冬のコケ

私にとって、コケはなぜだか夏のイメージである。それなのに、育苗ハウスでは、むしろ冬に我々を悩ますのだ。

コケ

写真は秋に植え替えたジャイアントキャットミントのポットである。いつの間にかコケが侵食して今ではすっかり株の周りを覆い尽くしてしまった。

原因ははっきりしている。秋から冬にかけては気温が低めなので、表土が乾きにくい。冬に入れば、曇天が続く山陰ではなおさら日が当りにくくなる。コケにとっては快適なのだろう。でも、こんなに寒いのに何でこれほどまでに青々としているのか、少し憎たらしくも感じる。

ずいぶん前、水道を使って育苗していた頃はこんなにコケに悩まされた事は無かったように思う。井戸水に変えてから目立つようだ。塩素の害が無くなったのだろうか。

さて、このコケ、水分をすってふわふわのじゅうたんのような触り心地。苗の生育に問題がなければここで育ってもらって構わないのだが・・・。

でも、このタイプのコケは有る程度の厚さ(?)になるとペリペリッと剥すことができる。キャットミントでは無理だが、ラベンダーなどだと上手に丸く剥す事もできるだろう。

途中でちぎれてチョット口惜しい
途中でちぎれてチョット口惜しい

あえて立ち入る気はしないけれど、コケの世界は奥が深いらしい。子供の頃、田舎の伯父の家に遊びに行って、庭のコケの上で遊んでいるとメチャクチャ叱られた。子供心に「なんで?」と不思議でしょうがなかったが、愛好家の伯父にとっては許し難い行為だったのだろう。

そうだ、伯父の家に行くのはいつも夏休みだった。それでコケは夏のイメージとして植え付けられているのかも知れない。

竹も本望

他の季節に比べると、冬は園芸作業自体は少なくなる。一方で冬にしかできない作業も結構あったりするのだ。

今冬の課題は、育苗ハウスの台直しである。育苗ハウスでは、パイプで組んだ土台の上に割り竹を簀の子のように敷いてその上に苗(正確には苗ケース)を並べている。前回簀の子を作ったのは5年ぐらい前になるだろうか。さすがにところどころ腐ってきてそろそろ寿命も近い。

普通のビニールハウスでは鉄製の簀の子を使う事が多い。耐久性も高いが値段も高い。それに、いざ処分しようとでも言うことになると大変である。実は少し前に、施設園芸をやめたところでこの簀の子をもらえるかも知れないと言う話があった。だが、やはり今の時代の流れ考えると処分費がかからないものの方が後々安心である。そこで今のまま、竹の簀の子で継続する事になった。

竹の簀の子の供給源
竹の簀の子の供給源

前回は裏の竹やぶの所有者から分けていただいて作った。時期は真夏。竹を切るにしても作業をするにしても最悪のタイミング。やぶ蚊の猛襲に耐え、炎天下、竹を切り、割っていくなど狂気の沙汰であった。きっと周りの方も
「だーだねか?(ダラ・馬鹿ではないか)」
と言っていたに違いない。
今でも思い出すとその時の辛さが脳裏に浮かぶ。その時の反省から、この作業は冬に行なう事にしているのだ。

さて、昨年はこの裏山の竹やぶから大量の竹が業者によって切り出された。なんでも広島のカキ筏の材料になるとか。なにもこんなに遠くへ取りにこなくてもと思って尋ねてみると、山陽の竹よりも山陰の竹のほうが寒さに当たっているせいで、ゆっくり成長しており、海に浮かべてからも長期間腐りにくいのだとか。輸送コストをかける意味があるのだなぁと感心した。

先日はテレビだったかラジオだったかで、その廃棄されるカキ筏の竹から竹炭を作る取り組みが紹介されていた。とことんまで使われて、この山の竹も本望だろう。

重い雪

年初以来の積雪となった。量はそれほどではないが、水分を含んだ重い雪。といっても春を目前として振るような雪とは趣が違う。

裏山の雪
裏山もモノクロームの世界。竹が雪の重みでずいぶんたわんでいる。

こういう雪はあまり嬉しくない。足元もべちゃべちゃで歩いていて気持ち良くないし、潅木タイプのハーブには枝折れと言う危険がつきまとう。今日の雪はすぐ解けるだろうけれど、もう少し多く降ったら割ける枝もあるかも知れない。

グロッソラベンダー

雪には強い方のグロッソラベンダーも今日の雪は嫌がっているように見えた。

冬のViola

かすかな春を感じたのだろうか、株分けしてまだそれほど時が経っていないビオラ・ソロリア・フレックルスが開花を始めた。まだポットの中で根も充分に張っていないので、こちらとしてはもう少し待ってもらいたいぐらいだ。もともとがしっかりした地下茎を持っているのでエネルギーがつまっているのだろう。

ビオラ・ソロリア・フレックルス

まあ、それはそれとして、冬の最中に咲くビオラの花は可愛そうで見ていて辛い。特にここ山陰では、強烈と言うほどの寒さではないのでパンジーやビオラが冬の彩りとして良く使われている。日溜まりの玄関先などはまだしも、ふきっさらしの畑の隅や、道路端のプランターで寒風に翻弄されつつ花を咲かせている姿は痛々しくて見ていられない。

そのように感じるのはある方の言われた
「ビオラは本来春の花です」
というひと言である。

確かにビオラやパンジーは、その鮮やかな色彩を目にして春の到来を喜ぶのが本当なのだろう。それなのに春になるともう時期外れのように投げ売りされ、あまり注目もされなくなるのは何とも可愛そうである。

明けましておめでとうございます

松江は大晦日から、予想外の積雪。新年も雪に覆われたスタートとなった。

そのため、機会を見つけてはビニールハウスの様子を見にいったりしていたので、普段の休日とあまり変わらないような感じであった。ま、正月と言う事もあり、特に何か作業をするわけではないものの、植物たちの様子を見ていると一安心と言う感じなのである。ヤレヤレ。

ヴィツェンツァブルー・ラベンダー

雪が降り止んでも太陽をなかなか拝めなかったので、ビニールハウスの中も相変わらずの冷蔵庫状態。ハーブたちもじっと息をひそめている感じ。12月初めには季節外れの蕾を付けていたヴィツェンツァブルー・ラベンダーも開花手前でストップしたままである。周りにも花はほとんどないので
「あれ、俺、何でここでひとり咲いてるんだろう」
といった感じではなかろうか。

いずれにしても、今年もよろしくお願いいたします。