冬を彩るリーフたち(2)

過酷な環境に置かれると個性が現れてくるのだろうか、近い種類でも冬になると全く違う表情を見せるハーブも多い。例えば、育ち方や葉の形も良く似ている赤花クリーピングタイム白花クリーピングタイム。春夏ももちろん並べてみると赤花は葉色が濃いし、白花は明るい葉色をしているので分かりやすいが、冬はいっそう違いが明らかになる。

赤花クリーピングタイム

赤花の方は葉色が濃い赤みを帯びてくる(タイムの場合、冬に水を少なめにするとより顕著だ。実際この苗も一度水切れしかけたのでいっそう葉色が濃い。)。一方、白花の方は冬には黄緑色が強くなってくる。花は咲かずとも冬はひと目で見分けがつく。

マートル

普段は葉の大小ぐらいしか見た目がはっきりしないマートルドワーフマートルも冬はより見分けがつきやすくなる。マートルの方は葉にブチができやすく、冬はあまり見た目が宜しくない。

ドワーフマートル

一方、ドワーフマートルの方は全体が色づいてむしろ見た目は良好である。どっちも春になるといつの間にか元の濃いグリーンに戻っている。春は他のハーブに目が行っているので気がつかないだけなのだろう。

アイビー

普段はあまり好みではない(失礼!)アイビーも、今の時期はちょっと目を留めてしまう。ただ、これが壁や地面を埋め尽くしていたりするとちょっと辟易してしまうかもしれない。
アジュガ・チョコレートチップ
同じく地面を埋め尽くしているとちょっとうんざりしてしまうアジュガはどちらかと言えば好きな方ではないが、チョコレートチップは控えめな感じが好感が持てた。葉は小さめではあるものの、冬の葉色は同様に鮮やかである。花もまた控え目なところが良いのだ。

金色の出番

暖冬が予想されている今年の冬。とはいえ、快晴の朝はそれなりに冷え込む。日が射してもまだ暖かくなりはじめていないビニールハウスの中ではマフラーも手放せない。

そんな寒気の到来を嬉しそうにしているのがゴールデン葉系のハーブたちである。夏の間、元気が無くなったり、ゴールド色を隠して寒い季節が来るのをじっと待っていたかのように一斉に鮮やかさが増してきた。

ゴールデンリーフストロベリー

秋の初めにポット上げしてからもなかなか調子が出ずにやきもきさせられていたゴールデンリーフストロベリーも、このところになってようやく気持ち良く成長を始めた。

ゴールデンレモンバーム

ゴールデンレモンバームも同様。日に日に黄色味が増してきた。

ドーンバレータイム
毎年、夏の間斑が無くなって心配するドーンバレータイムもようやく斑が復活である。

冬はどうしても花が少なく、花壇や寄せ植えなども色合いが少なくなってしまいがちである。こういったゴールデン葉や赤系などカラーリーフを上手に生かしたい。パンジーやビオラばかり酷使するのはチョット・・・ね。

冬のデビューに向けて

秋は植え替えの季節でもある。夏の間に傷んだ株や、大きくなりすぎたものを植え替える仕事が山積だ。暑さや蒸れで調子が悪くなったハーブの鉢物は、涼しさが戻ってくるとそれなりに調子も良くなってくるとは言え、植え替えた方が手っ取り早いことが多い。

まして、徒長した株は剪定するだけでなく、植え替えもしてやるとなお、良い葉がでやすい。

シルバータイム

このシルバータイムもお手本のような徒長株である。そのうえ斑が消えてしまった枝も結構あるのでこのままでは見た目が悪い。シルバータイムはむしろ冬に葉色が鮮やかになるので是非今のうちに新しい芽がでるきっかけを作っておきたい。実際、斑の方が目立ちすぎて花が咲いた時もそれほど花が目を引くこともないのである。

普通ならばっさりと剪定してしまうことからスタートするが、長いままの方が斑が消えた枝が見つかりやすいので先にその始末をして、株元近くまで切り戻す。まだ比較的小さめの株なので(というか、鉢が小さいのでこれくらいしか大きくならないのだ)、すでに株元から新芽が出つつある。思いきってそのすぐ上辺りまで切り戻した。あとは一度掘り上げて回りの土を少し落とし、新しい用土を加えて植え直したらできあがりである。

シルバータイム

この鉢も使いはじめて10年近く。買った当時、少し値段が高く感じたのだが、頑丈でようやくいい味を出しはじめたことを考えると今になって良い買い物だったと思えるようになった。

一月もすればそこそこ見栄え良い葉が伸びてくるだろう。その頃には店頭に飾ってやろうと思っている。

Not so photogenic

ハーブを始めた頃から近年まで、正体が良く分からない虫がいた。というか、きちんと調べなかっただけなのだが。

庭や畑、ビニールハウスの中でもところ構わず出没する1cmに満たない小さなハチのような昆虫。ホバリングが得意で、じっと一ヶ所で空中停止していたかと思うと、ぷーんとどっかへ飛んでいってしまう。

悪さはしないような気はしていたものの、正体が分からないというのは精神衛生上良くなかった。その後ヒラタアブと知ってとても嬉しく思ったのを覚えている。幼虫はアブラムシの強力な天敵である。

一口にヒラタアブといっても非常にたくさんの種類があるようで私が普段目にするのが何という種類かまでは把握できていない。ヒラタアブ自体、ハナアブという大きなグループに属するようだ。しかもアブという名前で呼ばれているものの、むしろハエの仲間だそうである。

さて、私が普段良く見かけるのが下の写真の種類である。ネットで検索するとホバリングしている写真が良く載っている。その姿はなかなか可愛らしいので何度も撮影にチャレンジしたが、技術のせいか、それともデジカメの性能の限界なのかまともな写真が撮れなかった。仕方なく、止まっている時の写真を掲載する。ただの小さなハチである・・・。

ラングウォートの葉で一休み
ラングウォートの葉で一休み

これと、複眼が赤っぽい種類を良く見かける。こちらも飛んでいる時はいい感じだが、止まっているとアブかハエ。あまりぱっとしない。

まして、幼虫にいたっては事実、ウジである。葉に付いている姿も、長い間何かのサナギだとばかり思っていた。

ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。
ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。

これもネットからの情報だが、幼虫がアブラムシを捕食する際には身をよじるようにして食べることもあるとか。アブラムシを食べてくれるのはありがたいが、できるならあまり見たくない姿である。撮影する気も起きないので見たい人は画像検索してみてください。

初夏の花火

植え替えの作業をしながら、
「そう言えば、昨年はもうセミが鳴いていたぞ。」
という話題になった。ゴールデンウイークには既に初鳴きを耳にしていたように思う。ところが今年はタイミングの関係もあるのか、一声も聞いていない。

あまり早く暑くなるのもうんざりとは言え、いつまでも長袖が必要な気温というのもまた・・・やれやれ、人間はなんと勝手なのだろう。

夏を心待ちにする気持ちに応えてくれたのか、ビニールハウスの中で花火が上がった。

モロッコタイム

モロッコタイムである。タイムの中でもちょっと変わった雰囲気の持ち主だ。花が妙に長くて目立つ。性質はややつかみ所が無くて、妙に調子の悪い年や、今年のように元気全開になることもある。とはいえ、油断していると花の後で一気に枯れたりすることもあって気が抜けない種類でもある。

ピンク一色のみだが、原種なので案外原産地に行けば、白や濃い色も見つかるかも知れない。そうそう、以前、お客様のところの超乾燥花壇では赤に近いピンク色で咲いた。写真が残っていないのが残念だが、本来はそちらの色なのかも知れない。ピンク、白、赤と揃えば、かなり見ごたえの有る花火になりそうだ。