雪の下のスタートダッシュ

昨日から今朝にかけての関東の雪ほどではないと思うが、当地でも今夜からまた雪の予報が出ている。今年は幸いにもまだ被害がないので、穏やかな雪であるよう願うばかりだ。

われわれ人間は雪が降るとつい縮こまりがちだが、植物たちは雪の下でも着々と春への準備を進めている。

花壇のクリーピングボリジも地面に張り付くように葉を伸ばし、冬の間の少ない陽の光を集めようと必死だ。

クリーピングボリジ

それにも増して、周りから伸び出したホトケノザを始めとした雑草たち。前回の雪の下ではやくも伸び始めたようだ。この様子なら、暖かくなったらあっという間にクリーピングボリジを覆ってしまうだろう。

普通のボリジは一年草なので、雑草に負けない勢いで春から一気に大きくなるが、クリーピングボリジは多年草の分おっとりしている。「夏までにジワジワと成長すればいいか・・・」といった感じである。それを尻目に一気に成長した雑草たちは早い者勝ち。春のお日様を独り占めすることになるだろう。

クリーピングボリジ
気持ちだけでも草取りを

日陰には割と強いクリーピングボリジとはいえ、周囲を囲まれてはせっかくの成長期に育つことができず、場合によっては花もわずかしか咲かせられないことも考えられる。さすがにそれは避けたいので、今日は周りの草を気持ちだけ取り除いておいた。きっと春にはもう一度、二度と行うことになるだろうけれど・・・。

冬の山仕事

ここ二日ほど、出雲市の山中(親戚所有)で山仕事にいそしんでいる。

倒木や間伐が必要な木を使った薪作りである。人の手が入らなくなって久しい林の手入れにも若干は貢献していると思う。

間伐

薪は、1年ほど乾かして作業場で我々を温めてくれる燃料になる(ハーブ用ではない・・・)。

ついでに不足しがちな冬の間の運動にも一役買っている。

木を切ったり割ったりしているだけでも林業の大変さがよくわかる。もちろん慣れもあるだろうが、足場が不安定な場所でチェーンソーを始めとした刃物を使うことは危険を伴い、体力の消費も半端ではない。自分の場合は儲けは考えなくてもよい作業なのだが、これで食べていこうとするなら相当な覚悟が必要だろう。

木を伐採するときは特に緊張が高まる。まだまだ思った方向にはなかなか倒せないのだが、一本切り終わると汗をびっしょりかいていたりする。不要な枝を切ったり、玉切りしたりする作業も急斜面で行うと普段使わない筋肉が悲鳴をあげる。普段、平らな場所でばかり生活していると斜面を行き来する大変さがなおさら身にしみる。

薪割り

伐採する場所から、車が入るところまで距離があるので、この場所で割って乾燥させる。薪割りは一連の作業の中で一番楽しい。うまくパッカンと割れると気持ちが良いし、肩を大きく回す動作が肩こり解消に役立っているようだ。また、静かな林の中で黙々と薪割りしていると、ふといいアイディアが浮かんできたりする。

薪は1年ほど乾燥させたらずいぶん軽くなるので、ようやく運び出すが、これもなかなか重労働。

おかげさまで、年末年始に蓄えた体重も数日のうちにすっきりと減っていく。お昼など、ものすごく腹が空くので普段の倍ぐらいのご飯を食べているのにだ。

休憩時も、普段はブラックなのに、このときばかりは甘いカフェオレが体にしみる。

ティータイム

こう書いていくと相当辛い作業に思えるのだが、山に入るみちみち、いろいろな植物を目にするのは楽しい。

ミツマタ
ミツマタ

谷の縁ではもうずいぶん前に使われなくなって忘れ去られたミツマタがたくさんの蕾をつけている。ずいぶん遠くからでもよく目立つ。まだまだ固い蕾だが、そのうち黄色い花が観れることだろう。でも、そのころは忙しくなってなかなかここまではこれないかもしれないが。

つかの間の雪解け

先週の半ばから終わりにかけて降った雪も昨日と今日の暖かさでほぼ解けた。昨日など、気温が15度を超えて、すこし作業をしても汗ばむほどだったので、あっという間に溶けた感じだ。

このあたりでは大雪というほどではなかったが、この冬初めての積雪だったので念のため、圃場の周りのハーブたちのチェックを行った。

雪の後、枝折れが心配なラベンダーやローズマリーも問題なし。寒さに弱い種類についてはまだ今の段階ではどうも言えないが、屋外の温度計でマイナス4度が最低だったのであまり心配する必要もないだろう。

ボリジ

毎年のことだが、雪が降るまでは雑草に隠れてて目立たないボリジも雪が溶けると姿を見せてくれる。こぼれ種なので、ブルーなのか白なのかわからないが、毎年このあたりで芽を出しては新しい株が育つ。まだ小さいが、暖かくなるとあっという間に大きくなって周りを圧倒することだろう。周囲にいくつも芽が出ているのでかなり整理しないといけないかもしれない。

レモンバーム
まだ古い枝が残る

年明けにもまだ青々していたレモンバームも、古い葉が黄色くなり、その隙間から株元の新芽がぎゅっと集まって顔を覗かせている(古い枝は早く剪定しておかなければいけなかったのだが・・・)。

レモンバーム
株元の芽

昨年は雪で枝折れしたホワイトセイジも今回は大丈夫。

ホワイトセイジとハムシ

それよりも、株の上を一匹のハムシがゆっくりと歩いていた。ちょっとこの時期には見かけないので、やはり相当暖かいのだろう。雪よりもこっちの方が心配だったりする。

とはいえ、寒くて食欲がわかないのか、しばらく見ていたが、葉をかじる様子は見られなかった。春はまだ遠い。来週はまた雪が降って寒くなるようなので、もうしばらくのあいだ静かにしていてほしい。

冬のナスタチウム

この時期、育苗に気をつかうハーブの一つがナスタチウム。

白状すると、どちらかといえば育てるのが不得意な部類にはいる。

ナスタチウム・ミルクメイド
花もよく咲くし、葉も花もつぼみも、柔らかな種子も食べられるのも嬉しい

種子も大きくて蒔きやすく、発芽も揃いやすいのだが、暑さにも寒さにもちょっと弱いところがある。春早すぎる種蒔きだと、せっかく発芽した苗を寒の戻りなどで傷めてしまうことが多い。でも、寒さに弱いからと春暖かくなってから種子を蒔くと、ほんの小さいうちに花を咲かせてしまう。

同じ一年草でもこれがジャーマンカモミールのように寒さに強ければ秋に蒔いてしっかり寒さに当てれば良いし、バジルのように暑さに強ければ春十分に暖かくなってから育て始めても問題はない。

かといって、とても寒さに弱いレモングラスのように、しっかり防寒しておくだけでよいという訳でもない。暖かい場所では妙にひょろひょろに伸びてしまう。なかなかに悩ましい性格なのである。

その代わりと言ってはなんだが、夏もある程度涼しい場所に移動してやれば秋からまた長く咲いてくれるし、冬が厳しくない場所なら寒さ対策をして冬越しをさせれば多年草として楽しむこともできる。

この頃はなるべく秋のうちに蒔いて、冬までにそれなりに大きくして冬越しの態勢をととのえるようにしているが、それでも寒さに厳しいここしばらくは寒さで傷まないかと心配が続く。

さて、そのナスタチウムだが、種子から育てる以上、ある程度花色の違うものが出てくることがある。

ナスタチウム・ミルクメイド
時々右のような色の株が育つことがある

この「ミルクメイド」というクリーム色の花が可愛らしい種類は、茎もうすい色で、葉も明るいグリーンなのだが、数十個のうち一つぐらいの割合で茎が赤みを帯びたものがでてくる。大抵そういう株は花もクリーム色ではなく、オレンジだったりするのだが、今年はなぜかこの冬の最中に蕾をつける株が多く、違う色のものを見つけるたびに間違えないように分けておく。

突然変異とか、先祖返りとか、色素がどうのこうのとか、理由はあるだろうが、ナスタチウムはナスタチウム。大抵は鉢植えになって店頭の彩りとして活躍するとになる。でも、去年の鉢がしっかり今年の冬も越しそうで、ナスタチウムの鉢ばかり増えていきそうな予感・・・。

今夜の賭け

以前、親しくなった方からなにかの折に

「ギャンブルはされますか?」

と尋ねられたことがある。

「日々がギャンブルみたいなものですからねぇ」

と、冗談交じりに答えたら

「事業はギャンブルではありません」

と諌められた。

少なくとも、仕事をギャンブルとは考えていないが、農業には賭けのつもりで向かうしかない天気という相手がいる。

あらかじめ大雪が降りそうな日の夕方はビニールハウスのなかにストーブを灯す。ハーブを凍えさせないためではなく、積雪が少しでも落ちやすくするためだ。ビニールハウスの雪は、一部が落ちるとその周りから落ちていきやすい。そのきっかけを作るのが小さなストーブの灯だ。

石油ストーブ
古い石油ストーブも活躍中

昨日の夕方は強い風とともに横殴りの雪が降り、大雪警報も発令。相当に積もりそうな雰囲気だったので、疑うこともなくそれぞれのビニールハウスにストーブをつけた。

ところが、雪のピークはその時が最高で、今朝起きてみると、ほんの少し積雪が増えた程度だった。

特に心配することなくビニールハウスにむかった。ストーブの置いてあるあたりから雪が滑り落ちて、縁の方に若干残っていたが、その雪も午前中日がさすと綺麗さっぱり下へ滑り落ちて行った。

ビニールハウスと雪
中央あたりにストーブがある

残念ながら一晩中つけっぱなしにしていたストーブはあまり意味がなく、減った灯油を給油する作業も少し気が重かったが、昨日の判断を賭けとするなら、賭けに負けたわけではない。おかげで一晩ゆっくり眠れたのである。

温度計
昨夜はマイナス3度まで下がった模様

今夜もそれなりに冷え、雪も降る予報が出ているが、さて、今夜の賭けはいかに?