イラガとタナゴ釣り

昨日は、市内のとあるお庭へ作業へ伺った。ローズやハーブなどの手入れがメインの仕事だったが、大きく育った山椒の枝を少し剪定してやろうとしてちょっとびっくり。イラガの繭がいくつもついていた。

昨年何度も伺った庭だったのにイラガがいたとは分からなかった。我々スタッフも、そしてお客様にも被害がなくて幸いだった。

イラガの繭
いつ見てもこの繭はお洒落だ。一つ一つ違う模様は、一体何のためについているのだろう。繭と言えば柔いものという印象がある。しかし、この繭の硬いこと。指などではとても割ることは出来ない。(中にあの恐ろしいイラガの幼虫がいるかと思うと、指で割るような気にはなれないけれど。)

ところが、一体誰が目をつけたのか、この繭を釣りの餌にしようと考えた人がいたのには驚きだ。タナゴと言う小さな魚の釣りエサに使われるのだ。中にいる虫を切って、その腸を極小の針に巻き付けて使うとのこと。ここ山陰にもタナゴはいるようだが、釣りをしている人は見たことが無い。

不思議に思い、以前、そのことを宍道湖自然館ゴビウスの館長さんに聞いてみた。返ってきた答えは「そういう文化がない」とのことだった。小さな小さな魚を真冬に釣るような酔狂な釣りである。江戸の釣り文化は山陰までは届かなかったようだ。イラガたちそしてタナゴもさぞ安心していることだろう。

でも、釣りもたまにする私としてはいつか試してみたいと思っている。少なくとも餌のある場所はいくつか目星がついているし・・・。でも、変な目で見られそうなのが一番怖い。

「あのさん、あぎゃんこめ溝で、この寒いに何しちょられーだーか?だーだねか?」(あの人、あんなに小さな溝で、こんなに寒いのに何をしてるんだろうか?馬鹿じゃないかね?)
と言われるのがオチだろうなぁ。

私を忘れないで

今ごろになると、育苗ポットや親木の鉢からひょいっと顔をのぞかせてくるのが実生のビオラ・いわゆる三色スミレ(ハーツイーズ)である。

ハーツイーズ

一応栽培リストには載っているものの、この所怠けていて生産できていない。うちが苦手とする一年草と言うこともあるが、夏の種まきをついつい忘れてしまうのだ。秋も半ばになって、ああ、今年も育て損ねた・・・。と後悔し続けている。

今になって思わぬ場所から顔を見せる彼らを見るとそんな我々を咎めているかのようで少し心が痛む。まるで私たちを忘れないでね・・・と言うようで。同じような名を持つ一年草、Forget me not もまた、かつて同じような流れで栽培をやめてしまった一つなのである。

ウーリー

ハーブにはふわふわとした綿毛を身にまとうものも多い。良く知られているラムズイヤーは触り心地も良いので、幼稚園などで植えてあげると子供たちに喜ばれる。

これらの綿毛付きの種類はやはり春先の新しい綿毛が出た頃が見栄えも良い。写真のウーリーヤロウもまたしかり。柔らかそうな葉っぱをみるとつい手を伸ばしたくなる。

ウーリーヤロウ
一方で蒸し暑くなってくると、どうしてもこういった葉を持つ植物は見た目にも暑そうだが、本人も元気が無くなってくる。ウーリーラベンダーや、オレガノ・カルカラータなど、もともと乾燥に耐えるためにこんな葉になっているのだろう。ジトッとした空気の中では辛そうである。ただ、ラムズイヤーはそれほどではないようで案外平気な顔をしていたりする。一方で乾燥にもかなり強いので、見た目よりもはるかに強靱で驚かされる。

出たっ!

圃場で作業をしていると、スタッフのひとりが叫ぶ。
「出たっ!」
何かと驚いて、現場に来てみると、カマキリが一斉に孵化し始めたらしい。
カマキリ
こんな小さな卵塊にどんなふうに入っているのかと不思議に思えるぐらいの小さなカマキリたちが群れている。
カマキリ
中には一匹、かろうじてぶら下がっているヤツも。

これからそれぞれが思い思いの場所に散っていくのだろう。カマキリも小さなうちはアブラムシなどを食べると言う。例年よりアブラムシも増えるのが遅い感じの今年、ちょうど今ごろからが食べ時かも知れない。

スタッフによると今年はカマキリが多い感じがすると言う。是非大きく育って欲しい。

植物も人も

ハーブに限らず植物は「実際に育ててみないと分からない」ことが多い。

もう十数年前、ティートゥリーを育て始めた頃は、氷点下にしては駄目だと言う話だったので、それはそれは手厚く扱っていた。ところが、実際に植えてみると、松江市ならば地植えで全く大丈夫なことが分かって拍子抜け。屋根まで届いてしまった株もあるようだ。

その上、更に数年後、もう少し標高の高い雲南市でも防寒無しで越冬することが分かった。さすがに葉は傷むけれど、春には美しい新芽が出てくる。

剪定に強いことが分かったのもこの頃だ。雪が多かった冬、直径5センチぐらい合った主幹がボッキリ折れてしまった。「ありゃー、これは駄目かな〜」と思ったのに、暖かくなってきたら太い枝から軟らかな新芽が多数。ひょろひょろだった樹形も整ったのである。

ティートゥリー
なのでその後は全く躊躇せずに剪定できるようになった。咋秋ばっさり剪定した鉢植えのティートゥリーも今はこの通り↑である。

まあ、植物に限らず、人も長くつきあうと思いもかけない一面が見えてきたりするし、またそこが面白いんだけどね。