心配な二度咲き

お盆を目の前にして猛烈な暑さが続く。真昼は作業効率も悪いし、そもそもビニールハウスの中は危険な温度になるので主に早朝と夕方の作業を主体とせざるを得ない。

いくら細胞壁を持っているとしても植物にとってもこれほどの気温は厳しいに違いない。とはいえ、昨年の過酷な夏に比べれば(昨年はこの地域は梅雨明けが20日ぐらい早かった)、まだ耐えていられるのだろうか、去年かなり傷んだゴールデンセイジが夏にしては怖いほど元気だ。

ゴールデンセイジ

一方で、なぜか返り咲きを始めたものがある。

一つはソープワート。もともと強健なハーブなので暑さ自体はそれほど関係ないかもしれないが、二度咲きしたのはあまり見たことがなかったような(秋、涼しくなってからはあったかもしれない)。

ソープワート
初夏よりも白っぽい

ただ、もう一つ、マートルが返り咲きしたのには首を傾げている。むしろ咲きにくかったりするマートルが、今年はものすごく盛大に花を咲かせたのが6月の半ば。

6月のマートルの開花
6月のマートルの開花

それが今になってまた花をつけ始めている。6月の開花に比べるとさすがに数は随分少ないとはいえ、丸い蕾が結構見つかる。

8月のマートルの開花
8月のマートルの開花。随分おとなしめ(というか、普段の年の開花がこのぐらい)

遅れて成熟した枝なのか、狂い咲きなのか、ちょっと心配だ。

この冬のハーブたち(畑編)

前回はビニールハウスの中(無加温)でハーブたちのこの冬の様子を紹介したが、今回は畑のハーブたち。

屋外のハーブたちもまた普段の年とはずいぶん違う。例年、もう2回は雪かきをしている時期なので、地上部が完全になくなっていたり、少しだけ葉を残すような種類でも、かろうじて残った葉が赤紫になって寒さや雪に耐えていると入った状態だ。

ちなみに2年まえはといえば・・・

2年まえ結構な雪が降って、ビニールハウスに辿り着けるかどうかと言うほどだった。当然しばらくはハーブたちも雪の下。

ところが今年は、雪がないのでラベンダーセイジも春先のような葉を広げている。

ラベンダーセイジ

枝だけになってしまうチェリーセイジも新芽を出してしまった。

チェリーセイジ
普段は枯れ枝のチェリーセイジなのだが

本当は3月ぐらいに行う挿し木もこれぐらいからスタートするので、今、どうしようかと判断に悩んでいる。

レモンティートゥリー

普段の年なら黄土色になってカサカサと葉を落とし始めるレモンティートゥリーも綺麗な紅葉のまま。今年はもしかしたら落葉しないかもしれない。

レッドチコリ

例年雪の下なので、あまり見ることがないのだが、レッドチコリは、まるで地面に咲いた巨大な真紅の花のようだ。

マートルの新芽
マートルの新芽

去年は寒波で枝だけになってしまったマートルも新芽が紅葉する程度。

このまま春を迎えてしまうのか、今週末は雪マークが出ているがまだわからない。

中庸

気温がずいぶん高くなってきた。ようやくレモンヴァーベナやレモングラスに成長が見られるようになってきた。いままでほとんど育たなかったバジルも今後少しは成長が見られるだろう。畑の隅では太陽と競うかのようにポットマリーゴールドが鮮やかな花を咲かせ始めた。初夏も目の前である。

ポットマリーゴールド

冬の寒さで葉が全部落ちてしまったマートル。葉が傷むことはあっても、いままで全部落ちるようなことはなかったので、もしかしたら寒さで枯れてしまったのかもと半ば諦めていたが、4月も下旬となってようやく太い幹から真っ赤な芽が見え始めた。

マートル
鮮やかなグリーンの葉も、出だしは真っ赤!?

どうやら生きていたようだ。さすがに今年は開花はしないかもしれないがこのペースで復活してくれたらと思う。

さて、気温が上昇してくると、苗の水やりが特に難しくなってくる。冬場なら少々目を離していても急に水切れすることはないし、真夏ならジャンジャン水やりしてもまだ大丈夫だ。

ただ、この時期はちょうど苗たちの成長も重なる時期だし、気温の上下も激しい。また、湿度も急に低くなったり高くなったりして油断ができない。本当に気を使う。そんな条件なので水やりを管理するスタッフの間でも意見が別れることがある。

スタッフA氏は、乾燥しすぎるのを心配する。乾燥しすぎると、特に湿り気を好むハーブの場合などひどい場合は苗が枯れてしまうし、一旦土が乾ききってしまうと今度は水を吸いにくくなる。

スタッフB氏は、湿らせすぎるのを心配する。湿らせすぎると、乾燥を好むハーブは根腐れを起こしやすくなるし、根が伸びにくくなったり徒長や病害虫の原因になったりする。

どちらの言い分もそれぞれ理にかなっているのでどちらかに軍配を上げることは難しい。

ミントやレモングラスなどは、「ガンバレ~A!」とエールを送り、ラベンダーやタイムなどは「いいぞ!B!」と応援していることだろう。

いずれにせよ、湿らせ派と乾燥派、両方いることで育苗環境の中庸が保たれているに違いない。幸せな苗たちである。

年明けの仕事復帰

「年末年始はゆっくりされますか?」

年の暮れになるとよく聞かれるが、はっきり言ってその時になってみないとわからない。

結局のところ、天気によるのだが、大雪でも降ろうものなら落ち着いてはいられないし、一日中快晴の日が続くようなら、ビニールハウスの気温も上がるし、苗の乾きも心配になる。

幸い、ここ数年、年末年始は少しゆっくりさせていただいている。今年もおかげさまで落ち着いたお正月を過ごさせていただいた。晴れ間があっても短時間で曇り、小雨の降るような日もあったのでかえってバタバタすることもなく、体を休めることができた。

その代わりというか、職場復帰(というと大げさか)が例年のようにいかなかった。普通の仕事をしている方はきっとこうなんだろう。

4日頃からゴソゴソはしていたが、取り立て急いですることもないので、なんとなく片付けをしたり、年末にし残していていた仕事をする程度。

ところが、昨日あたりの天気予報で週の中頃から雪マークが出はじめたので、枝折れが気になるマートルの対策をせねばと思いついた。これでようやくエンジンがかかる。

マートルの実本当はもっと早くしておきたかった作業なのだが、秋に実がついたので、それでも熟すのを待ちたかったのだ。

 

ここ数年、マートルは毎年のように雪に埋もれたり、枝がほとんど折れたりして実を採ることができなかった。今日見ると、だいぶシワシワになって、秋にくらべると熟した感じがでてきた。ついこないだ食べていた黒豆のようだ。

マートルの実

中を開けると種子もできていたので、試しに蒔いてみようと思う。ハーブの場合、原産地と気候が大きく異なると種子ができても充実せず、発芽しないことも多いし、マートルの場合は挿し木の方が手っ取り早いので種子から育てることはないが、それはそれ。種子から育てるのはまた別の楽しさだ。

果実を取り終えたマートルは地面から50cmぐらいにバッサリと剪定。それまで背丈を越えるぐらいあったので、大雪が心配だったが、これで大丈夫。

ついでに、種まきという次の仕事もできた。こうして徐々にいつものペースに戻っていくのだろうな。

寒波の後で

1月20日。大寒。氷点下にはならなかったものの、西風がとても強い。

少し穏やかだった昨日とはうって変わって、一時間おきにみぞれ混じりの雨が差したかと思えばお日様が現れ、めまぐるしい天気となった。

先週末の寒波による雪が、日当たりが悪くてなかなか解けなかったのだが、ようやく消え、ハーブたちも顔を覗かせ始めた。

昨年1月の寒波で大きな被害を受けて、種類によっては夏まで影響が残ったものもあったので、圃場を一回りしてチェックした。

冬の初めに、防寒しておいたレモンティートゥリーや、レモンヴァーベナも特に問題はなさそうだ。

レモンティートゥリー
レモンティートゥリー。風除けだけの防寒。上の方の葉は傷んでいるが、株元は元気そう
レモンヴァーベナ
レモンヴァーベナ。こちらも、普通落葉して丸坊主になるぐらいなのでほとんど問題なし。

先週末はマイナス3度ぐらいだったので、心配しなくても大丈夫なようだ。それなりに葉は傷んでいるが。

同じく、マートルなども、昨年ほどのダメージは少ない。その他、寒さに弱い種類もとりたてて影響はなかった模様で安心した。

カルドン
カルドン。ちょっと大きくなりすぎた

また、大雪が降ると潰れてしまうカルドンも10センチに満たない積雪では影響はなさそうだ。ただ、冬に葉が傷んでばっさり剪定することで、ある程度サイズが抑えられて良いのだが・・・。現在株幅2メートルぐらい。もうこの場所を我が物顔で占拠している。

 

雪が降って周りの雑草が枯れてしまったことで顔を覗かせたのがボリジ

ボリジ

草に覆われていた時にはわからなかったが、零れ種で案外たくさん出ていた。すでに移植が難しいぐらいのサイズに成長している。雪が降るまでは雑草の下で伸びるチャンスをうかがっていたのだろう。これからは一気に葉を広げて場所取りを進めてくるに違いない。

ブルーキャットミント
ブルーキャットミント。株元の新芽はぎゅっとひきしまって色も濃い。

ブルーキャットミントも古い枝や葉が傷んで、株元から新芽が顔を覗かせていた。天候が落ち着いたら少し剪定してやらねば。

もちろん、ラベンダーをはじめ、ローズマリーやタイムなど比較的寒さに強い種類はノープロブレムだった。

とはいえ、まだ少なくとも節分ぐらいまでは油断できない。おだやかな季節が来るのが待ち遠しい。