哲学的な番人

スタッフと話をしていて、「今年はタネバエが少ない」という話題になった。例年、春先にはタネバエが発生する。ネットで検索すると、幼虫は幼根を食害する大害虫のような説明が多い。幸いに、タネバエによる食害はあまり見受けられず、むしろ我々が鼻に吸い込んだり(ギョエッ)、まとわりついたりして気持ち悪いという害の方が目立つ。

また、未熟な有機物を多用すると発生するとも言われているようだ。しかしこの点もあまり当てはまらず、とにかく春の一時期のみ発生しては消えていくというのが毎年のパターンになっている。とにかくしばしの間だけ我慢すればよいのだ。

それが、どうしたことか今年は例年よりはるかに数が少ない。自分は気温のせいだと思ったのだが、スタッフ曰く、「カエルが多いのでそれが食べているのだ」と、分析していた。

アマガエル

言われてみれば確かに苗のポットの周りで小さなアマガエルを良く見かける。といっても、前にも述べたように実際に食べている姿は見ない。

それでも、哲学的な顔をして喉を動かし、じっと座っているだけで何となく頼もしい番人に見えてきた。健闘を祈る。

春風に揺れて

「春は黄色い花が多い」と何かで読んだ。思えばたしかにその通りだ。桜に代表されるピンクとともに、イエローは春に良く似合う色だろう。

ところが、個人的にはあまり好きな色ではない。服はもとより、あまり身の回りに置かない色である。金運が良くなるからと黄色の財布を持つ気などさらさら起きない。育てる花も、黄色のものはかなり少ない方だと思う。

それでもアカシアの黄色はとても好ましく思えてしまう。一つ一つの花のとても繊細なことやさわやかな春の風にそよぐ姿など、アカシア全体に魅かれるのかも知れない。

サンカクバアカシア

さて、そのアカシア、何百種類もあると言われ、数十メートルに達する種類から背丈にも満たないコンパクトな種類も有るらしい。ただ、実際に育てやすい種類となると、残念ながらかなり選択肢は狭まってしまうように思う。

庭木として良く使われるギンヨウアカシアなどは比較的扱いやすい種類だろう。フサアカシアは、松江でも寒さに耐え、ものすごいスピードで大きく育ったことがある。あっという間に5メートル、6メートルと伸びていき、その時にはさすがに困ってしまった。あまり安易に植えると後悔すると思う。

サンカクバアカシア

さて、今お気に入りなのがサンカクバアカシアである。それほど大きくならず、形的にもまとめやすい。花には爽やかな香りがある。といっても鼻を近づけなければ分からぬ程度なのだが。

サンカクバアカシア

この辺りでは、雪によってやや折れやすいことが心配なくらいだろう。また、アカシアを育てる上で共通の悩みがある。挿し木増殖が困難で種子で増やさざるを得ないことだ。だから毎回種を蒔くたびに思うのだ。あんなに大きくなる植物がどうしてこんな小さな種子から・・・と。

空よりも青く

こぼれ種で増える植物というのは、たいてい「一体どこから」と言う感じでその場に現れるものだ。圃場の脇にもう数年前から居着いているボリジの株もそうだった。用土を捨てていたわけでも無いし、終った花を放置していたこともないのにいつの間にか芽生えてきたのである。ボリジの種子の場合、アリが良く運んでいくのでその線が一番疑わしい。以来、毎年種子を落とし、絶えることなく生えるようになった。
ボリジ
こんな荒れ地に根付いてしまうと、それはそれは頑丈な株になり、どちらかといえばあまり可愛らしくない。事実、葉は硬いし、あまり繊細といった感じではない。

ボリジ

花も、咲く前は頑丈な毛に覆われていてごわごわした感じだ。なのであまりガーデンや花壇向きではないように思う。やはり野にたくましく咲いている姿が似あうのだろう。開花を待ちかまえていたようにミツバチが早朝から忙しく花の周りを飛び回っている。

ボリジ
ブルーの星が咲くと言われるその花は、やや下向きに咲くので撮影もしづらい。鮮やかな色は「空のような青」と形容されるが、こうやって空を背景にして見ると空よりも青いようだ。少なくとも松江の空よりは。

銀色の寝室

圃場の前にあるシンボルツリー、シルバーライム(ギンヨウボダイジュ)の芽が日に日に膨らんできた。今朝見ると、一つが既にふわりと開きかけていた。
シルバーライム
ギンヨウボダイジュの見どころは新芽の葉色である。特に葉の裏は綿毛がついていて文字通り銀色に見える。風が吹くと表面のグリーンと葉裏の銀色が輝いて瞬いているかのようにみえ、初夏の雰囲気を一層爽やかなものにしてくれる。
シルバーライム
葉裏の様子を写して見ようとしゃがんだところ、新芽の中にちいさなクモがお休み中であった。ふわふわとした寝床の中でお休み中だったのかも知れない。なんとも素敵な寝室を見つけたものだ。
シルバーライム
太陽が当り、暖かくなったのか、それとももっと全身を撮ってもらいたかったのかヨッコイショと外に出てきた。

この株は小さな苗を植えてから5年以上になり、3メートルを越えるようになってきた。そろそろ夏の良い日陰として活躍してくれるだろう。

急成長

タケノコのシーズンももう間近である。近隣に竹林がたくさんあるのでいただくことも多い。最初は初物の珍しさで喜ぶのだが、採れるようになると次々とタケノコが届くようになり、嬉しい悲鳴を上げることになる。タケノコは成長が速いことで知られている。せっかく顔を出したのに食べられてはかなわないと、一気に成長するのだろう。

今はこの辺りでも暮れのころから地中深くの小さなタケノコを収穫することもあると聞いて驚いた。タケノコもおちおち眠っていられないようだ。

さて、タケノコに負けない生長の速さをもつが蔓植物だ。店の横にある花壇で先月終わりに芽を出したホップが一気に成長を始めた。
ホップ3/29
3月29日、ようやく顔を出しはじめた。一昨年の秋に苗を植えて、昨年かなり成長していて緑のカーテンを楽しんだ。ただ、その後追肥もしなかったので若干心配をしていた。
ホップ4/8
4月8日、最初の蔓がのび、いよいよワイヤーに絡みつこうとしていた。蔓植物には上手に絡みつくためのセンサーが有るという。エライね。
ホップ4/9
4月9日、既に3巻きぐらいしている。一日で20センチ近く伸びているのだ。驚く他ない。ここまで来たら一安心というところだろうか。この後放っておいてもそこそこ育つ。でも、もう少し細い蔓がたくさん出るようになってきたら良い形になるように時々誘引し直してやると思った形になりやすい。