四季咲き

冬の間、ニオイゼラニウムの仲間はほとんどがお休み中である。ビニールハウスの中では株が大きく傷む事はないとはいえ、古い葉が落ちていったり、成長を止めてじっと春のベストシーズンに備えている。

唯一、パインゼラニウムだけが季節を忘れたかのように花をつけ続けている。「四季咲き」というキーワードは一般的には好意的に受け止められる事が多い。季節を問わず咲いてくれると言うのはなかなか有り難い事なのだ。

パインゼラニウム

だが、パインゼラニウムのように始終咲いていると一寸有難みが無くなってくる。これで葉の香りが良ければまだプラス面もあったろう。しかし、残念ながらまさに松やにを思わせる香り。好みもあるにせよ、少なくとも自分はあまり好きな香りとは言えない。むしろ、深みのあるグリーンみの強い葉の方に魅力を感じる。

普通四季咲きのものは、剪定するタイミングが図り辛く、つい躊躇してしまうものだが、このゼラニウムは惜しげも無くチャキチャキとハサミを入れることができる。その点は気楽でいいかも知れない。

気になる最低気温

園芸をしているものにとって、気温はなにかと気になるものだ。私の場合、特に冬はほぼ毎日温度計をチェックする。

ここは圃場の中でも一番暖かい(寒くない)、二重ハウスの中。といっても加温はしていないので0℃近くまで下がる。レモングラスやヘリオトロープ、フルーツセイジなどは冬の間だけこのハウスへ引っ越しする。他のハウスよりはまだましなのだ。

最高最低温度計

今朝も最低2度まで下がったようだ。この時点で9時過ぎなのにほとんど気温は上がっていない。例年、よほど寒い日でないかぎりは2度になる事はないのに、ビニールの隙間が大きくなっているのだろうか。またチェックしておかないといけない。

無加温が原則であるが、「この冬一番」なんていう寒気がやって来る時にはさすがに夜の間だけ小さなストーブをたく。それでも零下になるのを防ぐ程度である。

むしろ、冬に気を付けないといけないのは急な晴れ間に一気に気温が上がってしまう事だ。うっかりしていると30度を超えてしまう。これは株にとってあまりよくない。大急ぎで入り口を開けて中を冷やしたりする。後になって最高温度を見て、「あちゃー」と後悔する事も珍しくないのだ。

一方で夏はそれほど気温は気にならない。というより、意識的に気にしないようにしていると言うのが正しい。気温がいくら高かろうが、クーラーで冷やす事は不可能だし、ビニールハウスのビニールを剥したところでどうにもならない。温度計を見てもうんざりするだけなのでなるべく見ないようにしている。秋になって最高温度のところを見て、
「45度にもなったんだなぁ・・・」
と感心するぐらいである。(※本当は正しい計り方ではないのだが、夏は日射の角度のために直射日光に近い光が当たるためである)

今まで色々な温度計を使ってきた。デジタルのものも一時使っていたが、過酷なビニールハウスではあっという間に故障してしまった。乾湿計も使ってみた事がある。湿球用の水補給ができるようなこまめさがない私には意味のない温度計であった。この最高最低温度計は既に5年ぐらい使っている。そんなに高いものではなかったのに良く働いてくれている。感謝。

どうでも良い事だけど、最初にこの温度計を買った時、どこが最低で最高か、今の気温はどこを見ればいいのかなかなか覚えられなかった。園芸をする人は結構持っていると思うけど皆さんはどうでしたか?

冬のコケ

私にとって、コケはなぜだか夏のイメージである。それなのに、育苗ハウスでは、むしろ冬に我々を悩ますのだ。

コケ

写真は秋に植え替えたジャイアントキャットミントのポットである。いつの間にかコケが侵食して今ではすっかり株の周りを覆い尽くしてしまった。

原因ははっきりしている。秋から冬にかけては気温が低めなので、表土が乾きにくい。冬に入れば、曇天が続く山陰ではなおさら日が当りにくくなる。コケにとっては快適なのだろう。でも、こんなに寒いのに何でこれほどまでに青々としているのか、少し憎たらしくも感じる。

ずいぶん前、水道を使って育苗していた頃はこんなにコケに悩まされた事は無かったように思う。井戸水に変えてから目立つようだ。塩素の害が無くなったのだろうか。

さて、このコケ、水分をすってふわふわのじゅうたんのような触り心地。苗の生育に問題がなければここで育ってもらって構わないのだが・・・。

でも、このタイプのコケは有る程度の厚さ(?)になるとペリペリッと剥すことができる。キャットミントでは無理だが、ラベンダーなどだと上手に丸く剥す事もできるだろう。

途中でちぎれてチョット口惜しい
途中でちぎれてチョット口惜しい

あえて立ち入る気はしないけれど、コケの世界は奥が深いらしい。子供の頃、田舎の伯父の家に遊びに行って、庭のコケの上で遊んでいるとメチャクチャ叱られた。子供心に「なんで?」と不思議でしょうがなかったが、愛好家の伯父にとっては許し難い行為だったのだろう。

そうだ、伯父の家に行くのはいつも夏休みだった。それでコケは夏のイメージとして植え付けられているのかも知れない。

竹も本望

他の季節に比べると、冬は園芸作業自体は少なくなる。一方で冬にしかできない作業も結構あったりするのだ。

今冬の課題は、育苗ハウスの台直しである。育苗ハウスでは、パイプで組んだ土台の上に割り竹を簀の子のように敷いてその上に苗(正確には苗ケース)を並べている。前回簀の子を作ったのは5年ぐらい前になるだろうか。さすがにところどころ腐ってきてそろそろ寿命も近い。

普通のビニールハウスでは鉄製の簀の子を使う事が多い。耐久性も高いが値段も高い。それに、いざ処分しようとでも言うことになると大変である。実は少し前に、施設園芸をやめたところでこの簀の子をもらえるかも知れないと言う話があった。だが、やはり今の時代の流れ考えると処分費がかからないものの方が後々安心である。そこで今のまま、竹の簀の子で継続する事になった。

竹の簀の子の供給源
竹の簀の子の供給源

前回は裏の竹やぶの所有者から分けていただいて作った。時期は真夏。竹を切るにしても作業をするにしても最悪のタイミング。やぶ蚊の猛襲に耐え、炎天下、竹を切り、割っていくなど狂気の沙汰であった。きっと周りの方も
「だーだねか?(ダラ・馬鹿ではないか)」
と言っていたに違いない。
今でも思い出すとその時の辛さが脳裏に浮かぶ。その時の反省から、この作業は冬に行なう事にしているのだ。

さて、昨年はこの裏山の竹やぶから大量の竹が業者によって切り出された。なんでも広島のカキ筏の材料になるとか。なにもこんなに遠くへ取りにこなくてもと思って尋ねてみると、山陽の竹よりも山陰の竹のほうが寒さに当たっているせいで、ゆっくり成長しており、海に浮かべてからも長期間腐りにくいのだとか。輸送コストをかける意味があるのだなぁと感心した。

先日はテレビだったかラジオだったかで、その廃棄されるカキ筏の竹から竹炭を作る取り組みが紹介されていた。とことんまで使われて、この山の竹も本望だろう。

泥落とし

新年に伴い、作業用ブーツを新調した。泥にまみれたり、水がかかる事も多いので他のスタッフは長靴を履いているが、自分はあの足首が定まらないブカブカ感が嫌いで、長年の靴ひもで締めるブーツ愛用者である。

それまでのブーツは靴裏のパターンが浅くて、ぬかるみや雪で滑りやすかった。今回は深いパターンで信頼性も高いビブラムソール。とても歩きやすい。

ビブラムソール

ところが、一つ問題が。冬は特に地面がぬかるんで粘るので靴底に泥がへばりつくのが避けられない。今までのブーツのように少々足踏みをしたぐらいでは落ちてはくれない。作業場ではともかく、こんな靴で店頭へ出た日には大変である。ましてや年末、床にワックスをかけたばかりだから、店頭スタッフに怒鳴られてしまうこと必至。

店にはそんな靴のための泥落としも売っていたりする。ところが値段が・・・。一万円を出さないとお釣りがこないような金額のものを畑の泥落としにはなかなか使う気になれないのである。

ブーツブラシ

ならば、お金を使わずに頭を使いましょう。

似たような形をしたものと言えば・・・デッキブラシである。ホームセンターへ行くと、デッキブラシの頭だけが売っていた。ただ、この部分だけではフラフラしてしまうので靴をゴシゴシと言うわけには行かない。専用の泥落としには思いベースが付属しているのである。

となると、後は、これを固定するものは・・・。ホームセンター内をうろついたもののあまりピンとくるものがない。一旦圃場に帰った。

少し大きめの木の板や鉄板に固定すれば動きにくいかも・・・と作業場を探してみると、ビニールハウスの部材の中に見つけたのがC型チャンネルと呼ばれる鉄材。もしかしたらサイズがぴったりでは?とひらめくものが。さし込んでみると何とジャストサイズ。両側を少し長めにしておけば、この部分を片足で踏めばぐらつかない。

デッキブラシとC型チャンネル

何とぴったりのサイズ
何とぴったりのサイズ

気を良くしてさび止めと見た目の向上のために塗装を施してやった。形はイマイチナなれど、今後結構活躍してくれそうである。

グレードアップ!
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