実が付くまで

夏野菜が旺盛に育つようになると、待ちかねたように昆虫たちもやって来る。毎年のことながら、ピーマン、ナス、シシトウなどはカメムシのお気に入りのようだ。去年はピーマンにカメムシが大量についてしまったが、雨模様の天気のせいもあって、半ば放置状態だった。それでも、見るのが嫌になるほどのピーマンが収穫できた。

今年はちょっと気合いを入れて防除に精を出す。捕殺する時の匂いももはや気にならない。

カメムシ

今はダイレクトにつかまえるのと、枝を振って、一度地面に落ちたのを捕まえると言う2段階方式で行なっている。ところが、カメムシたちは隠れるのが上手である。ササッとこちらから見えない位置に移動する。ひとしきり捕えて、反対側に回ってみるとまだまだたくさんいてため息が出ることもしょっちゅうだ。

毎日毎日とってもとっても、翌朝になると前日と同じぐらいいたりするので、しばしば途方に暮れる。たった数本のピーマンやナスでこうだから、大量栽培の苦労は想像もつかない。

しかし、このような念入りの防除も実が付くまでだろう。食べきれないほど採れるようになると、一気に防除熱は下がる。「どうぞ、君たちも食べたまえ」

ピーマンの思い出

3年ぶりにピーマンを育てている。夏野菜の花壇には、トマト、キュウリ、ナスが常連。ピーマン、シシトウ、オクラなどはその年の気分で植えたり植えなかったり、植えるのを忘れてしまったりと言うパターンが多い。

ピーマンと聞くと思い出すのが子供の頃からの一人の友人である。とても真面目で温厚、人間的にも愛すべき人柄だったのだが、ピーマンを非常に、それはそれは嫌っていた。どうしてこいつはこんなにもピーマンを嫌うのだろうと、子供心に不思議に思っていたものだ。

実際、子供のころからピーマンが大好きというのは珍しいように思う。自分も大嫌いではないにせよそれほど喜んで食べる野菜ではなかった。それでも一度美味しさを経験すると評価は一転するものだ。

これももう20年近く前になるが、実家が焼き肉店をしている知人に美味しい食べ方を教えてもらった。といってもいたってシンプルである。ピーマンを生のまま半分に割り、種を出す。たれを付けた焼き肉を乗せてピーマンごと頬張るのだ。ただし、新鮮で美味しいピーマンに限る。ピーマンがいくつあっても足りない。

ピーマン

さて、自分でピーマンを育ててわかったのはその造形の魅力的なことだ。静物画のモチーフに使われるのも納得である。そして枝になっている姿がまた良い。朝方上がった雨粒を光らせ、今朝のピーマンはなおさらいい感じ。できればこのまま鑑賞用として置いておきたいほどであった。