タイミング悪し

広い日本ではガーデニングシーズンも様々である。以前、高冷地では真夏もガーデニングシーズンであると聞いて驚いたことがあった。ここ松江など、真夏に苗物を欲しがる人はほとんどいない。

そんな時期に花を咲かせる種類はタイミングが悪いとしか言いようが無い。せっかく花を咲かせても、なかなか振り向いてもらえないし、まして手に取ってもらえることは希である。なかでも、サルビア・ビルガータはかわいそうだ。宿根性のサルビアで、開花期以外のシーズンは葉がべたっと地面に付いていて、特に目立ちもしない。そのため、いわゆるガーデニングシーズンには他の種類に埋もれてしまいがち。目立つ花が次々と売れていくなかで、一種類だけ残っているのはわびしさを感じる。

サルビア・ビルガータ

せっかく暑さの中頑張って花を咲かせても見てもらえないのでは可愛そうだからここで紹介してあげることにする。過酷な中で頑張って咲きました。拍手!パチパチ

梨好き

秋を感じさせる食べ物は数あれど、自分にとっては「梨」かなぁ?

暑い最中に、初物だといって食べさせてもらった梨の冷たさ、さっぱりとした果汁は最高の御馳走で、子供のころから好きだったように思う。梨を食べると秋の訪れ、そして夏休みの終わりが近いことを感じさせられていたものだ。

一口に梨といってもいろいろあるが、お隣の鳥取県が二十世紀梨の産地ということもあり、甘い風味の種類よりも慣れ親しんできたさっぱりとした味の梨の方が好みである。甘い方の梨より、ひと足遅れてでてくる二十世紀梨を口にするころには、風はもう秋を感じさせてくれる。

ここ数年、台風の直撃や、天候不順により梨の栽培に影響が・・・というニュースを何度も聞き、梨農家の大変さを感じていた。中でも、袋掛けは大変じゃないかなと思っている。手を上に上げての作業、辛いもんね。そう思うにつけ、梨の美味しさは一際アップするのである。

もちろん、梨にも病害虫の心配は多いのだろう。あんなに美味しい実を成らせる木を虫たちが見逃すはずは無いではないか。

ナシケンモン(褐色型)?
ナシケンモン(褐色型)?

そんなどん欲な昆虫たちはしっかりハーブにも目をつけるのである。この間初めて見たこの毛虫。ナシケンモンと言うそうな(たぶん)。梨を初め、様々な植物を食べるそうだが、この日はウインターセイボリーをガジガジ。もちろんその時は正体不明だったのでおっかなびっくり退場を願った。

セイボリー見たいにぴりっとしてちょっと硬い葉よりも、もっと美味しくて柔らかそうな葉がたくさんなるのに物好きなヤツと思ったが、あとで梨が大好きとわかり、少しだけ親近感が湧いたのである。

彼岸花のように

どの季節が好きかと問われれば、躊躇無く「秋」と答える。苦手な夏が終わってホッとできるし、次の夏までが一番長いからだ。

私にそれほど嫌われている夏も、今年はそれほど力を発揮できなかったようだ。例年、冷水のシャワーを浴びると、「今年もいよいよ夏がきたな〜」と感じるのだが、今年はどうやら冷水のシャワーを浴びることなく終りそうである。

これが咲きはじめると暑さも峠越えという花がある。レウコジャム(レウコユム)・オータムナーレである。五月ごろに葉が無くなり、しばらく沈黙のひとときを過ごした後、当地ではお盆ごろに突然花茎を伸ばしはじめて開花する。この熱い最中に、こんな細い茎を伸ばして可憐な花をつける力強さに毎回慰められている。白い花を見ては「もう少しの辛抱で秋が来る」と少し安心するのだ。

サルビアに圧倒され、やや窮屈そうである。
サルビアに圧倒され、やや窮屈そうである。

この植物にしろ、ヒガンバナにしろ、良くもまあ、咲く時期を間違えないものだと感心する。なんでも葉がでている春のころからカウントダウンに入るそうだ。農業はタイミングが非常に大事である。天気予報をチェックしつつ、上手に逆算できる能力が求められる。

その点私はまだまだ。レウコジャムやヒガンバナのような逆算できる力をつけたいものだ。

ところで、非常に良く似ているレウコジャム・プルケルムは、当地ではもう少し早めに咲きはじめる。まだまだ夏真っ盛りという時期でさすがに風情がない。他の地域ではどうなのだろう。見た目はオータムナーレととても良く似ているので、一度ラベルが外れると大変なことになる要注意の2種類である。

夏休みの工作(後編)

(前回より続く)

(話は昨年夏のこと)レザークラフトなんてするのはもちろん初めてのことである。ワーキングブーツの革の部分の縫い糸がほつれてきたのを直したりしたことは以前にもあった。しかし、裁断したり、正確に縫い上げる方法は知らなかったので、まず初心者向きのハウツー本を手に入れた。

読んでみると、なかなか楽しそうである一方、それなりに道具を揃えないといけないようだ。幸いにネットでいくらでもショップがあるので基本的な用具と材料はすぐに揃えることができた。

また、もともと参考になる作品が手元にあるので、これを元に型紙を製作。元の革の種類は忘れてしまったが、良く使われているサドルレザーというのを試してみることにした。

必要な皮を切り出して、ハサミを入れる本体のところにとりかかったところで秋に突入。また忙しくなって、一年の間そのままになっていた。

この一年、劣化はどんどん進み、時々部分的に補修しながらだましだまし使ってきて、もう限界を迎えた。夏前には作業中にかがんだりするとハサミが落ちてしまうこともあった。

お盆前の庭作業も一段落した頃から、再び製作にとりかかった。

初めは縫い上げるのに力が入り、手が痛くなってしまったりもしたが、バイスで革を固定することを覚えたら縫うのが非常に楽になり、どんどん作業は進んだ。自分が使うので基本的に見た目はどうでも良い。少々ゆがんでも構わない、なるべく早く完成させることだけを考えて取り組んだ。途中経過を写しておくべきだったのに、それさえも忘れていた。

ハサミケース

3日後、ほぼ完成。少々ゆがんでいたり、縫い目が汚くなっているのは御愛嬌。使っているうちにそんなことは全く気にならなくなるだろう。

ハサミケース

オリジナルと比べて、落下防止コードをつける為のハトメリングがついていることと、ナイフと鉛筆入れの位置を反対にしたのが違うぐらいで、基本的にはほとんど変わりがない。あらためて、元の作者の苦労をねぎらい、その創造性に敬意を払いたい。それにしても、オリジナルも最初は同じような明るい色だったように思う。まさに煮しめたような色に変わってしまった。今まで御苦労さん!

ハサミケース

ツール類を装着すると、なおさらしっくりする。仕事にも張りがでそうである。真新しい色はすこし身に付けるのが恥ずかしいくらいだが、数年後にはまた土と水と汗にまみれて、良い色になっていることだろう。

夏休みの工作(前編)

例年、真夏の日中はビニールハウスの中での作業は危険なので、昼休みは少し長めになる。その時間を利用して昨年、傷んできたはさみケースを作り直し始めた。

今まで使ってきたはさみケース、使いはじめてかれこれ10年以上になる。手づくり品である。作者は何と当時中学生の男の子。当時、若き友人の一人であった彼はレザークラフトに関心を持っていた。そこで、材料だけ用意してやって、大体の希望を伝えた。

それまでは市販のはさみケースを使っていた。しかし、量販品のため、使っているはさみにしっくり来ない。また、作業中に良く使うラベルと鉛筆、そして小刀は常に身に付けておきたい。そんな希望をかなえるはさみケースなど売っているわけが無いのでどうしてもオーダーメイドに頼らざるを得なかった。

しかしながら専門の業者に頼むとなると、コストがべらぼうにかかりそうで諦めていた。そこに現れたのが彼である。レザークラフトも将来の夢の一つだというので、「まず、作ってみろ」とけしかけたのである。

しばらくしてでき上がってきて驚いた。あらを探せば限りなくあるが、頑丈な縫製といい、必要充分なデザインといい、初めて作ったにしては見事なものだった。

これが無いと仕事にならないハサミケース
これが無いと仕事にならないハサミケース

その後愛用し続け10年以上、水と泥と汗にまみれ、革もボロボロ。手入れもしなかったのも災いして所々破れてきた。

鉛筆入れは昨年修理したので新しい。下のナイフ入れはちぎれそう
鉛筆入れは昨年修理したので新しい。下のナイフ入れはもげかかっている
ハサミを入れる部分も革が破れてしまった
ハサミを入れる部分も革が破れてしまった

残念ながら今となっては製作者とも連絡が取れなくなってしまったので、自分で所々修理してきたが、さすがに限界がきた。そこで昨夏、材料と道具を揃え、作り直すことに着手したのである。(続く)