冬を楽しむ余裕

寒い・・・。
立春の声を聞いても、まだ冬の寒さの峠を越えたという気にはならない。苗たちも毎日のように見回っても成長が見えるのはごくわずかだ。

日々の成長は少なくても、冬から春に移り変わる頃には、花の時期とはまた違った姿で目を楽しませてくれる。

ドーンバレータイム
昨年のうちはまだグリーンにまだらが残ってやや汚らしかったウインターセイボリーも、見事な赤紫に色づいてきた。ルビンバジルレッドジェノベーゼバジルも似たような葉色だが、初夏から夏の柔らかい葉のバジルとは違って、硬質な感じの葉が赤紫に変わるとよりいっそうシャープな印象を受ける。
ブルーマウンテンラベンダー
ラベンダー類も本来のシルバーっぽい色合いになりつつある。初めて育てると、「大丈夫だろうか?枯れてないだろうか?」と思わせるぐらい白っぽくなってしまう。でも、葉色としてはこちらのほうが美しい。花の時期までこの葉の色が保てれば花もいっそう引き立つだろうが、暖かくなるとどうしてもグリーンが増してくるのは致し方が無い。この株は外の畑の株なので割とシルバーっぽくなっているが、ハウスの中の苗はやはりもっとシルバーは弱い。
ドーンバレータイム
春先にその魅力を発揮するドーンバレータイムも、立春ぐらいから色を出し始める。斑入りの葉なのに、秋までは全くそのそぶりを見せない。斑が暑い時期に消えてしまう種類は、斑が消えてしまうのではないかと毎年気をもむが、この種類に関してはあまり心配はないようだ。

ドーンバレータイム

育苗中のドーンバレータイムの苗のうち、一株だけ先行して色づき始めた株があった。親株は同じなのに、どうしてこんな差が出るのか。土、日当り、水分、気温、ちょっとしたことが原因なのだろうが、いつも不思議に思ってしまう。冬はそんな変化を楽しむ余裕があると思えばまたよしなのかもしれない。

ウインターセイボリー
ドーンバレータイム

秘密兵器

ラベンダーの季節もほぼ終りに近づき、圃場やお客さんのお庭に咲くラベンダーの剪定作業に追われている。ラベンダーも、大株になると何百本もの花穂を剪定する必要がある。大きなラベンダー園などではお茶の葉を刈る機械のようなもので一気に剪定してしまうらしいが、時々羨ましく思うこともある。

傍から見ると、優雅そうに見えるかもしれないが、暑い中の剪定は結構精神的にキツい(この頃は他のスタッフに任せたりしているのでちょっとアレだが)。ついでに、ラベンダーは結構アクがあって、剪定し続けていると葉にこびりついたアクでハサミの切れがガクンと落ちてくる。

ハサミに限らず刃物はなんでも「使ったら拭く」が基本なので、こまめに拭けば良いのだが、つい剪定に夢中になっていると拭いている暇がない。気がついた頃にはアクが刃にしっかりついてしまって拭き取ろうとしても簡単には取れない。

昔は熱湯をかけて拭いたり、圃場ならばトクサ(ヤスリ代わりになる)で刃をごしごしこすって取ったり、いよいよダメなら砥石で研いでいた。ただ、砥石やシャープナーで研ぐのは本来刃の切れが落ちた時なので、アクさえ取れれば良い場面では面倒な作業だ。

そんな場面にぴったりの秘密兵器に今春出会った。近隣で行われた刃物祭りで、刃物屋さんもお勧めする一品がこれ。その名も「激落ち 刃物クリーナー」である。最初半信半疑でその場では購入せず、後になってホームセンターを探したが見つからなかったので結局Amazonで注文。

激落ち刃物クリーナー

こういうケミカルものの効果はあまり信用しないタチであるが、この商品だけは納得。使い方も簡単である。写真は、まる一日草木を剪定したハサミである。当然アクなどがこびりついている。

ハサミのアク

これにクリーナーをシュッと一吹き。シュワシュワと泡立ってアクが赤茶色に変わってゆく。

ハサミのアク
そのまま30秒ぐらい放置して布等で拭き取るとこの通り、切れ味も復活。ただ、注意しなければならないのは、この後きちんと刃や稼働部に油を注しておくこと。まあ、刃物を扱う上では基本だが。

ハサミのアク

あまりに気に入ったので、スプレー瓶に小分けして、ハウス用、現場作業用、家用とそれぞれ常備している。アクの落ちがとても気持ちよいのでついつい使ってしまうのが悩みの種。近々大瓶で購入しそうな勢いである。

いかがはせむ

夏の終わり頃から、圃場の横にあるイングリッシュ系ラベンダーの畑の植え替えを行っている。もう5年近く植え替えを行っていないため、ダウンした株で歯抜けになったり、徒長する株も出てくるようになった。良い機会なので一度仕切り直しである。

畝も立て直して、耕耘、追肥を行う。用土も結構流れているので、補助の畑から追加した。傷んだ株は新しい苗から再スタート。そうでない株も剪定をして植えかえた。

土が落ち着くのを待って一畝ずつ行ったので結構日数もかかってしまった。

植え直しされたラベンダーたちは見ていても気持ちがよい。秋の新芽も順調に伸びてきてまずは一安心。

ところが、今年の春に周りでたくさん咲いていたボリジの種がどんどん発芽してきた。追加した土に入っていたのか、もともと蟻でもが運んできたのが耕耘された刺激で一斉に発芽を始めたのだろうか。

ラベンダートボリジ

今はこんなにかわいいけれど、すぐに大きくなってこのままではラベンダーの株は覆い尽くされてしまうだろう。

この周りにあったのはホワイトボリジだが、実生は白が出るとは全く保証できないのでポットあげする訳にもいかず、さて、どうしようかと迷っているのである。

水加減

苗の小さいうちは水加減が本当に難しい。その上、徒長しやすい種類はなおさら気を使う。

ラベンダーの中でも、マンステッドラベンダーがそういった類いの一つ。ある程度大きくなっても割と柔らかめの枝ではあるが、小さいうちはすぐにひょろひょろっと育ってダランと横に倒れてしまうことが多い。

マンステッドラベンダーの苗

この株も伸びてきたなと思っていたらこの調子。剪定をかけないと元に戻すのは困難だ。右手前の株もちょっと怪しいぞ。暖かい時期だけでなく、結構冬場でも起こりうるので目が離せないのだ。同一種だけ何百と育てていれば十分にコントロールできるかもしれないが、せいぜいひとケースやふたケース。悩ましいところである。

挿し木のタイミング

夏の終わりは、挿し木作業が多くなる。特に花が終って、少し休憩したラベンダーが新芽を伸ばし始めるので、ラベンダーの挿し木がいちばん多い。

畑の親木はまさに運を天に任せているので、適期を待って挿し木をするしかない。一方、鉢植えのラベンダーは花の後の植え替えと剪定の時期を調節する事で新芽が伸びてくる時期が少し違ってくる。

ちなみに去年は、まだ暑さが衰えないうちに新芽が伸びてきてしまい、その状態で挿し木をしたら相当失敗もあったので、今年は植え替えを遅くした。

ところがなかなか思うようにはいかないもので、今年はもう挿し木ができそうな気温になってもまだ十分に新芽が伸びてこず、困ってしまった。

それでもようやく一部のコモン系のラベンダーが良い状況になってきた。ポイントは新芽が伸びてしばらく経ち、下のほうが少し色が濃くなってしっかりしてきた時だ。あまり軟らかい新芽だと腐りやすいし、あまり固くなってしまうと発根に時間がかかる。

ラベンダー

挿し木のノウハウは人それぞれなので、かならずしもこのタイミングがベストだとは言えないけれど、秋は安定した挿し木に良い季節。試して見られるのも良いかも知れない。