夏のバトル

年がら年中、それなりに害虫には悩まされているが、真夏の代表と言えばコガネムシの幼虫だ。

今年は春からちょっぴり育苗用土を上等にしたことも原因かもしれないけれど、今まであまり被害に遭わなかったミントの苗にも出て来て少し驚いている。

土の中にいるとはいえ、慣れると案外見つけるのは難しくない。挿し木株等をポット上げしてしばらく経ち、根も張ってくるに従って土の表面はしっかりしてくるものだ。それが植えたての頃よりもフワフワになって来たら要注意。

ミントの苗
表面を触って、指がスッと入るようであれば間違いない。ポットを傾けるとさらさらと土が流れ落ちてくる。

ミントの苗
株を取り出すと、周りの土がついて来ない。

ミントの苗
問題が無ければこのように根鉢ができている頃なのだ。

正常な根鉢
残った土の中には・・・、いたいた、一匹。

コガネムシ
もう一匹。

コガネムシ
背中を下にして必死で逃走中。まさに背泳ぎのバサロ泳法そっくりなのだ。

苗の場合、細根が多いためか、株自体がダウンすることは今のところあまり無い。それどころか、植えかえてやるとむしろ良く育ったりする。あるお客様から伺ったところでは、被害にあった鉢の土で植えるとものすごく成長が良いとか。コガネムシがしっかり耕した上、肥料もプラスしてくれているのだろう。

一方、大株に住み着かれると被害甚大だ。細根が少ないラベンダーやローズマリー等は植えかえても持ち直さないことが多い。本格的な秋になるまでしばらく彼らとのバトルは続くのである。

秘密兵器

ラベンダーの季節もほぼ終りに近づき、圃場やお客さんのお庭に咲くラベンダーの剪定作業に追われている。ラベンダーも、大株になると何百本もの花穂を剪定する必要がある。大きなラベンダー園などではお茶の葉を刈る機械のようなもので一気に剪定してしまうらしいが、時々羨ましく思うこともある。

傍から見ると、優雅そうに見えるかもしれないが、暑い中の剪定は結構精神的にキツい(この頃は他のスタッフに任せたりしているのでちょっとアレだが)。ついでに、ラベンダーは結構アクがあって、剪定し続けていると葉にこびりついたアクでハサミの切れがガクンと落ちてくる。

ハサミに限らず刃物はなんでも「使ったら拭く」が基本なので、こまめに拭けば良いのだが、つい剪定に夢中になっていると拭いている暇がない。気がついた頃にはアクが刃にしっかりついてしまって拭き取ろうとしても簡単には取れない。

昔は熱湯をかけて拭いたり、圃場ならばトクサ(ヤスリ代わりになる)で刃をごしごしこすって取ったり、いよいよダメなら砥石で研いでいた。ただ、砥石やシャープナーで研ぐのは本来刃の切れが落ちた時なので、アクさえ取れれば良い場面では面倒な作業だ。

そんな場面にぴったりの秘密兵器に今春出会った。近隣で行われた刃物祭りで、刃物屋さんもお勧めする一品がこれ。その名も「激落ち 刃物クリーナー」である。最初半信半疑でその場では購入せず、後になってホームセンターを探したが見つからなかったので結局Amazonで注文。

激落ち刃物クリーナー

こういうケミカルものの効果はあまり信用しないタチであるが、この商品だけは納得。使い方も簡単である。写真は、まる一日草木を剪定したハサミである。当然アクなどがこびりついている。

ハサミのアク

これにクリーナーをシュッと一吹き。シュワシュワと泡立ってアクが赤茶色に変わってゆく。

ハサミのアク
そのまま30秒ぐらい放置して布等で拭き取るとこの通り、切れ味も復活。ただ、注意しなければならないのは、この後きちんと刃や稼働部に油を注しておくこと。まあ、刃物を扱う上では基本だが。

ハサミのアク

あまりに気に入ったので、スプレー瓶に小分けして、ハウス用、現場作業用、家用とそれぞれ常備している。アクの落ちがとても気持ちよいのでついつい使ってしまうのが悩みの種。近々大瓶で購入しそうな勢いである。

見かけによらず

先日、お客様と話していて、今年はジャガイモのできが本当に良くないということを伺った。5、6月と雨が少なかったためだと仰っていたが、そのかわり、ラベンダーのできはとても良かったとのこと。このところのように天候が極端だとなかなか両方とも満足がいくようにとはならないものだ。

今年、目立ってよい調子だったのがレディースベッドストロー。お客様のお庭に植えたものも、店の花壇の株も、そして圃場の隅に植わっている株も、ここ数年無かった程よく咲いた。おそらく開花まで涼しい日々が続いたのが良かったのだろう。

レディースベッドストロー

とはいえ、例年もあまりひどい育ちかたをする年は無い。近い仲間にスイートウッドラフがあるうえ、その繊細な姿から弱々しい感じを受けるのだが、どっこいコイツはかなり頑丈だということがこの頃わかって来た。店の花壇は西向きで夏の午後は厳しい日射を受ける。特に日よけをしてやるわけでもないし、手入れをするといっても横に伸びて行く株をそれ以上広がらないよう整理するぐらい。

まして、圃場の株にいたっては完全にほったらかし。上のようなクローズアップ写真だとそれなりに見えるが、実は下の写真が現実でカヤの仲間と生存競争中である。しかも10年近くこの状態である。

レディースベッドストロー
同じ圃場でも苗増殖用の親木は鉢の中の快適な環境で優遇されている。コイツも頑張っているので冬には少しメンテナンスをしてやると良いのだが、強いとなるとつい放任になってしまうんだよなぁ。

つきあいも長いと

そう、最初の出会いはまだ古い店舗の頃。今まで調子が良かったマロウの葉がいつの間にかかじられて丸坊主に。ビックリしてよく観察してみるとクルクルとまいた葉がいくつも見つかった。

その様子から、ハマキムシとも呼ばれる
その様子から、ハマキムシとも呼ばれる

中を覗いてみるとこいつがいた。そう、ワタノメイガの幼虫である。アオイ科の植物が好物のようで、ブルーマロウムスクマロウブラックホリホックなどが同様にターゲットになる。もともとは綿の葉につくことからこの名前がついたとか。

ワタノメイガ

生まれたては凄く小さくて食害するのも葉の裏面をこそげとるぐらい。なので最初はなかなか気づきにくいが、加速度的に大きくなって、食べるスピートもそれに比例するので気がつくと葉の大半がやられているという始末。

気がついたらとりあえず捕殺するしか手が無いし、大抵は同じ時期に2度、3度と孵化するようで、ひと安心していたらまた食べられていたということもよくある。

ただ、2回目か3回目のアタックを乗り越えるとほぼ大丈夫。幸い、苗であってもマロウたちは葉が無くなってもダウンすることは滅多に無いので、丸坊主になってもしばらく放置しておけばまた葉を伸ばしてくれる。捕殺する手間を考えるとこっちが実は楽だったりする(捕殺しようとしてもまたこれが上手に逃げるのだ)。

出会った頃は、悩みのタネであったが、これぐらいつきあいが長くなってくると、いちいち驚かないようになってくるし、おつきあいの仕方も身に付いてくる。まあ、人間社会でもそんなもんだしね。

踏まれつつも

圃場の周りでアルカネットが咲き始めた。ちょうど梅雨に入り空気がしっとりした頃から咲き始める青い花は何となく心を穏やかにしてくれるものだ。

アルカネット

これも特に植えたものではなく、苗から飛んだ種子とか、植え替えした時の株の切れ端が土に混じって根付いたものかもしれない。

花が咲かないととても地味な様子なので、知らない人にとっては雑草の一つにしか見えないだろう。同じムラサキ科でもボリジはまだ存在感のある葉をしている。

地味な分、丈夫なのだろう。この株も時々通り道になるところに生えているのでそれこそ花の咲いていない時は踏んでしまうこともままある。アルカネットだと知っていても、あまりに目立たないと我々もつい踏んでしまいやすい。でも、全くへこたれる様子もなく花の時期にはしっかり咲いてくれる。

はやく植えかえてやれば良いのだが、この強健さにもかかわらず、移植はあまり得意ではないらしく、案外ダウンしてしまったりする。踏まれつつもこの場所においておくほうが彼(彼女?)にとってはいいのだろう。この場所を選んで咲いているのだから。