ブドウ葉

ニオイゼラニウムの花が少しづつ咲きはじめている。花だけを見ても一つ一つ個性が有り、コレクターが多いのもうなづける。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

中でも原種は変わった花も多い。この間から咲きはじめたグレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)も、数年前初めて花を見たとき、虫に食われたか、病気か何か問題があるのではないかと思った。花色はごく一般的だったのに、下花弁がとても小さかったのである。

グレープリーフゼラニウム(Pelargonium hispidum)

でも、それから咲く花咲く花、いずれも同じだったので安心した。蝶が羽根を広げたようにも見えるし、ピンクのハートにも見える。といっても花の形状からは名前がつけにくかったのだろう。通称は「ブドウ葉」である。別に、「VINE LEAVED」と呼ばれるれるゼラニウムもあってはなはだ紛らわしかったりする。

先人の失敗

長い間品切中になっていたチャイブスがようやく大きくなってきた。それほど遠くない時期に発売できそうだ。

チャイブス

チャイブを見るたびに思いだすのは、まだハーブを作りはじめてまもない頃、園芸の大先輩から伺った笑い話である。大先輩の友人は、チャイブを育てようと、ポットに種を蒔いたのだ。ところが、1ポットにひと粒づつ。当然のことながらヒュ〜ッと一本だけ伸びたポットが並ぶことになったそうである。

その時は「それはドジですね。」と答えていた自分だったが、まだ育苗もほとんどしていない頃である。教えてもらわなかったらきっと同じことをしでかしたに違いない。笑いながら、「チャイブは数粒を蒔くこと!」としっかり心に刻んだのである。

まして今なら、直まきもせず、小さなプラグに数粒づつ巻いてポット上げするか、株分けで苗を作るのでポット苗も比較的揃いやすい。写真のは、種子からなのでちょっと線が細い感じ。ガシッとした株分け苗にはやはり劣る。

同じ種子からの苗でも秋にポット上げすると、冬いったん地上部が枯れ、春に出てくる新芽のものはすごくエネルギッシュである。本当は春の苗はこちらを出したいというのが本音だ。今年は間に合わなかったけど。

せめぎあい

年間を通して管理しているお客様の庭にはかなり広いところも多い。自ずからグラウンドカバーを使うところも増える。

雑草は生やしたくないけれど、あまり手間がかかるのも・・・と言う場所にはカーペットグラスを選ぶことがある。一気に広がってくれるので比較的少ない数で大きな面積を覆うのに適している。

ただ、毎年今の時期はやきもきさせられる。寒さで枯れるようなことは無いにしても春先のスタートがやや遅い感じで、一時他の雑草に先頭を譲ることがままあるのだ。
カーペットグラス

このお庭でも、苔とカーペットグラスが拮抗している。そのうち、カーペットグラスが勢いを増して上を覆い尽くす(と信じたい)。

スタッフの一人によると、「苔をよけているような感じだ」とか。苔があると嫌がって広がらないのではないかと。そう言われればそんな気にもなってくるのだが、ここはカーペットグラスのポテンシャルを信じなければ。もともと乾燥した場所を好む植物なので苔が生えるような場所はいまいちお気に召さないのだろう。

カーペットグラス

冬は日当りの関係で苔が広がるようでも、春以降はかなりの日なたになる場所である。夏前にはきっとブワッと広がってくれる・・・はず。苔も夏はその下で涼しく暮らすのかも知れない。

控えめなグラウンドカバー

ペリウィンクルは地道なハーブである。香りもなく、葉も特に特徴が無い。古くは薬用として広く使われていたようだが、現在は開花時期はともかく、それ以外の季節は店頭でも目に留める人は少ない。

大型のVinca majorはツルニチニチソウと呼ばれ、盛大に繁茂しているのを時々目にする。近所でも法面をしっかりと覆い尽くしている。この強力な成長力のせいもあってどちらかといえば雑草のような見方をされることも多いようだ。実際に茎の伸びかたといったらビョーン・ビョーンとはねるように伸びていき、よほど注意していないと手に負えなくなるほどだ。事実、昔ハーブを育てていた貸農園で雑草化しそうになり、手を焼いたこともあった。
ペリウィンクル

それに比べ、Vinca minor・パープルペリウィンクル(ヒメツルニチニチソウ)の方はおとなしめだ。といっても芯は強いようで、寒さ暑さも何のその、少々湿っていようが乾燥していようが、ガンガンの日なたから日陰まで何とか育ってくれる。日なたでびっしりと硬めの葉を敷き詰めるように育つのもよし、日陰でしっとりと優しい葉を繁らすのもまた悪くない。ちょうど今ごろ、花時を迎え、クラシックな紫花で目を楽しませてくれる。

ホワイトペリウィンクル

また、白花の品種のホワイトペリウィンクルはさらに控え目な感じである。葉色も薄めで、育ち方によっては黄色い斑がうっすらとかかることもある。やや小さめの白い花は、楽しめる期間は短めだが、いっせいに咲いたところはなかなかよいものである。

ホワイトペリウィンクル

どちらも、グラウンドカバーとしてはかなり役立ってくれる。環境が良くつかめていない場所にとりあえず試して見るときなどおあつらえ向きなのである。

哲学的な番人

スタッフと話をしていて、「今年はタネバエが少ない」という話題になった。例年、春先にはタネバエが発生する。ネットで検索すると、幼虫は幼根を食害する大害虫のような説明が多い。幸いに、タネバエによる食害はあまり見受けられず、むしろ我々が鼻に吸い込んだり(ギョエッ)、まとわりついたりして気持ち悪いという害の方が目立つ。

また、未熟な有機物を多用すると発生するとも言われているようだ。しかしこの点もあまり当てはまらず、とにかく春の一時期のみ発生しては消えていくというのが毎年のパターンになっている。とにかくしばしの間だけ我慢すればよいのだ。

それが、どうしたことか今年は例年よりはるかに数が少ない。自分は気温のせいだと思ったのだが、スタッフ曰く、「カエルが多いのでそれが食べているのだ」と、分析していた。

アマガエル

言われてみれば確かに苗のポットの周りで小さなアマガエルを良く見かける。といっても、前にも述べたように実際に食べている姿は見ない。

それでも、哲学的な顔をして喉を動かし、じっと座っているだけで何となく頼もしい番人に見えてきた。健闘を祈る。