一輪車のタイヤ考察

数年前、一輪車用のノーパンクタイヤというものが出回るようになった。作業で使う一輪車はいつも雨ざらし、日ざらしなので、タイヤの劣化が激しい。使おうと思うとパンクしていて作業が中断することも多かったのでいい製品が出たものだと喜び、飛びついて購入した。

ところが、何かが刺さってパンクすることは確かにないものの、決していつまでも使えるわけではなく、徐々に劣化してくる。タイヤの中の充填剤(?)が弾力がなくなってくるとやはり使えなくなる。しかも、チューブタイヤのように修理して使うことができなかった。

そもそも現場では、空気圧の調整というものがないのが不便だった。一輪車で苗を運ぶときは硬いタイヤでは苗が飛び跳ねて落ちてしまう。逆に重い土の袋をたくさん運ぶときなどはパンパンにしておけば押すのも楽。ノーパンクタイヤでは構造上不可能な使い方だ。

結局ノーパンクタイヤは一つだけ購入して終わってしまった。あとは騙し騙しパンクを直したり、タイヤを交換したり、一式新調したりしながら今に至る。

少し前に、一輪車(ネコ車)の握りを修理した記事を出したが、この握りを買ったホームセンターで、一輪車のタイヤとチューブも売っているのを見つけてついでに購入しておいた。

以前ダメになったタイヤのホイールだけがいくつか残っていたので、今シーズンはパンクしてもすぐに替えれるよう、スペアを作っておこうなんて考えがひらめいたのだ。珍しく準備のいいことだが。

古い一輪車のホイール

今まで何度も直してきたので、新しいチューブとタイヤをホイールに取り付けるのはお茶の子さいさい。

もう20年ぐらい前だろうか、初めて一輪車がパンクしたとき、なぜかちょうどセールスに来ていたタイヤ屋のお兄ちゃんに直してもらった。流石にプロ、マイナスドライバー一本で上手にホイールからタイヤを外してチューブを抜き取っていたが、面倒臭いと思わなければホイールを分解してしまう方が簡単だったりする。チューブを傷つける心配もないし。

自転車や自動車ではこうは行かないが、一輪車ならではのチューブ交換方法だ。

ホイールの両側のナットを緩めて二枚に分ける。

先にチューブをタイヤに入れておく

チューブをタイヤに入れたら、2枚のホイール部分で両側から挟んで止めるだけ。とても簡単である。

両側からボルトとナットで挟む

一応、空気を入れたらチューブがタイヤとホイールに挟まらないよう、一度空気を抜いてからもう一度空気を入れ直す。この辺は自転車修理と同じである。

空気を入れて完成

一輪車のタイヤに愛着というのはおかしい話だが、修理して使うようになると手をかけた分少しでも大切に使おうという気になるのは良いことだ。

なんでもブラックボックス化してしまって素人では手が出せないものがどんどん増えてくるが、少しぐらいは修理ができる製品も残しておいて欲しいものだ。コスト以外にもプラスになることは多いように思うのだが。

一つだけ残されたグリップ

ときどき雪が舞う一日。とはいっても、積もるまでにはならない。ビニールハウスの雪も徐々に落ちていく。今夜も雪マークだが、この調子なら大丈夫そうだ。

冬の少し長めの休みもついに終了。夏は一月以上の通販休止期間があるが、実際のところは水やりには油断できないし、台風はやってくるし、そもそも暑い。あまり休みをエンジョイするという実感が湧きにくい。

冬は年末年始を挟んでプラスアルファ程度だが、大雪にならない限り、まだ気持ちに余裕がある。少しは体を休めた感もあるように思う。

そういう調子なので、本格的に仕事が始まっても、片付けやいろいろなメンテナンス作業が多い。気持ち的にもいまの時期なら細かいところに気がつきやすいのだ。

先週、苗を移動するときに一輪車(この辺りでは通称猫車)の持ち手の部分にしたたかスネを当ててしまってしゃがみ込んでしまった。ゴムのグリップは何年も前に劣化して外れてしまったままずっと使っている。さして不都合もないのだが、気持ちに余裕があると、直しておこうかという気分になるものだ。

ネットで探すと百円を切っていたり、せいぜい数百円。といっても送料がかかる。松江市は、県庁所在地といってもそこは島根県。大きなホームセンターはあっても少ない人口のためになんでもかんでも品揃えしているわけではない。

ホームセンターを何件も探し回っても結局は品物がなくてネットで注文するというパターンは多い。今回もそうなると思っていたのだが、なんと昨日、たまたま他の用事で立ち寄ったホームセンターで、なぜか3つだけ残されていたグリップを発見。ただ、3つが3つとも微妙に形や色が違うという奇妙な状況。値段は55円。屋外の棚に長年放置してあったのか、歪んで色も褪せていた。

さてどうしようかと、とりあえず店員さんに「これって、在庫限りですか?」と尋ねてみたが、やはりそのようだ。「大丈夫ですかねぇ?」と聞いてみても曖昧な返事しか返ってこない。まあ一つ50円のアイテムにかまっていられないのだろう。怖いもの見たさ?という気持ちで3つのうちからそれでも程度が良さそうな二つを購入した。

さらには、バーコードもついていなかった模様。いったいいつからここにあったのだろう。

形は同じなのだが、色合いや質感がかなり違う・・・

今日早速取り付けてみた。素直には入らないなという予感は当たり、木槌で叩き込む。変色してしまったが大丈夫だろうか。

ただ、これでスネをぶつけてもすこしは痛さが和らぐだろうし、真冬の冷たいグリップ(そもそも手袋してるけど)や真夏の激アツのグリップを握らずにすみそうだ。

今になって気がかりなのは一つだけ店頭に残されたグリップ。どういう結末を迎えるのだろう。

一年続いたら

ハーブに限らず、植物を育てるとき、ネームラベルはとても大事な役目を果たす。その植物の名前を記入しておくことがまず第一の役目。ハーブの中には、ラベルがなくなってしまうと、判断に困るぐらい似ているものもあるので、名前は欠かせない。

さらに栽培、育苗の場面では、栽培データを記入する役目も果たす。種子を撒いたり、挿し木をしたときには最低でも日付ぐらいは書き残しておきたい。

できれば種まきのおおよその数量、挿し木の本数なども記入しておくと、のちのち、その時期だとどれぐらいの発芽率や活着率があるかが参考になる。

一応、以前からそれらの情報に加えて、ポット上げの日と数量、完成日と数量、売り切れ日についてはラベルに記入していたが、残念ながら、それを活用するまでには至っていなかった。「今回は発芽率悪かったなぁ」とか、「いまごろならローズマリーは結構発根するだろう」という程度しか活用できていない。

旧型ラベル
旧型ラベル

何年も前からもう少しきちんとしたデータが取れないかと思い続け、まずそのためにラベルについて改善してみることにした。

とにかく面倒なのは、得られた栽培データの入力。今ここが一番ネックになっている。そこで、バーコードで管理できないかと、「水に強い」と謳われたタックシールを使ってみることにした。

なぜか溶け始めるラベル

最初はいい調子だったのだが、夏ぐらいから溶け始めた。暑さや直射日光のせいなのかと思った。ただ、よく見てみると、一様に溶けるというよりはフチの方から削られている感じ。

すでに判別不明になってしまった

とある朝、ラベルにひっついているなめくじを発見。どうやらラベルの紙(のり?)を食べているようだ。せっかくの記入データもまったく無意味となってしまった。まさかの原因に肩を落としてしまった。農業ではこういう全く不意に襲ってくるトラブルが頻発する。まあ、それを楽しんで笑い飛ばすぐらいの余裕が必要なのだが(「ハーブをかじられなくてよかった」とか)。それに、トラブルを解決することに頭をひねるのもまたよいものだ。

新型のラベル。きれいに貼るのが難しい。

そこで昨年の秋、仕切り直しとして、ラミネート加工のシールが印刷できるラベルライターを導入。ランニングコストは高めだし、ラベルを作るのは面倒だが、今の所は、かじられることも、文字が消えることもなく問題なく使えている。

一方、いま現在で、いくつか難点も出てきた。一つは文字が小さくて老眼が進んできた多くのスタッフに見えづらいこと。もうひとつは、ツルツルの面なので、マジックペンしか受け付けてくれないこと。いままでは、濡れていても全く問題なく使えていた鉛筆が使えなくなったのだ。

とりあえずそんなところだが、使い続けてまだ半年、一年続いたら引き続き使ってみようと思う。

草刈りはじめ

まだ霜が降りる日も時々あるので、地植えのハーブは多くがまだ冬のたたずまい。一方で雑草達はいち早く春の成長をスタートさせている。

毎年同じ場所に咲く、たぶん白花のタンポポ

畑の脇では、タンポポが綿帽子をつけていた。いつ咲いたかもわからないぐらいなのに。つくしも顔を覗かせ始めている。

法面の柳も、柔らかな新芽を一気に伸ばし始めた。

一方ハーブの仲間はといえば、目立つのはまだスイートバイオレットぐらいだろうか。気温が上がるといい香りも漂うのだが、低い気温ではずいぶん近寄らないと香りがわからない。

そんな今日は草刈りはじめである。もちろん、伸び始めたとはいえ、雑草の丈はまだ低いので、今からめくじらを立てて草刈りをする必要はないのだが、本格的に忙しくなる前に、井戸掃除と溝掃除だけは完了しておく必要がある。その前準備としての草刈りだ。

例によって、数ヶ月ぶりに動かす草刈り機はなかなかエンジンがかからない。スターターケーブルを何回も引っ張っているうちに、汗が出てきた。草刈り機の暖機の前に、人間の暖機が完了する。

もう十数年も使っている草刈り機、今はボタン一つでエンジンがかかったり、それどころかバッテリータイプの軽量なモデルも普及してきた。そんなニューモデルに時々心引かれることもあるのだが、斜面で石だらけの場所で、かなり荒く扱い続けても特に大きな故障もなく動いている一台。手放しにくく、パーツを色々と変えながらも使い続けている。

草刈りする場所は毎回同じなので、どのあたりに石が多いのかとかもわかっているし、体の使い方も身に付いてはいるのだが、数ヶ月ぶりの草刈りに、しばらくすると腰が痛くなってきた。

今日は特に地面ギリギリを草刈りするので、細かい石が飛んでくる。メガネはしているので目は安心とはいえ、そろそろフェイスシールドも使った方がいいかな・・・とか思いつつ作業は進む。

昨年、大きな花を咲かせたクラリーセイジの近くに、零れ種から発芽した小さな株がいくつも見つかった。そのうち一つは、気がつくのが遅れ、スッパリと切ってしまった。

クラリーセイジのこぼれ種子からの発芽。

まだ小さいので、いくらでも移植ができる。「あのあたりが空いているから、二株」「上の畑の奥の方にも一株・・・」「それよりも・・・」とか考えているうちに、おおよそ必要な草刈りは終わってしまった。

これから秋まで続く草刈り作業を考えると少し気が重いが、気分転換と運動と思って楽しんで励みたい。

ビニールハウスで薪ストーブを

ビニールハウスの中は、太陽が顔を覗かせる日ならば、たとえ冬でも相当暖かい(もちろん、当店のように開けっぱなしでなく、きちんと閉めていれば)。だが、ここ山陰地方のように冬に太陽の顔を見る日が少ない場所ではその恩恵も受けにくい。

それでも、重油ボイラーでもガンガン焚いて加温すればハーブももっと早い時期に育つだろうが、そこまでするメリットは今のところない。ふんだんに太陽が降り注ぐ地域ならば、燃料代も少なくて済むだろうし、そんな地域で育ったものと価格競争しても勝てるわけはない。品質だって、加温すれば良いというものでもないし、かえって病気や害虫の心配が増すだけだろう。真冬にまでアブラムシに気をかける必要があるなんてまっぴらだ。

また、植物は、細胞壁があるためだろう、案外寒さに強い。ところが我々人間は、植物ほど強くない。そこで作業をする際には何か加温設備が必要だ。

最初は古い灯油ストーブを使っていた。大して暖かくはならなかったが、それでもストーブを焚いているというだけで気分的にはマシだった。作業場所をパーティションで囲むなどの工夫をして少しでも暖かくなるようにはしていたが、やはり限度がある。

そこで、ある年から薪ストーブを試してみることにした。暖かさは、比べ物にならない。熱量も数字的には倍以上である。

幸い燃料の調達先は確保できている。本体は、ピンからキリまであるが、当然キリの方。知らない人に、「サンキュッパですよ」というと、四万円かと思われることもあるが、3980円のである。

たいてい、ビニールハウスでこれを見た人が言うのが、「ビニールが焼けたりしないんですね?」という言葉。

実際、薪ストーブ導入で、一番心配したのがこれだった。ビニールが溶けてしまっては元も子もない。だが、使用し続けて、5年以上は優に立つが、いまのところ小さな穴さえ空いたことはない。

それでもいくつかポイントがあるので、紹介しておきたい。今後、ビニールハウスで、安価でとても暖かく(灯油ストーブには戻れない)、しかも環境に優しい暖房を・・という人に参考になれば幸いだ。※もちろん、自己責任でお願いしたいが・・・。

一つ目のポイントは、煙突の高さだ。本格的な薪ストーブでも、煙突はケチるべきではないと言われるが、安くあげようとストーブ本体を数千円で済ましても、煙突は、それ以上に費用がかかる。少なくとも、ビニールハウスの高さよりも2メートルは高くしたい。今の高さは4メートル弱ある。

煙突が高いので、ビニールハウス用のパイプなどで補強

二つ目のポイントは、風向きを考えること。風向きが安定しないところは難しいかもしれない。当店のビニールハウスが立つ場所は、南東に開けていて、そちらからの風が強い。そのため、煙がビニールハウスから遠ざかるような位置にストーブ(煙突)を設置すること。今まで、二箇所に設置したが、いずれも下記のような配置だ。

ストーブと煙突の位置

三つ目のポイントは、ストーブから真上に煙突を伸ばさずに、一度横に伸ばしてビニールハウスの横(妻の部分)から煙突を屋外に出すようにすること。煙突が煙を吐き出す力は弱くなるが、これも、煙突から落ちてくる火の粉を避けるのには有効だと思う。

自作のメガネ石(板)。少し焦げてきたので、きちんとしたものに交換したい

大体、この3点で問題なくストーブがたけている。

初めは、ストーブもなるべく中央に置くようにしていたが、結構端の方でもストーブの熱自体でビニールが溶けることはない。また、床が焼けないようにと、ブロックを積んでずいぶん浮かせたり、下に断熱用の砂を敷いたりしたが、あまり意味はなかったようだ。むしろ、今はしゃがむのが面倒で、ブロックをかませてあえて上に位置を上げている。

火をつけたり、火の具合を見て薪を足したりというのが面倒と思うかもしれないが、案外楽しいものだ。薪が焼ける匂いも、樹種によって違って面白い。それに、木が燃える匂いは、なぜかホッとする。ストーブの中で燃えている火を見ているだけで、ついつい引き込まれてしまうぐらいだ。

冬は、肥料作りの時にお湯を多用するし(以前は灯油ストーブのお湯では足りず、カセットコンロも使っていた)、お湯がいつも沸いているというのは洗い物の時などにもとても助かる。それに、そう多くはないが、不意の来客時も、寒いビニールハウスの中で凍えてしまわれずにすみ、会話も弾む。

薪割りもなかなか楽しい。最初は慣れなくてものすごく体に負担だったが、今は、むしろ寒い日に、体を温めるのにちょうどいい。薪を入れるケースにいっぱいになるよう薪割りをすると、汗さえ出てくる。ほんの10分前後だ。薪割りをするとストーブが不要になってしまうというのがなんとも皮肉なのだが。

そうそう、数年前から、ストーブに耐熱塗装をするようになった。それまでは、錆びてせいぜい2年で買い替えていたのだが、他の作業場で使っている同じストーブが5年ぐらい持つと聞き、環境的に湿気が多いためではないかと考えた。そこで、耐熱スプレーを購入後に満遍なくかけておいたら、ずいぶん持ちが良い。

耐熱塗装済み。炎が見える焚き口はオプション。炎が見えると楽しい。

毎年、ストーブをしまうときに、掃除をして軽く耐熱スプレーをかけるようにしているが、今のところ、4年は持つ感じだ。安いものだが、捨てるのはなかなか大変だし、雰囲気も悪くない。まあ、最初からそういう塗装済みのものを買うのも良いかもしれないが。

というような感じで、園芸作業のお供に薪ストーブ、おすすめである。もちろん、火の用心はしっかりと。翌日来て、ビニールハウスが溶けて愕然となることは避けたいので。