夏休みの工作(後編)

(前回より続く)

(話は昨年夏のこと)レザークラフトなんてするのはもちろん初めてのことである。ワーキングブーツの革の部分の縫い糸がほつれてきたのを直したりしたことは以前にもあった。しかし、裁断したり、正確に縫い上げる方法は知らなかったので、まず初心者向きのハウツー本を手に入れた。

読んでみると、なかなか楽しそうである一方、それなりに道具を揃えないといけないようだ。幸いにネットでいくらでもショップがあるので基本的な用具と材料はすぐに揃えることができた。

また、もともと参考になる作品が手元にあるので、これを元に型紙を製作。元の革の種類は忘れてしまったが、良く使われているサドルレザーというのを試してみることにした。

必要な皮を切り出して、ハサミを入れる本体のところにとりかかったところで秋に突入。また忙しくなって、一年の間そのままになっていた。

この一年、劣化はどんどん進み、時々部分的に補修しながらだましだまし使ってきて、もう限界を迎えた。夏前には作業中にかがんだりするとハサミが落ちてしまうこともあった。

お盆前の庭作業も一段落した頃から、再び製作にとりかかった。

初めは縫い上げるのに力が入り、手が痛くなってしまったりもしたが、バイスで革を固定することを覚えたら縫うのが非常に楽になり、どんどん作業は進んだ。自分が使うので基本的に見た目はどうでも良い。少々ゆがんでも構わない、なるべく早く完成させることだけを考えて取り組んだ。途中経過を写しておくべきだったのに、それさえも忘れていた。

ハサミケース

3日後、ほぼ完成。少々ゆがんでいたり、縫い目が汚くなっているのは御愛嬌。使っているうちにそんなことは全く気にならなくなるだろう。

ハサミケース

オリジナルと比べて、落下防止コードをつける為のハトメリングがついていることと、ナイフと鉛筆入れの位置を反対にしたのが違うぐらいで、基本的にはほとんど変わりがない。あらためて、元の作者の苦労をねぎらい、その創造性に敬意を払いたい。それにしても、オリジナルも最初は同じような明るい色だったように思う。まさに煮しめたような色に変わってしまった。今まで御苦労さん!

ハサミケース

ツール類を装着すると、なおさらしっくりする。仕事にも張りがでそうである。真新しい色はすこし身に付けるのが恥ずかしいくらいだが、数年後にはまた土と水と汗にまみれて、良い色になっていることだろう。

夏休みの工作(前編)

例年、真夏の日中はビニールハウスの中での作業は危険なので、昼休みは少し長めになる。その時間を利用して昨年、傷んできたはさみケースを作り直し始めた。

今まで使ってきたはさみケース、使いはじめてかれこれ10年以上になる。手づくり品である。作者は何と当時中学生の男の子。当時、若き友人の一人であった彼はレザークラフトに関心を持っていた。そこで、材料だけ用意してやって、大体の希望を伝えた。

それまでは市販のはさみケースを使っていた。しかし、量販品のため、使っているはさみにしっくり来ない。また、作業中に良く使うラベルと鉛筆、そして小刀は常に身に付けておきたい。そんな希望をかなえるはさみケースなど売っているわけが無いのでどうしてもオーダーメイドに頼らざるを得なかった。

しかしながら専門の業者に頼むとなると、コストがべらぼうにかかりそうで諦めていた。そこに現れたのが彼である。レザークラフトも将来の夢の一つだというので、「まず、作ってみろ」とけしかけたのである。

しばらくしてでき上がってきて驚いた。あらを探せば限りなくあるが、頑丈な縫製といい、必要充分なデザインといい、初めて作ったにしては見事なものだった。

これが無いと仕事にならないハサミケース
これが無いと仕事にならないハサミケース

その後愛用し続け10年以上、水と泥と汗にまみれ、革もボロボロ。手入れもしなかったのも災いして所々破れてきた。

鉛筆入れは昨年修理したので新しい。下のナイフ入れはちぎれそう
鉛筆入れは昨年修理したので新しい。下のナイフ入れはもげかかっている
ハサミを入れる部分も革が破れてしまった
ハサミを入れる部分も革が破れてしまった

残念ながら今となっては製作者とも連絡が取れなくなってしまったので、自分で所々修理してきたが、さすがに限界がきた。そこで昨夏、材料と道具を揃え、作り直すことに着手したのである。(続く)