草刈りはじめ

まだ霜が降りる日も時々あるので、地植えのハーブは多くがまだ冬のたたずまい。一方で雑草達はいち早く春の成長をスタートさせている。

毎年同じ場所に咲く、たぶん白花のタンポポ

畑の脇では、タンポポが綿帽子をつけていた。いつ咲いたかもわからないぐらいなのに。つくしも顔を覗かせ始めている。

法面の柳も、柔らかな新芽を一気に伸ばし始めた。

一方ハーブの仲間はといえば、目立つのはまだスイートバイオレットぐらいだろうか。気温が上がるといい香りも漂うのだが、低い気温ではずいぶん近寄らないと香りがわからない。

そんな今日は草刈りはじめである。もちろん、伸び始めたとはいえ、雑草の丈はまだ低いので、今からめくじらを立てて草刈りをする必要はないのだが、本格的に忙しくなる前に、井戸掃除と溝掃除だけは完了しておく必要がある。その前準備としての草刈りだ。

例によって、数ヶ月ぶりに動かす草刈り機はなかなかエンジンがかからない。スターターケーブルを何回も引っ張っているうちに、汗が出てきた。草刈り機の暖機の前に、人間の暖機が完了する。

もう十数年も使っている草刈り機、今はボタン一つでエンジンがかかったり、それどころかバッテリータイプの軽量なモデルも普及してきた。そんなニューモデルに時々心引かれることもあるのだが、斜面で石だらけの場所で、かなり荒く扱い続けても特に大きな故障もなく動いている一台。手放しにくく、パーツを色々と変えながらも使い続けている。

草刈りする場所は毎回同じなので、どのあたりに石が多いのかとかもわかっているし、体の使い方も身に付いてはいるのだが、数ヶ月ぶりの草刈りに、しばらくすると腰が痛くなってきた。

今日は特に地面ギリギリを草刈りするので、細かい石が飛んでくる。メガネはしているので目は安心とはいえ、そろそろフェイスシールドも使った方がいいかな・・・とか思いつつ作業は進む。

昨年、大きな花を咲かせたクラリーセイジの近くに、零れ種から発芽した小さな株がいくつも見つかった。そのうち一つは、気がつくのが遅れ、スッパリと切ってしまった。

クラリーセイジのこぼれ種子からの発芽。

まだ小さいので、いくらでも移植ができる。「あのあたりが空いているから、二株」「上の畑の奥の方にも一株・・・」「それよりも・・・」とか考えているうちに、おおよそ必要な草刈りは終わってしまった。

これから秋まで続く草刈り作業を考えると少し気が重いが、気分転換と運動と思って楽しんで励みたい。

今年の新芽

冬の間の大事な仕事に、鉢の植え替えがある。落葉したり、休眠している間に古い枝を剪定したり、古い土を取り除き、新しい土を加えて春からの成長を促す。

もちろん、種類によっては剪定した枝を使って挿し木をしたり、株分けを兼ねた植え替えを行う場合もある。

寒さに弱い種類はさすがにもう少し暖かくなってから行うのでまだそのままにしているが、昨年のうちに植え替えしたような種類はもう新芽が動き始めたている。いずれもオープンなビニールハウスなので、気温は屋外と変わらないのだが。

エルダーの新芽
エルダーの新芽

今年も早く動き始めた一つがエルダー。昨年も芽吹きが早く、挿木が間に合わなかったりしたので、今年は植え替えと挿し木も早めに行った。山菜を思わせるような芽吹き。日本のニワトコの新芽も天ぷらにするようなので多分美味しいだろう(同じくたくさん食べるのはよくないと思うが)。ただ、天ぷらにするほどには数がないので手を出すわけにはいかない。先日登ったとある山では、登山道の横に何百本というタラの芽が伸びていた。天ぷらが食べたければそこへ行くほうがよさそうだ。まあきっと、もっと芽吹きに敏感な人々にしっかり採取されてしまっていると思うが。

グリークオレガノ
グリークオレガノ

グリークオレガノもいい感じで新芽が伸びてきた。こちらは挿し木をしていなかったので、もう少し大きくなったら試してみようと思う。ただ、急に暖かくなると柔らかく伸びてしまうので注意が必要だ。

この間までほとんど見えなかったブラックペパーミントも新芽が顔を出し始めた。

ブラックペパーミント
ブラックペパーミント

この時期の葉は、丸まっていて可愛らしい。最盛期には呆れるほど大きく育って、葉も鋭くかわいさは無くなってしまうが。

レモンマリーゴールド
レモンマリーゴールド

レモンマリーゴールドはまだ丸坊主。急いで植え替える必要はなかったが、大株なので忙しくなるとつい面倒くさくて後回しにしがち。今まで寒さでダウンしたことはないので多分大丈夫とは思うが、新芽が出てきたら毎年のことだがホッとするだろう。

植え替えると楽しいのがやはり斑入りの種類、植え替えた後に伸びてくる新芽はやはり鮮やか。冬の初めは、斑が確認できるとはいえ、ぼんやりとしていたゴールデンクイーンタイム。植え替えたらこの通り、綺麗な斑入りの葉が現れた。いつもこうならいいのだが。

おや、ちょっと早いお目覚めでは?というのがステビア。

ステビアの新芽
ステビア。古い枝からは良い芽が出ないので後で剪定してしまう。

あんまり早く動き始めてちょっと心配。来週は氷点下近くになる日もあるというので。葉が傷んでも、根さえ駄目にならなければ大丈夫ではあるが。こちらはもっと暖かくなって、伸びてきたら挿し木の元にするので、しばらくは少し大事にしておこうか。

いずれにしても、寒い中作業をしたことに答えてくれている感じで嬉しい。春に向けての作業も弾みがつくというものだ。

株元に春を見つける

来週は、半ばごろまた雪マークが出ているが、今週は春を思わせる日が結構あった。

天気も良く、少し時間的にも余裕があると気分も穏やかに、親木のメンテナンスにも向かう気になる。いつもタイミングを逃したり、行う余裕もないまま春を迎えるのだが、今年は珍しいことだ。

昨年夏の開花後は剪定をしたもののその後は特に何もしなかったコモン系のラベンダー。

1月の積雪で中央が若干押しつぶされ、すこし枝折れもある。寒さには強いので今の時期はこんな風にシルバーグレイになって冬を過ごしている。

それでも株元からは新芽が伸び始めている。柔らかな芽は春の色。株元に春を見つけた感じだ。

古い枝を剪定して形を整え、ついでに挿し木もする事にした。

とりあえず、挿し木が完了する。枝がずいぶん減ったがちょっと見た目も悪い。

古い枝を減らすように、また不要な枝も減らす。

株元からは早々とヨモギも顔を出している。このままではヨモギに囲まれてしまうし、大きくなると取り除くこと自体が難しくなる。

根を痛めないよう、ヨモギを根ごと取り除く。

最終的にはテニスボールぐらいのサイズにまでなってしまったが、ここまでしておくと一安心という感じだ。普段はもっと適当にするのだが、写真を撮りながらとなると自然に丁寧になるものだ。

きちんと手入れしたのでしっかり応えてもらいたいところだ。初夏の花が楽しみである。

楽しいひと時

2月初めとは言っても、立春をすぎたというだけで気分は春に向かうもの。

ここ数年、寒波で傷んだマートルは、ひどい時にはほとんど葉が落ちたりしたこともあったが、今年は小さな新芽も赤くなりながら耐えている。このまま春までもってくれると良いのだが。

マートル
今年はあまり寒さの影響を受けていないマートル

風もなく、穏やかな日差しの中、年明けから気になっていたホーリーの挿木作業にようやくとりかかる。

ホーリー
年末までは赤い実がたくさんついていたホーリー

クリスマス前まではまだ赤い実がたくさんついていた。こんなにトゲが鋭くて痛い葉の奥にある実なので、鳥たちも食べにくいのだろうと思っていたが、一月の間にほとんどなくなっていた。やはり積雪の影響で食べれるものが減ったのだろう。雪の中では赤い実もなおさら目立つだろうし。

今や、葉の奥に隠れた一つの実だけ残っている

ここ数年、挿し木のタイミングがうまくいかず、ずいぶん春遅くになったり、もしかしたら出るかもと、夏前に挿木したりしてみたが、非常に成績が悪かった。

そのため、今回はセオリー通り春になる前になんとかとりかかれて一安心だ。

痛い、本当に痛いホーリーのトゲ。落葉した葉も結構痛い。株元の草取りがたいへん。

ただ、例えばローズマリーなどとは違って、トゲが痛いのであまり楽しい作業とは言えない。しかも寒い時期なので良さそうな穂木を収穫しつつ、今後の成長を見計らって剪定するために屋外で丁寧に作業をしようとすると結構たいへんだ。今日のような穏やかな天気の日は絶好のチャンスだろう。間違えのないよう、今日は雌の親木から挿し木を行う。

カイガラムシもいなくなってキレイな枝に戻った

数年前、カイガラムシがかなりついたことがあった。それほど樹勢が弱ったようには思えなかったが、スタッフが痛い思いをしながら丁寧にブラシで除去してくれた。おかげで今のところは全く見つからず、安心して作業ができる。

穏やかな天気にも感謝、スタッフの丁寧な仕事にも感謝。手はトゲで痛いけれど、楽しいひと時である。

ビニールハウスで薪ストーブを

ビニールハウスの中は、太陽が顔を覗かせる日ならば、たとえ冬でも相当暖かい(もちろん、当店のように開けっぱなしでなく、きちんと閉めていれば)。だが、ここ山陰地方のように冬に太陽の顔を見る日が少ない場所ではその恩恵も受けにくい。

それでも、重油ボイラーでもガンガン焚いて加温すればハーブももっと早い時期に育つだろうが、そこまでするメリットは今のところない。ふんだんに太陽が降り注ぐ地域ならば、燃料代も少なくて済むだろうし、そんな地域で育ったものと価格競争しても勝てるわけはない。品質だって、加温すれば良いというものでもないし、かえって病気や害虫の心配が増すだけだろう。真冬にまでアブラムシに気をかける必要があるなんてまっぴらだ。

また、植物は、細胞壁があるためだろう、案外寒さに強い。ところが我々人間は、植物ほど強くない。そこで作業をする際には何か加温設備が必要だ。

最初は古い灯油ストーブを使っていた。大して暖かくはならなかったが、それでもストーブを焚いているというだけで気分的にはマシだった。作業場所をパーティションで囲むなどの工夫をして少しでも暖かくなるようにはしていたが、やはり限度がある。

そこで、ある年から薪ストーブを試してみることにした。暖かさは、比べ物にならない。熱量も数字的には倍以上である。

幸い燃料の調達先は確保できている。本体は、ピンからキリまであるが、当然キリの方。知らない人に、「サンキュッパですよ」というと、四万円かと思われることもあるが、3980円のである。

たいてい、ビニールハウスでこれを見た人が言うのが、「ビニールが焼けたりしないんですね?」という言葉。

実際、薪ストーブ導入で、一番心配したのがこれだった。ビニールが溶けてしまっては元も子もない。だが、使用し続けて、5年以上は優に立つが、いまのところ小さな穴さえ空いたことはない。

それでもいくつかポイントがあるので、紹介しておきたい。今後、ビニールハウスで、安価でとても暖かく(灯油ストーブには戻れない)、しかも環境に優しい暖房を・・という人に参考になれば幸いだ。※もちろん、自己責任でお願いしたいが・・・。

一つ目のポイントは、煙突の高さだ。本格的な薪ストーブでも、煙突はケチるべきではないと言われるが、安くあげようとストーブ本体を数千円で済ましても、煙突は、それ以上に費用がかかる。少なくとも、ビニールハウスの高さよりも2メートルは高くしたい。今の高さは4メートル弱ある。

煙突が高いので、ビニールハウス用のパイプなどで補強

二つ目のポイントは、風向きを考えること。風向きが安定しないところは難しいかもしれない。当店のビニールハウスが立つ場所は、南東に開けていて、そちらからの風が強い。そのため、煙がビニールハウスから遠ざかるような位置にストーブ(煙突)を設置すること。今まで、二箇所に設置したが、いずれも下記のような配置だ。

ストーブと煙突の位置

三つ目のポイントは、ストーブから真上に煙突を伸ばさずに、一度横に伸ばしてビニールハウスの横(妻の部分)から煙突を屋外に出すようにすること。煙突が煙を吐き出す力は弱くなるが、これも、煙突から落ちてくる火の粉を避けるのには有効だと思う。

自作のメガネ石(板)。少し焦げてきたので、きちんとしたものに交換したい

大体、この3点で問題なくストーブがたけている。

初めは、ストーブもなるべく中央に置くようにしていたが、結構端の方でもストーブの熱自体でビニールが溶けることはない。また、床が焼けないようにと、ブロックを積んでずいぶん浮かせたり、下に断熱用の砂を敷いたりしたが、あまり意味はなかったようだ。むしろ、今はしゃがむのが面倒で、ブロックをかませてあえて上に位置を上げている。

火をつけたり、火の具合を見て薪を足したりというのが面倒と思うかもしれないが、案外楽しいものだ。薪が焼ける匂いも、樹種によって違って面白い。それに、木が燃える匂いは、なぜかホッとする。ストーブの中で燃えている火を見ているだけで、ついつい引き込まれてしまうぐらいだ。

冬は、肥料作りの時にお湯を多用するし(以前は灯油ストーブのお湯では足りず、カセットコンロも使っていた)、お湯がいつも沸いているというのは洗い物の時などにもとても助かる。それに、そう多くはないが、不意の来客時も、寒いビニールハウスの中で凍えてしまわれずにすみ、会話も弾む。

薪割りもなかなか楽しい。最初は慣れなくてものすごく体に負担だったが、今は、むしろ寒い日に、体を温めるのにちょうどいい。薪を入れるケースにいっぱいになるよう薪割りをすると、汗さえ出てくる。ほんの10分前後だ。薪割りをするとストーブが不要になってしまうというのがなんとも皮肉なのだが。

そうそう、数年前から、ストーブに耐熱塗装をするようになった。それまでは、錆びてせいぜい2年で買い替えていたのだが、他の作業場で使っている同じストーブが5年ぐらい持つと聞き、環境的に湿気が多いためではないかと考えた。そこで、耐熱スプレーを購入後に満遍なくかけておいたら、ずいぶん持ちが良い。

耐熱塗装済み。炎が見える焚き口はオプション。炎が見えると楽しい。

毎年、ストーブをしまうときに、掃除をして軽く耐熱スプレーをかけるようにしているが、今のところ、4年は持つ感じだ。安いものだが、捨てるのはなかなか大変だし、雰囲気も悪くない。まあ、最初からそういう塗装済みのものを買うのも良いかもしれないが。

というような感じで、園芸作業のお供に薪ストーブ、おすすめである。もちろん、火の用心はしっかりと。翌日来て、ビニールハウスが溶けて愕然となることは避けたいので。