やいとすえーよ

「しゃんわることしちょうとやいとすえーよ!」
(そんな悪いことをしているとお灸をするよ)
と、昔は良く言われたものである。

本日伺ったお宅で木に絡みついていたヘクソカズラ。「ヤイトバナ」とも呼ばれる。花の内側が赤いので、花冠(開いた方ですね)に唾をつけ、肌にくっつけると、ちょうど火をつけたお灸に似ることからこの名前がついたとか。

ヘクソカズラ

なかなか可愛らしい花である。日が当って透けた感じの花色と、奥の赤紫がまたいい感じを醸し出している。秋になる実もまた風情があるので上手に使えば面白い素材になりそうだ。

残念ながら名前で損をしている。ヘクソである。確かにあまりよい匂いとは言えないが、我慢できないほどのひどい匂いではない。まあ、雑草として他のものに絡みつくと始末に悪いので、負のイメージが強いのだろう。

別にサオトメカズラという優美な名前もあるという。この名前で広まっていたらもう少し人気があるのだろうに。本人(ヘクソカズラ)も悔しがっているだろう。

まるで拷問

夏の雑草はどれも広がり方が早い。中でもクズを筆頭に蔓性のものはたちが悪い。草刈機を使っても絡んでしまい、イライラが募る。

カナムグラもまた同じように夏の草刈りを阻止する蔓である。幸い今の圃場の周りでは見かけないのでありがたい。昔はかなりてこずらされた。

カナムグラと同属のホップもまた夏に苦労させられる植物である。カナムグラと見た目も、伸びようも良く似ているホップ。一度蔓がからむと、小さなトゲが引っ掛かってすんなりとは離れてくれない。まあ、そのおかげで色々なものに絡みやすくなっている。

ホップ
育苗している大苗は特に蔓の勢いも盛んで見る見るうちにとなりの株と蔓をからませる。さあ、注文が入った!と、苗をピックアップしようとしても、他のハーブのようにはいくわけが無い。蔓を傷めないように一つ一つほどいていかねばならない。夏の日差しがふりそそぐビニールハウスの中で、この作業はほとんど拷問に近い。汗は滴り落ち、メガネを曇らせ、さらに頭に血を上らせる。いっそ、蔓をバッサリ切ってしまいたい衝動に何度も駆られてしまう。

お願いです。ホップはまだ蔓の伸びがゆっくりしている頃に御注文御願いします。

ピーピー豆とアブラムシ

季節柄アブラムシに関する質問を良く受けるので、資料になればと思ってアブラムシの写真を撮りにでかけた。

まずは圃場の周りのピーピー豆(カラスノエンドウ)が繁っているところへ。先日草刈りをする時にイヤというほどたかっていたのである。ところが探そうとするとなかなかいないものである。

先に天敵のテントウムシの幼虫の方が見つかった。まだ小さな幼虫だが、動きはなかなか速い。この運動量ならお腹も空いてたくさんアブラムシを食べてくれるだろう。

テントウムシの幼虫

この間はいくらでもいたアブラムシがほとんど見つからない。これがアブラムシの不思議なところである。育苗しているハーブの苗の場合にしても、ある種類に発生しても、しばらくするといなくなり、他の種類に移っているのである。

アブラムシ

圃場を一回りしてようやく一群を見つけた。こういう写真が撮りたかったのである。先日まで、どのピーピー豆もこんな状況であった。新芽が出たでで美味しかったのだろう。あの強力無比のセイタカアワダチソウも新芽が出た時にはびっしりとアブラムシがつく。「健康この上ない」これらの雑草にさえつくのだから、普通の栽培植物につかない方がおかしいと思えてくる。

アブラムシの種類についてはまだ勉強が足りないので同じ種類かどうかは定かではないが、ピーピー豆に付く種類はうちのハーブたちではあまり見ないようだ。セイタカアワダチソウにももっと赤いような種類がつく。また改めて調べてみたい。

そばに来ないで

ハーブを育苗する用土に、ずいぶん前からそば殻を加えるようになった。用土を軽くし、水はけを促進、隙間を作って微生物の住み処としても役立つようだ。

庭作りをさせていただいているお客様のお庭でも粘土質の硬い土の場合、積極的に使って土壌改良している。以前はもみ殻なども使っていたが、見た目が悪いのと、チカチカして始末に悪いことでそば殻に替えている。実際に比べていないけれど、もみ殻の方が分解しにくいとか、土が酸性に傾きやすいとも言われているようだ。

ただし、そば殻の場合、しばらくすると出てくるのだ。蕎麦の芽が。脱穀する時少し残ってしまうのだろう。

蕎麦の芽

いったん発芽すると一気に成長する。さすがに優れた救荒作物である。当然、ポット上げしたばかりの隣りのハーブはあっという間に追い抜かれて日陰になってしまう。また、一説では成育阻害物質も出すというので早めに取り除いた方が良いようだ。幸い、根は弱くて簡単に抜ける。有りがたいことである。

あるときお客様の庭ですき込んだ蕎麦の芽が生えてきた。急いで抜こうとしたら
「花が可愛らしいから活けて楽しむので少し残しておいて」
と言われた。若いのに風情が有る方だな。と感心したことがある。

ビニールハウスでは一杯生えてくるので、時々取りにきて欲しい。小さな時はサラダにできると言われているようだし。試して見ても良いけれど、軟弱栽培しないと美味しくないのかな?

デッドネトル

オオイヌノフグリと前後して開花する雑草がヒメオドリコソウ(Lamium purpureum)だ。

春に一気に大きくなるし、群生するので厄介な雑草と思われそうだが、季節が過ぎると気にならなくなるし、茎も柔らかく、根もそれほどしつこくないのであまり気にしていない。花もよくみるとそれほど悪くない。
デッドネトル
ヨーロッパ原産の多年草で、当店でも斑入りのものを「シルバーデッドネトル」として栽培している。(このところ調子がイマイチで発売できていないが)

姫踊子草とはなんとも可愛らしい名前である。一方ヨーロッパではデッドネトル(dead nettle・死んだネトル)と呼ばれている。例のチカチカがあるネトルに似ているがトゲがないと言うことでこの名前が付いているようだ(もちろん別の属) 。なので群生していても安心して近寄って写真が撮れる。

道端で這いつくばって写真を撮っていたら近所の人が変な目で見ていた。