。

こうして、雪の下から顔を出してくれるハーブたちには毎回ドキドキさせられる。

ヒヤヒヤのこの季節なのだが、雪の下から顔を出してくれると嬉しいものもある。

昨日、ビニールハウスのご近所さんからいただいた蕗の薹。今年は出てくるのがちょっと早く、ずいぶん大きめだとか。早速、大量の蕗の薹味噌を作った。

これでしばらくは、日本酒を楽しむのには事欠かなさそうだ。

いつもと違う冬の終わり

この冬、ここ松江は大雪こそ降らなかったが、いつまでも冬の空が続く。

2月に入ると、例年ならば天気が明らかに1月と異なることに気づかされる。数日に一度でも、春が近づいたような気にさせる気持ちの良い天気が見られるようになり、作業場の薪ストーブの薪の消費量も格段に少なくなる。

ところが今年は、いつまでも冬の空模様。朝起きて外を見ると、また路面が真っ白と言うことがここのところ毎日だ。

2月24日朝の雪。昨日は地面が見えていたのだが・・・

とはいえ、せいぜい1、2センチなので、大騒ぎするほどのことではないが、色々と作業に支障が出る。朝からビニールハウスに積もった雪を見ると少しゲンナリする。

屋根に雪があると冷蔵庫状態

ローズマリーの雪。折れるほどではない

ラベンダーの株も雪をしっかり被り、ローズマリーも白く雪化粧。枝が折れるような心配がないのはありがたいが。

毎年、この時期気をつける必要があるのが、急な暖かさと寒さによる苗の被害だ。

多くの苗はこの時期も出入り口や換気口を開けっぱなしにしているので、屋外と同じ気温。苗もそれをわかっているのでじっと我慢しているからあまり心配はない。

ところが、寒さに弱い苗はさすがに外気と同じでは寒さで枯れてしまうので二重のビニールハウスの中で冬を過ごす。

こちらのビニールハウスは夜はぴっちりと閉じて、昼は天気が良い日だけ空けているのだが、それでも温度が案外上下する。

寒さに弱い種類は、寒さへの備えをそもそもしようとしないので、少しでも動ける温度になると柔らかい葉を伸ばそうとする。

その葉が、寒さでやられてしまうのでこの時期は本当に神経を使う。

主な種類としては、フルーツセイジ。これも冬の間そこそこ伸びたりして、春先の寒の戻りで真っ黒と言うことがなん度もあった。今年もまだ気を緩めることができない。

それから一連のヘリオトロープ。ちょっと気温が上がると伸びはじめてしまって、先日一度、それほど寒い日ではなかったが、扉を閉め忘れて帰ったら、数日後傷みが見え始めてきた。

葉の先が黒っぽくなったのが前兆

また、ちょうどギリギリの温度なのか、ナスタチウムも成長はしないのに花を咲かせている。秋のポット上げが遅くなってしまい、冬前の発売に間に合わなかった株たちだ。花を咲かせてしまったことで春の成長がどうなるやら、いま1番心配な種類である。

一枚のビニールだけで寒さに耐えているレモングラスは、秋までは青々としていたのに、ずいぶん黄色っぽくなってしまった。

今朝のニュースで、週末からは気温が上昇するとのこと。春の成長が目に見える日も近いだろう。