太陽が低いので

12月、ついでに冬至前。寒い、日の出が遅いので、朝、ビニールハウスに入っても全く暖かさを感じない。
そもそも、曇りがちなこの季節、お日様も出ていなければハウス内があたたまるわけもないのだが。

夕方もあっという間に日が暮れるので、仕事が遅々として進まない。

太陽は低く、頼りなさげ。あの夏の容赦ない太陽光線はいったいどこへ行ってしまったのかという感じだ。

そもそも、山陰は日本海側特有の曇天続き、一週間に一度、半日でも青空が拝めれば御の字である。

もちろん、ハーブの成長は遅い。まだ冬は始まったばかりなのに、春になることばかり考えている。

ただ、愚痴をこぼしていてもはじまらない、こんな時にこそできる仕事、すべき仕事を見つけることが大事である。

春から秋は、仕事も多いし、仕事の途中で割り込んでくる雑多な用事も多い。時間をかけてゆっくり、丁寧に行う仕事は進めにくい。冬こそ、集中してそんな仕事に取り組むべき時期だ。

と、いうことで、今日行う仕事はナメクジ退治である。

※注意! ナメクジが苦手な方はこれ以降は読まれない方が良いかもしれません。

イモムシやバッタなど、葉を食い荒らす昆虫たちがなりをひそめている寒い時期でも、ナメクジだけは活動中。しかも、暖かいシーズンよりも一層目立たぬようしているせいか、本人たちを見かけることは少ないが、確かに痕跡を残している。

また、暖かい時期なら、カエルという天敵にお任せするということもできるが(というか、それしかできないが)、この時期はカエルもお休み中である。天敵も不在でやりたい放題させておくわけにはいかない。

場所は種まきをした鉢や、挿し木をしたプラグなどがまとめてあるビニールハウスだ。種まき後や挿し木をした後は、苗などよりもはるかに頻繁に水やりをするので湿り気も多い。さらに、発芽したばかりの柔らかい芽、挿し穂から落ちてくる葉など、美味しいものはたっぷり。しかも、プラグや鉢の下など、暗くて外敵が入ってきにくい隙間が豊富にある。しかも、結構暖かい。こんな暮らしやすい場所はないだろう。快適で、食べ物がたくさんあって、しかも安全。そんな場所があれば僕だって住みたい。

挿し木プラグ
挿し木をしたプラグの下は格好の隠れ家

寒い時期でも、ハーブの種類によっては種まきをすれば発芽するものがある。もちろん、成長は極めてゆっくりなので、貴重な発芽である。春に向けて大事に育てていきたいのに、それを無残に食い荒らされたのではたまらない。

ジャーマンカモミールの食害
上の写真も、せっかく発芽したジャーマンカモミールの種子だったのに、左下半分がごっそり食べられていた。

タイムの食害
こちらはタイム。ところどころ、茎を残して、上の方を食べられてしまったようだ。

普段、よく観察していないと、「発芽しないなあ・・・」と思っていたのに、実は食べられていただけだった。ということがよくある。ナメクジが活動するのが、主に暗い時間帯なので、現行犯逮捕につながりにくいのも厄介なのだ。

鉢やプラグをいちいちひっくり返して裏をチェックするなど、手間も根気もいるので、余裕があるこの時期にこそするべき仕事だ。ついでに、低い太陽が好都合だったりする。真夏の強い日差しの下では、暗がりになって見えにくいプラグの裏も、斜めから日が差すこの時期ならばよく見える。第一真夏に激アツのビニールハウス内でこんな仕事しても、長く続けられるわけもない。

ナメクジの排泄物
さて、ナメクジの痕跡はこれ、排泄物の跡だ。植物を食べた排泄物なのでさして汚いとは思わないが、あらためて見ると感心するぐらいだ。これぐらいたくさん付いていると大抵近くに潜んでいたりする。

 

ナメクジ
すぐ隣のプラグの裏で早速発見。結構複数でいることも多い。カップルなのか、寂しがり屋なのか?

 

鉢裏のナメクジ
鉢の裏の隙間は絶好の隠れ家だ。

ナメクジの卵
ときには、卵を見つけることもあるが、今日は見つからなかった。キラキラしていてとっても綺麗だが。
アシナガバチ
プラグをひっくり返していたら、こんな方もいらっしゃってちょっとびっくり。ここで冬越ししているようだ。ほとんど動かないので、危なくはないがやっぱり緊張する。
カエル
鉢の下で眠っていた子ガエルも発見。起こしてゴメン。春からまた頑張ってもらえるよう、チェックが済んだ鉢の近くへ移してやった。
陸貝
また、名前はわからないが、小さな陸貝もけっこう悪さをする。忙しい夏だと、この小ささでついつい見逃してしまいがち。でも、この時期なら入念に調べる気にもなる。

一つ一つ、プラグや鉢をひっくり返しては、裏を見回し、見つけては取り除く。さすがに全ての裏に見つかるほどではないけれど、5、6枚裏返していると一匹や二匹は見つかるのでそのたびに退場していただく。「キャッ、気持ち悪い」なんてことはないので、別に指で取り除いてもいいのだが、指に付いたヌルヌルは不快極まりない。性質的に隙間に入っていることも多いので、小枝や、はさみの先などでチョイと引っ掛けて落とすのだが、中にはかなり奥まったところにいらっしゃるので、引きずり出すのには苦労する。

「そういえば・・・」と、思い出して、店頭にあった害虫ばさみを持ってきた。
害虫ばさみ
なんてことない、小さな火バサミのようなものである。ただ、先端のつくりがかなり精度が高く、(全体的にも高いけど)この手の商品にあるようなちょっとしたイライラ感を沸かせるような粗雑さがなく、きっちり働いてくれる。火バサミでも、使っていると先端が開いてきて、つかみにくくなってくること、ありますよね。

しかも、この本気度の高いギザギザ!捕まえられたら観念するしかなさそうだ。もし、僕がナメクジだったら、このギザギザが迫ってきた瞬間、覚悟を決めてしまうだろう。
害虫ばさみでナメクジをキャッチ
奥の隙間に隠れているナメクジも確実キャッチ。うん、なかなか悪くない。取っ手中央部分の丸く拡がったところが上手く力を伝えるのだろうか、微妙な力の入れ加減もきっちり刃先に現れる。厚い手袋をしている時なんかには有効かもしれない。しかも、先端の合わせが良好なので相当小さなものも確実にキャッチできる。他の何かで代用することもできる、ちょっとした作業用のツールなのに、ここまで作り込む本気度はGoodである。

毛虫なんかも、種類がきちんとわかっていて、毒がないのなら、安心して「テデトール」できるのだが、年に何度かは、「これってなんだっけ?」という奴に遭遇することもある。そんな時にもよさそうだ。それに、さすがに手で掴むのはごめん願いたいムカデなんかも安心して掴めそうだ。ムカデって結構ツルツルしていてある意味ナメクジよりはるかに掴みにくいけど、このツールなら大丈夫だろう。

また、ピンセットでは弱すぎる、火バサミでは大きすぎという、ちょっとしたものを挟むのにも重宝しそう。ビニールハウスにも常備しておくと便利かも。

このまま、ここに置いておきたいが、店頭での作業用なので、見つかったら怒られそうだ。ビニールハウス用に一本調達しようか。

なんか、愚痴に始まり、最後は商品の紹介になってしまった。右上に、『広告』とはっきり表示しとかなきゃね。

 

害虫ばさみ

ジャーマンカモミール
タイム

麻紐と弁当箱

季節によって仕事が大きく異なる庭仕事なので、使う資材も季節で大きく変わってくる。

冬は防寒や雪がこいのため、支柱や株元にマルチするための腐葉土、バーク堆肥の使用が増える。また、誘引作業もピークを迎えるので忘れてはならないのが誘引用の麻紐だ。

誘引に使うことができる素材は様々で、中に針金が入ったビニタイ(ビニールタイ)や化繊のひも等もポピュラーだ。ただ、後々の処理やナチュラルな見た目、価格等を総合すると結局は麻紐に落ち着いてしまう。

自然素材なのでいつかは朽ちて切れてしまうとはいえ、大抵の環境なら2年ぐらいは余裕で持つ。かなり太いツルバラの枝を誘引しても、翌年誘引し直す時にも強度十分のままである場合がほとんど。処分するのがもったいないぐらいだ。

しかも誘引や、支柱に固定するだけだから、そんなに長さは必要ないと思ったら大間違い。200メートル巻きとかのサイズを買ってもあっという間に無くなってしまう。「さあ、庭仕事にでかけるか・・・」と準備をしていて麻紐の余分が少なくなっているのに気がつき、慌ててホームセンターへ走るなんてこともしょっちゅうある。

たかが紐と思っても、実は結構コストがかかる。大降りのグレープフルーツ大に巻いた200メートル程度のもので500円台。もっと安いのもあるが、あまり細いと使えない場合もあるので、だいたいこれぐらいの価格帯に落ち着く。

ワンシーズン相当の数を使うし、買いに行く手間もバカにならない。そんなとき、とある農業資材系のホームセンターで面白いものを見つけた。

バインダーひも
「バインダーひも」
陳列されている商品を見ても具体的には何に使うものか分からなかったが、どうやら誘引にも使えそうで購入。太さも十分で4倍以上の長さがあるのに同じ500円台。これは試してみねばと思い購入した。

スタッフによると、少し旧型の稲作用コンバインで使う紐だとか。「なんでこんなもの買って来たの」と不思議がられた。彼は稲作もするので知っていたのだ。

今シーズンから使い始めて、特に問題はない。誘引作業等もかなり進んだが今のところまだ十分残っている。

ただ問題は、今までなら腰の四次元ポケットに入れることができたのに、このサイズでは無理なこと。いわゆる保温弁当箱、しかも大型のごつい奴ぐらいの大きさなのだ。仕方無く、足下において作業することが多いのでついつい蹴飛ばしがちだ。

保温弁当箱のように肩ひもがつけられればいいのに・・・。なんとか工夫できないかな?と現在思案中である。

葡萄とハーブと奥出雲

ときにはハーブ以外の植物を栽培するプロと接するのも刺激的なものである。

今日は、奥出雲葡萄園のワイナリー長である安部氏のもとへ訪れた。ずっと昔から、当店でハーブをお買い上げいただいているご縁もあり、ワインづくりにお忙しい中にもかかわらず、時間を割いていただくことができた。アリガタヤ。

もちろん観光ではなく、葡萄栽培について色々聞きたいことがあったので、訪問させていただいたのだ。

奥出雲葡萄園は雲南市木次町の美しい丘陵地に位置する。高品質な乳製品の製造で全国にその名が知られている木次乳業(ここのパスチャライズ牛乳は我が家でもマストアイテム。いまもパスチャライズ牛乳入りのミルクティーを横に執筆中。)が母体ということもあり、そのこだわりのワインには熱烈なファンが多い。

近年は、日本の山葡萄など、優良な原種からの交配種である「小公子」という葡萄から作る、その名も「小公子」というワインが注目を浴びており、予約受付当日に完売、店頭販売も販売初日に完売するというほどの人気。そんなワインを作り出す安部氏とお話しできるのはまたとないチャンスなのである。

ところで、葡萄園を訪問して、葡萄栽培について質問しに伺ったなんていうと
「ついにSORAMIMIはブドウにまで手を出すのか?」
と思われてしまうので、それは無いことは断言しておきたい。ハーブをより良く育てるための一つの試みのためとしか今は公表できないが、いずれうまくいった時には紹介したいと思う。

さて、貴重なお時間を割いてお話を伺い、ご質問させていただくのだから、こちらもそれなりにブドウの育てかたについてある程度まとめてから現地へ向かったのだが、当方の初歩的な質問に対して、ものすごい量の情報とともに答えが返ってくる。葡萄のことになると、めちゃくちゃ熱く語られる氏。ああ、この人って本当に葡萄が好きなんだなあ。ということがガンガン伝わってくるのだ。特に、剪定についてのノウハウは、話を聞きつつメモをするだけでも大変だったが、つる性の他の植物にも応用できそうでとても参考になった。

葡萄の剪定
葡萄の剪定方法について熱く語られる安部氏。葡萄を見る目は真剣で愛情に溢れる。

また、奥出雲葡萄縁のすぐ近くで無農薬、無肥料、不耕起で葡萄を育てていらっしゃる方も交えてお話しすることができたのは貴重な体験だった。当店も無農薬での大変さはよくわかっているつもりだが、その上無肥料、不耕起ということになるとさらに苦労も多いことだろう。そのかわり、収穫できた葡萄はものすごく甘いとか。いちど体験してみたいものだ。この方とはお互いに悩みの一つでもあるナメクジの話題でしばし盛り上がった。(お名前をメモし忘れたのが悔やまれる)

植物を栽培している方とは、どんな植物であれ、色々通じ合うところが多い。栽培についての悩みや喜びもそうだし、今回はお互い、生産したものを販売しているといいう点でも重なるので、時間はあっという間に過ぎていった。

ついでにワインについても、ワインづくりをされている立場でなければわからないワインについてのあれこれを教えていただき、目から鱗が落ちた気分だった。

安部氏はハーブもお好きでご自分でも色々お育てなので、いくつかプレゼント苗を持っていった。奥出雲の地、葡萄のそばでうちのハーブたちもすくすくと育ってくれるだろう。

今日は車で訪れたので叶わなかったが、いつかまたワインを交えてお話ができれば・・・と思いつつ奥出雲の地を後にしたのである。

安部様、今日は本当にありがとうございました。

 

島根のワイン 奥出雲ワイナリー 奥出雲葡萄園

http://www.okuizumo.com/

戒め

庭作業中のこと。剪定をしている最中に携帯が鳴った。
「後2、3本で終わりなのに・・・」と、
手を止め、手袋を脱いだ。通話が終り、さて残りを片付けようと手を伸ばしたところ、
「チクチクッ」
あちゃー、やられた。手の先の葉にはイラガちゃんがいたのだ。もう終わりだと、手袋をしなかった私が悪い。

だいたい、このお庭にはいなかったはずだけど、結構発生は気まぐれ。来年も出るかというとそう出なかったりする。ついでに、早く片付けようなんて気が緩んでいる時に限って戒めるようにアタックされるのだ。

痛みは増し続けるが、こんな時は慌てず騒がず、ガーデニングツールに常備しているガムテープを取り出す。

ガムテープ

針が刺さっていると思われるところにべたっとはってベリッとはがす。何度か繰り返しておいて、念のため毒消しにラベンダーオイルを塗っておく。経験上、だいたいこれで大丈夫。服に毒針がまとわりつき、いつまでも伝播し続けるチャドクガの幼虫に比べるといたって対処はシンプル。

しばらくはチクチクと痛みが残るが徐々に弱くなり、お昼に帰る頃、もう痛みは消え、ガムテープでベリベリしたところが赤く腫れているだけだった。

イラガの幼虫
この方たちにやられました・・・。

 

二日酔いには

昨夜は子供の部活の懇親会に参加。会場で高校の時の級友に会い、話に花が咲き続けて久しぶりに痛飲。帰宅は3時であった。

当然、今朝は二日酔い。久しぶりに頭がぼんやりしたまま圃場へ。数年前からあまりお酒を飲まなくなったのには、色々理由があるが、飲んだ翌朝のシャキッとしない体と脳味噌に不快感を覚えるようになったのも大きい。

昔、園芸関係の友人が言った「二日酔いの朝は、水やりが一番」という名言にしたがい、苗の水やりからスタート。うまい具合に、結構土も乾いている。

水やりは決してハードな仕事ではないし、むしろ忍耐力が必要。ボーッとした頭とふらつく体でも何とかなる。

mizuyari
9月になったとはいえ、まだ夏の力強さの日差しを受けながら水やりを進めていると脂汗がじわりじわり。今朝はアルコールも含んでいる感じがする。だるさと軽い頭痛に耐えつつ半分ぐらい水やりが終ると何となく体のスイッチも切り替わったよう。

水分補給をしてお昼まで水やりを続ける。昼休みに帰って来た時は食欲も戻って来た。十年前なら夕方には飲酒欲も戻って来ていただろうが、今はそれはないだろう。

ハーブに出会った学生時代、いやがる友人に「二日酔いにはバジルが効くんだ!」と、無理矢理バジルのハーブティーを飲ませ、悶絶させたことをふと思い出した。