麦わら帽子と行く夏を惜しむ

夏の作業と切ってもきれないのが麦わら帽子。本当に過酷な作業をする時は菅笠をかぶっていた時期もあったのだが、ここ数年の過酷な夏、菅笠が必要になるほどの気温のときは作業自体が危険で能率も悪いので、さっさと作業を終えるようになった。おかげで夏バテもしなくなったが・・・。

菅笠ヒーロー

この麦わら帽子は、昨年新調したものの、秋になるころにはところどころ傷んでしまった。ツバの付け根には黒いリボンがついていたが、いつの間にか取れてしまったし、あごひも用のパーツも片方外れてしまったためあごひもも取った。もともとホームセンターでも一番安い部類のものなので耐久性もそれなりだった。

それでも昔はちょっといいものを使っていた。「ちょっといいもの」は、つくりもマシで、頭と触れ合う部分(スベリと言うんだそうだ)に、ご丁寧に吸水素材が使われていたりする。これが、かえって汗をすって匂いが気になる。この麦わら帽子のような廉価版は、スベリがビニールのようなな素材で、肌触りは決して良くはない。でも、大汗をかくときには関係ないし、むしろ匂いが気にならない。

汗を吸わないのでむしろ匂わない安物の「スベリ」

今年も引き続き使っていたが、あごひものパーツが外れたところから徐々に崩壊していった。それでも何ら支障はないので「秋まで持つかな」と思いつつ日々の作業に活躍してくれた。何度も風に飛ばされもしたり、車の中で荷物に潰されてボロボロと藁くずが撒き散らされるようになった。

まだ日差しが強いのでしばらくはお世話になりそうだが、「夏が終わった」と感じられる日が来たらさすがにサヨナラしようと思う。早く夏が終わってほしいのは確かだが、そのときは少し寂しく感じるのだろうか。そしてこの強烈な夏の終わりに「行く夏を惜しむ」気持ちになれるのだろうか。

菅笠ヒーロー

「暑さ寒さも彼岸まで」の、彼岸の入りを迎えた。

店頭のお客様との会話で
「今年のお彼岸はずいぶん涼しいですね」
という言葉がよく出てくる。

例年、「暑さ寒さも彼岸まで」と言いながら、暑さを我慢してここまで過ごしてきているのだが、今年はもう8月の終わり頃にはそれほど暑さを感じなかった。

体も楽だが、暑さに弱いハーブたちにとっては本当に過ごしやすい夏だったようで、苗の調子もこの時期にしては良好だ。

朝など、快適というよりも、寒さを感じるほど。

こんなとき困るのが、頭に何をかぶるかである。

朝は野球帽でもかぶっていないと、寂しくなった頭頂がますます寒さを感じる。

でも、野球帽をかぶっていられるのは、夜明け前や、陽が登ってしばらくまで。バタバタしていると、やはり暑くなってくるので、麦わら帽子に変わる。

軽く涼しい麦わら帽子をかぶっていると気分も軽やかに作業が進む。

麦わら帽子といえば、昔は子供とおじいさん、高原のお姉さんがかぶるイメージだったのだが、近年は現実的な暑さ対策に有効だったり、人気漫画の主人公の影響か、若いお兄さん方がかぶっているのもよく見かける。もちろん彼らはちょっとおしゃれなタイプで我々は作業用の安いぶんだが。

とはいっても、さすがに日中ちかくなると、この麦わら帽子でさえ、内側の縁が汗で濡れてきて不快さが増してくる。通気性が良いとはいえ、帽子の中も蒸れてくる。少ない頭髪にもよくない。
菅笠
なので、この時期まだまだ手放せないのが竹笠(菅笠)である。昨年から使い始めたのだが、「夏はこれなしには過ごせません!!」というほど愛用している。

遮光性、通気性とも言うことなし。物理的に頭から離れているので蒸れというものがありえない。

また、使ってみて気づいたのが「雨に強い」こと。麦わら帽子は雨に濡れるとてきめんに弱い。濡らすべきではない。濡れたらきちんと乾かさないと大変なことになる。以前、雨に濡れたまま翌日までビニールハウスにおいていたら見事に全体が緑のカビに覆われてしまった。その点、菅笠はちょっとした雨では中には浸みてこない。少しの雨なら、傘がなくても大丈夫だったりする。にわか雨の多い山陰ではなおさらありがたい。

もう、菅笠のない夏など考えられないほどである。考え出した人に感謝である。

もちろん、難点もある。構造的に近くで大きい音がすると、ものすごく響くのだ。耕運機や草刈機のエンジン音が反響するように耳を直撃する。サンダーという切断工具を使った時は、菅笠を外さざるを得なかった。

そしてもうひとつは、社会の認知度。初めてかぶる時は実際、恥ずかしかった。菅笠姿の私を見た人の感想も、「ベトナム土産ですか」というのが一番多く、次が「お遍路さんにいかれましたか?」である。

実際、時々チェックするのだが、周りで農作業をしている人を見ても、菅笠率は極めて低い。こんなに快適なのに不思議に思う。

ましてや、街中では・・・。真夏なら、麦わら帽子を被って、例えば図書館に行ってももうそれほど目立つことはないだろう。でも、菅笠をかぶって行ったら相当視線を感じることになりそうだ。

でも、なんと言われようとも、もう手放せない。

だれか、菅笠をかぶったヒーローが出てくる漫画でも書いてくれませんかねぇ。お遍路漫画でもいいですから。

帽子の政権交代

頭のてっぺんが寂しくなり始める前からの帽子愛用者である。外仕事をするようになってからだったのか、それより前からだったのか、いまではもう思い出せない。

専らキャップ派で、被りツブした(というのかな?)帽子は数えきれない。

ところがこの一年ほど異変が起きている。昨冬、あまりの寒さにかぶったニット帽の暖かさが手放せなくなり、ひと冬のあいだキャップから遠ざかっていた。

また、梅雨に入る前、長時間の屋外労働のためにと購入した麦わら帽子。その日だけかぶるつもりだったのに、以来、キャップに取って代わってしまった。それまで夏はキャップに首手拭いがお決まりのスタイルだった。けれども、首はむしろオープンにして麦わら帽子のつばで陰を作ってやる方が遥かに涼しい。無論、帽子内の涼しさはキャップの比ではない。

麦わら帽子

冬のニット帽は作業に限らず、店頭でもお出かけの際にも変わらず身に付けていたのだが、麦わら帽子は作業以外で被るには抵抗がある。麦わら帽子が街なかでも似合うには夏の太陽にも負けないような笑顔が必要だとおもう。それは望むべくも無いから、もっと歳を重ねて良い具合に枯れた爺さんになるまで待たねばなるまい。