しばしお預け

植物も、継続的に育てていないと管理のポイントを忘れがちだ。周年育てていると、そろそろ植えかえしなくちゃとか、今年もあの虫が出始めるかな・・・などと自然に思い出すものだが、しばらく育てていないときれいさっぱりと忘れてしまう。

以前育てていたが、つい後回しになっていて今年久しぶりに栽培を再会したソレル。基本的に丈夫なハーブなのであまり手もかけずにいた。先日ちょっと様子を見てみると、まるでマシンガンで銃撃されたように穴だらけになっていた。ああ、そうだった、丈夫とは言ってもこれを好む虫がいたっけと、後になって思い出してももう遅い。確か昔も同じように被害にあったことをようやく思い出した。

トムとジェリーのチーズのように(ってのは少し古い?)
トムとジェリーのチーズのように(ってのは少し古い?)

犯人はこいつ、ハグロハバチの幼虫である。

ハグロハバチの幼虫

くるくるっと丸まった姿は可愛いが、一株に一匹、必ずと言っていいほど付いているのでほぼ全滅だった。近縁の、あの強力なギシギシさえ美味しく食べるようだから、こんな柔らかいソレルなんて前菜のようなものだろう。まあ、ここまで食べられては剪定するより他に無い。しばらく出荷もお預けだ。

幼虫を狙っているのか?でもきっと酸っぱいぞ。
幼虫を狙っているのか?でもきっと酸っぱいぞ。

予想外の出来事

お庭の仕事は毎回のように予想外の出来事に遭遇する。

現場についてみたらとんでもなく木々の枝が茂っていたとか、草が半端じゃないほど伸びていたとか、病害虫が発生していたとか、予報では晴れだったのに突然大雨が降り出したとか。まあ、最後は仕方が無いけど、仕事が予定通りに進むことは稀な方だ。でも、何年も続けていると、大抵のことには冷静に対応できるようになる。

さて、今日伺ったお庭。おばあさんのお一人暮らしのお家なのだが、昨日お庭の手入れのご希望をいただいた。梅の枝が一気に伸びたので少し剪定してほしいとのことだった。「あ、それとついでに・・・」という程度だったのだが、軒下に蜂が小さな巣を作っていて心配なので見てほしいとの希望もいただいた。

今日はちょっと忙しかったけれど、それほど時間もかからないだろうと昼前に出かけることにした。蜂の巣も「おちょこみたいなのが付いています」と仰っていたので、おそらく例のアシナガバチが巣を作りかけてるのだろうと思い、特に何も準備せずに出かけた。勝手口のそばだというし、足が少しお悪いおばあさんでもあるので巣は取るしか無いけど、剪定のついでぐらいに思っていた。おばあさんにも、「ええ、簡単なもんです、すぐ終りますから」と気軽に答えておいた。

現場へ着き、「ええ、ここなのよ」と指差された先を見てビックリ。

コガタスズメバチの巣
おちょこじゃなくて徳利ではないか。えーっと、これはもちろんアシナガバチじゃないよね、確かスズメバチの、なんだったっけ・・・。もう、気が動転して名前も正確に思い出せない。

ただ、幸いに、まだ巣もできたてのようである。しばらく観察していたが、蜂はまだいないようだ。おばあさんは家の中に避難してもらい、自分もいつでも逃げ出せる体勢をとって、軽くつついてみる。どうやらお出かけのようで反応がない。今がチャンスとばかり、袋をかぶせ、一気に口を閉じる。

脚立から下りたところでおそらく女王蜂だろう、巣へ戻ってきた。危機一髪だった。目指す巣が無いのでしばらく右往左往していたが、どこかへ行ってしまった。一安心して、帰ろうとした時、第一の仕事である剪定がまだだったことに気づいた。

圃場へ戻り、大丈夫とは思いつつも恐る恐る袋を開封。中にはしっかり卵も産みつけてあった。

まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
まだ初期のようで、大きくなると球形になっていくという。
内側におなじみの六角形部屋が
内側におなじみの六角形部屋が

小さいけど巣は巣である。金運を招くとも言われるから、ビニールハウスの中にでもお供えしとこうか。ささやかな金運かもしれないが。

後で落ち着いて調べ直して、コガタスズメバチの巣に間違いないようだった。ま、刺されないでよかった。

庭に活かす

昨年からとあるお宅で、もと畑だったところをデザインし直して花のお庭に作り替える作業が進行中。土作りから始まって、花や球根も加え、ずいぶんお庭らしくなってきた。道路に面している上、柵なども無いので近所の方の反応もあるため、やりがいもある。横を通られる方から、
「きれいになりましたねぇ」
とか言われると単純に嬉しい。

さて、春先、このお庭でがっしりとした葉が突如地面から現れた。スタッフが、
「これ、何かな?」
と尋ねるが、さっぱりわからない。小さなうちはなにやら原種のサルビアにも似た葉をしていたので、
「家の人が植えられたんでしょう、サルビアのなんかじゃない?とりあえず、そのまま」
と答えていたが、来るたびにどんどん大きくなり、一枚の葉が60cmぐらいになってきた。さすがにこれはサルビアなんかじゃなさそうだ。

小さい時は、Salvia dolichanthaにとても良く似ていた・・・
小さい時は、Salvia dolichanthaにとても良く似ていた・・・

作業を進めるにも邪魔になってきて困っていたところ、たまたま奥様が、
「あれ、これ何かしら?」
と尋ねられた時に、ご主人が
「あ、こりゃ、前植えてたゴボウだ。種子取るからこのまま置いといて」
と仰って正体がわかった。スタッフの前で面目丸つぶれである。実際、ゴボウは育てたことも無いし、地下部分しか普段見ないから知らなくて当然なのだが、ハーブばっかりやっているからこういうことになるのである。

いずれにせよどんな花が咲くのか、楽しみである。うまくお庭の中で活かせるといいのだが。でも、周りは農家の方が多いから、笑われるかもなぁ・・・。

朝のフレッシュサラダ

主に多年草を主体に育てているせいか、正直言うとあまり一年草の栽培は得意ではない。特に、開花期になると、有無を言わさず花芽を付けていくエネルギーについていけない感じだ。

苗を育てる上でも、ちょっと目を離した隙に花が咲いていたということもよくある。このナスタチウムもちょっとポット上げ(用土節約のため、プラグまきであった)が遅くなったこともあり、まだ株が十分に成熟しないうちに花を咲かせ始めた。

ここ数日バタバタしていたため、気にはなっていたのだが、花芽の剪定も後回しだった。今朝ようやく少し時間に余裕ができて花芽を摘む。ナスタチウムは本当にどこでも食用にできて、花や葉はもちろん、花芽も、花の後にできる種子(柔らかいうち)もぴりっとした辛みとともに、美味しく食べられる。

見た目は花のほうが良いだろうけれど、柔らかい食感や、これから花を咲かせるところを食べてしまうという罪悪感もスパイスになって、花芽のほうが美味しい気がする。

ナスタチウム花芽

いくつか食べると、朝の眠気もどこへやら。明日はもう少し摘んで、朝食のサラダに入れよう。

援軍の到来

さて、いよいよローズのつぼみが膨らんでくるようになると、ゾウムシとともにいやでも目にすることが多くなるのがアブラムシ。もうすぐ開花を迎えそうなつぼみにびっしりとたかられるとさすがにいい気分はしない。庭の持ち主のお客様も、姿が見えにくいゾウムシと違い、見えやすいので心配されることが多い。

アブラムシ

つぼみが少なければ直接手でつぶすのが確実だし、こまめに木酢などで予防するという手もあるにはあるが、大きなツルばらなどではそういうわけにもいかない。

幸い、いくつかのお庭では今年、強力な援軍がやってくるようになった。ひとつはナミテントウ。ツルばらの葉の間をごそごそと動き回り、あまりアブラムシを食べている様子を見ることは少ないが、卵を産んでくれれば幼虫は特に強力な助っ人である。

ナミテントウ
もう一つはヒラタアブ。これも幼虫は大食漢のようで、すでにつぼみの奥のほうへ頭(?)をつっこんでいるからお食事中なのかもしれない。

ヒラタアブ

専門家がやってきたので、しばらく我々は手を出さず、アブラムシについてはあとはお任せすることにした。我々の仕事は、庭の持ち主に援軍の到着を伝え、彼らのために、薬剤などまかれずにしばらくは様子を見てほしいとお願いすることであった。