マロウの謎

※詳しい品種は不明です
※詳しい品種は不明です

以前にも紹介した市内の幼稚園の花壇でマロウが花盛りになっている。実はこれ、当店の苗ではなく、先生がどこかで買ってこられて小さな花壇に植えておられたものである。

大きくなったらはみ出すような小さな花壇だったので、我々が手がけている花壇に昨冬移植したのである。

その時は、これほど見事な花が咲くとは思っても見なかった。恐らくゼニアオイが咲くのだろうと思っていた。マロウは良い系統を維持するのが難しいとされ、種子を採って蒔いても花びらが貧弱になることが多い。いままでも、お客様から、「マロウ」の苗を買ったのに(もちろん当店のじゃないですよ)、ボリュームのない花ばかり咲く、と言う話を何度も聞いている。

ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です
ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です

また、良い系統の株であっても、株が充実しないと良い花が咲きにくい。十数年前、ベランダの小さな鉢で必死で育てても「なんだこりゃ」と言うような花しか咲かなかったこともあった。また、株が老化してくると、やはり貧弱な花になりやすい。全くもって面倒な花である。

いわゆるゼニアオイならこの辺りでも良く咲いている。仏様用の花としては人気があるようで、ある時お客様から、普通のゼニアオイが欲しいと言われ、がっくりしたこともあった。そのうえ、畑の隅に生えているゼニアオイの中に、時々見事なボリュームのものがあったりするのでますます混乱させられる。

圃場では「ブルーマロウ」として、Malva sylvestris ‘Mauritiana’を栽培している。この種類も一度貧弱な環境で育ててどんな花が咲くか試してみるのも一興かも知れない。

逡巡

毎年この時期になると悩むことがある。イタリアンパセリをどうするか。である。イタリアンパセリは通常二年草として扱われる。教科書通りに受け止めるなら、例えば春に定植するとその年は成長を続け、翌年の初夏に花を咲かせて結実し、一生を終える。

ところが、植える環境やタイミングによって、結構成育に違いが出てくる。下の写真の株は、昨年12月に植えたものである。場所が良かったのか、春までぐんぐん育ち、葉も結構広げ、一気に花を咲かせてしまった。

イタリアンパセリ

こうなると、このまま花を咲かせきってしまって、種子取り用に使うこともできる。また、株の状態からして、花茎を剪定すればもう一年持ちそうな感じもする。場所によっては同じ株で数年葉を収穫することもできるので、それを考えるとこのまま終わらせるのも惜しい。

毎年同じように育てていれば、ほぼパターンもわかってこようというものだ。だが、イタリアンパセリは毎年それほどたくさん必要ないので、畑でも空いたスペースにとりあえず植えるし、その時期も気まぐれなことが多い。そのため、毎回違った育ち方をして私を悩ませるのだ。さて、どうしたものか、幾何学的な花でも眺めて考えるとしよう。

農繁期の種子

気がつくとチャイブが種子をつけはじめていた。

チャイブ

チャイブ

5月の初めには可愛らしいピンクのネギ坊主を揺らしていたのに、時の経つのは早いものである。上からのぞくと、黒い粒々が見えるようになってきている。

比較的小さい種子が多いハーブの中でもチャイブは種子とりがしやすい種類だと思う。それでもタイミングは大事だ。放っておけばいつの間にか落ちてしまう。種子たちも人間の都合を待ってはくれない。

種子とりに気が回るのはまだ時間的余裕が有る証拠である。いっぱいいっぱいの時なら気がついた時には種子はもう落ちてしまっている。それを見て更に余裕の無さを実感して焦ってしまうのだ。

実は今もそんなに余裕はないのだが、あえて種子とりをすることで、焦る気持ちが少しだけ押さえられるのではないかと思うのである。

切り取って、かるく振ってもまだ種子はあまり落ちてこない。充分に熟していないようだ。何個かネギ坊主を収穫して紙袋に入れておく。しばらくすると軽く振るだけでパラパラと種が落下してくるようになればOKである。
チャイブの種子
ただ、そのまま紙袋が放置され、数ヶ月後に見つかったりするとまた余裕の無さを痛感させられたりするので要注意である。

開花前と後で

6月に入り、お気に入りのハニーサックルが徐々に開花しつつある。花の香りが良いことは言うまでも無く、ハーブにはやや少ない蔓が楽しめること、トラブルフリーであることも好感度を高くしている。

ハニーサックル

小さな蕾がぎゅっと詰まって見えはじめていたかと思うと、どんどん大きく育ち、見事な大きさになる。特にピンク系の種類はこの咲く前の色合いが良い感じだ。つやつやとして、グラデーションのかかりかたも雰囲気良く、形もすっきりしている。

ハニーサックル

ところが、開花すると「ちょっと派手過ぎるかな」と言う印象である。色も派手な上に、立体感がある。大きな塀などにからませているのなら丁度よいかも知れない。また、ローズなどと組み合わせるのなら、これぐらいボリュームがある方が良いだろう。

ロニセラ・グラハムトーマス

ロニセラ・グラハムトーマス

だが、個人的には開花時はむしろ白系のグラハム・トーマス辺りのほうが好きである。蕾の頃はこちらはさえない感じだが、開花した時はかえってすっきりしている。今、店舗の木の壁にはこちらを広げようと画策中である。ブラウンの壁にはきっと映えてくれるものと思う。見ごろを迎えるのはまだ数年先になるだろうが、その時を想像しつつ気長に待つのである。

ソマリアの空と海

スタッフで休憩のお茶を楽しんでいると、時々、
「現地で、本物のトスカナ・ブルーってやつを見てみたいねぇ」
なんて話になることが良くある。もちろん、ローズマリーのことである。

オーストラリアンだとか、カナリーアイランドだとか、イタリアン、コルシカン、ケンタッキー、フレンチなど、名前を見ていると旅情をかき立てられても仕方がない。

同様に国の名を冠していても先般まであまりピンとこなかったのがソマリアセイジである。ところが先般、なにかと話題の多い国名なので、ついつい目が留まるようになった。

ややごつい葉をもち、花が咲くまではあまりぱっとしない姿だ。ところが花はなかなか。上品なブルーである。

ソマリアセイジ

このブルーは、ソマリアの空を映しているのかそれとも海の色か。政情不安に加え、経済もひっ迫しているというこの国で、目を向けられることはあるのだろうか。先日は国会中継でも海賊問題に関する審議が行なわれていた。海賊もまさか日本の国会で話題になっているとは思ってもみないことだろう。このソマリアセイジも、まさか日本で花を咲かせるとは思っても見なかったことだろう。

まだ育てはじめて長くないため、本質をひき出すような育て方まで行っていないが、真価を発揮できれば結構サルビアの中でも見所は多いかも知れない。